最近メディアの訪日外国人観光客に関するニュースで、「爆買い」から「コト消費」にキーワードのトレンドが移ってきています。訪日ラボでも何度か触れてきましたが、改めて「爆買い」「モノ消費」「コト消費」について解説していきます。

 

「爆買い」とは

「爆買い」とは、訪日中国人観光客が、訪日中に日本国内の家電量販店、百貨店、ドラッグストアなどで一度に大量に商品を購入する様を形容する用語です。2014年ごろに使われ始め、2015年の春節(中国旧正月/2月)に訪日中国人観光客が大量購入していく様子を、メディアが「爆買い」として報道。そのことにより2015年の新語・流行語大賞にも選ばれました。

なぜ「爆買い」が起こったのか?

訪日中国人観光客による「爆買い」が起こった要因は2つあると言われています。1つは「為替レートの元高/円安」、そしてもう一つが「日本製品の高品質・高性能さ」です。

ドル円と人民元円の為替相場

ドル円と人民元円の為替相場

為替相場については、2014年ごろに一気に円安傾向が進んだことにより、相対的に日本での買い物が「お得」になった、ということがありました。日本製品を中国国内で購入しようとすると、関税や増値税(≒日本での消費税)、消費税(≠日本の消費税、いわば「贅沢税」のようなもの)、そして商社のマージンが載せられた金額になり、ただでさえ中国製品と同種のものであっても高額な日本製品が、より高額であり、なかなか手が出しづらい状況にありました。

しかしながら、円安が急激に進んだことにより、旅費を考慮しても、訪日して大量購入したほうが安い、という状況に発展。さらに、この状況に目を付けた転売目的の訪日中国人観光客の大量消費に繋がりました。

また、為替の影響による購買意欲の上昇や転売目的の大量購入を下支えしたのが、日本製品のクオリティーの高さです。「爆買い」の対象となった代表的な商品として、資生堂のブランド「SK-Ⅱ」の化粧品があります。「SK-Ⅱ」は中国国内で、そのクオリティーの高さから、まさしく「ブランド品」として扱われており、それが安価に購入できるということがあり、「爆買い」を促進させました。

なぜ「爆買い」は収束したのか?

「爆買い」の収束の原因は為替変動にあります。先述の「ドル円と人民元円の為替相場」のグラフを見てわかるように、円安傾向は2015年の5月頃をピークとしており、その後徐々に円高傾向にシフトしていっています。

為替相場の訪日外国人観光客1人あたりの旅行支出額への影響

為替相場の訪日外国人観光客1人あたりの旅行支出額への影響

また、それに伴い訪日外国人観光客1人あたりの旅行支出額も減少しています。訪日中国人観光客の消費額は、インバウンド消費全体の45.3%のシェアを誇っており、もちろん訪日中国人観光客も為替変動の影響を大きく受けています。

具体的には、今年の7-9月期は、為替相場が訪日中国人観光客にとって最も有利であった前年同期と比較して-18.9%減少しています。為替が円高に振れることによって、日本製品を購入することの「お得感」が減ったこと、そして転売目的の場合は利幅が減ったことにより、爆買いは収束に向かっていっています。

なお、1人あたりの旅行支出は、日本円においては減少しているものの、現地通貨ベースではむしろ増加傾向にあり、即座に悲観的になるべき状況ではない模様です。詳しくは、以下の記事を参照下さい。

 

「モノ消費」「コト消費」とは

それでは、インバウンド関連用語で「爆買い」からトレンドが移った「モノ消費」「コト消費」を見ていきましょう。これらは通常セットで使われ、「モノ消費からコト消費へ」といった使われ方をします。

「モノ消費」とは

「モノ消費」とは、その名の通り「物を買うことに価値を見出す消費行動」です。前述の「爆買い」がまさしく「モノ消費」にあたり、2015年までのインバウンドは、この「モノ消費」に支えられていました。

「モノ消費」がインバウンド市場のメインキーワードであったことには、「爆買い」の要因と同じく、

  • 日本製品のクオリティーの高さ、ブランド化
  • 円安傾向の為替相場

の2点に加え、

  • 主にアジア圏で「初訪日」の訪日外国人観光客が多かったこと

があげられます。これについては、次々項の『なぜ「モノ消費」から「コト消費」へシフトした?』で解説します。

「コト消費」とは

「コト消費」とは、「サービスや体験に基づく満足感に価値を見出す消費行動」です。現在ではインバウンド用語として語られることが多くなりましたが、その発祥は高度経済成長期以降の日本人の消費行動分析にあります。

高度経済成長期は、「三種の神器」「3C」といった言葉に代表されるように、モノを所有することに価値を見出していたものの、2000年ごろから、サービスや体験などで得られる満足感が、購買の判断基準になった、という文脈で使われ始めました。

その状況がインバウンド市場、特に訪日中国人観光客をはじめとしたアジア圏の訪日外国人観光客において発生し始めていることから、「モノ消費からコト消費へ」というフレーズがよく使われるようになります。

平成27年7月-9月期と平成28年7月-9月期の訪日外国人観光客旅行支出の費目別割合推移

平成27年7月-9月期と平成28年7月-9月期の訪日外国人観光客旅行支出の費目別割合推移

先日の観光庁の発表の解説記事でも触れましたが、今年の7-9月期の訪日外国人消費動向調査の結果は「モノ消費からコト消費」へのシフトが如実に現れています。

インバウンド市場での旅行消費額の高い上位5市場(中国、台湾、韓国、香港、米国)の旅行支出費目の割合を見てみると、米国を除き、軒並み「買い物代」の割合が減少、そして「宿泊料金」「飲食費」の割合が増加してきています。

なぜ「モノ消費」から「コト消費」へシフトした?

「モノ消費」から「コト消費」へのシフトの要因は

  • 為替の影響
  • 訪日リピーターの増加

の2つが考えられます。

まず、為替の影響についてですが、実際のところクリティカルな要因ではないと考えられます。為替相場が円高に振れたことにより、日本円ベースでの消費額が減少していることは間違いないでしょう。

しかしながら、現地通貨ベースでは、むしろ消費額は増加傾向にあるうえ、「コト消費」も消費活動には変わらないこと、また「コト消費」の消費額が増加していることから、やはり為替が円高傾向にあることは、「コト消費」へのシフトの主要要因とは言えません(転売目的の爆買いの衰退についてはクリティカルな要因と言えます)。

そのため、「コト消費」へのシフトの大きな要因は「訪日リピーターが増加したこと」にあると考えられます。「モノ消費」の要因について、「初訪日」がキーワードであることに触れました。初めて行く海外旅行先では、自分向けや、知人・親類向けのお土産などで、何かと買い物が増えてしまうものです。そこに円安傾向の追い風があったため、「爆買い」に代表される「コト消費」が増大しました。

その「コト消費」をするなかで、日本の文化や自然、景観、サービス(いわゆる「おもてなし」)といったものを体験し、満足感を得たことにより、次の訪日旅行の際には、より体験に対して消費したい、つまり「コト消費」をしたいというモチベーションにつながっていきます。これにより、リピーターとなった訪日外国人観光客は、「モノ消費」を一巡して、いわば「飽きてしまった」ことも相まって、「コト消費」を重視していっているものと考えられます。

 

まとめ:今後のインバウンド市場でのキーワードは「コト消費」

今後、訪日外国人観光客のリピーター率は必然的に上昇していき、「モノ消費」から「コト消費」へのシフトは、その傾向をより強化していくものと考えられます。とすれば、「免税店対応をした」「訪日外国人観光客に人気の商品を取り揃えた」といった「モノ消費」対策だけでは、インバウンド対策としては不十分となっていくでしょう。

ホテル・旅館といった宿泊業や飲食業界にとっては嬉しい傾向です。小売店業にとっては厳しい状況になりうりますが、ただ売るだけではなく、「モノ消費」に付加価値をつけ「コト消費」に昇華させるなど、まだ対応の余地はあるものと考えられます。

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