インバウンドを「ブーム」で終わらせないために——「2030年6,000万人・15兆円」に向けた議論

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観光庁は6月20日、交通政策審議会観光分科会(第50回)を開催しました。2030年の目標「訪日客数6,000万人・訪日旅行消費額15兆円」の達成に向け、次期「観光立国推進基本計画」を定めるための現在のボトルネック・課題について議論されました。


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「6,000万人・15兆円」目標に向けたボトルネック・課題の整理

分科会では、「6,000万人・15兆円」目標の達成に向けたボトルネック・課題の整理について、観光庁観光戦略課長 河田敦弥氏から説明がありました。

これらは国土交通省および観光庁が管轄する「観光分野」と「交通分野」、さらに関係各省庁の管轄となる「その他の分野」の3つの項目に整理されています。

観光分野では、

  1. DMOにおける課題:資金や高い専門性を持つ人材、地域経営力等の不足
  2. コンテンツ・体験商品における課題:収益性やローカルガイド人材の不足
  3. 人手不足や生産性の低さ等の構造的課題
  4. オーバーツーリズム対策や災害時対応
  5. アウトバウンド促進における課題:地方部における相互交流の低迷等

の5つの課題が挙げられています。

観光分野におけるボトルネック・課題:観光庁資料より抜粋
▲観光分野におけるボトルネック・課題:観光庁資料より抜粋

交通分野では、

  1. 空港・港湾における課題:混雑緩和・受入環境整備や、空港までのアクセス整備
  2. 国内長距離移動における課題:在来線特急等の輸送安定性・速達性の不足や、国内航空ネットワークのさらなる活用
  3. 「観光の足」確保における課題:二次交通サービスや情報発信の不足、バス・タクシー運転者確保の困難化、クルーズ船のインバウンド未対応

の3つの課題が挙げられています。

交通分野におけるボトルネック・課題:観光庁資料より抜粋
▲交通分野におけるボトルネック・課題:観光庁資料より抜粋

そしてその他の分野では、

  1. 入管・税関手続きにおける課題:ピーク時の混雑等
  2. 自然資源を活用した観光振興における課題:国立公園等における受入環境整備不足等
  3. 文化資源を活用した観光振興における課題:ホンモノの文化体験の提供不足等

の3つの課題が挙げられています。

その他の分野におけるボトルネック・課題:観光庁資料より抜粋
▲その他の分野におけるボトルネック・課題:観光庁資料より抜粋

分科会委員による議論:インバウンドの好調を「ブーム」で終わらせないためには?

続いて分科会委員による意見・議論が行われました。各ボトルネック・課題については、「いずれも適切」「よく整理されている」など評価する声が多数となりました。

一方で、考慮されていない課題等について様々な意見が出されました。分科会臨時委員の株式会社松屋 取締役会長兼取締役会議長 秋田 正紀氏は、円安効果もあって好調であった百貨店免税売上高が、円高基調・中国の景気減速・トランプ関税の影響などにより3月以降前年を割っていると指摘。ショッピングは訪日目的として食に次ぐ位置を占めており、「ショッピングツーリズムの拡大は、今後の観光立国を推進する上で重要」だとして、一部で議論されている免税廃止論に対しては警戒感を示しました。

関連記事:百貨店免税売上“急ブレーキ”の背景は?各社の決算書から読み解く【数字で読むインバウンド需要のリアル】

分科会委員の弁護士 菊間 千乃氏は、オーバーツーリズム問題は「避けて通れない」と強調。6,000万人の目標について「本当に全国民に腹落ちできているのか」「バルセロナの暴動はショッキング。日本で起きないとは限らない」とした上で、受け入れる側(地域住民)の不満を減らすことと、「せっかく日本に来てもらったんだから満足して帰ってもらおう」というおもてなしの心が必要だと述べました。

分科会臨時委員の星野リゾート 代表 星野 佳路氏は、観光産業における健全な競争環境の確保、国内需要の分散・平準化、地方空港における国際線の赤字、宿泊施設に対する保健所の指導が統一されていない問題、空室転売のトラブル問題など様々な課題を挙げました。インバウンドについては「6,000万人を呼んだ後に、それを維持できるのか。今までスキーブーム、団体旅行ブームがあったが、ブームは終わってしまう」「(今の好調を)“インバウンドブーム”にしないためには、どうやってリピーターを確保するかが課題だ」との認識を共有しました。

また同氏は、宿泊税について「宿泊料金に価格が上乗せされるため、(市場の競争によって)結局は価格が戻り、地域の事業者が今の利益の中から負担することになる」恐れがあるとして、導入に慎重な姿勢を示しました。

そのほか、委員からは以下のような声が上がりました。

  • すぐに解消すべき問題と、緩和しつつ対処していく問題を分け、メリハリをつけて支援するべきではないか
  • DMOに事業としてのビジネスを求めているのか、公的な性格を求めているのか。スタンスによっても支援のあり方が変わるのではないか
  • 国際観光旅客税は日本人からも徴収している。国民への還元として、たとえばアウトバウンド支援への活用などを検討すべきではないか
  • 宿泊施設や観光業における価格のあり方、値付けの仕方を優先して対策すべきではないか
  • インバウンド対策においては情報発信が重要。SNSやインフルエンサーをうまく使えば人を動かせるが、日本はそこが弱い。地方誘客の観点からも、時間をかけて徹底的にやるべきではないか

「15兆円」の達成には消費単価の向上が不可欠、KPIとして盛り込む方針

さらに、2030年までの目標として掲げる「インバウンド6000万人・15兆円」の数字から計算すると、1人あたりの消費単価は25万円必要ですが、2024年実績では22万6,851円となっています。

今後必要となる消費単価の向上について、観光立国推進基本計画の中でどのように方針を示すのか。訪日ラボが観光庁 河田氏に聞いたところ、「最終的にはKPIを作ることになると思う。観光庁ではこれまで、高付加価値化に向けたモデル地域を設定して取り組みを支援してきた。一人あたり25万円をどういう形で達成するか、議論していく」と述べました。

なお、次回は7月25日に交通政策審議会観光分科会(第51回)が開かれ、観光立国推進基本計画の改定に向け、観光関係団体からの意見聴取が行われるということです。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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