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「日本に来てみたら印象がガラリと変わった。日本は素晴らしい。」といった中国人のコメントをメディアなどで見かける機会が多くなりました。もちろん、インバウンドが盛り上がるなか、その勢いに加勢する形での報道であることもあるでしょうが、やはり訪日中国人観光客数の激増によって「中国国内でイメージされる日本ではなく、自分が見た本当の日本の姿」を目の当たりにしたことが大きいのでしょう。

今回は、何故中国人の日本への印象が変わりつつあるのかを、訪日中国人観光客数の推移、そしてその背景にある近年の日中関係から見ていきましょう。

 

訪日中国人観光客数の推移と日中関係

2003年から2016年の訪日中国人観光客数推移

2003年から2016年の訪日中国人観光客数推移

インバウンド関連ニュースで繰り返し報道されていますが、訪日中国人観光客は激増の一途をたどっています。JNTOの国籍/月別訪日外客統計は2003年から公表されており、その訪日中国人観光客数の推移をたどると、2008年に100万人の大台に乗り、2014年からは爆買いならぬ「爆増」をしていることが表からも読み取れます。

2004年から2012年は日中関係が最悪だった

2014年以降の激増快進撃以前、訪日中国人観光客数は微増傾向にとどまっています。これは、2004年から2012年にかけて日中関係が最悪であったことが影響していると考えられます。

2004年は尖閣諸島問題が噴出します。中国人活動家が魚釣島に上陸し、出入国管理法違反で逮捕されたニュースは記憶にある方も多いのではないでしょうか。

中国人活動家が魚釣島に上陸したことを伝える当時の報道:asahi.com

中国人活動家が魚釣島に上陸したことを伝える当時の報道:asahi.com

2005年から2006年にかけては小泉元首相の靖国参拝をめぐり反日デモが多発し、今まで目立った動きを見せていなかった上海においても反日デモが行われ、日本大使館や日本料理店が投石被害を受けます。

そして2008年にはチベットでの暴動が起こり、中国国内政情が不安定化するも、日中関係は平行線をたどります。しかしながら2010年に発生した尖閣諸島での中国船衝突事件、そして日本政府の尖閣諸島3島の国有化をめぐり、2012年まで反日デモが活発になります。

特に2012年の反日デモは最大規模のデモとなり、パナソニックなどの日本企業工場や日系スーパー、トヨタや日産の販売店、そして路駐された日本車などが襲撃にあい、壊滅的な被害を受けます。

2014年以降の訪日中国人観光客激増の理由は円安・ビザ緩和、LCC

しかしながら2014年に事態は一変します。2013年末の安倍首相の靖国参拝で日中関係の再悪化が心配されたものの、政府間での問題提起のみとなり、反日でもなどの民間を巻き込んだ問題にまで発展せず、2014年からは訪日中国人観光客が激増し始めます。

為替相場の訪日外国人観光客1人あたりの旅行支出額への影響

為替相場の訪日外国人観光客1人あたりの旅行支出額への影響

この年、2014年(平成26年)頃から為替相場が元高円安傾向となり、中国人にとって訪日旅行がしやすい状況になります。2015年(平成27年)には円安がさらに進み、その他2010年のビザ緩和、このころのLCC(格安航空会社)線が増便したことも寄与し、現在までの激増に続きます。

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最近の中国人の日本のイメージは好転

2012年までの靖国・尖閣諸島問題による日中関係の悪化は、中国一般市民による大規模反日デモに発展するまで至りました。しかしながら、最近では一般の中国人の日本のイメージが一転。評価が急上昇しつつあります。

訪日旅行で本当の日本を知る:近年の訪日中国人観光客数は累計2400万人

やはり、評価の好転の理由は、前述の理由による訪日中国人観光客の激増と、それに伴う「本当の日本の姿を体感した中国人」の増加にあると考えられます。

近年の訪日中国人観光客数の推移を再掲しましょう。

2003年から2016年の訪日中国人観光客数推移

2003年から2016年の訪日中国人観光客数推移

JNTOの発表によれば、2003年から2016年にかけての累計訪日中国人観光客は累計2442万人にのぼります。前述の日中関係が最悪であった〜2012年までの累計は約936万人。そこからたった4年間で、「本当の日本の姿を体感した中国人」の数は2.6倍に及びます。

もちろん、リピーターの存在があるので、数値としては延べ数になるものの、訪日中国人観光客は初訪日割合が高いこともあり、増加率の観点から言えば2.6倍という数値は参考に値すると考えられます。

中国国内の主要メディアは、中国共産党政府の指導と管理の下に置かれていると言え、憲法上では言論の自由があるとされていても、実質的には共産党のいいなりであると言われています。また、オンライン上においても、Googleをはじめとした海外サービスを「金盾」でシャットアウトされているなどの情報規制により、一般中国人が、中国共産党のフィルターを通さない日本の姿を知ることは難しかったと言えます。

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中国人の日本に対するポジティブコメントを取り上げる報道が増加

しかしながら、2.6倍となった「本当の日本の姿を体感した中国人」がSNSなどに訪日旅行の感想を、日本に対するポジティブなイメージと共に投稿し始めます。体感した中国人、そしてその投稿を見た中国人が徐々に日本に対しポジティブイメージを持ちつつあり、その投稿を中国メディアや日本メディアがとりあげ始めている、というのが最近の報道の流れだと考えられます。

 

まとめ:ターゲットとする国と日本との外交状況も背景知識として持っておくべき

インバウンド対策に直結して役立つ情報とは言えないものの、やはりターゲットとする訪日外国人観光客の母国と日本の関係や外交史を把握しておくことは重要です。ベースの知識とすることで、国民性の理解や、訪日数の増減の背景を推し量る際に役立ってきます。

殊、今回取り上げた中国や、韓国といった「日本との外交関係が良好とは言えないもののインバウンド主要国となっている国」をターゲットとする際は、その対応に注意が必要となり、これらの外交背景をインプットしておくと良いでしょう。

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