訪日外国人観光客による周遊旅行の拡大を目的に、テーマ、ストーリー性を持った形で観光ルートをまとめ、海外へ積極的な発信を行う「広域観光周遊ルート形成促進事業」。広域観光周遊ルートとして認定された地域は官公庁の支援が受けられるようになり、訪日外国人観光客の集客に向けた集中的な施策が実施されます。

広域観光周遊ルートではモデルコースに加え、ターゲット層、ニーズなどが詳細に想定されており、その地域の事業者には非常に大きな影響があると思われます。今回は昨年2015年に制定された7つのルートについて見ていきましょう。

広域観光周遊ルートで、地域はどう変わるのか

広域観光周遊ルート形成促進事業を行っているのは、観光庁。観光ルートのテーマやターゲット層、モデルコース、主要交通施設などの案を、国土交通大臣に申請し認定を得ます。平成27年(2015年)6月12日に北海道、東北、四国地方などで全7種のルートが認定され、平成28年(2016年)にも追加募集が行われました。6月中に認定の可否が発表される予定です。

認定基準は、コンセプトとニーズの合致、国際競争力を持ち、集客の核となる広域観光拠点地区があること、適切な数値目標、実施計画が設定されていることなど。認定されると、日本政府観光局(JNTO)、関係省庁などが事業の一部費用を負担してくれます。また、関係省庁の施策が集中的に行われ、海外への積極的な情報発信も実施されます。

支援が得られる期間は上限で5年間。その後も事業存続できるように産学官間の協力のほか、文化、農林漁業、交通など多岐にわたる分野で連携を図るべきだとされています。また、多言語表記、無料ワイファイ(wi-fi)、外国人観光案内所などの充実化を図る、交通アクセスの円滑化に努めるべきだとされています。

観光地としての魅力づくりに向け、さまざまな取り組みが並行して行われる広域観光周遊ルート形成促進事業。その地域の事業者には大きな影響があると思われますが、実際にはどのようなルートが存在するのでしょうか。2015年に認定された7つのルートを確認していきましょう。

アジアの宝 悠久の自然美への道 ひがし 北・海・道

北海道の魅力は、やはり豊かな自然

北海道の魅力は、やはり豊かな自然

北海道を周遊する観光ルート。北海道の自然を中心としたモデルコースが設計されています。

モデルコース

  • Explore the Wonderland in summer
    • 紫一色のラベンダー畑がある「ファーム富田」(中富良野町)など、夏の北海道の自然を満喫できる
  • Explore the Wonderland in winter
    • 流氷の上を行く流氷ウォーク(網走市・斜里町)など冬の北海道の自然を満喫できる

最重点市場は、北海道の訪日外国人観光客数の31%を占める訪日台湾人観光客。これに次ぐ重点市場は、個別手配、個人向けパッケージを利用した個人旅行者の多い訪日香港人観光客、訪日タイ人観光客です。交通機関の利便性の改善などにより、さらなる集客が期待できるそう。

日本の奥の院・東北探訪ルート

震災復興地域にも観光需要が

震災復興地域にも観光需要が

東北地方を中心に周遊する観光ルート。こちらも詳細は別記事で解説しています(東北地方の広域観光周遊ルートの特徴:日本海側、太平洋側の豊富な観光資源を活用:訪日ラボ)。こちらも

モデルコース

  • 四季が織りなす東北の宝コース
    • 蔵王温泉(山形県山形市)、角館(秋田県仙北市)など、四季折々の自然、文化などが楽しめる
  • 三陸の恵みと復興コース
    • 気仙沼漁港(宮城県気仙沼市)、平泉(岩手県平泉町)など。自然やグルメのほか、東日本大震災から復興した東北地方の様子も見ることができる
  • 日本海の美と伝統コース
    • 村上の鮭文化(新潟県村上市)、潮瀬崎のゴジラ岩(秋田県男鹿市)など。日本海側特有の文化や海岸美を見ることができる

休暇取得の自由度が高く、比較的長期間の個人旅行者が多い北米からの訪日外国人観光客、東北の桜、紅葉が見頃になる時期と旅行シーズンが合致する訪日タイ人観光客などを最重点市場としています。また、海鮮料理には宗教上の禁忌が比較的少なく、イスラム教徒の多い訪日マレーシア人観光客、訪日インドネシア人観光客のニーズも想定。

昇龍道

長野県松本市の松本城

長野県松本市の松本城

中部地方を中心に周遊するルート。欧米、富裕層などからのニーズが見込める歴史ある観光スポットから、グルメや温泉、自然まで多彩な観光資源があるのが特徴です。

モデルコース

  • Dragonコース《伝承空間への誘い》
    • 下呂温泉(岐阜県下呂市)、飛騨酒蔵(岐阜県高山市)など。伝統文化、自然、グルメなどがトータルに楽しめる
  • Nostalgicコース《「日本の心・ふるさと」お伊勢参りと世界遺産を巡る旅》
    • 松本城(長野県松本市)、「伊勢神宮」(三重県伊勢市)など。世界遺産が見られるほか、サムライ文化の体験も
  • Great Natureコース《大自然の醍醐味アルペンと古代探訪の旅》
    • 3000メートル級の山々が連なる道のりで、養老の滝(岐阜県養老郡)、琵琶湖(滋賀県長浜市など)などを観光
  • Ukiyo-e コース《サムライ文化・伝統技術リアル体験》
    • 関ヶ原古戦場(岐阜県不破郡)、富士山(静岡県静岡市ほか)など。東海道沿いを移動し、近世日本の文化を見てまわる

モデルコースによって最重点市場は訪日中国人観光客、訪日台湾人観光客、訪日米国人観光客とさまざま。アジアから欧米まで幅広く、訪日外国人観光客を呼び込みます。

美の伝説 THE FLOWER OF JAPAN,KANSAI

日本海海岸に広がる鳥取砂丘

日本海海岸に広がる鳥取砂丘

近畿地方を主体とした周遊観光ルート。長い歴史を持つ建造物が多い地域で、四季折々の自然も楽しめます。

モデルコース

  • KANSAI~世界遺産と絶景 伝統と自然の美の競演 ~
    • 清水寺(京都府京都市)、鳥取砂丘(鳥取県鳥取市)などの絶景、世界遺産を楽しめる
  • KANSAI~日本の精神文化の聖地 美の伝承~
    • 仁徳天皇陵古墳(大阪府堺市)、東大寺(奈良県奈良市)など日本の歴史、文化、自然を体験できるスポットが中心

前者では日本食や自然に関心度の高い訪日中国観光客、訪日タイ観光客を、後者では日本の歴史、文化に関心度の関心度の高い欧州、北米からの訪日外国人観光客をターゲット層にしています。

せとうち・海の道

中国地方南部、四国地方北部の瀬戸内海沿岸地域を周遊するルート。

モデルコース

  • 新ゴールデンルート~新たな西日本発見の旅
    • 厳島神社(広島県廿日市市)、多島美(瀬戸内7県)など自然と匠の技を感じられる
  • 歴史と芸術に出会う美のルート
    • 大山祇神社(愛媛県今治市)、直島(香川県直島町)周辺など瀬戸内の歴史や伝統美、現代アートが堪能できる
  • 空と島と海に溶け込むサイクリングルート
    • しまなみ海道(広島県尾道市・愛媛県今治市)、オリーブ公園(香川県小豆島町)などでレンタルサイクリングが楽しめる

アジアからの航空機が着陸する福岡県に近い瀬戸内は、以前からアジアからの訪日外国人観光客に人気のあるエリア。サイクリング人気の高い台湾、アウトドアレジャー人気のある韓国、タイに加え、歴史や伝統に高い関心をもつ北米、欧州、豪州の訪日外国人観光客からのニーズも狙います。

スピリチュアルな島 ~四国遍路~

干潮時だけ海の中から現れるエンジェルロード

干潮時だけ海の中から現れるエンジェルロード

お遍路で知られる四国地方の周遊ルート。豊かな自然、グルメ、文化体験などが強みです。

モデルコース

  • 四国スピリチュアル・コース
    • 小豆島八十八ヶ所霊場(香川県小豆島町・土庄町)、日本最古の道後温泉本館(愛媛県松山市)など。1200年の歴史を持つお遍路と食、自然を楽しめる
  • 四国鉄道クラシカル・コース
    • 丸亀城(香川県丸亀市)、四万十川遊覧船(高知県四万十市)などを巡る鉄道の旅
  • 四国大自然ドライブ・コース
    • 鳴門うず潮(徳島県鳴門市)、エンジェルロード(香川県小豆島町・土庄町)などをドライブでまわる

四国の全鉄道が利用できる「ALL SHIKOKU Rail Pass」やタクシー、レンタカー利用者を想定しているのが特徴。「四国スピリチュアル・コース」は、日本の歴史に関心の高い欧州からの訪日外国人観光客がターゲット層です。鉄道、自動車を使った旅行を前面に打ち出した「四国鉄道クラシカル・コース」「四国大自然ドライブ・コース」は、訪日台湾人観光客、訪日香港人観光客などアジアを主な市場として想定します。

温泉アイランド九州 広域観光周遊ルート

日本有数の火山、桜島

日本有数の火山、桜島

豊かな自然、欧州ではなかなか見る機会のない火山を持つ九州地方の周遊ルート。

モデルコース

  • 鉄道・バスで廻る九州の魅力満喫コース
    • 公共交通機関を使い、嬉野温泉(佐賀県嬉野市)、太宰府天満宮(福岡県太宰府市)などを巡る
  • 九州の歴史・自然をレンタカーで廻るコース
    • 自動車で平和公園(長崎県長崎市)、えびの高原(宮崎県えびの市)など九州に点在する歴史、自然の感じられるスポットを巡る
  • 火山の島・九州一周コース
    • 桜島(鹿児島県鹿児島市)、雲仙温泉(長崎県雲仙市)など。欧州には少ない火山や、そのおかげでできた温泉地を巡る

四国地方同様、九州地方も鉄道やレンタカーなどを使用したモデルコースを設計。「九州の歴史・自然をレンタカーで廻るコース」ではレンタカーを使った旅行に抵抗のないシンガポール、香港、韓国などからの訪日外国人観光客のニーズを見込んでいます。「火山の島・九州一周コース」ではイギリス、フランス、ドイツといった欧州からの訪日外国人観光客の需要を想定。

まとめ:それぞれの地域に、それぞれの需要を持つ訪日外国人観光客

訪日外国人観光客を呼びこむと一口に言っても、地域によって売りやニーズは大きく異なります。個々の飲食店、観光業者レベルで見た場合、移動手段の違いも売上に影響してくるのではないでしょうか。

2016年6月頃に、新しい広域観光周遊ルートが認定される予定です。少なくとも向こう数年にわたって、事業に大きな影響を及ぼすと思われるので、こちらもチェックしておきたいところです。

 

訪日ラボをフォローして
最新情報を受け取る

インバウンド最新情報をお届けします。

これ以上前の記事はありません…