コロナ禍でも成功した観光地の事例に学ぶ-「観光庁令和2年度事業 誘客多角化実証調査事業」全国シンポジウムの開催レポート(前半)

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観光庁は、withコロナ・afterコロナ期における新たな観光のあり方等を検証し、国内各地域が感染拡大防止策を徹底した上で、効果的・効率的に誘客に取り組む環境を整備するためのシンポジウムを2021年6月7日(月)15:00~18:30にzoomにて開催しました。

尚、全体モデレーターを株式会社地域ブランディング研究所代表取締役吉田博詞氏が務めています。

本シンポジウムの様子をご紹介します。

後半記事はこちらから。

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第1セッション. withコロナ時代における感染症対策

▲第一セッションの登壇者
▲第一セッションの登壇者


このセッションでは、銀山温泉が行った事業と釜石で行われたラグビー大会の事業を事例として紹介し、withコロナ時代における感染症対策について話し合われました。

事例1. 銀山温泉のコロナ禍戦略

▲銀山温泉の事業背景・検証事項
▲銀山温泉の事業背景・検証事項

銀山温泉組合の総務マーケティング部長の小関氏は、「大正ロマン」を街の魅力づくり向上に取り入れた取り組みを行ってきましたが、日帰りの観光客の消費金額が伸び悩んでいた課題がありました。

そのため、コロナ禍における「新しい生活様式」に合わせた「ブランド価値向上」が必要と考えたということです。

▲コロナ禍での銀山温泉の取り組み
▲コロナ禍での銀山温泉の取り組み

そこで、新たな取組による従来の景観の損傷と有料化による客足の減少という懸念点はあったものの、銀山温泉ではコロナ禍に新しく夜の温泉街のライトアップを導入しました。

また、感染対策として周遊距離を200メートル増やし、三密回避のための温泉への入場規制を行い、入場料を1,500円に設定するといった対策をとりました。

実際に訪れた観光客からは、このような時期でも営業してくれたことへの感謝の言葉もあったそうです。

事例2. コロナ禍でのラグビー大会開催in釜石

▲釜石のラグビー大会におけるコロナ対策の考え方
▲釜石のラグビー大会におけるコロナ対策の考え方

発熱が発覚した場合には、コロナウイルス感染による発熱かどうかを判別するために抗原検査も行ったということです。

こういった目標への試みとして、コロナ禍の中で釜石でラグビー大会を開催しました。コロナ対策として招集チームを大学のチームや社会人チームに限定しつつ、専門家の招聘を行い独自マニュアルを策定し、大会関係者の1週間にわたる健康チェックも行いました。

釜石ラグビーツーリズム推進協議会の玉井氏は、ラグビーのシニア世界大会を釜石で開催することを目指しています。

発表後のディスカッション

ディスカッションの様子
▲ディスカッションの様子

ディスカッションの時間では地域ブランディング研究所代表取締役吉田博詞氏から、2つの事例の代表者に対していくつか質問がなされていました。

感染対策の徹底が必要不可欠

釜石ラグビーツーリズム推進協議会の玉井氏は感染対策の徹底が参加者に対する理解を深める上で最も需要だと考えています。

玉井氏は以下のように述べています。

「感染症に詳しい医者を招集し、プレー中の感染対策を徹底を行いました。また、あらゆる場合においても検温を徹底して行いました。例えば、体調の悪さからではなくラグビーのプレーによって体温が上昇したと考えられる場合にもコロナかどうか判別するためにドクターに同行していただきました。さらに抗原検査キットを持ち込み、早い段階で見極める工夫をしました。」

銀山の小関氏は地元の安全を第一に考えた行動をとったようです。小関氏は以下のように述べています。

「組合として事前に体調管理をしっかり行うよう声明を発表しました。

厳しい状況にありながらも体調管理をしっかり行っていると確認できない場合には宿泊客に対して宿泊を断るといった地元の安全を第一に考えた強気の対応を行いました。

また、夜の温泉街のライトアップの際に、提灯を客に渡し自然と客の間の距離を保つことによって自然とソーシャルディスタンスの目安になるようにしました。」

地域住民への理解にも奔走

釜石ラグビーツーリズム推進協議会の玉井氏は、コロナウイルスが持ち込まれるリスクを考慮し、感染防止や地域理解に努めました。

玉井氏は以下のように述べています 

「当時ほとんど釜石には感染者がいなかったので、(感染が)持ち込まれる心配がありました。そのため、会場に来る人達には必ずPCR検査を行ってもらい、陰性が確認できている状態で選手の皆さんに来てもらうことで、地域の皆様には安心してもらいました。」

銀山温泉組合の小関氏は丁寧な説明が重要だと述べています。 

「銀山温泉に関係する事業者の方々を集めたセミナーを行ったり、個々に訪問を行い、丁寧に感染対策について説明を行うことで納得してもらいました。」

第2セッション. これからの魅力的なコンテンツ造成

第二セッションの面々
▲第二セッションの面々
このセッションでは、これからの魅力的なコンテンツ造成について越前町と津和野の事例をもとにディスカッションが行われました。

事例1. 越前町のお魚プロジェクト

越前町のお魚プロジェクトの成果
▲越前町お魚プロジェクトの成果

一般社団法人越前町観光連盟の駒氏は年々深刻化している魚離れや、漁業の衰退化を守ることを目標としています。

越前町では新型コロナ対策の専門家を招聘し、モニタリングツアーを開催しました。また、越前町のオリジナル体験プログラムを三つ造成しました。

その結果、モニタリングツアーでは約90%の満足度を獲得し、体験プログラムにおいてはファミリー層を中心とした県内客の誘致に成功しました。

越前町では今後のコロナ終息に伴い、県外からの修学旅行生の募集も始めていく見通しだということです。

事例2. エコ&三密回避ツアーin津和野

津和野の取り組み
▲津和野の取り組み


津和野町商工観光課の村田氏は全盛期からつづく観光客の落ち込みから脱却し、かつての活気を取り戻すことを目指しています。

そのために、将来のインバウンド需要を見込んで以下の3点に着目しています。

  1. 町内の史跡や日本遺産による効果が期待できるもの
  2. 豊富な自然と人との関わりによる癒やし
  3. 小グループで行動できる時代にあった取り組み

これら3つの要素を観光資源に昇華させていく上で、津和野が大事にしていることは以下の3つです。

  • 参加者に負担が少なく持続可能(事業を有料化し、地域の皆さんの利益を確保する)
  • エコかつ、コロナ禍で安心安全(自転車でめぐることを軸とすることで、自然に優しく屋外の爽快感をもたらす)
  • 地域の資源を使う・ないものねだりをしないこと

将来的には今後三年間で総務省の地方創生推進交付金を用いてツアー構成のブラッシュアップ、ガイドの育成、評価、自転車の管理システムなどを作っていく予定だということです。

発表後のディスカッション

ディスカッションの様子
▲ディスカッションの様子


ディスカッションの時間では地域ブランディング研究所代表取締役吉田博詞氏から2つの事例の代表者に対していくつか質問がなされていました。

withコロナならではの工夫ポイント

withコロナならではの工夫したポイントについて、越前町観光連盟の駒氏は3つのポイントを挙げました。

「私は主に3つの工夫を行いました。1つ目はお家時間の増加に伴うファミリー層を狙った体験プロジェクトの構築、2つ目は県民をターゲットにした学びを含むプロジェクトの造成、3つ目はコロナの専門家を招聘し徹底した感染対策を行うことです。」

津和野町商工観光課の村田氏は域内連携の重要さを強調します。

「コロナ禍において大事なのは消毒だけでなく将来を見据えて域内連携により消費を生み出すことです。そしてコロナ禍であるがゆえに、『消費による満足』から自然などを満喫することによる『心の満足』へのシフトを行うことです。」

事業を継続していくために

越前町観光連盟の駒氏は修学旅行生や個人のお客様への対応が鍵だと考えています。

「修学旅行生に対して重要なことは、受け入れを通して地域業者との連携を深め、持続させていくことです。そして個人のお客様に対して重要なことは、サービスを行えるように実施体制の強化や販売スキームの拡大を行うことです。」

津和野町商工観光課の村田氏は、サステナビリティを実現するためにはブランド化が重要だと考えています。

「津和野の方言に”ユーナ”という、自然の中でゆっくりしてもらうという意味合いを持った言葉があります。これをブランド化させていきたいと考えています。

こうしたブランド化を通して、津和野にある日本遺産などの観光資源を活かし、新たなコンテンツを造成します。

そのためにも、地方創生推進交付金を活かし、向こう三年でお金をしっかり稼ぐことのできるモデルへ進化させることが重要と考えます。」

後半では第三セッション、第四セッションをご紹介し、コロナ終息後の観光業界について専門家の見解を紹介します。

後半へ続く

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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