2016年8月18日の株式会社電通によるニュースリリースによると、日本語教師養成講座ほか教育事業を行うヒューマンアカデミー株式会社および東京外国語大学の荒川洋平教授との共同で、産学連携の「やさしい日本語ツーリズム研究会」を発足すると発表しました。簡単に説明すると、「訪日外国人観光客を簡単な日本語を通じてもてなそう。」という試みの模様です。

 

既存のインバウンド対策における外国語対応への行き詰まり

訪日外国人観光客の増加により、実際のコミュニケーションや情報発信時などにおける、英語を軸とした外国語対応は急務となっています。しかし、現状を見ると少し行き詰まり感も否めない状況となっています。

半数がインバウンド市場獲得を今後の優先課題とみなすも未だに拭えない外国語への抵抗感 訪日外国人から不満の声も

 

NTTコム リサーチの調査によると、インバウンド市場獲得を今後の優先課題である回答が、48.5%となり、約半数を占める結果となりました。

さらに、市場を魅力的な市場と捉えている回答者も50.8%と過半数となる結果となりました。

約半数の人がインバウンド対策は今後の優先課題である、且つインバウンド市場は魅力的な市場であると認識していることがわかります。

 

 

 

それでは実際にビジネスマンはインバウンド対策に関して何を不安に感じているのでしょうか?

同データによると、インバウンド対策は優先事項である、尚且つ魅力的な市場であると認識している人が多数いるにもかかわらず、不安事項として最も多かったのが英語や外国語でのコミュニケーションという結果になっています。

 

 

 

 

さらに、観光庁によるデータによると、訪日外国人観光客が滞在中に不満に感じた点として、上位に挙がったものは外国語に関するものが多い結果になっています。

訪日外国人観光客からの不満の声、また日本人個人単位で見たときの外国語対応による不安感の拭えなさを見る限り、現在の対策には、若干の雲行きの怪しさを感じます。

 

 

「外国語」による訪日外国人観光客へのおもてなしから、「やさしい日本語」による訪日外国人観光客へのおもてなしへ。

そこで注目され始めたのが「やさしい日本語ツーリズム」です。「やさしい日本語ツーリズム」とは『訪日外国人観光客を簡単な日本語を通じてもてなそう。』という試み。YouTubeにて、この取り組みに関するプロモーション動画がアップされています。

先ほど挙げた外国語対応サービスへの行き詰まりから、「やさしい日本語ツーリズム」は現行の英語を主とした外国語対応サービスとは少し違った形でのインバウンド対策へとなりそうです。

「やさしい日本語」とは外国人にもわかりやすい簡単な日本語を指す

「やさしい日本語」とは、日本語を学ぶ外国人に対して、極力難易度の高い表現、単語を排除してわかりやすく表現する技術のことです。「日本語教師」の基本スキルの一つにもなっています。これまでも国内に住む外国人を対象にした防災対策などにあたって研究・実践が行われてきました。

左の画像は2016年に発生した熊本地震において実際に使用されたものです。この画像自体は「エコノミークラス症候群」の注意喚起を行うものです。

外国人にとってこういった注意喚起を複雑な日本語で理解することはとても難しいことです。通常、今回の例であれば「長時間」「血流」「死に至る」など難しい言葉が使われることが多い傾向にあります。しかし、「長い時間」「血」「死ぬ」などやさしい日本語を使用することによって、難解な日本語を使用する必要がなくなります。

なるべく簡単な単語を並べることにより、要点を抑え、シンプルに伝えることができるため、こういった防災対策にも使われているのです。

 

 

既存の外国語対応へのインバウンド対策とは一線を画すシステム

今回の会の発足は、この「やさしい日本語」を通じて、新たな観光におけるインバウンド対策を提言していこうという流れの様です。

今回のニュースリリース上では

今回の研究会ではこれ(やさしい日本語)を観光分野におけるコミュニケーションに転用し、自治体や観光・商業施設などに向けた、新しい訪日観光客対応の提言活動を行っていきます。ー電通、産学連携の「やさしい日本語ツーリズム研究会」を発足― 日本語を話したい外国人観光客を「やさしい日本語」でおもてなしする ― :電通ニュースリリースより引用

と記述してあり、「やさしい日本語」を新たなインバウンド対策へのツールとして広めていく活動をしていくことが読み取れます。

柳川市推進の「日本語ツーリズム」が発足の背景に:台湾、韓国など日本語学習者の多い国からの訪日外国人観光客誘致ツールとして特に地方都市で有効か

今回のこの研究会の発足の裏には、福岡県柳川市の「日本語ツーリズム」が、政府が掲げる「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の交付金対象事業となったという背景があります。

2015年10月にリリースされた観光庁によるデータによると、訪日韓国人観光客、訪日台湾人観光客、訪日香港人観光客は、東京、大阪など大都市圏ではなく地方の観光を比較的好む傾向があることがわかります。

データを見ると地方のみを観光した上記3国出身者の割合はそれぞれ49%、35%、35%と他国の訪日外国人観光客の割合と比べると高い結果となっています。

上記3国出身者は、比較的日本語学習者が多い傾向にあります。その背景を利用し、柳川市ではとくに日本語を話す訪日台湾人観光客にターゲットを絞り、日本語でたくさん話してもらう「日本語ツーリズム」を推進していく方針を掲げました。これを同研究会が産学連携でこの試みをバックアップする形で支援し、他の自治体にその動きを広げる活動を推進することになったのです。

 

 

まとめ:日本語学習者の多い国からの訪日外国人観光客への新たなインバウンド対策:特に地方で有効か

外国語対応へのインバウンド対策として今までであれば英語や中国語をはじめとする主要外国語によるものが一般的でしたが、これからはニーズに応じて日本語を取り込んでいく、そんな試みもおもしろいのではないでしょうか?

 

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