熊本地震に見る訪日外国人への災害対応

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2016年(平成28年)4月14日21時26分頃に発生した熊本地震。熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード6.5、最大震度7の地震で、更に4月16日1時25分頃に、同じく熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード7.3、最大震度6強の地震が発生しました。現在も余震が続いており、懸命な救助活動が続いています。4/18現在で死者43名にのぼり、今もなお、約9万4千人が避難している状況です。

お亡くなりになられた方々の御冥福をお祈りするとともに、御遺族の皆さまには衷心よりお悔やみを申し上げます。また、被災された全ての方々に、心よりお見舞いを申し上げます。

さて、今回は今回の熊本地震における、訪日外国人を含めた外国人への対応について解説します。

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九州に訪れる訪日外国人観光客

訪日外国人客に人気の日本観光ルートといえば「東京⇒箱根⇒富士山⇒名古屋⇒京都⇒大阪」からなるいわゆる「ゴールデンルート」ですが、「熊本⇒阿蘇⇒黒川⇒湯布院⇒別府」からなる「九州横断ルート」、いわば「九州版ゴールデンルート」も訪日外国人観光客に人気です。

訪日外国人観光客に人気の九州横断ルート

訪日外国人観光客に人気の九州横断ルート

国土交通省九州運輸局によると、九州の2015年年間外国人入国者数は283万人強。つまり、2015年の年間訪日外客数が2000万人弱なので、訪日外国人観光客全体のおよそ10%強が九州から入国していることになります。

九州の外国人入国者数の推移(国土交通省九州運輸局)

九州の外国人入国者数の推移(国土交通省九州運輸局)

主な入国者の国や地域は韓国、中国、台湾、香港、そしてタイなどの東アジアおよび東南アジアの国々です。地理的に近いことから九州からの日本への入国が多くなっている模様です。

このように、訪日外国人にも人気の九州・熊本地域ですが、今回の熊本地震をうけて、訪日外国人被災者のための各社、自治体などの各団体の動きを4件ご紹介します。

  • 熊本市 : 外国人を対象にした避難所
  • JNTO(日本政府観光局) : 熊本地震に関する24時間電話対応サービス、グローバルサイトでの告知
  • 株式会社ビーボーン : 緊急通訳ダイヤル(多言語コールセンター)
  • アールシーソリューション株式会社 : 外国人向け緊急地震速報アプリ

それでは、それぞれの対応について見ていきましょう。

 

外国人対象の避難所を熊本市が開設

熊本市では、熊本地震で被災した外国人観光客を含めた外国人を支援しようと、外国人を対象にした避難所が開設されています。

この外国人対象の避難所は4月17日から熊本市が開設しました。現在、中国や韓国、カナダをはじめとした9か国の人たちおよそ40人が避難しており、利用者はいずれも熊本市在住の外国人のようです。国際交流会館の職員が食料や毛布などを手配したり、災害情報を英語と中国語に翻訳したりして対応しています。

JNTO(日本政府観光局)訪日外国人向けに24時間電話対応

JNTO(日本政府観光局)は、ツーリスト・インフォメーション・センター(TIC)で、通常の営業時間(午前9時~午後5時)に加え、熊本地震への対応として営業時間外の夜間の電話サービスについても24時間対応をすることを発表しました(夜間は英語と日本語のみ対応、通常営業時間は英語、中国語、韓国語及び日本語対応)。

JNTO(日本政府観光局)のWEBサイトでも情報発信

TICでの24時間電話対応のほか、JNTO(日本政府観光局)のグローバルサイトで主要な地震発生情報や、熊本空港の状況、JR九州の鉄道・フェリーの運行情報、高速道路状況、観光地の状況について、各社へのリンクの他、各社が提供する主要な運行情報を英語に翻訳して提供しています。

株式会社ビーボーン「緊急通訳ダイヤル(多言語コールセンター)」を設置、無償提供へ

本社を福岡県福岡市にかまえる、株式会社ビーボーンは、「平成28年熊本地震」の被災地の支援のため、「緊急通訳ダイヤル」を設置し、訪日外国人観光客・外国人住民への多言語による電話通訳サービスを、通訳料無料で提供することを開始しました。対応言語は10言語で、24時間対応のサービスです。

九州中部エリアは、訪日外国人に「熊本⇒阿蘇⇒黒川⇒湯布院⇒別府」九州横断ルートが九州版ゴールデンルートとして人気があり、今回の熊本地震の発生エリアは、この九州横断ルートと重なります。

株式会社ビーボーンは、熊本地震発生前より多言語コールセンターを運営していました。数多くの外国人観光客がこの九州版ゴールデンルートを利用していることから、多数の外国人観光客が被災されている現状を鑑み、今回の「緊急通訳ダイヤル(多言語コールセンター)」を設置することとしました。

「緊急通訳ダイヤル(多言語コールセンター)」の対応内容

  • 提供期間

    • 平成28年4月17日から開始(無料対応の終了は、ホームページにて掲載)
  • 対応時間

    • 24時間対応
  •  対応言語

    • 英語、中国語(北京語)、韓国語、タイ語、ベトナム語、インドネシア語、
      ポルトガル語、スペイン語、フランス語、ロシア語
  • 通訳形態

    • 2地点3者間通訳(日本人が外国人のそばにいて3者で通訳を行う方式)
  • 利用料金

    • 通訳料無料(事前の契約や事前登録作業は一切不要 ※通話料は利用者負担)

訪日外国人向けプッシュ型情報発信アプリ「Safety tips」

ゆれくるコールで知名度のあるアールシーソリューション株式会社が観光庁監修のもとリリースした「Safety tips」も、JNTO(日本政府観光局)のグローバルサイトにて、ダウンロードが推奨されています。

「Safety tips」は外国人旅行者に対して、プッシュ型で緊急地震速報を配信する無料スマートフォンアプリです。日本語、英語、中国語、韓国語の4言語に対応しており、「Safety tips」をダウンロードすることにより、避難行動、気象警報等の解説、災害時のコミュニケーションカード等の情報も入手することができます。

 

地震大国日本、インバウンド対策に災害対応は急務

3.11東日本大震災をうけて、観光白書でも訪日外国人観光客の安全・安心確保について触れられていましたが、今回の熊本地震で、災害時の訪日外国人観光客への対応がまかないきれていない印象をうけます。

2015年で2000万人弱の訪日外国人が日本に来ています。3/30には政府は訪日外客数2000万人の目標を上方修正し、2030年に6000万人の訪日外客数を目標としました。円安や2020年の東京オリンピックなど、観光立国に追い風が吹き続けていますが、「万が一のとき」を想定していないと、足元をすくわれてしまうかもしれません。

現状ではTICの緊急時夜間電話対応が英語と日本語のみですが、今後さまざまな国からの訪日外国人観光客が増えることを鑑みれば、とても英語だけでは事足りません。まずは、公的機関からの多言語対応と、その周知からはじめなければならないでしょう。

最後に重ね重ねにはなりますが、被災された全ての方々に、心よりお見舞いを申し上げます。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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