文化・芸術でインバウンド需要を取り込むには?「新時代のインバウンド拡大アクションプラン」から読み解く

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政府は2023年5月30日に開催した観光立国推進閣僚会議で、「新時代のインバウンド拡大アクションプラン」を決定しました。

本プランでは、訪日旅行客を増やすだけでなく、インバウンド需要を根づかせ、効果的に需要拡大を目指すための施策がまとめられています。その3本柱となるのが「ビジネス」「教育・研究」「文化芸術・スポーツ・自然」分野です。

この記事では「インバウンド拡大アクションプラン」のなかで文化芸術分野において、どのような施策が盛り込まれているのかを解説します。

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1. 「新時代のインバウンド拡大アクションプラン」とは

▲観光庁:「観光立国推進基本計画(第4次 )概要」(https://www.mlit.go.jp/common/001299665.pdf)

コロナ禍で大きな打撃を受けた観光産業。コロナ禍を経ても成長戦略の柱で、地域活性化の切り札に掲げられています。

そこで政府は、持続可能な形での観光立国の復活に向けて2023年3月に「観光立国推進基本計画」を発表。基本方針として「持続可能な観光地域づくり」「インバウンド回復」「国内交流拡大」の3つを大きな軸として掲げました。

なかでも「インバウンドの回復」においては、訪日外国人旅行消費額の5兆円早期達成と、訪日外国人旅行者数がコロナ禍前の水準である年間3,188万人を超えることを目標としています。

これらを実現するための具体的な方法を取りまとめたものが「新時代のインバウンド拡大アクションプラン」です。従来の「観光」視点の施策から視野をひろげ、「ビジネス」「教育・研究」「文化芸術・スポーツ・自然」の3つの分野が新たな柱として掲げられました。

では具体的にどのような施策が盛り込まれているのでしょうか。次の章で詳しく見ていきましょう。

1-1. 3つの新しい分野を柱に実現を目指す

▲観光庁:「新時代のインバウンド拡大アクションプラン 概要(https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001612101.pdf)

「ビジネス分野」では、モノの流れだけでなくヒトの動きを活発化することで、日本を舞台としたビジネスネットワークの拡大を目指します。またビジネス訪日客は消費単価の高いリピーターにもなり得るため、ビジネス機会を創出したり長期滞在を促進したりすることで訪日旅客の消費額5兆円達成にむけても重要になります。

続く「教育・研究分野」では、世界的な科学技術分野の研究開発の波から取り残されないよう、国内大学の研究力の強化や国際学会の積極的誘致などを通じ、国内の研究レベルの向上を目指すとしています。また、留学生の派遣・受け入れなど人的交流を促す取り組みも盛り込まれています。

では「文化芸術・スポーツ・自然分野」においては、どのような施策を掲げているのでしょうか。次項で詳しく解説します。



2. インバウンドにおける「文化芸術・スポーツ・自然分野」とは

「文化芸術・スポーツ・自然分野」においては、令和7年までに次の2つの数値達成を目標にしています。

  • 世界のアート市場における我が国の売上額シェアを7位に引き上げ(令和1年はランク外)
  • スポーツ目的の訪日外国人旅行者数を2割増加(令和1年は229 万人→270万人)

政府はそれぞれの目標について、実現のための具体的な施策を決定しました。「文化芸術」「スポーツ」「自然」それぞれの分野で解説していきます。

2-1. 文化芸術

日本には長い歴史のなかで生まれた、世界に誇れる文化的財産がたくさんあります。例えば、有形・無形文化財や伝統芸能、食文化といったものから、アートやアニメ、マンガまでさまざま。これらの文化的財産を維持して受け継いでいくためには、文化芸術を成長産業に進化させるとともに、経済的にも好循環な仕組みづくりが求められます。

政府は日本国内のみを前提とした取り組みではなく、世界にむけた情報発信力の強化とビジネス視点を取り入れながら、戦略的に日本の文化芸術のグローバル展開を考えることが必要不可欠だとしています。

とくに日本のマンガやアニメ、ゲームなどは、海外でも高く評価され親しまれているコンテンツのひとつです。政府はこれらを海外むけのコンテンツビジネスとして育成し、海外の文化や価値観にあった形で届けられる仲介企業に対して支援を行うとしています。日本のコンテンツの地位を確立し、訪日旅行客を惹きつけるコンテンツに発展させることで、インバウンドの拡大を目指します。

ほかにも博物館や美術館などの観光施設を、通常の営業時間にくわえて早朝や夜間にも開館し、文化観光コンテンツを充実させることが挙げられています。営業時間を伸ばすことで新たな客層を取りこむことができたり、訪日外国人客の滞在時間を増やしたりできるので、インバウンドの消費拡大につながります。

施設の周辺地域での宿泊や食事など、別のコンテンツとあわせたサービスを提供することもチケット販売の促進につながります。また博物館などに従来置かれている資料のデジタル・アーカイブ化を行うことで、海外在住者や訪日旅行者に対しての情報発信を強化できます。

さらに国際会議や国際見本市などを積極的に日本に誘致することも、インバウンド対策のひとつです。国際的な会議を日本で開催することで人的交流の促進やビジネス訪日客など、消費単価の高いインバウンド需要の拡大につながります。

政府は日本がアートの国際拠点となることを目指しています。日本のアート市場の拡大は、世界的なアート市場における日本のプレゼンスを高めることにもなります。国際的なアートフェアなどを日本に誘致することによって、アートフェアを目的に来日する高付加価値旅行客を日本および地方へ送客でき、地方の消費拡大につながります。

2-2. スポーツ

文化芸術分野と同様、スポーツ分野においても経済的に持続可能な環境をととのえることが必要です。スポーツを持続可能なものにするには、スポーツを産業化してその利益をスポーツに再投資することで自律的に成長できる仕組みをつくらなければいけません。そのためには国内市場にかぎらず海外市場も視野にいれた、ビジネスの観点からの戦略的な施策が求められます。

具体的な施策としては、スタジアムなどのスポーツ施設をスポーツ以外の用途にも活用し、新たな価値を提供することです。コンサートなどのイベントへの活用や一般への利用開放なども考えられます。またプロスポーツ団体が主催するスポーツイベントも活用できる一例です。

例えばスポーツチームに所属する外国人選手の出身国の方や、訪日外国人を対象にした観戦ツアー、交流会などのイベントを実施することで、海外客の取り込みや人的交流を促進することにつながります。

日本には剣道や空手をはじめとした武道など、日本ならではのスポーツが存在します。これらを地方の観光とかけあわせ、スポーツツーリズムとして高付加価値な体験を提供できます。例えば、日本の道場と海外の道場をつないだオンライン稽古や、武道を体験できる機会を提供することで、地方への訪日旅行客を誘致できます。

2-3. 自然

政府は、自然や歴史資源をつかった少人数限定の富裕層むけ宿泊体験などを提供することで旅行の高付加価値化を行い、インバウンド消費額の増加を図るとしています。希少性の高い特別な体験やサービスは、富裕層や訪日外国人を取りこむのにも効果的です。

環境省は国立公園の高付加価値化を検討しています。今後はモデル地域を選定し、官民連携で体制づくりを進めるとのこと。滞在環境をより上質なものにしたり、地域の自然や歴史に触れる機会を提供したりすることで、高付加価値な体験を提供することができます。

また今後、全国の国立公園に先進的な取り組みを拡大することで、地方への誘客にもつながります。



3. まとめ

「新時代のインバウンド拡大アクションプラン」では、観光の視点からだけでなく「ビジネス」「教育・研究」「文化芸術・スポーツ・自然」の3つの分野からみたインバウンド需要拡大のための施策が発表されました。

合計80以上の施策を着実に実現していくことで、人的交流の活発化や日本を中心とした人的ネットワークの拡大が、インバウンド需要を長期的に獲得し続けることにつながります。

文化芸術の分野においては、経済的に持続可能な仕組みづくりが必要不可欠です。海外展開を視野にいれた情報発信力の強化と、ビジネスの観点からの戦略的施策を進めることが、インバウンドの取り込みにおいて重要です。自社の事業にもぜひ取り入れてみてください。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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