訪日外国人観光客数が伸びる中で、オーバーツーリズムが問題になっています。
オーバーツーリズムとは観光客が殺到することにより起きるもので、観光地の地域住民の生活や自然環境などに悪影響を与えることを指します。オーバーツーリズムに対して複数の施策がある中の一つとして、観光客が少ない地方や同じ地域でも少ない場所に訪問してもらう「地方分散」の促進が重要だとされています。
そこで本記事では、「地方分散」を成功させるためのポイントについて、じゃらんリサーチセンターが発表した報告書をもとに詳しく解説します。
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訪日外客数は2か月連続の300万人超え
日本政府観光局(JNTO)によると2023年の訪日外客数は約2,500万人で、2016年ごろのペースまで回復しています。
また、現時点の最新データとなる2024年4月の訪日外国人数は約304万人。2か月連続の月間300万人超えとなっており、今後もインバウンド市場に対する期待感は継続していくものと見込まれています。
関連記事:4月の訪日外国人数、2か月連続で300万人超え 国別では中国が台湾を抜き2位に
外国人延べ宿泊者数が都市部へ集中する結果に
観光庁が発表した「宿泊旅行統計調査」では、埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・愛知県・京都府・大阪府・兵庫県といった三大都市圏への宿泊比率が、2019年度と2023年度とでは変化しています。2019年度は62.7%に対し、2023年度は72.1%と上がっており、コロナ前と比べてより都市部に集中していることが分かります。
都市部に集中している背景には、各地での旅客便数の回復が遅れていることなどが考えられています。
今回じゃらんリサーチセンターが発表した報告書では、地方分散への注力ポイントとして、地方空港の便数回復の他に地方部を含めたルートの分散を挙げており、市場別の周遊ルートの分析結果を紹介しています。
国・地域により、代表的な周遊ルートは異なることが判明
同報告書によると、訪日外国人観光客が訪れる都道府県は限定的ではあるものの、国・地域によってゴールデンルート(代表的な周遊ルート)が異なることがわかりました。
台湾や、韓国・タイなどのアジア諸国では地方に分散する傾向が強く、イギリスはアメリカと同様に東京から大阪近辺への観光ルートに集中しています。
オーストラリアは北海道へのルートもあるものの、基本的にはアメリカと同じような周遊ルートであることが分かっています。
欧米豪とアジア諸国による周遊ルートの違い

例1. 台湾
台湾では「千葉県ー東京都ー神奈川県」の周遊ルートがもっとも人気です。台湾の周遊都道府県のトップ10は以下の通りです。
- 千葉県ー東京都ー神奈川県
- 千葉県ー山梨県ー東京都
- 京都府ー兵庫県ー大阪府
- 大分県ー熊本県ー福岡県
- 千葉県ー埼玉県ー東京都
- 京都府ー大阪府ー東京都
- 山梨県ー東京都ー神奈川県
- 京都府ー大阪府ー東京都
- 千葉県ー東京都ー長野県
- 千葉県ー大阪府ー東京都
「大分県ー熊本県ー福岡県」「千葉県ー山梨県ー東京都」「千葉県ー東京都ー長野県」など地方に分散する傾向が高い結果となりました。
トップ10以下の周遊ルートを見てみると、滋賀県や岐阜県、北海道といった地方にもルートが広がっており、さまざまな地域に足を運んでいる様子がうかがえます。
例2. アメリカ
アメリカの周遊ルートは「京都府ー大阪府ー東京都」がもっとも人気です。アメリカの周遊都道府県のトップ10は以下の通りです。
- 京都府ー大阪府ー東京都
- 千葉県ー東京都ー神奈川県
- 埼玉県ー東京都ー神奈川県
- 千葉県ー埼玉県ー東京都
- 京都府ー東京都ー神奈川県
- 京都府ー大阪府ー東京都ー神奈川県
- 大阪府ー東京都ー神奈川県
- 京都府ー千葉県ー大阪府ー東京都
- 京都府ー千葉県ー東京都
- 千葉県ー大阪府ー東京都
アメリカの場合は、東京から大阪近辺への周遊ルートに集中していることが分かります。
トップ10以下の周遊ルートを見てみた場合でも、東京を中心に関西地方や中部地方にルートが集中しており、特定の地域の人気の高さがうかがえます。
自分の地域が主要周遊ルート上にあるか?把握することが大切!
今回の報告書では、自分の地域が全国の主要周遊ルートにあるかどうかを把握することが肝心だと説明されています。
加えて、全国の主要周遊ルートから日帰り圏内にあるか、地域ごとの主要周遊ルートに入っているかをチェックし、自らの地域の課題を見つけ出して課題に合わせた解決案を実施していくことが大切だといいます。
今回の報告書では、自分の地域に当てはめて考えられる診断チャートも公開されています。本チャートに沿って確認することで、地域の現状を適切に把握できるようになります。
例として、福岡県の診断チャート活用事例が紹介されています。福岡県の活用事例では、台湾とアメリカの周遊ルートを踏まえて、診断結果をもとに訴求案を検討したといいます。

「地方分散」の成功の秘訣は、現状把握から
「地図で読み解くインバウンド地方分散研究」で説明されているように、自分の地域が「どのルート上にあるのか」を把握しないと、地域分散における適切な解決方法にたどり着けません。
オーバーツーリズムに「地方分散」が必要とはいっても、どうしたら良いか分からないという方も多いかもしれません。まずは自分の地域が、どういった周遊ルート上に存在しているのか、はたまた周遊ルートから外れているのかをしっかり把握しましょう。
そのうえで解決案を考えることが、自らの地域への訪日外国人観光客を増やすためのカギになるといえそうです。
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<参照>
じゃらんリサーチセンター×ブログウォッチャー共同研究:「地図で読み解くインバウンド地方分散研究」~報告書~
じゃらんリサーチセンター×ブログウォッチャー共同研究:「地図で読み解くインバウンド地方分散研究」~福岡県活用事例〜
日本政府観光局(JNTO):訪日外客数(2023年12月推計値)
日本政府観光局(JNTO):訪日外客統計(2024年3月推計値)
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2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
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【インバウンド情報まとめ 2025年5月後編】2025年の訪日客数「4,500万人」へ、観光庁長官の見解は? ほか
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