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ICP登録をしないとどうなるか

訪日中国人観光客の市場をターゲットしたウェブサイトを構築する場合、中国に法人をつくり、サーバー、ドメイン等の情報を取り揃え、ICP(Internet Content Provider」)登録を行うというのが正攻法であることを前編でご案内させていただきました。

中国(香港除く)へサーバー移転もしくは新規開設をする場合は、「インターネット情報サービス管理弁法」という法律にしたがい、法人・個人を問わず、すべてのサイトにおいてICP登録が必要となります。そして、交付された「ICP登録番号」については、公開するウェブサイトのトップページ底部分に記載することが求められているのです。

一方、中国に未進出の企業が国際ドメイン(「.com」)でサイト運営する場合でも、中国のドメイン会社で登録したほうがアクセススピード等の点で有利であることを指摘させて頂きました。「正攻法」を諦めたとしても、どんな制限事項があるかを知り、その環境のなかで何が可能なのか、よりベターな方策は何かを探っていくのが望ましいあり方だといえます。

ICP登録を管轄しているのが、中国工信部(中国工業および信息部)という政府機関であり、日本の経済産業省に相当します。

工信部が厳禁としているのがギャンブルやアダルト、さらには「法輪功」に代表されるように政治的見地から当局がタブーと見なしているものです。これらは、中国のサーバーを使って運営することはまず許されません。

一方、これも前編で触れさせていただきましたが、新聞・出版・テレビ・文化・教育・医療・薬品ジャンルのサイトには事前審査を必要としており、これに通らないことにはICP登録まで進むことができません。そのほか、サイト内部で決済機能を持たせるなどのショッピングサイトを開設する場合、今度は「経営性ICPライセンス」というものが必要となります。

なお、中国進出企業がICP申請を行っていなかったり、登録番号の記載がないサイトを公開してしまった場合、どうなるでしょうか。

まず、当局から配信停止命令を受け取ることになり、開いたページには閲覧ができないことを示すエラーが表示されるようになります。その後、登録が正常に済まされるなどすれば再び正常に表示されることもあるでしょうし、場合によっては罰金だけでは済まず、運営サイトの停止やサーバーの没収、ホスティング企業との取引禁止といった厳しい措置が講じられることさえあります。

それゆえICPに関わる事前、事後対応は念入りにしておくのに越したことはありません。未申請や申請情報の不備、それに当局の方針にそぐなわない内容のサイトはネットパトロールによって容易に突き止められると解したほうがよいでしょう。

バイドゥ(百度)でのサイト登録

バイドゥ(百度)でのサイト登録

バイドゥ(百度)でのサイト登録

かりにICP登録をしていなくても、留意しておいたほうがよいのがバイドゥ(百度)のサイト登録です。以下のURLにある「链接(リンク)提交」から申請ができ、バイドゥ(百度)に新しいサイトの存在を知らせることができます。

登録作業によって、検索で必ずしもヒットしやすくなることが保証されるというわけでもありませんが(ご丁寧にも画面にはそのような但し書きがされています)、中国SEO対策のはじめの一歩として、チェックしておきたい手続です。

バイドゥ(百度)サイト登録:http://zhanzhang.baidu.com/linksubmit/url

ちなみにバイドゥ(百度)は、中国版Googleと呼ばれる検索エンジンです。中国には他にも「搜狗」や「360」などの検索エンジンがありますが、8割以上の市場シェアをバイドゥ(百度)が占めており、「バイドゥソウソウBaidu Sousuo」といえば日本語で「ググル」という意味に匹敵します。

バイドゥ(百度)は検索エンジンのほかにも、百度地図(マップ)、百度音楽(ミュージック)、百度応用(アプリストア)、百度新聞(ニュース)、百度IME・Simeji(入力ツール)といったように、Googleが提供するサービス全般をあたかも中国向けにローカライズしたかのようなラインナップを用意しています。

ただ、さまざまな商品においてGoogleとの差異は見られ、ベースとなる検索エンジンについても、自然検索結果のエリアに多くの広告が含まれるなどの違いがあります。

なお、バイドゥ(百度)は同社の日本法人を通して、リスティング広告やアドネットワーク広告、ブランドリンク広告等のセールスを行っています。

「魏則西事件」で非難を受けたバイドゥ(百度)

バイドゥ(百度)の検索結果に多くの広告が含まれ、それが自然検索との区別が曖昧となっていたことは、かねてから問題視されてました。

そして、同社が広告費という“賄賂”を受け取って検索順位を上げていたという疑惑が現実のものとして露わになったのが、「魏則西事件」でした。

これは、今年4月12日、西安電子科技大学の魏則西という学生が滑膜肉腫で亡くなる前にネットで訴えた告発によって問題が拡大した事件です。

簡単に経過を説明すると、魏青年が罹患した滑膜肉腫という病気は数十万人に1人の割合で発症する、極めて稀有な悪性軟部腫瘍です。

絶望の淵にあった魏青年とその両親が光を見出したのが、バイドゥ(百度)検索で見つけた滑膜肉腫に関する専門病院でした。名称を「武装警察北京市総体第2病院」といい、外見からして武装警察の系列かと見紛う同病院は、米スタンフォード大学との間で華々しい共同研究の成果として「生物免疫療法」(DC-CIK)があることや、その治癒効果が80〜90%あることをアピールしていたのです。

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「人として最大の『悪』は何か?」と題し、医療過誤事件を告発した魏青年

そこで魏青年の両親は20万元(約340万円)以上を血族や友人か集め、末期症状にあった魏青年の治療を同病院に託します。しかし、4回の治療を経ても効果はなく、腫瘍はついに肺へ転移し、容態は悪化、4月12日、魏青年はついに帰らぬ人となったのでした。

じつは魏青年は生存中、「武警第2病院」が提供する「生物免疫療法」が嘘っぱちであることや、治療実績はおろか同病院がスタンダード大と提携があることも嘘であり、また武装警察とも関係がなく、単に名義借りであることを突き止めていました。そして、この事実を魏青年がネット上で明らかしたため、大きな社会問題となったのです。

「武警第2病院」の背後にある、「莆田系」と呼ばれる医療機関についての説明は省きますが、バイドゥ(百度)がこの「莆田系」から多額の広告費を受け取っていたことは公然の事実となっています。そして、バイドゥ(百度)は、ネットユーザーが「生物免疫療法」を検索すると、常に「武警第2病院」が上位にランクされるように操作していました。魏青年の不幸な事件は、こうしたバイドゥ(百度)のスキャンダルを白日の下にさらしたのでした。

この事件を受けて、さまざまな政治的なしがらみもあり、とくに批判を浴びることになったバイドゥ(百度)はその後、改革に着手します。

ローカルメディアの報道によると、5月17日より、バイドゥ(百度)の検索結果のページには、広告に関わる項目については全て「商業推広(PR)」の文字を添えるようにするなど、自然検索によるものと視覚的に区別ができるようにしています。

そして5月23日から、全ての検索ページで商業広告に関わるものが占める比率が30%に収まるように制限を加え、さらに、医療、薬品、健康用品、食品といった4業界についてはとくに厳格な審査制度を採用する方針を明らかにしたのでした。

以上、見てきたように、日本にいながら中国SEOに取り組むことが至難の業であることは容易に察することができるでしょう。

また、バイドゥ(百度)をめぐるスキャンダルは、中国でサイト対策に取り組むうえでの啓示にもなるのではないでしょうか。

いずれにせよ、中国が日本とは異なる社会主義という体制下にあることは十分に留意しておく必要があります。

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