2016年(平成28年)4月14日に発生した熊本地震。熊本県、大分県では建造物や設備が損壊し、九州地方全域で訪日外国人観光客の旅行キャンセルが相次ぎました。インバウンドビジネスに対して与える影響は大きく、震災後には訪日外国人を対象とする避難所の開設、緊急通訳ダイヤル(多言語コールセンター)の無償提供などが行われました。詳細はこちらの記事(熊本地震に見る訪日外国人への災害対応:訪日ラボ)からご確認ください。

地震から約2ヶ月経った現在は、どのような状況になっているのでしょうか。今回は訪日外国人観光客数の動向、政府の対応などをご紹介します。

 

熊本地震が発生した4月の訪日外国人観光客数

熊本地震は、訪日旅行にどのような影響をもたらしたのでしょうか。日本政府観光局(JNTO)が発表した2016年4月の訪日外国人観光客数に関する資料から確認してみましょう。

日本全体の訪日外国人観光客数は前年比18%増

2015、2016年の訪日外国人観光客数のシェア比較(日本政府観光局/JNTO)

2015、2016年の訪日外国人観光客数のシェア比較(日本政府観光局/JNTO)

熊本地震発生後、アジア圏の訪日外国人観光客による旅行キャンセルが相次いだと各社が報道しました。これは事実なのですが、日本全体で見た場合、訪日外国人観光客数は前年比で18%増加し、約208万人となりました。減るどころか、2ヶ月連続となる訪日外国人観光客数200万人超えを達成し、過去最高の旅行者数を記録しています。

皮肉にもこのような結果になったのは、桜の開花により訪日旅行需要が高まっていたため。また、継続的に行われている海外でのプロモーション活動、航空路線の拡大、クルーズ船の寄港増加なども影響しています。訪日外国人観光客数が年々増加している状況を考慮すると、日本全体での訪日外国人観光客数は、熊本地震により「減った」というより「伸び悩んだ」と表現する方が適切だと思われます。

訪日外国人観光客数の動向は、国によって大きく異なる

熊本地震による影響が現れたのは、九州への旅行者が多いアジア圏の訪日外国人観光客が大半です。韓国や中国、台湾などでは九州行きのツアーのキャンセルが相次ぎました。その後、香港では訪日旅行全般を控える動きは起きませんでしたが、そのほかの地域では九州に向かう航空路線の運休、九州を含むツアーの中止が起こっており、長期間にわたって地震の影響が現れる可能性があります。

ヨーロッパでは、経済面で好調なイギリス、スペインの訪日外国人観光客が増加。フランスは2015年11月のテロで運休していたパリ‐成田線が運航再開し、前年同月比25%となる34,000人の訪日外国人観光客数を記録しました。インバウンドビジネスに影響する災害や事件、事故は国内ばかりではありません。訪日外国人観光客が生活する地域の動向も反映されるため、訪日外国人観光客数は国によってまったく異なる傾向を示しています。

 

観光業の復興に向けた政府の九州支援

日本全国で見ると訪日外国人観光客数は減っておらず、大きな問題が無いように見えますが、九州では事情が異なります。旅行キャンセルに加え、施設、設備の損害などが起こっており、地震による被害は深刻です。

九州地方では観光業が基幹産業のひとつになっており、地震による被害が長引くと他産業にまで影響をもたらす恐れがあります。政府は観光復興に向け「できることは全てやる」という方針のもと、5月31日に「九州の観光復興に向けての総合支援プログラム」を実施することを発表しました。

当面の経営を支援する「応急的取り組み」、2016年内の観光需要を取り戻す「当面の観光需要回復にむけた短期的対応」の2つに大別され、資金援助、プロモーション、手続きの簡略化など包括的な対応が行われます。

応急的取組み:キャンセルによる被害への資金支援

「応急的取組み」として行われるのは、施設、設備の損壊、利用キャンセルなどの被害に対する資金面での支援です。

日本政策金融公庫では、熊本県、大分県の事業者に対して既往貸付の返済条件の緩和、返済猶予への柔軟な対応、書類提出の簡素化などが行われています。また、地震被害を受けた中小企業者などに対する貸付・債務保証制度が拡充され、旅館・ホテルなどの施設、設備復旧費用を補助する「中小企業等グループ補助金」が創設されました。熊本県、大分県に限らず九州7県では、従業員の雇用を守るために雇用調整助成金の助成率引上げが特例的に実施されています。

当面の観光需要回復にむけた短期的対応:九州行き旅行商品の割引分を助成金でカバー

九州の観光業は、7月下旬~9月中旬の夏休みシーズンが最盛期で、早急に観光業を復興させる必要があります。「当面の観光需要回復にむけた短期的対応」では、旅行需要の速やかな回復、夏休みシーズン以降の需要創出を目指した取り組みが行われます。

「九州観光支援のための割引付旅行プラン助成制度」が創設されます。これは九州7県の旅行商品の割引を促すもので、旅行会社は割引分の費用を助成金として受け取ることができます。熊本県、大分県の場合、7~9月までは最大70%、10~12月までは最大50%割引できます。

また、政府関連の機関・媒体、日本政府観光局(JNTO)、日本観光振興協会、日本旅行業協会、全国旅行業協会、九州観光推進機構によるプロモーションも実施されます。

 

まとめ:九州の観光業の早急な復興に期待

熊本地震が発生した2016年4月、日本は過去最高となる訪日外国人観光客数を記録しました。皮肉にも思えますが、訪日外国人観光客数増加に向けた継続的な施策、桜の開花などが影響したものだと言われています。

九州の観光業に対しては早急な復興を目指した支援が行われています。旅行商品の大幅な割引が可能となる「九州観光支援のための割引付旅行プラン助成制度」により、夏休みシーズンの繁忙期には国内外の旅行者が集まると思われます。

 

訪日ラボをフォローして
最新情報を受け取る

インバウンド最新情報をお届けします。

これ以上前の記事はありません…