外国人だらけのニセコで起こる問題、インバウンド誘致はバランスと対策がカギ

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北海道の「蘭越町」「ニセコ町」「倶知安町」の3町で構成されるニセコ観光圏は、2000年代に入ってから世界的に認知されるスキーリゾート「Niseko」へと飛躍的な進化を遂げました。

訪日外国人の多さに対応するため、今では外国人観光客をもてなすのは日本人ではなくニセコ観光圏で働く外国人が中心となり、日本人の姿を見かける方が珍しいほどです。 

インバウンド誘致に成功したニセコ観光圏ですが、一方では外国人が増えすぎたことによる様々な問題が出てきています。 今回の記事では、北海道ニセコエリアの現状と課題、その対策方法を紹介します。

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中国人、オーストラリア人などの外国人観光客をもてなすのも、外国人

「Niseko」として知られる世界的なスキーリゾートは、ニセコ町と、同じくニセコ観光圏の倶知安町にまたがっています。人口はニセコ町は人口約5,000人、倶知安町が約1万5,000人でどちらも比較的小さな町です。

ところが、2017年にはこの2つの地域を訪れる外国人観光客の数は、両町合わせてなんと年間27万人を超えています。

ニセコ町の外国人観光客入込状況の推移
▲[ニセコ町外国人観光客入込状況の推移]:ニセコ町観光統計資料「令和元年度 訪日外国人宿泊客数」より

外国人観光客の目的はスノースポーツです。ニセコ観光圏は今や世界屈指のスキーリゾート地として国際的に人気を集めています。毎年冬のシーズンになると中国や香港などアジア諸国を筆頭に、オーストラリアやイギリスなど欧米諸国からも観光客が足を運んでいます。

こうした外国人観光客の増加に加えて、ニセコ観光圏で働く外国人の数も急増しています。この結果、ニセコエリアを歩けば日本人を見かける方が稀」という不思議な現象が起きています。案内看板やお店のメニューなど、いたる所で目にするのは日本語ではなく英語表記です。

外国人観光客を相手に商売するのは外国人という構図が出来上がっています。ニセコ観光圏は、まさに外国人による外国人のためのリゾート地と化しています。

スポーツツーリズムと観光の関係/インバウンド誘致の事例・失敗例や課題は?

スポーツツーリズムとは、スポーツ観戦のための旅行、それに伴い周辺の観光地に足を運ぶことや、スポーツ選手と交流するための旅行など、スポーツに関わる旅行のすべてを意味します。 国内や海外への旅行が一般的になり、旅行の目的も多様化してきている中、現地体験を重視する「コト消費」の流行も顕著となっています。 こうした中で、スポーツツーリズムの可能性にも注目が高まっています。スポーツツーリズムの推進は、これまで以上の旅行者の誘致や地方の活性化の可能性も秘めています。 日本では、2019年は9月...


外国人観光客の富裕層誘致に成功

ニセコ観光圏には、インバウンド誘致成功の好例として参考にすべきポイントが数多くあります。

ニセコ観光圏の観光戦略で特筆すべき点は、外国人目線によるインバウンド対策・富裕層向けのビジネス戦略が功を奏しているところです。スキーリゾート地として宿泊施設や飲食店など一帯の開発が進み、短期滞在のみならず、中長期滞在にも適した環境が整備されています。

また外国人による外国人のためのリゾートとしての開発が進み、外国語対応など様々なサービスが充実しているのは外国人観光客にとって大きな魅力です。

さらにターゲットを富裕層に特定して事業展開されており、その戦略が外国人側のニーズとピッタリとはまっています。そのため富裕層向けのコンドミニアムやホテルも続々とオープンしています。

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外国人が増えすぎた結果の問題も

 外国人観光客を接客するため、ニセコエリアに住み込んで働く外国人も増えています。ニセコ観光エリアのうち、ニセコひらふ地域を有する倶知安町では住民登録をしている外国人の数が人口の12%にも及びます。

インバウンド市場において訪日外国人が増えることは喜ばしいことである一方、こうした状況を背景に、看過できない問題も出てきています。

サスティナブルツーリズムの意味・定義

サスティナブルという言葉は「持続可能な」という意味です。多くは地球環境の持続可能性を指し、環境問題を論じる際に用いられてきました。 最近では観光の分野でもこの「サスティナブル」という言葉が見られるようになってきました。 本編ではインバウンド市場における「サスティナブル」について解説します。 [com_category_dl_btn name="ツアー企画・ランドオペレーター" slug="tour-planning"] [cta_toc_upper_banner] 目次 サスティナブルとは...

京都・八坂神社前のローソンが閉店、原因は日本一の地価高騰:インバウンド需要増加の影にある激変と外国資本の参入

基準地価とは、国土利用計画法の土地取引価格の審査基準価格として設定されたもので、都道府県が毎年1回公表しています。2018年9月18日に発表された7月1日時点の基準地価を見ると、

1. 止まらない物価・家賃の高騰

外国資本によるリゾート開発が続いているニセコ観光圏では、同時に家賃や物価の高騰も続いています。

国土交通省の発表では、ニセコ観光圏の一つ倶知安町の住宅地の公示地価は3年連続で全国トップとなっています。ニセコ観光圏では富裕層向けのホテルやコンドミニアムなど、億単位の物件もどんどん売れている状況で、地価の高騰が続いています。

また、宿泊料や賃貸の家賃も上昇しています。ニセコ観光圏で働く外国人などが住むマンションは家賃が数十万というところもザラにあり、それでもすぐ満室になる状況です。

さらに物価の上昇にも影響は及んでいます。例えば、飲食店ではラーメン1杯3,000円や海鮮丼5,000円など驚きの高価格で料理が提供されています。

こうした家賃や物価の急激な高騰によって困惑しているのが地元住民です。

地価が上昇することに伴い固定資産税が上がること、家を借りようとしても北海道の道庁所在地である札幌よりも家賃が高くなること、新しく家を買うには高すぎることなど、住みづらい状況になってきています。

このような状況に見切りをつけた住民が持ち家を売り、ニセコ観光圏を出て札幌市などのマンションに移り住むケースも増えています。

2. 外国資本の過度な流入、地元経済やコミュニティとの関係希薄に

これだけ外国人観光客で賑わうニセコ観光圏なので、地元への経済効果も絶大かと想いきや、実態は享受できるはずの恩恵を十分に得られていない状況です。

例えば、外国人に対する不動産の売買は外国資本の不動産会社が仲介に入り、日本の企業はほとんど関与できていません。また外資系ホテルやレストランも、落ちたお金は地元に入らず国外へ流れ、直接地元の儲けに繋がっているわけではありません。

さらに、住民や行政への負担にも直結しています。ホテルやコンドミニアムを建設した外国人所有者の多くはニセコ観光圏に住んでおらず、固定資産税を支払うだけで管理は不動産会社へ任せているケースがほとんどです。

そうなると地元住民とのコミュニティ形成もできず、行政との連携も取れません。地域の防犯対策やごみ処理問題といった様々な問題が住民や行政に一気にのしかかってきます。

3. 今後起こりうる観光客の減少

現在ニセコ観光圏を訪れる外国人観光客の数は右肩上がりに伸びていますが、この状況が安定して続くとは言い切れません。

現に開発当初に圧倒的多数を占めたオーストラリア人が、今は白馬など日本各地のスキーリゾートへと流れており、ニセコ観光圏を訪れるオーストラリア人観光客の数は大幅に減少しています。理由としては、宿泊料の高騰やスキー以外の魅力が少ないことなどが挙げられます。

近年はアジア圏からの観光客が急増しているので全体数は増加していますが、今後オーストラリア人と同様に観光客数が頭打ちになり、減少へ転じる可能性も忘れてはならないでしょう。

外国人観光客の増加に伴い必要となる対応

ニセコ観光圏は、外国資本を中心に独特な発展を遂げている観光エリアです。観光業に従事するため、現地に住む外国人の比率も高くなっています。

この先も外国人観光客の増加が見込まれる日本において、ニセコ観光圏に類似した現象は各地で起こる可能性があります。対応方法やそのポイントを整理します。

オーバーツーリズムへの対処

許容量を超えた観光客の来訪を意味する「オーバーツーリズム」は人気観光地ではしばしば報告されている現象です。交通機関や宿泊施設、飲食店や小売店を多くの観光客が利用することで、日常生活に支障が出る場合もあります。

居住者の不満が募ってしまい、コミュニティ間の関係性が悪くなることもあります。こうしたネガティブな感情は、地元経済にとっても大きなリスクです。

両者の不満を防ぎ、生活や滞在の満足度を高めるため、ニセコ観光圏で特に以下の取り組みを重要視しています。

  • 地域にお金が落ちる仕組み

オーバーツーリズム解消には、インフラ整備が欠かせません。ところがこれには膨大なコストがかかるため、財源確保が必須課題です。

ニセコ観光圏の場合は、観光産業で得られるお金の多くは外国資本へ流れていると言われています。結果として、オーバーツーリズム対策を打ち出したくとも、固定資産税など地域の収入だけではまかないきれない部分が多く出てくることになります。

これは、観光客のための環境整備を、観光業の一端を担う外国資本が負担しないことを意味し、住民にその解消のためのコスト負担を強いているという点で、地域からの反発を生み出しかねません。

インフラ整備の資金という点でも、観光業に関係する人が問題解決のためのコストを負担するという意味でも、地域にお金が落ちる仕組みを作ることが重要です。

日本資本の進出もひとつの方法ですが、例えば東京や京都の宿泊税にように観光客から財源となるお金を徴収すること、開発企業などから共益費を徴収することなど多様な財源確保の手段を用意しておくべきでしょう。

  • ルール作り

外国資本によって開発が進むエリア・外国人観光客が集まるエリアでは、あいまいさを排したルール作りが必要となります。ニセコ観光圏では、行政・地元住民と開発事業者間でコミュニティ運営におけるルールを明確に設定しています。

また、ニセコ町の景観保全の条例は、自然と共存するためのルールとして機能しています。自然豊かなエリアでは、観光産業の振興のため過度な集客・開発をすすめた結果、自然景観が損なわれる危険性があります。こうした資源を保全するために、開発に着手する前にルールを制定しておくことが大切です。

VFR(友人や親戚の訪問)の取り込み

現在は安定して外国人観光客数が増加しているニセコ観光圏ですが、高騰が続くバブルの崩壊や人気の衰退などにより減少に転じる可能性があります。

そうなるとVFR(Visiting friends and relatives、友人や親戚の訪問を目的とした訪日客)の取り込みを考慮したインバウンド施策も重要となるでしょう。

ニセコ観光圏では観光客だけでなく、ホテルやレストランなど様々な場所で働く外国人労働者の数が増えており、冬の間だけの短期労働者・ニセコ観光圏へ定住する外国人も増えています。こうした滞在者・定住者を頼って外国からやってくる親族や友人の数が増えれば、さらなる経済の活性化が果たされるでしょう。

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外国人観光客の誘客は、起こりうる問題も踏まえ検討を

北海道のニセコ観光圏は、インバウンド誘致の成功事例として参考にすべきポイントが多くありますが、同時に成功の裏で起こっていること・今後起こりうる問題にも目を向けるべきでしょう。

ニセコ観光圏はすでに行政が制御できる範囲を超えて開発が進んでしまっている一面もあり、過度な開発を抑えるルール作りやオーバーツーリズムへの対処など、とにかくできる部分から先手を打つ必要がありそうです。

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<参照>

NIKKEI STYLE:雪が招く外資マネー ニセコで土地急騰、立ち退く人も

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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