FMOTとは?意味、ZMOTとの違いから現代の活用戦略まで徹底解説

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【連載:マーケティング用語・施策の基礎解説】

本連載では、国内外問わず通用するマーケティング施策を取り上げ、インバウンド対策にも役立つヒントをお届けします。

マーケティングの世界には、消費者の購買行動を理解するための様々なフレームワークが存在します。その中でも特に有名なのが「FMOT(エフモット)」です。

しかし、「FMOTとは具体的に何を指すのか?」「ZMOTやSMOTといった他の用語とどう違うのか?」「現代のマーケティングにおいて、まだFMOTは重要なのか?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

この記事では、FMOTの基本的な意味や提唱された背景、具体的な戦略から、近年注目されるZMOTとの違い、そして現代におけるFMOTの活かし方まで、分かりやすく徹底解説します。

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FMOT(First Moment of Truth)とは

FMOT(エフモット)とは、「First Moment of Truth(ファースト・モーメント・オブ・トゥルース)」の頭文字を取ったマーケティング用語で、日本語では「最初の真実の瞬間」と訳されます。

これは、消費者が店頭で特定の商品を目にし、購入するかどうかを決定する極めて短い時間、まさにその「瞬間」を指します。

P&Gによる提唱とその背景

FMOTの概念は、2004年に世界的な消費財メーカーであるP&G(プロクター・アンド・ギャンブル)社によって提唱されました。

当時、P&Gは多額の費用を投じてテレビCMなどのマス広告を展開していましたが、必ずしも売上増加に直結しないという課題に直面していました。

そこで同社が消費者行動を詳細に調査した結果、多くの消費者は広告を見て来店するものの、最終的な購買決定は店舗の商品棚の前で行っているという事実に着目しました。これがFMOTという概念が生まれるきっかけとなりました。

「最初の3~7秒」の重要性

P&Gの調査によると、消費者は店頭で商品を認識してから、わずか3~7秒という非常に短い時間で購入の意思決定を下していることが明らかになりました。

この「最初の真実の瞬間」に、いかに商品の魅力を伝え、競合商品の中から自社の商品を選んでもらえるかが、売上を大きく左右するのです。

つまりFMOTとは、この数秒間での「顧客との真剣勝負」であり、ここで選ばれなければ購入には至らないという、マーケティングにおける非常に重要なポイントを示しています。

FMOTが注目された理由と具体的な戦略

FMOTの概念は、それまでのマスマーケティング中心の考え方に一石を投じ、店頭でのコミュニケーションの重要性を再認識させました。

インストアマーチャンダイジングの鍵

FMOTの考え方では、テレビCMのような広範なアプローチよりも、店舗内での見せ方、つまり「インストアマーチャンダイジング」が極めて重要であるとされました。

同じ棚に並ぶ競合商品との比較の中で、いかに自社製品を際立たせ、消費者の選択を促すかが焦点となります。

P&GはこのFMOT理論に基づき、店頭戦略を科学的かつ統計的に見直し、インストアマーチャンダイジングを徹底することで、実際に売上を伸ばすことに成功しました。

FMOTを勝ち抜くための具体策

FMOTで消費者に選ばれるためには、以下のような具体的な施策が考えられます。

  • 魅力的なパッケージデザイン:消費者の目を引き、商品の特徴や便益が一瞬で伝わるデザイン。
  • 効果的なPOP広告:商品の魅力やキャンペーン情報を効果的に伝え、購買意欲を刺激するPOP(Point of Purchase advertising)。
  • 目を引くディスプレイ:商品の陳列方法や配置を工夫し、手に取りやすく、魅力的に見えるようにする。
  • 販売スタッフの接客スキル向上:商品知識やコミュニケーション能力を高め、顧客の疑問解消や購買を後押しする。
  • 店頭プロモーションの実施:サンプリングや実演販売などで、商品の体験機会を提供する。

これらの施策を通じて、消費者が商品を手に取る「最初の真実の瞬間」に、購入の決断を後押しすることがFMOT戦略の核心です。

FMOTの概念が登場した後、消費者の購買行動をより多角的に捉えるために、いくつかの「真実の瞬間」が提唱されています。

これらを理解することは、現代のマーケティング戦略を考える上で不可欠です。

SMOT(Second Moment of Truth)とは?

SMOT(エスモット)は、「Second Moment of Truth(セカンド・モーメント・オブ・トゥルース)」の略で、「第二の真実の瞬間」を意味します。

これは、消費者が商品を購入し、実際に使用・体験する瞬間を指します。P&GがFMOTと同時に提唱しました。

SMOTでの体験が良ければ、顧客満足度が高まり、リピート購入や口コミによる推奨につながります。逆に体験が悪ければ、二度と購入してもらえない可能性もあります。

SMOTは顧客ロイヤルティを形成する上で非常に重要な瞬間です。

関連記事:SMOTとは?消費者がリピートを決断する瞬間・マーケティング施策へ応用するポイントも解説

ZMOT(Zero Moment of Truth)とは?

ZMOT(ジーモット)は、「Zero Moment of Truth(ゼロ・モーメント・オブ・トゥルース)」の略で、「第ゼロの真実の瞬間」を意味します。

これは、2011年にGoogleによって提唱された概念で、消費者が店舗を訪れる前、つまり商品を実際に目にする前に、インターネットやSNSなどで情報収集を行い、購入の意思決定を行う瞬間を指します。

スマートフォンやインターネットの普及により、消費者は購入前にオンラインでレビューを比較したり、商品の評判を調べたりすることが当たり前になりました。

ZMOTは、この「来店前の下調べ」の段階が購買決定に大きな影響を与えることを示しています。

関連記事:ZMOTとは?Google提唱のマーケティング理論|消費者の新たな意思決定モデル

TMOT(Third Moment of Truth)とは?

TMOT(ティーモット)は、「Third Moment of Truth(サード・モーメント・オブ・トゥルース)」の略で、「第三の真実の瞬間」を指します。

これは、SMOTを経た消費者が、その商品やブランドに対して継続的な愛着を持ち、積極的に他者に推奨する(ファンになる)瞬間を表します。

TMOTは、消費者が単なるリピーターからブランドの支持者へと変わる重要な段階であり、口コミSNSでの情報発信を通じて、新たなZMOTを生み出す起点ともなります。

各「瞬間」の時系列と関係性

これらの「真実の瞬間」は、以下のような時系列で発生し、相互に関連し合っています。

  1. ZMOT:来店・購入前の情報収集・意思決定
  2. FMOT:店頭での購入意思決定
  3. SMOT:購入後の使用・体験
  4. TMOT:体験の共有・ファン化・推奨

現代のマーケティングでは、これらの瞬間を連続的な顧客体験として捉え、それぞれの段階で最適なアプローチを考える必要があります。

FMOTはもう古い?現代におけるFMOTの位置づけ

ZMOTの概念が登場し、消費者の情報収集行動が大きく変化した現代において、「FMOTの考え方はもはや通用しないのでは?」という意見も聞かれます。しかし、本当にそうでしょうか。

インターネット普及による消費者行動の変化

P&GがFMOTを提唱した2000年代初頭と比較して、現在はインターネット、特にスマートフォンの普及により、消費者はいつでもどこでも簡単に情報にアクセスできるようになりました。

商品に関する口コミサイト、比較サイト、SNS、個人のブログなど、情報源は多様化し、その情報量も爆発的に増加しています。

これにより、多くの消費者は来店前に購入する商品をある程度決めている、あるいは候補を絞り込んでいるケースが増えています。これが「FMOTは過去のもの」と言われる主な理由です。

ZMOTの台頭とFMOTへの影響

Googleの調査によれば、多くの消費者が商品購入前にオンラインレビューをチェックし、買い物の際にスマートフォンを活用しています。テレビCMで興味を持った商品についても、その後オンラインで詳細を調べるのが一般的です。

このように、ZMOTの段階で消費者の購買意欲やブランドイメージが大きく形成されるため、マーケティングの重点はオンラインへとシフトしています。

その結果、相対的にFMOTの重要性が低下したように見えるかもしれません。

現代のマーケティング戦略:FMOTとZMOTをどう活かすか?

消費者行動が変化したからといって、FMOTが完全に無意味になったわけではありません。重要なのは、ZMOTとFMOT、そしてSMOTやTMOTといった各瞬間を統合的に捉え、現代に合った形で戦略を再構築することです。

店頭での「最後のひと押し」としてのFMOT

オンラインで情報を集め、ある程度購入の意思を固めて来店した消費者にとっても、店頭での体験は依然として重要です。

実際に商品を手に取った時の感触、パッケージの魅力、店員の丁寧な説明などが、「最後のひと押し」となって購入を決定づけることは少なくありません。

また、特に購入予定のなかった商品でも、魅力的なディスプレイやPOPによって衝動買いを誘発する可能性も残っています。FMOTは、ZMOTで形成された期待を裏切らず、購入へとスムーズに導くための「最終確認の場」としての役割を担っていると言えるでしょう。

ZMOTに働きかける施策(口コミ、SNS、SEO)

ZMOTの段階で消費者に選ばれるためには、オンライン上での情報発信とコミュニケーションが鍵となります。

  • 口コミサイトやレビュー対策:良い口コミを増やし、ネガティブな意見には真摯に対応することで、信頼性を高めます。
  • SNSマーケティング:Instagram、X(旧Twitter)、Facebookなどを活用し、ブランドの世界観を伝え、顧客とのエンゲージメントを深めます。インフルエンサーマーケティングも有効です。
  • SEO(検索エンジン最適化):消費者が情報を検索する際に、自社サイトや関連情報が上位に表示されるように対策します。有益なコンテンツマーケティングも重要です。
  • オウンドメディアの活用:自社ブログやWebサイトで、専門的で価値のある情報を提供し、ブランドの権威性を高めます。

オンラインとオフラインの連携(OMO)

現代のマーケティングでは、オンライン(ZMOT)とオフライン(FMOT)を分断して考えるのではなく、これらをシームレスに連携させるOMO(Online Merges with Offline)の視点が重要です。

例えば、オンラインで商品の詳細情報を提供し、店舗での受け取りや試着を予約できるようにする。

店舗では、オンラインの購買履歴に基づいたパーソナルな接客を提供する。SNSで店舗限定のキャンペーン情報を発信するなど、オンラインとオフラインの顧客体験を融合させることで、より効果的なアプローチが可能になります。

FMOTの活用事例

多くの消費財メーカーが、FMOTの考え方に基づいた店頭戦略を実践し、成果を上げています。

これらの企業では、消費者の購買行動を詳細に分析し、商品パッケージのデザイン改良、注目を集める店頭ディスプレイの工夫、販売スタッフの接客スキル向上などを通じて、店頭でのブランド選択率を高める努力をしています。

具体的には、日常生活でよく使われる洗剤やパーソナルケア製品、食品などの分野では、多くのブランドが魅力的なパッケージデザインや効果的な店頭プロモーションによって、消費者の「最初の真実の瞬間」を捉え、選択される工夫を凝らしています。

他にも、化粧品業界では、テスターの充実や美容部員によるカウンセリング、アパレル業界では魅力的なコーディネート提案や試着しやすい環境づくり、食品業界では試食販売や目を引くパッケージデザインなどが、FMOTを意識した戦略と言えるでしょう。

FMOTを理解し、現代のマーケティングに活かす

FMOT(最初の真実の瞬間)は、消費者が店頭で商品と出会い、購入を決定するわずか数秒間の重要性を示したマーケティング概念です。

インターネットの普及によりZMOT(第ゼロの真実の瞬間)の重要性が増した現代においても、FMOTは顧客体験の最終段階における「最後のひと押し」として依然として重要な役割を担っています。

これからのマーケティングでは、ZMOTでいかに顧客の関心を引きつけ、FMOTで期待を裏切らず購入へと導き、SMOT・TMOTで長期的なファンにしていくかという、一連の「真実の瞬間」を統合的に捉えた戦略が求められます。

FMOTの本質を理解し、オンラインとオフラインを融合させたアプローチを取り入れることで、変化する消費者行動に対応し、ビジネスを成功へと導くことができるでしょう。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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