米大統領選挙でドナルド・トランプ氏が対立候補であるヒラリー・クリントン氏を下し、勝利を収めました。選挙戦を通して、トランプ氏は米国第一主義を貫き通し、反資本主義・反グローバル主義の過激発言を繰り返しました。その影響もあり、トランプ氏の当選は世界中の経済に影響を及ぼしています。

 

トランプショックとは

トランプショックとは、11月9日に米大統領選の開票が始まり、その結果がトランプ氏優勢の情報が発表されるにつれ、トランプ大統領の誕生によるリスクヘッジの動きにより、世界の金融市場に大幅な変動が起こったことを言います。

開票が行われた9日、東京市場は米大統領選の影響を受け、トランプ氏優勢の同様を如実に表しました。日経平均は前日終値から1000円超下落しました。1000円超の下落を見せたのは、イギリスのEU離脱を決めた6月24日ぶり。

また、為替市場も大変動を見せ、ドルへの不安からドル売り円買いの傾向を見せ、1次は1ドル101円台までの高値を付けました。

インバウンドへの影響は?

インバウンドビジネスにおいて注目すべきは為替相場の変動です。先日10月19日、観光庁より発表された訪日外国人消費動向調査の平成28年7-9月期の結果において、訪日外国人旅行消費額が4年9ヶ月ぶりの前年同期割れで2.9%減少をしたことは記憶にあたらしいです。

為替相場と訪日外国人消費額の関係

平成28年7-9月期の訪日外国人消費動向調査の解説記事においても触れたとおり、円為替相場と訪日外国人消費額は切っても切れない関係にあります。

ドル円相場と元円相場は相関関係にあり、元円はドル円に反応して上下します。

ドル円と人民元円の為替相場

ドル円と人民元円の為替相場

また、訪日外国人1人あたり旅行支出額は、ドル円相場および元円相場に影響を受けます。

為替相場の訪日外国人観光客1人あたりの旅行支出額への影響

為替相場の訪日外国人観光客1人あたりの旅行支出額への影響

平成28年7-9月期の訪日外国人観光客1人あたり旅行支出額は、円高傾向の為替相場に影響を受け、前年同期割れをしたものの、現地通貨ベースにおいては、実は上昇傾向にありました。

訪日外国人1人当たり旅行支出(※現地通貨ベース):観光庁 訪日外国人消費動向調査より引用

訪日外国人1人当たり旅行支出(※現地通貨ベース):観光庁 訪日外国人消費動向調査より引用

よって、訪日外国人観光客のひとりひとりの消費意欲は上昇しており、また訪日外国人観光客数も増加しているため、いわば「見込み消費額」は増加しているものの、円為替相場によって、実際のインバウンドビジネスへの実入りは上下する、と言えます。

 

トランプショックの円為替相場への影響は?

それでは、トランプショックによる円為替相場への影響はどうなっているのでしょうか?

トランプショックによるドル円相場の動き

トランプショックによるドル円相場の動き

ドル円相場は9日、日本時間8時の開票を皮切りに大きな動きを見せます。9時半過ぎ、フロリダ州での「トランプ優位」報道あるやいなや、円買いが広まります。これは、トランプ氏の政策の不透明さから、短期的に政治経済が混迷をきたす恐れからのリスクヘッジの動きであり、円高が進行。

その後激戦区フロリダでの勝利、そして大票田のテキサス州でのトランプ氏の勝利が報じられると、1ドル101円台前半まで高騰し、あわや100円台突入となります。

トランプショックによる元円相場の動き(赤グラフが元円、緑はドル円)

トランプショックによる元円相場の動き(赤グラフが元円、緑はドル円)

元円相場はドル円に反応する傾向があり、今回のトランプショックにおいても、ドル円に追従する動きを見せています。元円為替相場の動きのグラフ(上図赤色)を、ドル円為替相場のグラフ(上図緑色)に重ね合わせると、ほぼ同様の動きを見せていることがわかります。

トランプショックを緩和したのは、トランプ氏の勝利演説?

しかしながら、当確後のトランプ氏による勝利演説が行われた16時ごろ、ドル安円高から一転して、ドル高円安傾向に復調し始めます。その要因は、トランプ氏の勝利演説の内容がショックを緩和する効果があったのだと考えられます。

トランプ氏の勝利演説の要点は以下の3つ。

1)すべての共和党、民主党の党員に対して、米国の国民として団結することを訴えたい。

2)すべての国と共通のグラウンドを持ち、良好な関係を築いていきたい。

3)高速道路・橋・トンネル・空港・学校・病院といった社会インフラを再建する。インフラ再建で何百万人の雇用を生み出したい。―東洋経済オンライン:大揺れ日本株!「トランプショック後」の行方

選挙戦中の過激な発言は影を潜め、前向きな「強いアメリカを作る」発言をしたこと、また景気回復の期待を匂わせる演説であったことが、金融市場に好感されたことにより、ドル円為替市場は逆転。反発もあってか、開票以前よりも円安ドル高傾向で落ち着きを取り戻します。

トランプ大統領就任後は円高ドル安傾向に注意?

トランプ氏が掲げる政策は、強いアメリカを作る「米国第一主義」をとっています。前回の訪日ラボでも解説したとおり、トランプ氏は、「他国にいい顔しているからアメリカが弱くなった」「強いアメリカを取り戻そう」「アメリカさえ良ければ良い」「他国がどうなろうと自国の景気、雇用率の回復が最優先」という主張をしています。

となれば、経済政策においては内需拡大、外貨獲得の動きが強くなることが見込まれ、ドル安路線を敷く可能性が高いものと思われます。そのため、トランプ氏が大統領就任する来年1月以降、円高ドル安、それに伴った円高元安、ひいては日本円ベースでの訪日外国人消費額成長の鈍化が考えられるため、来年以降の円為替相場には一層の注意が必要です。

 

まとめ:トランプ大統領誕生はインバウンドにはマイナスかもしれない

トランプ氏は、大統領選期間中は過激な発言が多く、米国第一主義を掲げ、大概強硬路線をしいていました。その政治経済政策には不透明なものも多く、経済的混乱を恐れたリスクヘッジからドル売りが進み、「トランプショック」と言える金融混乱が見込まれていたものの、勝利演説の「まともさ」から「トランプショック」も緩和、再び円安ドル高傾向に落ち着きを取り戻しつつあります。

勝利演説を聞く限りでは、選挙期間中ほどの強硬姿勢は鳴りを潜めており、協調姿勢・現実路線で行く様子も見られます。しかしながら、トランプ氏が支持を受けたもの、米国第一主義を掲げていたからであり、また、現状をなんとかしたいと考える支持者が多数存在していたからと考えられます。

そのため、今後の政策としては、ある程度現実的な路線をとりつつも、その主軸はやはり米国第一主義であるものと考えられ、インバウンドに影響を及ぼす為替相場においては、外貨獲得のためにもドル安路線がしかれる可能性が高いものと見られ、大統領就任後の来年1月以降の円為替相場には注意して見ていく必要があります。

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