インバウンド(inbound)は「外国から自国への旅行」「自国への外国人旅行者」を指す言葉です。日本へのインバウンドは「訪日旅行」「訪日外国人」とも呼ばれます。

2019年、日本の訪日外国人数は過去最高の3,188万人となりました。2014年の春節旧正月)頃に訪日中国人観光客による「爆買い」現象が注目されて以来、テレビのニュースなどでも 訪日外国人」「外国人観光客」「インバウンド」「インバウンド需要」「観光立国 などのキーワードが頻出するようになっています。

一方で2020年2月以降、新型コロナウイルスの世界的な流行により旅行需要が停滞し、感染対策のための入国制限も敷かれることとなりました。訪日外国人が激減し、インバウンド市場は大きな打撃を受けました。

その後2022年後半には、「鎖国」といわれた日本の入国制限もほぼ撤廃されました。2023年には訪日外国人消費額が初の「5兆円」を突破するなど、日本のインバウンドは着実に歩みを進めています。

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「インバウンド」の意味は?

そもそもインバウンド(inbound)とは「本国行きの、入ってくる、内向きの」といった意味の英語の形容詞です。

訪日外国人を誘致し、消費を促すビジネスが注目を集めるにつれ、もとの意味から転じ、日本から見た時に外から内に入ってくる旅行、つまり「訪日旅行」という意味での「インバウンド」が急速に普及しました。

もう一つの意味のインバウンド:マーケティング手法としてのインバウンド

訪日旅行という意味でのインバウンドが使われ始めるまでは、マーケティング用語としての「インバウンドマーケティング」の意味でインバウンドが使われるのが一般的でした。

マーケティング用語としての「インバウンドマーケティング」は、ブログや動画、SNSなどを駆使して、見込み顧客に自社のコンテンツを見つけてもらい、自然に自社の商品やサービスに興味を持ってもらうように仕掛けるマーケティング手法です。近年になってTwitterなどで企業の公式アカウントが流行しているのも一種のインバウンドマーケティングといえるでしょう。

しかしながら、現在では単純に「インバウンド」と言った場合には、前述の通り、「訪日旅行」という意味でのインバウンドのほうが一般的になってきています。

インバウンドの対義語「アウトバウンド」とは

アウトバウンド(outbound)は、インバウンドと同様に形容詞であるものの、意味は正反対で「出ていく、外向きの」を意味します。よって、観光業界用語としての「アウトバウンド」は、 外国人の訪日旅行を意味するインバウンド とは反対の意味、つまり 日本人の海外旅行 を意味します。

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インバウンド関連用語

関連する用語としては、以下があります。

インバウンド消費

訪日外国人による日本国内での消費活動を「インバウンド消費」といいます。前述の訪日旅行を意味する「インバウンド」(inbound)と「消費」を組み合わせて出来た用語です。

インバウンドは日本経済に大きな経済効果をもたらします。観光庁の資料(2016年)によると、定住人口1人当たりの年間消費額(124万円)は、旅行者の消費に換算すると国内旅行者(宿泊)だと25人であるのに対し、外国人旅行者では8人分にあたります。
旅行消費額の多い外国人観光客を多く取り込むことで、飲食業・宿泊業・観光業などの関連産業への経済効果が期待できます。

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インバウンド需要

訪日外国人による旅行需要のことを「インバウンド需要」といいます。その需要によってインバウンド消費が喚起されるという意味で、前述の「インバウンド消費」とほぼ同義で使われる場合もあります。

インバウンド需要を知るためには、日本政府観光局(JNTO)が公開する「訪日外客統計」などの統計データが利用できます。また、訪日ラボでも「国籍」「都道府県」別にインバウンド需要についてまとめていますので、ご活用ください。

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インバウンド市場

訪日外国人によるインバウンド消費によって形成されるビジネス市場を「インバウンド市場」といいます。前述の「インバウンド需要」とほぼ同義で使われる場合もあるようです。

インバウンド対策/インバウンド施策

前述の「インバウンド消費」や「インバウンド需要」を促したり、取り込んだりするために政府や企業がする施策全般を「インバウンド対策」ないし「インバウンド施策」といいます。例えば、WEBサイトの多言語化や、SNS運用などがインバウンド対策やインバウンド施策にあたります。

同時に、ターゲットとなる市場(国・地域)別の動向や、インバウンド回復に向けた政府の目標と方針など、インバウンド市場の最新動向もおさえる必要があるでしょう。

「インバウンド対策の基本」解説記事はこちら

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インバウンド対応

前述の「インバウンド対策」「インバウンド施策」とほぼ同義。強いて言えば、「インバウンド対策」「インバウンド施策」が訪日外国人を集客するための打ち手に対して使われるのに対し、「インバウンド対応」は、実際に来た訪日外国人に対する"おもてなし"について使われることが多いようです。

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インバウンドマーケティング

訪日旅行を意味する「インバウンド」と「マーケティング」を組み合わせた造語。自社に対するインバウンド消費が大きくなるように、市場調査やオペレーションの最適化、宣伝などの全過程にわたってインバウンド市場に対して行う企業活動の総称を「インバウンドマーケティング」といいます。

インバウンドに関する社会的な流れ

ここでは、日本国内におけるインバウンド関連の流れを解説します。

「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」と「グローバル観光戦略」

「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」が2002年に閣議決定され、それをうけて、国土交通省は2002年に「グローバル観光戦略」を策定しました。 この「グローバル観光戦略」は、以下の4戦略から構成されています。

1.外国人旅行者訪日促進戦略〜より多くの外国人の日本への来訪を促す戦略〜

市場調査によってインバウンドにおける重点市場、海外ニーズ、PR手法等を見極め、その結果に応じた日本のイメージの確立とニーズに応じた旅行商品を開発する。さらに海外におけるPRや情報提供により旅行商品の販売を促進するとともに、査証取得(ビザ取得)の負担の軽減し、インバウンド市場を増大させるために国際連携をする。

2.外国人旅行者受入れ戦略〜訪日外国人観光客すべてに満足感を与える戦略〜

インバウンド需要を受け入れるための環境を形成し(ウエルカム戦略)、国内外で適切な情報提供と訪日外国人観光客目線で交通機関の利便性を向上するとともに、国際競争力をもった魅力ある観光交流空間づくりをする。

3.観光産業高度化戦略〜本戦略の目標達成に向けて観光産業を高度化していく戦略〜

観光関連産業の意識転換を促進するため、新たなインバウンド事業の展開を図る事業者等に支援し、観光関連産業の連携を強化する。

4.推進戦略〜本戦略を多様な主体が連携しつつ効果的かつ着実に推進する戦略〜

上記の戦略の推進にあたって官民で連携し、円滑、強力に実施する。また、随時評価・再検討をしPDCAサイクルを回していく。
※この中の「外国人旅行者訪日促進戦略」の一環としてビジット・ジャパン・キャンペーンが開始しました。

ビジット・ジャパン・キャンペーン:現在のインバウンド市場の形成に至るまでの重要な施策

2000年代前半頃からの日本文化の世界的なブームを受け、政府は「観光立国」を掲げ「訪日外国人観光客1000万人」を目標とするビジット・ジャパン・キャンペーンを策定しました。 「グローバル観光戦略」を受け継ぐ形で、国土交通大臣が本部長となり、関係省庁および民間団体・企業が参加する「ビジット・ジャパン・キャンペーン実施本部」が2003年4月1日に発足。観光ビザの要件緩和や海外諸国での訪日旅行の広報、国内におけるインバウンド向けインフラの整備などを推進しました。

この2000年代前半では、日本ではインバウンドアウトバウンドに格差があり、インバウンドアウトバウンド、つまり訪日外国人観光客よりも、日本人の海外旅行者数の方が多かったのです。 2003年度では、訪日外国人観光客数が524万人に対し、日本人の海外旅行者数が1,652万人と3倍の開きがあったため、この格差を是正するために、2010年までに年間1,000万人の訪日外客数までインバウンド市場を拡大することが目標とされました。

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YOKOSO! JAPAN WEEKS

「YOKOSO! JAPAN WEEKS」は、ビジット・ジャパン・キャンペーンで催されるイベントの中で最も大規模なものです。

「YOKOSO! JAPAN」はビジット・ジャパン・キャンペーンのスローガンで、YOKOSO! JAPAN WEEKSは2005年より毎年行われていました。 毎年1月後半から2月後半にかけての旧正月春節)の期間、冬の日本の魅力などを広報し、東アジアからの訪日外国人観光客によるインバウンド需要の拡大を狙ったものです。

訪日外国人観光客に対する優遇・割引を国内の協賛企業に対し斡旋し、中国語、韓国語を始めとした各国の言語に対応するパンフレットの作成をすることで訪日外国人観光客が観光しやすい環境作りを行っていきました。

金融危機、リーマン・ショック、そして東日本大震災のショック

日本のインバウンドは2009年、世界金融危機(2007年)やリーマン・ショック(2008年)による不況の煽りをうけ、679万人までインバウンド市場は大きく落ち込んでしまいます。さらに東日本大震災と福島第一原子力発電所事故(2011年)で更なる大打撃を受けました。

しかしながら、アベノミクスによる円安(2012年〜)が進んだことや格安航空会社LCC)の就航拡大の影響によりインバウンド需要が喚起、2013年にはビジット・ジャパン・キャンペーンの目標であった年間1,000万人を超える年間1,036万人の訪日外客数を記録します。その後も2014年は1,341万人、2015年は記録を更新し1,973万7千人となり、45年ぶりに訪日外客数(インバウンド)が出国日本人数(アウトバウンド)を抜きました。

これにより、東日本大震災が発生した2011年には、1兆円を割りこんだインバウンド消費も拡大し、2012年には、1兆円台を回復、2014年には2兆227億円に到達、2015年にはなんと3兆4,771億円まで拡大し、4年間でおよそ3.5倍のインバウンド消費拡大記録しました。

2018年、訪日外国人数3,000万人を突破

2016年、政府は、2015年の訪日外国人数1,973万人の記録をうけ、2020年までに年間2,000万人としていた訪日外国人数の目標を、2020年までに4,000万人、2030年までに6,000万人と上方修正しました。

都市部だけでなく地方部へのLCC就航やビザ緩和などに加え、日本政府観光局JNTO)主導での積極的な訪日プロモーションが功を奏し、2018年には訪日外国人数が3,000万人を突破しました。

2019年は増加率でいえば失速したものの、過去最高の3,188万人を記録しました。

訪日外国人数の推移
▲[訪日外国人数の推移]:日本政府観光局(JNTO)データより訪日ラボ作成

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2020年、新型コロナウイルス流行でインバウンド激減

しかし、2019年12月頃から中国で観測され始めた新型コロナウイルスが急速に世界中へ拡散したことで、感染対策のため日本と世界各国の間での入国制限が敷かれました。

日本へ旅行することは困難となり、2020年5月の訪日外国人数は、たった1,700人でした。訪日外国人が激減し、インバウンド市場は大きな打撃を受けているといえます。

ただし、春節など本来であれば訪日旅行を楽しんでいた期間に外出や旅行を自粛せざるを得なかったことで、東アジア圏を中心に訪日意欲の高まりが見られています。入国制限が解除された後には、遅かれ早かれインバウンドは戻ってくるものと考えられるため、それまでに日本国内の受け入れ環境を整備しておく必要があるでしょう。

また、新型コロナウイルスを経験した各国の旅行者は、今まで以上に「旅行先が安全かどうか」「訪れる場所で衛生対策に取り組んでいるかどうか」を重視すると考えられます。今後は、「安全・安心」がインバウンド誘致・受け入れの際のキーワードとなってくるでしょう。

関連記事観光4大要素に追加すべき「安全・安心」とは?

2021年、新型コロナウイルス禍続くも東京五輪開催

2020年から、日本のインバウンド市場に非常に大きなダメージをもたらした新型コロナウイルスですが、2021年にはワクチンが開発され、入国管理が大きく転換することとなりました。

各国政府によって「ワクチンパスポート」が作成され、接種証明があれば入国後の隔離期間短縮、行動制限の緩和などが行われています。

このように事態は好転すると思われたものの、新型コロナウイルスは変異を続け、デルタ株やオミクロン株など新たな変異株が登場し、感染拡大が沈静化しても再度拡大するという状態が続いています。

また2021年、日本においてはインバウンド業界にとって好機とみられていた「東京五輪」が開催されました。

五輪誘致決定当初は多くの外国人観光客が訪日することが予想されていたものの、結果として国内も含め原則無観客での開催となり、インバウンド市場にとっては大きな打撃となりました。

一方で、東京五輪の様子はテレビやインターネットを通じて各国で大きく報道され、外国人観光客の訪日意欲を高めたとの調査が発表されました。このように、インターネットや映像を用いたプロモーションの効果は大きく、長引く新型コロナウイルス禍においても訪日意欲を高めることにつながっています。

また、旅行形態についても、「安全・安心」を軸に「分散型旅行」などの新たな旅行トレンドが生まれつつあります。まずは国内を中心に、インバウンドをターゲットとした業者においても、旅行業自体の再開を図っていく動きが見られています。

なお、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた2020、2021年で訪日外客数は以下のようになりました。2021年度の訪日外客数は、1964年に統計が開始されて以来最小となっています。
訪日外客数推移のグラフ(2011~2021)
▲訪日外客数の推移(2011~2021):JNTOデータより訪日ラボ作成

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2022年前半、入国制限緩和見通せず「鎖国」との批判も

2022年初から、日本では新型コロナウイルスの変異株、オミクロン株が流行しています。その影響により、現在も外国人の新規入国を原則では認めていません。この状況に対し、海外メディアなどからは「鎖国」との非難もなされています。

また北京冬季五輪の開催国・中国では「ゼロコロナ」を目指し、厳しい厳戒態勢のもと五輪が開催されています。アジアの国々では、比較的観光や入国に対する制限緩和に慎重な部分があり、回復が遅い傾向にあります。

一方世界では、情勢が変わりつつあります。イギリスでは新型コロナウイルスワクチン接種済みの人に対し、すべての規制を撤廃すると発表しました。他の欧米諸国も、入国時や旅行中の規制緩和、撤廃の方向に向けて動き出しています。

日本政府が「鎖国」をいつ解除するかが、インバウンド回復への最大の争点であったといえます。

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2022年後半、再び「開国」でインバウンド回復の兆し

日本政府がついに観光目的の外国人の受け入れを再開したのは、6月1日でした。しかし一日当たりの入国者数には制限があり、旅行形態としても添乗員付きのパッケージツアーに限定されていたため、実質的にはほとんど訪日客数は回復しませんでした。

風向きが変わり始めたのは9月です。日本政府は、日本渡航時の出国前検査を原則廃止したり、添乗員なしのパッケージツアーを解禁したりと、入国制限緩和に積極的な姿勢を取り始めました。

そして10月11日には、入国者数の上限撤廃、短期滞在ビザの免除、個人旅行の解禁を実施し、入国制限はほぼコロナ前の状態に戻りました。

日本が再び「開国」したことにより、世界各地で訪日旅行への関心が高まり、日本行きの旅行商品の売れ行きも爆発的に伸びました。

しかし、日本のインバウンドがコロナ前の水準まで完全回復するにはまだ時間がかかるとされています。

その大きな理由の一つが、日本のインバウンドの最大の顧客であった中国人観光客がまだ訪日できないことです。中国が「ゼロコロナ政策」からいつ方向転換するかが、今後のインバウンドの回復状況を占うといえます。

その他、インバウンドの完全回復に向けてボトルネックとなりうるのは、「出国前検査を免除するためにはワクチン3回接種済みでなければならないこと」「航空リソースのひっ迫と原油高による、航空券の高騰」などです。これらがすべて解消されるのは、もう少し先のことになると考えられます。

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2023年前半、累計訪日外客数「1,000万人」突破

2023年に入り、月間の訪日外客数は1月が約150万人、2月が約148万人と、前年比では好調な滑り出しをみせました。しかし上述の2つのボトルネックは解消されておらず、コロナ前の2019年の水準にはまだ遠い状況でした。

この2つのボトルネックのうち、航空券の高騰に関するものについては、2023年8月現在でも解消には至っていません。一方で、水際対策に関連するものは解消されていきました。

ゴールデンウィーク前の4月29日には、日本入国時の新型コロナウイルス関連の水際対策が完全に撤廃されました。

さらにその後5月8日には、新型コロナウイルスの感染症法上の扱いが5類に移行となり、国内でも「アフターコロナ」の機運が一層高まったといえます。

こうした追い風を受け、月間の訪日外客数は3、4、5月には180~190万人を推移し、そして6月には、コロナ後初めて200万人を突破しました。またこれは同時に、2023年上半期の累計訪日外客数が1,000万人を突破したことにもなりました。

この間、こうしたインバウンド業界の好調を受け、政府系機関も観光戦略を更新していきました。3月末には観光庁が、「観光DX推進のあり方に関する検討会」での議論を踏まえた最終取りまとめを公表し、「旅行者の利便性向上・周遊促進」「観光産業の生産性向上、労働環境の改善」「観光地経営の高度化」「観光デジタル人材の育成・活用」の4つの柱について、現状を踏まえた将来ビジョンが示されました。

さらに6月末には、日本政府観光局が2025年までの訪日マーケティング戦略を発表しました。これは3月に公開された「観光立国推進基本計画」に掲げられている「持続可能な観光」「消費額拡大」「地方誘客促進」を実現するべく策定されたものです。

このように官民両面から、日本のインバウンド業界も一定程度の回復をみせましたが、まだコロナ前の水準を完全に取り戻してはいないのが現状です。

2023年後半にかけては、かつて消費を下支えしていた「中国からの団体旅行客」の回復が、コロナ前の水準を取り戻し、さらに超えていくカギとなりそうです。

関連記事:6月の訪日外客数 コロナ後初「200万人」突破、上半期計は1千万人超に

2023年後半、訪日外客数ついにコロナ禍前超え

アフターコロナ」の機運が一層高まった2023年後半。

月間の訪日外客数は2023年後半も200万人超を推移し、ついに10月、コロナ禍前の水準を上回る251万人を記録。その後12月にもコロナ禍前超となる273万人を記録しました。

2023年の累計は2,506万6,100人(推計値)となり、コロナ禍前の2019年比では21.4%減という水準まで回復しました。

訪日外客数の推移(2014~2023):JNTOデータより訪日ラボ作成
▲訪日外客数の推移(2014~2023):JNTOデータより訪日ラボ作成

また、2023年年間の訪日外国人消費額は5兆2,923億円(推計値)となり、初の「5兆円」を突破しました。これは2019年の4兆8,135億円を約4,788億円上回る記録となっています。

訪日外国人消費額の推移(2014~2023):JNTOデータより訪日ラボ作成
▲訪日外国人消費額の推移(2014~2023):JNTOデータより訪日ラボ作成

さらに、2023年夏ダイヤではコロナ禍前57.3%と回復が遅れていた国際線旅客便も、冬ダイヤでは84.9%まで回復しました。

これらはいずれも、今後のインバウンドにとって追い風となるニュースです。

政府も、インバウンド事業を加速させる姿勢を見せています。11月に閣議決定された2023年度の補正予算案では、観光庁関連に計689億円が計上されました。この中には、高付加価値事業化に約200億円が盛り込まれたほか、インバウンドの地方誘客やオーバーツーリズム対策などが盛り込まれました。

一方、データを中国に絞ってみると、旅客便の回復率は夏ダイヤで13%、冬ダイヤで46.7%となっており、全体と比べて遅れていることがわかります。9月〜10月の「国慶節」期間中、訪日中国人客が他国(タイや香港、シンガポールなどのアジア各国)と比較してそこまで多くなかったと言える状況の背景にも、航空便の回復の遅れが考えられています。

今後は中国からの訪日需要に対し、航空各社がどう動くかが、中国インバウンドの回復率に大きく影響してきます。

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