入国制限緩和、なぜこの4か国?中国差し置きベトナム・タイ・豪・NZを優先させた理由は「感染状況」と「客単価」

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※2020年10月1日より限定的な範囲で全世界を対象に入国制限措置が緩和されています。

2020年6月18日に行われた新型コロナウイルスの政府対策本部で、日本政府は、ベトナム、タイ、オーストラリア、ニュージーランドの4か国との間で、入国制限緩和に向けた協議を進める方針を決定しました。

日本の入国拒否対象は、6月下旬現在、111か国・地域を数えます。今回の渡航制限の緩和が、なぜこの4か国から始まるのか、その理由について考察しました。

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政府の基本方針:4か国から、1日250人程度

安倍首相は6月18日の対策本部で「経済を回復軌道に乗せていく上では、国際的な人の往来を部分的・段階的に再開していくことも必要です」と発言しました。

そのうえで「感染状態が落ち着いている」ベトナム、タイ、オーストラリア、ニュージーランドの4か国との間で、入国制限の緩和に向けた協議を進めていくとしました。

また、その後の記者会見では、「ビジネス上の必要な往来から段階的に再開していく 」と述べ、ビジネス目的の往来に限定することを強調しています。

入国者は1日250人程度が想定されており、駐在員やビジネス関係の出張者、技能実習生らの入国を認めることが明らかにされています。

入国する空港を制限、自宅待機期間も

検疫体制が整っている成田、羽田、関西国際の3空港を使用する方針で、入国者はPCR検査による陰性証明などが求められ、到着時に空港で行うPCR検査で陰性と判断されれば入国が認められます。

入国者は、入国後も勤務先と滞在先の行き来のみに限定され、公共交通機関を使用することはできません。制限地域から帰国する日本人と同じように、技能実習生や駐在員などの長期滞在者は、入国後2週間は自宅などでの待機が求められます。

一方で政府関係者によれば、オーストラリアとニュージーランドは制限緩和に慎重な姿勢を示しており、台湾との間の緩和も視野に入っていることから、台湾の制限緩和が先行する可能性もあるということです。

4か国が優先された理由

日本政府は新型コロナウィルスの世界的な感染拡大を受けて、111か国・地域を対象に入国拒否を続けています。

数多くの国・地域の中から、なぜベトナム、タイ、オーストラリア、ニュージーランドの4か国が優先的に入国制限緩和に向けて協議が始まったのでしょうか。    

各国の新型コロナウィルスの感染状況や産業でのかかわり、観光庁による2019年「訪日外国人消費動向調査」で算出された、各国からの訪日外国人の一人当たり旅行支出や旅行消費額などを参考に考察します。

なお旅行消費額とは、一人当たり旅行支出に訪日外国人旅行者数を掛け合わせた数字になります。

ベトナム:コロナによる死者ゼロ・技能実習生・一人当たり旅行支出はASEANトップ

ベトナム国内の新型コロナウィルス感染者数は、6月23日時点で349人で、死者はゼロとなっています。海外からの渡航者を除くと、国内での新たな感染は2か月あまり確認されていません。

技能実習生という切り口で見てみると、2018年の技能実習計画認定件数は、ベトナムが19万件以上にとなっています。一昔前まで技能実習生の代表格であった中国は9万件弱にとどまっており、こうした点からも今回ベトナムが制限緩和の対象に入ったと考えることができるでしょう。

また観光という面からみると、2019年のベトナムからの訪日客の一人当たりの旅行支出は、17万7,066円とASEANの中では1位となっています。年間の訪日外客数は50万人未満ですが、2017年以降は25%程度の高い伸び率を記録しています。

観光目的の入国は現状解禁のスケジュールは示されていませんが、観光市場における重要性も加味された可能性はあるでしょう。

タイ:国内での新規感染者は約1か月ゼロ・自動車産業・旅行消費額6位

タイ国内の新型コロナウィルス感染者数は、6月24日時点で3,157人で、死者は58人となっています。

直近の新型コロナウィルスの感染者は海外からの帰国者のみとなっており、6月25日時点で、国内での新規感染者ゼロが31日連続を記録しています。

タイは、ASEAN の中でも特に製造業の一大集積地となっており、自動車産業にとって重要な生産拠点となっています。JETROの発表した2018年末時点の日本の対ASEAN向け直接投資の累計額では、製造業においてはASEAN諸国で最も大きな額となっています。

2019年のタイからの訪日客の旅行消費額は全体の第6位となる1,732億円で、前年比23.1%と、前年から大きく伸びました。訪日外客数も2018年に100万人を突破しました。

オーストラリア:広範囲の感染蔓延なし・ワーホリ・一人当たり旅行支出トップ

オーストラリア国内の新型コロナウィルス感染者数は、6月24日時点で7,492人で、死者は102人となっています。

国内での広範囲での蔓延は確認されておらず、行動規制や入国制限による感染拡大防止対策が行われています。

オーストラリアは日本のワーキングホリデー協定先であり、毎年1万件超のビザが発給されています。日本からのワーキングホリデービザによる渡航者はオーストラリアの現地産業にとって、重要な働き手であると考えられ、今回の渡航制限緩和によりこうした人々がオーストラリアへ渡航する可能性もあります。

2019年のオーストラリアからの訪日客の一人当たり旅行支出は全体の第1位で、24万8,000円です。オーストラリアからの訪日客全体の旅行消費額は、全国席全体で7位となる1,519億円であるものの、一人当たりの旅行支出は2位のイギリス、3位のフランスを上回っています。

ニュージーランド:厳しいロックダウンで感染封じ込め・ワーホリ人気国で3位

ニュージーランド国内の新型コロナウィルス感染者数は、6月25日時点で1,516人で、死者は22人となっています。ニュージーランドでは3月から75日間にわたる厳しいロックダウンを実施し、感染拡大の封じ込めに成功しました。

6月16日に海外からの渡航者が新たに感染が確認されたものの、それまで24日連続で新規感染者ゼロを達成しています。

日本とニュージーランドの関係においても、オーストラリア同様ワーキングホリデービザによる交流が長くあります。日本のワーキングホリデー制度は、1980年に始まったオーストラリアに次いで、1985年にニュージーランドとの間で始まりました。

日本ワーキング・ホリデー協会が実施したアンケートによれば、ワーキングホリデーの人気国は、オーストラリア、カナダに次いでニュージーランドが3位にランクインしています。

今回の入国規制緩和、「ビジネス目的」の色くっきりと

今回入国規制の緩和が優先された4か国については、感染状況が落ち着いており、両国の産業にとってなくてはならない存在となっていたことがわかります。

また、今回の入国規制の緩和方針は、「観光」ではなく、あくまで「ビジネス」目的に限定していますが、観光においても旅行消費額や一人当たり旅行支出が大きいなど、日本への影響が大きな顔ぶれになっています。

日本政府は、インバウンド市場では存在感の大きな中国や韓国、アメリカに対しては、同国内の感染状況がまだ安定しないとしてまだ協議を進めないとの情報が伝えられています。

同じくインバウンド市場の重要市場であり、感染拡大の封じ込めに成功している台湾については、6月15日には自民党が台湾との往来をすぐに再開するよう政府に求める決議案をまとめていました。ところが、まだ日本と台湾の間では、入国規制の緩和について合意に至っていません。感染状況が相対的に落ち着かない日本の状況を前に、台湾側が積極的には考えていない可能性もあります。

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<参考> 

毎日新聞:入国制限緩和、4カ国と協議 政府方針 滞在・勤務先限定、公共交通使えず

観光庁:訪日外国人消費動向調査2019年年間値(確報)~訪日外国人旅行消費額4兆8,135億円~

在ベトナム日本国大使館:新型コロナウイルス感染症をめぐる諸動向(最終更新:2020年6月23日)

PJA NEWS:タイ)本日新規感染者1人、帰国者 国内感染0は27日目に

JTBオーストラリア:オーストラリア コロナウイルス最新情報

NHK NEWS WEB:政府 入国制限の緩和方針決定 新型コロナウイルス

首相官邸:令和2年6月18日 新型コロナウイルス感染症対策本部(第38回)

首相官邸:令和2年6月18日 安倍内閣総理大臣記者会見

在ベトナム日本国大使館:新型コロナウイルス感染症をめぐる諸動向(最終更新:2020年6月23日)

newsclip:タイ、新型コロナ感染1人 フィリピンからの帰国者

Newsweek:新型コロナ「勝利宣言」のニュージーランドにも新規感染者

日本経済新聞:台湾との往来「即時再開を」 自民が決議案

外務省:ニュージーランド基礎データ

外国人技能実習機構:国籍・地域別 技能実習計画認定件数(構成比)

日本ワーキング・ホリデー協会 公式ブログ:2018年度版 ワーホリの人気国ランキング発表!

ITI調査シリーズ:タイ経済とメコン

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

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