インバウンドビジネスにおいては、訪日外国人観光客に何が売れるのか、何が流行っているのかを掴むことは非常に重要です。訪日外国人観光客の日本グッズブームの中には、企業が意図してプロモーションしたものもあれば、SNSなどでの拡散で自然発生的に生まれたもの、または全く想像のつかないところから発生することもあります。

例えば訪日タイ人観光客の間でアシックスのスニーカーブランド「オニツカタイガー」が流行したのは、若かりし頃の故・プミポン国王の着用写真がSNSで拡散したことがその発端と言われています。

この例に限らず、訪日外国人観光客や、彼らの母国での日本グッズブームの中には「なぜそれが今流行っているの?」と首をかしげたくなることも多々あります。今回は、そのような日本ブームの一例として、アメリカで流行中のたい焼きに焦点をあてて、その流行の背景を解説していきます。

 

アメリカでたい焼きが流行中

「社会の片隅で起きている 小さいけれど見過ごせない“事件”の数々 その、意外な真相をあぶり出す。」をキャッチコピーとするNHKの教養番組「所さん!大変ですよ」。その先日の放送では、アメリカを始めとした世界中で何故か巻き起こっているたい焼きブームについての追跡・調査をしています。

放送では、そのたい焼きブームの背景には、2006年の日本のアニメ「Kanon」があるとしています。

かっぱ橋道具街に、世界中からたい焼き機の注文が殺到

番組の取材を受けた「藤田道具」では、世界中からたい焼き機の問い合わせを受けている:kappabashi.or.jpより引用

番組の取材を受けた「藤田道具」では、世界中からたい焼き機の問い合わせを受けている:kappabashi.or.jpより引用

番組の冒頭では、かっぱ橋道具街のある店鋪に、世界中からたい焼きの調理器具の注文が殺到していることを紹介。

店鋪への取材によると、5年ほど前から「たい焼き機をオーダーしたい」との問い合わせが来るようになり、現在ではアメリカを中心に、年間40〜50件の問い合わせが来ている状況。

しかしながら、店主はその人気の理由がわからない、と取材で回答しています。

その背景には2006年の日本アニメ「Kanon」が

番組取材班は、調査を続行。すると、Twitter上で以下のツイートを発見します。

ツイートには「fans of the anime ‘Kanon’ should know what Taiyaki is. but Kanon fan ≠ average Anime fan I guess(「カノン」のファンならたい焼きを知ってるよね。でも「カノン」ファンは普通のアニメファンじゃないかも)」というテキストとともに、アニメ絵の少女がたい焼きを持っている画像が紹介されています。

その後、取材班はアメリカはロサンゼルスの有名アニメショップへ向かい、ショップ店員への質問により、この画像の意味を知ります。ツイートにあった画像は、日本のテレビアニメ「Kanon」の1シーンだったのです。

アメリカでのたい焼きブームの原因は「Kanon」のヒロイン

「Kanon」とは、2006年にBS-i(現BS-TBS)にて全24話で放映されたテレビアニメ。制作は「涼宮ハルヒの憂鬱」や聖地巡礼の発祥となったと言われる「らき☆すた」、最近では大ヒット映画「聲の形」を手掛けた京都アニメーションです。

本作のヒロインキャラクター「宮月 あゆ」の好物がたい焼きであり、作中では毎回のようにヒロインがたい焼きを美味しそうに食べるシーンが登場します。

このシーンを見たアメリカのアニメファン達は「いったい(これは)何だろう?と食べたくなるんだ」「寒いなかでたい焼きを食べるのを見ると 幸せな気持ちになって誰もが食べたくなるの たい焼きが広まったのは彼女のうれしそうな笑顔のおかげよ」(番組でのショップ店員への取材コメント)といった感想をいだき、たい焼きに興味を持ち始めます。

アニメファンからネットユーザーへの広まり

ニューヨークで展開する「Taiyaki NYC」:Instagram公式アカウントスクリーンショット

ニューヨークで展開する「Taiyaki NYC」:Instagram公式アカウントスクリーンショット

日本での放送から送れること5年、2010年ごろから、アメリカのSNS上で、アニメファンによるたい焼きの投稿が見られる様になります。

そこからアニメファン以外の一般人ユーザーたちにも話題となり、実際に作って食べることが流行していきます。しかも、たい焼きにアレンジが加えられ、日本とは違う独自の食べ物に進化していきます。

アメリカのシアトルの路面店で売られているたい焼きでは、ベーコン入りに”アメリカナイズド”され、またロシアではサーモンとクリームチーズのたい焼きに、そしてインドネシアではたい焼きにパン粉をつけて串揚げのように揚げて食べられるなど、たい焼きはそれぞれの国で独自の進化を遂げています。

 

まとめ:インバウンドで勝機をつかむには”インバウンドらしい”情報以外もチェック

今回ご紹介したたい焼きの例や、冒頭でも触れたタイでのオニツカタイガーの例など、日本の文化・商品が、日本人が想像もつかないプロセスで海外での人気を得るということがよくあります。

このような事例を調査・分析し、「なぜそれが流行しているのか」「どのような経路で広まったのか」を把握することで、プロモーションのヒントになる可能性があります。

そのため、インバウンドで勝機を掴むには、JNTOや観光庁が発表する訪日外国人観光客の動向や円為替相場の動きなどといった”インバウンドらしい”情報はもちろんのこと、海外での日本文化や商品に関連する流行についても、多角的にチェックしていく必要がありそうです。

 

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