2010年、経済産業省に「クール・ジャパン室」がことにより「クール・ジャパン」という言葉が公的な用語として使われるようになりました。「クール・ジャパン」といえば、日本発のアニメ・漫画・ティーンエイジャー文化などのポップカルチャーが筆頭ですが、政府としては日本の伝統的工芸品も「クール・ジャパン」として売り出したい模様です(詳しくは以下を参照)。

世界最大手ECプラットフォーム「eBay」

世界最大手ECプラットフォーム「eBay」

そんななか、世界最大手ECプラットフォーム「eBay」の日本法人「イーベイ・ジャパン」が「小売・製造業者 海外展開支援プロジェクト」を開始。その第1弾として京都の伝統的工芸品などを紹介する特設ページ「Born in Kyoto」をeBay内に開設しました。

今回は、伝統的工芸品の業界の現状、そしてインバウンドや越境ECにおける取り組みなどをご紹介していきます。

 

「小売・製造業者 海外展開支援プロジェクト」第1弾「Born in Kyoto」とは

eBay「Born in Kyoto」特設ページ

eBay「Born in Kyoto」特設ページ

イーベイジャパンが主導する「小売・製造業者 海外展開支援プロジェクト」とは、現在増加する方に外国人観光客のインバウンド需要を越境ECに転換することを目的としたプロジェクトです。

プロジェクトにおいては、日本の伝統的工芸品などを扱う製造業や小売業が「eBay」を利用して越境ECを通じた海外展開をすることを支援していきます。

その第1弾として選ばれたのが、扇子や着物といった日本の伝統的工芸品を買うなら?で即座に名前があがる「京都」で、eBay内に「Born in Kyoto」のページが作られました。

「Born in Kyoto」のビジネススキームはeBayの他、京都市など全5団体で構築

この「Boin in Kyoto」プロジェクトでは、eBay単体だけでなく4団体が協力して遂行していく模様。5団体について紹介すると、

  • イーベイジャパン
    • 世界最大規模のECプラットフォーム「eBay」の日本法人
  • フォネックス・コミュニケーションズ
    • ホームカラオケシステムやWEBコンテンツの制作・運営を手掛ける開発会社
  • PayPal Pte. Ltd(以下、ペイパル)
    • 世界最大規模のオープンデジタル決済プラットフォーム「PayPal」を運営
  • 独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下、中小機構)
    • ベンチャー・中小企業の経営や人材育成の支援を行う独立行政法人
  • 京都市・京都商工会議所
    • 京都の商工業の振興と地域社会の発展のために事業展開をしている商工会議所

です。それぞれの役割分担は、強みを活かしており、

  • イーベイ・ジャパン
    • 出品のプラットフォーム提供および特設ページによるプロモーション
  • フォネックス・コミュニケーションズ
    • 京都セラーの獲得および出品サポート(商品データ作成、翻訳)
  • ペイパル
    • ペイパル利用者に向けた本プロジェクトのメールによるプロモーション活動
  • 中小機構
    • 国内の中小企業が海外展開を行うための啓発活動ならびに各種支援
  • 京都市・京都商工会議所
    • 京都の中小企業が海外展開を行うための啓発活動ならびに支援

となっています。

 

なぜ今 伝統工芸品なのか:伝統工芸品の市場規模は最盛期の1/5まで減少

伝統工芸品を取り巻く状況は、現在あまり良いものとは言えません。経済産業省が2011年に発表した「伝統的工芸品産業をめぐる現状と今後の振興施策について」によれば、2009年度の生産額は、約1,281億円で最盛期の昭和50年代(1970年頃)の5000億以上と比較して約4分の1まで縮小し続けています。企業数も最盛期の3.5万件から半減以下の1.5万件、従業員数も約1/4減少して7.9万人まで減っています。

伝統的工芸品産業の生産額推移:経済産業省「伝統的工芸品産業をめぐる現状と今後の振興施策について(2011年)」より引用

伝統的工芸品産業の生産額推移:経済産業省「伝統的工芸品産業をめぐる現状と今後の振興施策について(2011年)」より引用

また、伝統的工芸品産業振興協会によれば、その後の2014年度においても、減少の歯止めは効かず、生産額は1,040億円まで減少。もはや最盛期の1/5まで減ってしまっています。それと並行して従業者数・企業数も減少しています。

2014年度の伝統的工芸品産業の生産額:伝統的工芸品産業振興協会より引用

2014年度の伝統的工芸品産業の生産額:伝統的工芸品産業振興協会より引用

しかしながらeBayでは日本の伝統文化系商品の取引額は400億

伝統工芸品産業が衰退した理由は、主に大量生産製品の台頭による需要の低下、後継者不足、日本人の生活様式の変化などがあると言われています。そのため、日本での内需がどんどん縮小しつつあるのが現状です。

そこで、伝統工芸品産業に見えた一筋の光明がインバウンド需要です。政府のクール・ジャパン戦略の主要コンテンツとしてプロモーションされたこと、お土産としての訪日外国人観光客による需要が増加しつつあります。

eBayの「Born in Kyoto」のプレスリリースによれば、

一方で、2015年度のeBayにおける伝統工芸品など日本の伝統文化に関わる商品の取引高は400億円に上り

とのことで、1,000億程度まで衰退してしまった伝統工芸品産業において、無視できない市場規模がそこにあります。

石川県でも伝統的工芸品の活路を海外に求めている

また、地方自治体が主体となって伝統的工芸品の活路を海外に見出す事例もあります。石川県は、伝統的工芸品の販路としてシンガポールへの売り込みを強化しているとのこと。

読売新聞の8月の報道によれば、

県内の伝統工芸品の生産額は昨年、北陸新幹線開業効果などで1990年以来、25年ぶりに前年を上回った。ただ、金額は268億円とピーク時の4分の1にとどまり、県は海外での販売強化に乗り出している。―読売新聞「伝統工芸品 海外に販路…シンガポールで模索」2016年08月16日

と、石川県においても生産額の減少があるとしており、販路開拓先としてシンガポールに活路を見出します。

特にシンガポールでは、昨年から有名セレクトショップで試験的に市場調査を行うなどして売り込みを図っている。事前調査ではインテリアとギフトの2分野への関心が高かったことから、来年1月に現地の高級家具販売店「ファンドリー」で商談会、高級会員制クラブ「タングリンクラブ」で会員を対象に工芸品を紹介する「石川フェア」を開催し、本格的な市場調査を行う。県は8月末までに参加事業者を選定する。―読売新聞「伝統工芸品 海外に販路…シンガポールで模索」2016年08月16日

と、シンガポールの富裕層を対象として、その販路を模索しています。

 

まとめ:伝統的工芸品、インバウンド需要で復興なるか

先述のとおり、伝統的工芸品産業は、大量生産製品の台頭による需要の低下、後継者不足、日本人の生活様式の変化などにより衰退の一途をたどっています。国としては、クールジャパン戦略に伝統工芸品を組み込んでいることからみても、インバウンド需要を利用して伝統工芸品産業の衰退に歯止めをかけたいものと見られます。

そんな状況の中はじまったeBayの「小売・製造業者 海外展開支援プロジェクト」第1弾の「Born in Kyoto」。民間主導の本プロジェクトで日本の伝統工芸品産業の復興なるか、今後注目を集めます。

 

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