訪日外国人観光客に対し、わさびを大量に入れた寿司を提供していたことから炎上した大阪府の市場ずし難波店。国内外のメディアで「人種差別ではないか」と報道され、物議を醸しました。

一時は公式サイトに謝罪文が公開されるほどの騒ぎになりましたが、1ヶ月も経たないうちに事態が収束。現在は日本人客で賑わっているといいます。なぜ、このような急展開が起こったのでしょうか。背景を調べてみると、市場ずしに責任を押し付けることのできないインバウンドビジネスの難しさがあることが分かります。「わさびテロ」と呼ばれた騒動の一連の過程をたどってみましょう。

 

「わさびテロ」騒動の発端は、Twitterユーザーの投稿

まずは騒動が発展していったプロセスをたどってみましょう。9月30日、韓国事情に詳しいネットユーザーが市場ずし難波店の情報をTwitterに投稿したことを発端に、Twitterまとめサイト「Togetter」などに記事が現れました。以前から一部のネットコミュニティでは人種差別的な店として周知されていたそうなのですが、そのことが日本語で書かれたことで一挙に広まっていきました。具体的には、従業員が以下のようなことをしていたと言われていました。

  • 「チョン」などの人種差別的な言葉を使う
  • 韓国などからの訪日外国人観光客に提供する寿司に大量のわさびを入れる
  • あまりの辛さで涙を流す姿を見て、従業員が笑う
  • わさびが多すぎることを伝えると「韓国人は辛いものが好きだからサービスした」と答える

市場ずしは10月2日、公式サイトに謝罪文を発表し、人種差別的な発言があったことについて「そのような事実は確認できなかった」と否定。わさびを多く入れていたことについては認めたものの、訪日外国人観光客から「ガリやわさびの増量の要望が非常に多いため事前確認なしにサービスとして提供」していた、と悪意がなかったことを説明しました。

この件は国内外のまとめサイトに留まらず、国内外のメディアが報道。はるばる韓国から来店し、謝罪を要求するTV関係者も現れました。Googleの口コミでは低評価の書き込みが増加したため、訪日外国人観光客の客足に大きく影響したのではないでしょうか。

 

一転して、市場ずしに同情的な見方が広まった理由

国際的に注目を集めた市場ずしの騒動はそれから数週間で収束。一転して同情的な報道が見られるようになり、日本人客に賑わっているといいます。なぜこのようなことが起こったのか、理由をあげてみましょう。

国土交通省の資料が、わさびの多用を推奨

国土交通省の手引ではわさびを大量に提供することを良しとしている:国土交通省 多様な食文化・食習慣を有する外国人客への対応マニュアルより引用

国土交通省の手引ではわさびを大量に提供することを良しとしている:国土交通省 多様な食文化・食習慣を有する外国人客への対応マニュアルより引用

国土交通省が平成20年(2008年)に公開した「多様な食文化・食習慣を有する外国人客への対応マニュアル」にわさびを大量に使うことを推奨する文言が見られたことから、「そもそも官公庁の指導が引き起こした結果なのではないか」と物議を醸しました。事実は分かりませんが、一般的な日本人が各国の食文化を網羅的に把握する難しさを考えると、このような資料に盲目的に従っていたとしても不自然ではないでしょう。具体的には以下のように書かれています。

中国:刺身を食べる中国人には、練りワサビをたっぷりと提供する方がよい(1回の食事で 1 本の練りワサビを使い切る人もいる)
香港、シンガポール:醤油にワサビを大量に溶かして食べることを好む

韓国では「わさび=ビタミン豊富」と認識されている

韓国では「わさび=ビタミン豊富な食材」という認識があり、実際に多用していたという話もあります。キムチをはじめとした韓国料理が辛いことはよく知られているにもかかわらず、日本人が「ネタの味が分からなくなるのではないか」と疑問視するほどの使いぶりだったといいます。

念のためにわさびの量を事前確認しなかったことは十把一絡げな対応と言わざるを得ません。しかし、わさびは決して安いことを勘案すれば、ある意味では気前のいい店だったのかもしれません。

本当はデマだった……?

日本に反感を抱く韓国人のデマだったのではないかという疑惑も現れています。証拠としてアップロードされていた画像を確認すると、わさびの様子が不自然だとされたためです。日本語、韓国語のテキストや画像を転載しながら情報が広まっていったので、真偽を確認することは極めて困難です。

また、韓国のニュースサイトが行った「わさびテロ」の被害者へのインタビューによれば、従業員は「犬が、ごはんほしいと言っている」と話していたとされています。日本ではこのような差別表現が存在しないことを考えると、おかしな内容です。

 

まとめ:インバウンドビジネスでトラブルを起こさないために

官公庁が発表した資料に従った結果なのか、訪日韓国人観光客の食文化に合わせようとした結果なのか、それとも、まったく根拠のないデマだったのか。真相は分かりませんが、いずれも訪日外国人観光客を対象とするインバウンドビジネスにはよくある落とし穴だと言ってよいでしょう。

このような騒動になり、評価が低下すると訪日外国人観光客の客足が落ちることが予想されます。市場ずしの事例からしっかりと学び、トラブルを回避したいものです。

 

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