観光庁は、withコロナ・afterコロナ期における新たな観光のあり方等を検証し、国内各地域が感染拡大防止策を徹底した上で、効果的・効率的に誘客に取り組む環境を整備するためのシンポジウムを2021年6月7日(月)15:00~18:30にzoomにて開催しました。
尚、全体モデレーターを株式会社地域ブランディング研究所代表取締役吉田博詞氏が務めています。
本シンポジウムの様子をご紹介します。
後半記事はこちらから。
【訪日ラボは、8月5日にインバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025」を開催します】
会場での開催に加え、一部講演ではオンライン配信(参加費無料)も実施!さらに、チケットを購入した方限定でアーカイブ配信も予定しています。
ご来場が難しい方や当日ご都合が合わない方も、この機会にぜひご参加ください。
第1セッション. withコロナ時代における感染症対策

このセッションでは、銀山温泉が行った事業と釜石で行われたラグビー大会の事業を事例として紹介し、withコロナ時代における感染症対策について話し合われました。
事例1. 銀山温泉のコロナ禍戦略

銀山温泉組合の総務マーケティング部長の小関氏は、「大正ロマン」を街の魅力づくり向上に取り入れた取り組みを行ってきましたが、日帰りの観光客の消費金額が伸び悩んでいた課題がありました。
そのため、コロナ禍における「新しい生活様式」に合わせた「ブランド価値向上」が必要と考えたということです。

そこで、新たな取組による従来の景観の損傷と有料化による客足の減少という懸念点はあったものの、銀山温泉ではコロナ禍に新しく夜の温泉街のライトアップを導入しました。
実際に訪れた観光客からは、このような時期でも営業してくれたことへの感謝の言葉もあったそうです。
事例2. コロナ禍でのラグビー大会開催in釜石

発熱が発覚した場合には、コロナウイルス感染による発熱かどうかを判別するために抗原検査も行ったということです。
こういった目標への試みとして、コロナ禍の中で釜石でラグビー大会を開催しました。コロナ対策として招集チームを大学のチームや社会人チームに限定しつつ、専門家の招聘を行い独自マニュアルを策定し、大会関係者の1週間にわたる健康チェックも行いました。
釜石ラグビーツーリズム推進協議会の玉井氏は、ラグビーのシニア世界大会を釜石で開催することを目指しています。
発表後のディスカッション

ディスカッションの時間では地域ブランディング研究所代表取締役吉田博詞氏から、2つの事例の代表者に対していくつか質問がなされていました。
感染対策の徹底が必要不可欠
釜石ラグビーツーリズム推進協議会の玉井氏は感染対策の徹底が参加者に対する理解を深める上で最も需要だと考えています。
玉井氏は以下のように述べています。
「感染症に詳しい医者を招集し、プレー中の感染対策を徹底を行いました。また、あらゆる場合においても検温を徹底して行いました。例えば、体調の悪さからではなくラグビーのプレーによって体温が上昇したと考えられる場合にもコロナかどうか判別するためにドクターに同行していただきました。さらに抗原検査キットを持ち込み、早い段階で見極める工夫をしました。」
銀山の小関氏は地元の安全を第一に考えた行動をとったようです。小関氏は以下のように述べています。
「組合として事前に体調管理をしっかり行うよう声明を発表しました。
厳しい状況にありながらも体調管理をしっかり行っていると確認できない場合には宿泊客に対して宿泊を断るといった地元の安全を第一に考えた強気の対応を行いました。
また、夜の温泉街のライトアップの際に、提灯を客に渡し自然と客の間の距離を保つことによって自然とソーシャルディスタンスの目安になるようにしました。」
地域住民への理解にも奔走
釜石ラグビーツーリズム推進協議会の玉井氏は、コロナウイルスが持ち込まれるリスクを考慮し、感染防止や地域理解に努めました。
玉井氏は以下のように述べています
「当時ほとんど釜石には感染者がいなかったので、(感染が)持ち込まれる心配がありました。そのため、会場に来る人達には必ずPCR検査を行ってもらい、陰性が確認できている状態で選手の皆さんに来てもらうことで、地域の皆様には安心してもらいました。」
銀山温泉組合の小関氏は丁寧な説明が重要だと述べています。
「銀山温泉に関係する事業者の方々を集めたセミナーを行ったり、個々に訪問を行い、丁寧に感染対策について説明を行うことで納得してもらいました。」
第2セッション. これからの魅力的なコンテンツ造成

事例1. 越前町のお魚プロジェクト

一般社団法人越前町観光連盟の駒氏は年々深刻化している魚離れや、漁業の衰退化を守ることを目標としています。
越前町では新型コロナ対策の専門家を招聘し、モニタリングツアーを開催しました。また、越前町のオリジナル体験プログラムを三つ造成しました。
その結果、モニタリングツアーでは約90%の満足度を獲得し、体験プログラムにおいてはファミリー層を中心とした県内客の誘致に成功しました。
越前町では今後のコロナ終息に伴い、県外からの修学旅行生の募集も始めていく見通しだということです。
事例2. エコ&三密回避ツアーin津和野

津和野町商工観光課の村田氏は全盛期からつづく観光客の落ち込みから脱却し、かつての活気を取り戻すことを目指しています。
そのために、将来のインバウンド需要を見込んで以下の3点に着目しています。
- 町内の史跡や日本遺産による効果が期待できるもの
- 豊富な自然と人との関わりによる癒やし
- 小グループで行動できる時代にあった取り組み
これら3つの要素を観光資源に昇華させていく上で、津和野が大事にしていることは以下の3つです。
- 参加者に負担が少なく持続可能(事業を有料化し、地域の皆さんの利益を確保する)
- エコかつ、コロナ禍で安心安全(自転車でめぐることを軸とすることで、自然に優しく屋外の爽快感をもたらす)
- 地域の資源を使う・ないものねだりをしないこと
将来的には今後三年間で総務省の地方創生推進交付金を用いてツアー構成のブラッシュアップ、ガイドの育成、評価、自転車の管理システムなどを作っていく予定だということです。
発表後のディスカッション

ディスカッションの時間では地域ブランディング研究所代表取締役吉田博詞氏から2つの事例の代表者に対していくつか質問がなされていました。
withコロナならではの工夫ポイント
withコロナならではの工夫したポイントについて、越前町観光連盟の駒氏は3つのポイントを挙げました。
「私は主に3つの工夫を行いました。1つ目はお家時間の増加に伴うファミリー層を狙った体験プロジェクトの構築、2つ目は県民をターゲットにした学びを含むプロジェクトの造成、3つ目はコロナの専門家を招聘し徹底した感染対策を行うことです。」津和野町商工観光課の村田氏は域内連携の重要さを強調します。
「コロナ禍において大事なのは消毒だけでなく将来を見据えて域内連携により消費を生み出すことです。そしてコロナ禍であるがゆえに、『消費による満足』から自然などを満喫することによる『心の満足』へのシフトを行うことです。」
事業を継続していくために
越前町観光連盟の駒氏は修学旅行生や個人のお客様への対応が鍵だと考えています。
「修学旅行生に対して重要なことは、受け入れを通して地域業者との連携を深め、持続させていくことです。そして個人のお客様に対して重要なことは、サービスを行えるように実施体制の強化や販売スキームの拡大を行うことです。」
津和野町商工観光課の村田氏は、サステナビリティを実現するためにはブランド化が重要だと考えています。
「津和野の方言に”ユーナ”という、自然の中でゆっくりしてもらうという意味合いを持った言葉があります。これをブランド化させていきたいと考えています。
こうしたブランド化を通して、津和野にある日本遺産などの観光資源を活かし、新たなコンテンツを造成します。
そのためにも、地方創生推進交付金を活かし、向こう三年でお金をしっかり稼ぐことのできるモデルへ進化させることが重要と考えます。」
後半では第三セッション、第四セッションをご紹介し、コロナ終息後の観光業界について専門家の見解を紹介します。
【7/3開催】宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」
インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。
本イベントでは「顧客への情報アピール」「顧客体験(ゲストエクスペリエンス)」「運営のデジタル化」など、施設運営に必要なをテーマを、市場の最前線を走るエキスパートたちが集結。お客様が施設を見つける「旅マエ」から、実際に滞在する「旅ナカ」まで、あらゆるフェーズにおける最新戦略と成功事例を徹底解説します。
<本セミナーのポイント>
- 変わりゆく市場の状況と、今後注目のトレンドを把握できる
- 旅マエの顧客行動を理解し、集客・予約率アップのヒントが得られる
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詳しくはこちらをご覧ください。
→宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」【7/3開催】
【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
<こんな方におすすめ>
- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
- 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
- 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
- インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
この記事では、主に6月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
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→「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年6月後編】
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