令和5年版観光白書 徹底解説(3):第II部・令和4年度に講じた施策「第1章:新型コロナウイルス感染症の対応と観光の復活」

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前回の記事では、令和5年版観光白書 第I部 第3章「持続可能な観光地域づくり‐観光地や観光産業における『稼ぐ力』の好循環の実現‐」について紹介しました。

前回の記事はこちら:第I部第3章 持続可能な観光地域づくりとは?

今回は、第II部の「令和4年度に講じた施策」を解説します。

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第1章 新型コロナウイルス感染症の対応と観光の復活

新型コロナウイルス感染拡大により落ち込んだ観光産業が、再興に向かった令和4年度。第II部ではコロナ前を超えるさらなる飛躍のために、政府がどのような施策を練っているのかについて説明されています。

この記事では、第1章より観光庁が定めた、観光立国推進基本計画にある「持続可能な観光地域づくり」「インバウンド回復」「国内交流拡大」の3つの戦略軸の中で、特に目新しい施策を取り上げて解説します。



持続可能な観光地域づくり

高付加価値を生み出す鍵は、ハードとソフト両面の改革

観光白書によると、観光地および観光産業の再生、高付加価値化に向けて、ハードウェア(施設)とソフトウェア(運営)の両面で施策に取り組んだとのことです。

具体例として、ハードウェア面は、宿泊施設や観光施設等の改修、廃屋の撤去について、ソフトウェア面では、キャッシュレス化やシームレスな予約や決済が可能な地域サイトの構築について紹介されています。また、各観光地で観光DX化を継続できるように、政府が支援制度を拡充させたことが説明されています。

令和4年度の「観光DX」の取り組みは、どこまで進んだ?

観光DXの推進に伴い、消費機会の拡大、消費単価の向上など、観光地経営の高度化を図るために、デジタル技術を用いたマーケティングの実証実験を14件実施したことが書かれています。

マーケティングに用いられたのは、リアルタイムに集約できる観光客の「消費」「周遊」「趣向」「移動方法」「消費」に関するデータです。

デジタル化が急速に進む中で、観光地でもデジタル技術活用の機運が高まっているものの、まだ進んでいません。

そこで、全国の観光地で観光DX を推進するため、観光庁はマーケティング実証実験の結果をもとに観光DXの先進モデルを生み出すことに取り組んだとされています。

上記に加え、DX推進による課題解決に向けた検討会をするため、2022年9月に「観光DX推進のあり方に関する検討会」を開催し、課題解決の方向性、将来ビジョン、KPI、ロードマップ等を取りまとめたことが説明されています。

関連記事:観光庁、「観光DX推進のあり方」最終取りまとめ公表 4つの柱で方向性示す

インバウンド回復

自然豊かな日本の魅力を発信!「国立公園満喫プロジェクト」とは?

国立公園満喫プロジェクト」とは、環境省が2016年から取り組んでいる、全34ヵ所の国立公園の環境を整備するプロジェクトのことです。

北海道から沖縄まで全国に34ヶ所ある国立公園では、日本ならではの自然と文化を体感できるなど、インバウンド促進につながるポテンシャルを備えていながらも、十分に生かされていないことが課題とされていました。

とくに、訪日外国人旅行客向けの施設整備、登山道の荒廃、遊歩道の老朽化により、来訪者の滞在時間が短いことが課題でした。

そこで、2022年度は4月に改正法が施行された「自然公園法」に則り、環境整備を推進しました。具体的には、「自然体験の促進」「廃屋撤去などの景観の改善」電気自動車の活用などの取り組みによる「脱炭素化などの持続可能性向上」、民間企業への委託により競争意識の醸成につなげて良いサービスを創り出す「民間活力導入」「ワーケーション環境の整備」を行ったとのことです。

加えて、民間企業による提案で、魅力の向上を図る施策を検討していることが説明されています。検討内容は、国立公園を利用拠点とする高付加価値な宿泊施設や宿泊体験を提供すること、とのことです。

旅行消費額が100万円以上!高付加価値旅行者を誘致する施策とは?

観光白書によると、訪日旅行における高付加価値旅行者への誘致促進をするため、「地方における高付加価値なインバウンド観光地づくり検討委員会」を開催し、観光庁がアクションプランを取りまとめたとされています。

高付加価値旅行者とは、「着地消費100万円以上/人」の訪日外国人旅行者と定義されています。これは、一人あたりの旅行消費額が100万円以上となる訪日外国人旅行者を指しており、日本では、この高付加価値旅行者を誘致しきれていないことが課題とされています。

そこで令和4年度は、アクションプランに基づき、訪日旅行での消費単価が高い高付加価値旅行者の集客が見込める地域を公募し、有識者の審査のもと、モデル観光地を11地域選定したとあります。

選定された11地域は以下のとおりです。

  1. 東北海道エリア:世界に認められた手つかずの大自然~希少動物と人間の共生~
  2. 八幡平エリア:数千年前の日本の文化が残る地
  3. 那須及び周辺地域エリア:日本有数の広大な扇状地、街道が育んだ生活文化~訪れる人住まう人に優しいロイヤルリゾート~
  4. 松本・高山エリア:日本の尾根が抱く森、雪、溢れる水と共にある生活~街道、城下町などが育んだ包摂性の高い社会、文化、歴史的景観~
  5. 北陸エリア:日本有数の霊峰白山の恵みが育んだ多様な文化~北前船の交易や武家により培われた豊かな文化と持続可能な社会~
  6. 伊勢志摩及び周辺地域エリア:日本神道の聖地・伊勢神宮を核とする参拝文化と一体となった自然、生活
  7. 奈良南部・和歌山那智勝浦エリア:古来からの巡礼と暮らしが共存する世界有数の地域
  8. せとうちエリア:世界に類を見ない多島美と、暮らし、アートの融合
  9. 鳥取・島根エリア:日本の紀元・神話の國
  10. 鹿児島・阿蘇・雲仙エリア:世界有数の火山と共にある信仰・営みが調和した循環・再生の仕組み、武家の精神性
  11. 沖縄・奄美エリア:琉球の精神性、自然環境、歴史的景観に触れる世界有数のブルーゾーン、well-beingの島

また、高付加価値旅行者の中には、利用者個人の都合などに合わせた運航が可能となるプライベートジェットを移動手段として用いる場合があります。

旅行しやすい移動環境を整備するために、プライベートジェット専用動線の整備など、利用環境の改善をしたことも示されています。

関連記事:1回の旅行消費額100万円以上!「高付加価値旅行者」の誘客に向け、11のモデル観光地を選定 観光庁

国内交流拡大

すべての人が楽しめるよう「バリアフリー」を推進

ユニバーサルツーリズムとは、高齢や障がいなどの有無にかかわらず、すべての人が楽しめるようつくられた旅行のことです。

観光白書によると、ユニバーサルツーリズムの推進に向けて、「観光施設における心のバリアフリー認定制度」で認定された施設のモニターツアーを実施するなど、情報発信に取り組んだと説明されています。

なお、「観光施設における心のバリアフリー認定制度」とは、バリアフリー対応やバリアフリーにかかわる情報発信に積極的に取り組む姿勢のある観光施設を対象とした認定制度のことです。

認定基準は以下の3つです。

  1. 施設のバリアフリー性能を保管するための措置を3つ以上行い、ご高齢の方や障がいのある方が施設を安全かつ快適に利用できるような工夫を行っている。
  2. バリアフリーに関する教育訓練を年1回以上実施していること。
  3. 自社のウェブサイト以外のウェブサイトで、施設のバリアに関する情報などのバリアフリー情報を積極的に発信していること。

また、認定対象施設について、これまでは宿泊施設、飲食店、観光案内所となっていましたが、「博物館法」で登録されている博物館などを追加したと説明されています。


ここまでが、観光白書の第II部 令和4年度に講じた施策「第1章 新型コロナウイルス感染症の対応と観光の復活」の解説となります。

次回の記事では、第II部 第2章 観光立国の実現に向けた観光施策より、今回と同様に目新しい施策を取り上げて解説いたします。

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<参考>

観光庁:令和5年版観光白書 第II部

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

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