先週10月13日、タイのプミポン国王(ラーマ9世)が死去したことで、訪日タイ人観光客市場が暫くの間低迷することが見越されます。タイのプラユット首相は、「娯楽活動は30日自粛せよ」との演説発表をしており、服喪期間は1年間とされています。そのため、10月および11月はおろか、来年の訪日タイ人観光客の最大観光シーズンであるソンクラーン(3月から5月頃)も低迷の見通しです。

そこで困るのが、代替市場の選定です。今回はタイの代替市場としてのシンガポールとマレーシアの解説していきます。

 

訪日タイ人観光客の代替市場としてのシンガポールとマレーシア

訪日タイ人観光客の代替市場となりうるのは、訪日外客数や成長スピード、言語対応の容易さなどを考慮するとシンガポール+マレーシアです。タイとは文化・国民性や言語も違いますが、同じく東南アジアの注目成長市場であり、両国を合算するとタイ市場と同等ないしタイ以上の市場規模となります。

シンガポール+マレーシアの成長スピードはタイ以上

まずはタイ、シンガポール、マレーシアの、ここ数年の訪日外客数の推移を見ていきましょう。

タイ、シンガポール、マレーシアの訪日外客数推移

タイ、シンガポール、マレーシアの訪日外客数推移

2016年の訪日外客数については、10月以降は、2016年1月から9月までの伸び率の平均から算出しています。また、訪日タイ人観光客の外客数は、プミポン国王死去のショックを加味し、10月以降は各月前年比-20%成長としています。

マレーシアはタイ同様、2013年7月から観光またはビジネス目的の短期滞在の場合はビザが免除されました。このビザ緩和の影響があり、2013年上半期から2014年上半期の外客数は62.5%(タイは63.8%)と、急激な成長を遂げています。ビザに関して言えば、シンガポールの相互ビザ免除はここ数年のことではないので、シンガポールはビザ免除による影響などはありません。

タイ、シンガポール、マレーシアの1人あたり訪日旅行消費額比較

タイ、シンガポール、マレーシアの1人あたり訪日旅行消費額比較

また、1人あたり旅行消費額から見る市場規模も見逃せません。2015年の訪日タイ人観光客の旅行消費額は1人あたりおよそ15万円ほど。訪日マレーシア人観光客もほぼ同額で15万円ほどですが、訪日シンガポール人観光客は19万弱になります。

タイ、シンガポール、マレーシアの訪日旅行消費額比較

タイ、シンガポール、マレーシアの訪日旅行消費総額比較

訪日外客数は訪日タイ人観光客と、訪日シンガポール人観光客+訪日マレーシア人観光客でほぼ同数であることを考えると、その旅行消費額の規模は、訪日シンガポール人観光客+訪日マレーシア人観光客の方が大きくなります。

言語対応が比較的簡単

タイ語(タイ文字)はタイのみで使われている言語であり、他の国では使われていません。もちろんシンガポールやマレーシアでも使われていないので、言語対応の使い回しは出来ません。

しかしながら、シンガポールは公用語として、英語、マレーシア語、中国語普通話、タミル語が使われており、またマレーシアではマレーシア語と準公用語として英語が使われています。そのため、言語対応としては英語と中国語普通話、可能であればマレーシア語を対応すれば、両国の言語対応は可能です。

英語と中国語はインバウンドでの言語対応として最初のステップといえるので、使い回しが効くほか、既に対応済みの場合は、新たなコストとなりません。

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集客時期は異なる

また、訪日タイ人観光客と異なる点として、外客数のピークを迎える時期、つまり集客時期があります。

訪日タイ人観光客の年間外客数推移

訪日タイ人観光客の年間外客数推移

訪日タイ人観光客のピークは3月から5月にかけてのソンクラーンの時期です。この時期は、夏休み(タイは熱帯モンスーン気候のため「夏」の時期が日本と異なる)とタイ正月があり、タイ国内でもっとも観光需要が高まる時期です。

訪日シンガポール人観光客の年間外客数推移

訪日シンガポール人観光客の年間外客数推移

訪日シンガポール人観光客のピークは冬の11月から12月ごろに迎えます。学校の学年末休暇、および企業の年末休暇、そして雪需要からの外客数の高まりだと考えられます。

訪日マレーシア人観光客の年間外客数推移

訪日マレーシア人観光客の年間外客数推移

訪日マレーシア人観光客は、訪日シンガポール人観光客とほぼ同様の推移を見せており、やはり年末に最大の需要を迎えます。

訪日シンガポール人観光客および訪日マレーシア人観光客を合算した年間外客数推移

訪日シンガポール人観光客および訪日マレーシア人観光客を合算した年間外客数推移

そのため、日本人の国内旅行需要を避ける格好での集客推移を見せているため、シンガポールとマレーシアをターゲットとすることは、季節による売上変動の補填の役割も見せる可能性があります。

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まとめ:タイの代替市場としても、シンガポールやマレーシアは今後注目の市場

タイだけでなく、東南アジア地域の市場が、ビザ緩和、円安などの要因を背景に急激な伸びを見せています。プミポン国王の死去の影響で、タイ市場が低迷する可能性がある以上、早めに次のターゲットを選定したほうが良いでしょう。

そこで、注目すべきはシンガポールとマレーシアです。言語対応に新たなコストがかからないことや、市場規模(外客数・旅行消費額総額)でタイとほぼ同様であることなどから、注目の市場です。

まだ、タイ国王死去のインバウンドビジネスへの影響は数値には出ていないので、今後のJNTOなどの発表には注目ですが、同時に他の東南アジア地域にもアンテナを広げると良いでしょう。

 

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