日本政府による対中国の水際対策は段階的に緩和され、訪日中国人の数も徐々に回復してきています。8月には、中国側の団体旅行制限も撤廃されました。
一方、8月後半から処理水問題が浮上してきており、インバウンド動向への悪影響も懸念されています。訪日中国人客数や消費額がどのような推移を辿るのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。
そんな中10月18日、日本政府観光局(JNTO)が訪日外客統計9月版を発表。同日、観光庁も訪日外国人消費動向調査の結果を公表しました。それぞれ訪日客数、消費額・消費傾向の最新データとなっています。
今回は、上記のデータをもとに、中国インバウンドの最新動向を解説します。
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9月の訪日中国人客数は32万5,600人。処理水問題の影響は「限定的」
2023年9月の訪日中国人客数は32万5,600人、前月の8月から3万8,500人減少しました。
コロナ前2019年の9月は80万人を超えており、それと比較すると39.8%(49万3,454人減)にとどまっています。
全体の訪日客数は218万4,300人。そのうち中国人客数は14.9%を占め、韓国、台湾に次いで第3位につけています。
ただし、2019年は36.0%と圧倒的な需要を持ち1位でした。水際対策解除が遅れたことや航空便回復の遅れなどによって、回復率という点では他市場に大きく遅れを取っている状況です。
なお、前月8月比では微減となっており、処理水問題の影響ではないかと考える方もいるかもしれません。しかし例年9月は7,8月に比べ減少する傾向にあるため、処理水問題による減少幅はかなり小さいものと見てとれます。
観光庁の髙橋長官も、「処理水の海洋放出の影響は限定的」としています(会見要旨)。
ただし、8月の団体旅行解禁による好影響も、当初予想されていたほどのインパクトはなかったようです。引き続き航空便数の回復の遅れや、航空運賃の高さが課題となっています。
7-9月の訪日中国人消費額は2,827億円
訪日中国人の外国人消費額は、2023年7-9月期で2,827億円でした。前回4-6月期から2倍近く(183.6%)に増えています。
全体の外国人消費額は1兆3,904億円であり、そのうち中国人消費額は20.3%を占め、第1位となりました。
ただし2019年は、中国が消費額全体の41.7%を占めていました。中国の訪日客数・消費額の回復が遅れる中で、他の国・地域の構成比が高くなっていることがわかります。
費目別に見ると、買物代が970億円、宿泊費が843億円、飲食費が560億円、交通費が267億円、娯楽等サービス費が184億円などとなっており、買物代が突出して多いのが特徴です。
一方、2019年同期と比較すると買物代が2,375億円、宿泊費が1,071億円、飲食費が885億円、交通費が398億円、娯楽等サービス費が193億円となっています。
比較すると、2023年7-9月は買物代の構成比が低くなり、宿泊費、飲食費、交通費、娯楽等サービス費それぞれの構成比が増えているのがわかります。買い物による消費はまだまだ大きいものの、やはり「モノ消費」から「コト消費」へと移行する傾向は強まっているようです。
なお、1人当たり消費額は28万4,934円となっており、2019年比40.0%増と高水準を維持しています。
ただし今は航空運賃が高いことなどから比較的高所得者層が来ている可能性がある他、円安により実質消費額が高くなっており、今後もこの水準を維持していくとは限りません。
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以上、中国インバウンドの最新動向データを解説しました。
今後の回復状況は、航空便の回復などに大きく左右されます。また、円安や処理水問題、その他国際情勢も注視しておくべきでしょう。
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<参照>
日本政府観光局(JNTO):訪日外客統計
観光庁: 訪日外国人消費動向調査
観光庁:髙橋長官会見要旨(10月18日)
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