観光4大要素に追加すべき「安全・安心」とは?インバウンド復活を成功させる「2つの新条件」

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日本国内において新型コロナウイルスの第二波が懸念されている中、政府は入国制限の緩和に慎重な姿勢を示しています。観光目的の渡航に対する制限はもちろんのこと、ビジネス目的でも緩和の合意に至ったのはベトナム一国のみとなっています。

6月17日に日本政府観光局JNTO)が発表した統計によれば、4月の訪日外国人の数は、前年同月と比べて 99.9%減という衝撃的な減少幅を記録しましたが、これが新型コロナウイルスの流行以前まで回復するにはどのくらいかかるのでしょうか。

IATA国際航空運送協会)は、国際線の需要が2019年の水準まで回復するにはあと4年ほどかかると推測しています。

アジア圏などで徐々に回復の動きはあるものの、新型コロナウイルス流行以前のように国家間を行き来するようになるまで、まだまだ時間がかかるといえるでしょう。

では、アフターコロナの観光にアジャストするために、日本のインバウンド業界はどのような方向性でいくべきなのでしょうか

インバウンド市場の回復まで時間を要する今、もう一度観光の本質に立ち返り、アフターコロナの状況下で新たに必要となる観光の条件について解説します。

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デービッド・アトキンソン氏が提唱する観光の「4条件」

今までの日本のインバウンドの取り組みに大きな影響を与えたデービッド・アトキンソン氏の著書『新・観光立国論』は、日本の観光産業における強みと弱みを分析し、日本が「観光立国」になるための方針を示したものです。

『新・観光立国論』の中では、「観光大国」になるための条件として、「気候」「自然」「文化」「食事」の4つの条件が挙げられています。

1つ目の「気候」は、気温や天候が極端でなく、過ごしやすいことが条件となります。また、いくつかの気候を兼ね備えていると、同じ国でスキーもビーチリゾートも楽しめる、というように有利に働きます。

2つ目の「自然」は、その国特有の自然環境や動植物に加え、人工的な自然も観光資源になります。イギリスであればガーデニング、フランスではブルゴーニュなどの田園風景も人気です。

3つ目の「文化」は、歴史的遺物・建造物といった過去の文化と、現代の文化に分かれます。この2つを兼ね備える代表的な例がフランスで、ルーブル美術館やヴェルサイユ宮殿といった歴史を感じられるスポットと、最先端のファッションブランドやアーティストが共存しています。

4つ目の「食事」は、フランス料理、イタリア料理、中華料理というように、「国の名前+料理」で認知されている国が、多くの観光客を集める傾向にあるとされます。

そしてアトキンソン氏によれば、日本はこれらの条件を全て満たしています

気候は気温差が大きく、北ではスキー、南ではビーチが楽しめます。自然は山や海に囲まれており、動植物が豊富です。文化は古くからの歴史的な建造物と、アニメなどのポップカルチャーがあります。そして食事は、「和食」として世界文化遺産になるほどの認知を得ています。

このように、日本は「観光立国」になり得るポテンシャルを持っているといえるのです。

しかし、新型コロナウイルスという100年に一度の感染症の恐怖を経験した我々の感覚は、新型コロナウイルスの流行以前とは変わってしまったと考えるべきです。

では、アフターコロナの時代に「観光立国」を目指すには、上記の条件だけで十分といえるのでしょうか。

アフターコロナで求められる新たな観光の条件とは

アトキンソン氏が提唱した4条件は、あくまで新型コロナウイルスに対する恐怖が無かった時代に、観光地として魅力的に映るために必要な要素を言い表したものでした。

しかし、アフターコロナの時代には、先に述べた4条件とは性質こそ違うものの、旅行先の選択基準としてもう1つ重要な条件があると確信しています。それは、「安全・安心」です。

もちろん、「安全・安心」はこれまでも無意識に旅行先の選択基準とされていました。例えば、雄大な自然を有する国でも、身の安全が確保されないと知ったら多くの人は訪問を避けてきたのではないでしょうか。

これまで自分の身を守るために無意識に考慮していた「安全・安心」が、新型コロナウイルスの流行を経たことではっきりと選択基準として顕在化するというわけです。

では、この「安全・安心」とはどういったものなのでしょうか。

下記の2つの条件が満たされていることを、訪日外国人の方にとっての「安全・安心」だと考えます。

  1. 安全:医療体制が整っているとともに、衛生管理やクラスター発生防止策をはじめとしたコロナ対策が、各自治体やホテル、飲食店、商業施設等でしっかり取り組まれている
  2. 安心:上記の案内や情報発信が多言語で行われており、かつタイムリーである

新型コロナウイルスの脅威を経験した世界では、このような「安全・安心」を満たしていることが観光地としての最低条件になります。

先の4条件をそろえた魅力的な観光地でも、「安全・安心」でなければそもそも行き先の候補にも上がらないのです。

そのため、まずは日本国内の「安全・安心」の整備が当然不可欠であり、さらにそれを海外に向けていち早く発信できるかどうかが非常に重要になってきます。

その情報発信について、次の項目で詳しく解説します。

タイミング別「安全・安心」の情報発信事例

ここからは、情報発信の事例を、訪日旅行のフェーズである「プレ旅マエ」「旅マエ」「旅ナカ」に分けてご紹介します。

プレ旅マエ・旅マエ:「安全・安心」のPRが鍵

プレ旅マエ旅マエは、海外旅行に行こうと考えている外国人の方がどこの国に行くか、滞在先はどこにするかを決める期間です。

訪日関心層の方でも、この期間に日本が「安全・安心ではない」というイメージを持ってしまえば、他の国に候補を移してしまうことも考えられます。

したがってこのフェーズでは、「安全・安心」のPRができるかが重要になります。

新型コロナウイルスに関連する情報発信については、各自治体によって多言語や「やさしいにほんご」で行われているほか、京都市観光協会による新型コロナウイルスの感染拡大防止のための啓発、注意喚起を目的としたピクトグラム作成といった事例もあるものの、海外に対し日本の観光地の「安全・安心」をPRするという取り組みは、現時点ではほとんど存在しないというのが現状です。

そこで、訪日外国人観光客向けメディア「tsunagu japan」は、プレ旅マエ旅マエ期間の外国人の方に日本の「安全・安心」をPRするために下記のような取り組みを実施しています。

▲[Traveling Safely in Japan]:株式会社 D2C X プレスリリース
▲[Traveling Safely in Japan]:株式会社 D2C X プレスリリース

「tsunagu japan」は、安心・安全対策を発信する特設ページ 『Traveling Safely in Japan』 を開設しました。全国各地の観光地、宿泊施設、飲食店、公共交通機関、アミューズメント施設などにおける「安全・安心」の対策情報を、日本中の観光業者から集め、多言語に翻訳して世界に発信するとしています。

対応言語は7ヵ国語で、英語・繁体字・簡体字・タイ語・韓国語・ベトナム語・インドネシア語とアジア向けに幅広く対応しており、特にアジア圏をターゲットとしている事業であれば、このページへの掲載で「安全・安心」の情報発信が簡単になるといえます。

旅ナカ:混雑を避けたい、施設が「安全」なのか知りたいというニーズの増大

訪日外国人観光客は、旅マエ期間に人気の観光スポットに行く予定を立てているでしょう。これまでであれば、多少混雑していても人気の観光スポットに行きたいという方が多かったと考えられますが、アフターコロナ旅ナカ期間には、ソーシャルディスタンスの観点から、少しでも混んでいない時間や場所を狙って訪問したいというニーズが出てくるはずです。

このニーズに応える取り組みとして、京都市観光協会が運営する「京都観光Navi」サイト内の「観光快適度チェック」があります。新型コロナウイルス流行以前から始まっていた無料のサービスで、該当日における京都観光の賑わいの程度を5段階で表示できます。晴れ・雨・大雨と天候ごとに切り替えられるのも観光客にとって有用だといえます。

今後はこういったサービスよりリアルタイムの情報を表示できるよう改良されるとともに、訪日外国人観光客の方に向けて多言語でも発信されるようになるでしょう。

また、混雑予想に対するニーズのほか、衛生対策や営業時間など、各施設への個別の問い合わせが急増すると考えられ、これに対する多言語での対応が必要になるでしょう。

こうした問い合わせの増加に最適なソリューションとして、「AIチャットボット」があります。このツールは、人工知能(AI)が自動的にテキストでの会話を行うものです。これを導入すれば、外国人の方からの問い合わせに多言語で24時間自動応答することが可能になります。

「安全・安心」をベースに日本の強みをPR

アフターコロナの世界では、これまで無意識に旅行先の条件とされてきた「安全・安心」が旅行先を選ぶ際の重要な条件として顕在化します。

このアフターコロナの観光にアジャストするためには、少なくとも日本国内の「安全・安心」の整備が不可欠であり、さらにそれを海外に向けていち早く発信できるかどうかが非常に重要になってきます。

そしてそれがベースとなって初めて、『新・観光立国論』で触れられていた日本の「気候」「自然」「文化」「食事」の強みを活かすことができるのです。

コロナ収束を迎えつつある日本において、まず着手すべきはインバウンド市場を「新型コロナウイルス以前の状態」まで回復させることといえるでしょう。そしてこれを実現するための最短の道は、「安全・安心」の徹底とPRに他なりません

<参考>

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

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