旅行業界に特化したアメリカの大手調査会社フォーカスライト(Northstar Travel Group)は、11月18日~20日にカリフォルニア州サンディエゴで、「フォーカスライト・カンファレンス」を開催しました。
カンファレンスでは、AIエージェントやAI時代の検索行動、SNS、アメリカ人旅行者の消費心理など様々な講演が行われ、多数の著名企業が登壇しました。
本記事では、トリップアドバイザー データ・AI部門責任者のラフール・トッドカー氏と、AIデータクラウドを提供するSnowflake(スノーフレーク)旅行・ホスピタリティ部門 グローバルヘッドのホイットニー・ホーソーン氏による対談セッション「AIによる変革:旅行業界への影響」の模様をレポートします。
関連記事:生成AIが観光の課題をどう変える?活用事例や注意点も解説

AIが旅行業界にもたらす「5つのトレンド」
両氏は、「AIが旅行業界にもたらす5つの重要トレンド」として、以下の5つを提示しました。
- データ
- 検索
- パーソナライゼーション
- AIエージェント
- チェンジマネジメント
1. データ:真の価値は「非構造化データ」
冒頭、ホーソーン氏は「データなしにAIは存在しない」とし、企業の競争力の源泉が変化していることを指摘しました。
これまで航空会社やホテルなどは、機材の改装やラウンジ体験といった「インフラ」に投資してきましたが、これからより重要となる資産は「ファーストパーティデータ(自社で収集したデータ)」になります。
特に注目すべきは、企業が保有するデータの80%以上を占めるとされる「非構造化データ(レビューのテキストや音声ログ、SNSの投稿など)」です。これまでは活用が難しかったデータを、生成AIによって統合・解析可能になったことで、以前は得られなかったインサイトを得られるようになりました。
またトッドカー氏は、新しいトレンドの一つとして、保有しているデータについて、AIが文脈を理解しより適切な回答を生成できる形に加工する「コンテキスト・エンジニアリング」という用語を挙げました。
旅行会社においては、顧客に関するデータ(マーケティング、ロイヤルティ、オペレーション、コンタクト)はバラバラに存在していましたが、これらすべてを統一し、一人の顧客への確固たる理解に基づいて意思決定を行うことが、他社との差別化につながるとしました。
2. 検索:SEOから「AEO」「GEO」に
ユーザーがブランドを見つける方法は完全に変わり、ユーザーの行動は、単なる「検索」から「答え」を求める行動へとシフトしていると言います。
これに伴い、マーケティングにおいてもSEO(検索エンジン最適化)から、GEO(生成エンジン最適化)やAEO(回答エンジン最適化)という新しい用語が生まれました。
企業は、Webサイトなどで提供しているコンテンツがAI対応であるか、つまりAIエージェントがそれを読み、答えとして構成できるようにテキスト化されているかを考える必要があるとしました。
3. パーソナライゼーション:より深く一貫した顧客理解が重要
従来のパーソナライゼーションはテキストが中心でしたが、今後は画像、動画、音声など異なる種類のデータを組み合わせて処理する「マルチモーダルAI」が標準となると言います。
特に旅行において顧客は、出張や家族旅行、友人との旅行など、複数のペルソナを持っており、そのすべての情報を包括的に理解し、一貫したコンテンツ提供を行う重要性を説きました。
4. AIエージェント:「顧客志向」から「従業員志向」に
トッドカー氏は、AIエージェントと従来のチャットボットの違いとして、「コンテキスト(文脈理解)」「記憶(以前のやりとりを覚えている)」「エージェンシー(自律的な意思決定)」の3つを挙げました。講演では、AIエージェントを利用したフライト予約に前向きな消費者は約70%、ホテル予約では約65%というデータも示されました。
また、トレンドの変化として「純粋な顧客志向から従業員志向へのシフト」が語られました。AIエージェントの活用では、まず「どうしたら社内の従業員の生産性を高められるか」に焦点が当てられていると言います。
5. チェンジマネジメント:変化の最大の壁は「人」
最後に両氏は「物事を変化させるには人が必要」として、組織文化の変革の重要性を語りました。
ある調査によると、AIプロジェクトの成功率はわずか8%に過ぎず、失敗の主な原因は「リーダー、人、文化が準備できていない」からだと言います。
「AIを『同じことを速くやるためのツール』と考えてはいけない」と語り、AIは「全く新しい方法で仕事をするための手段」であり、リーダー層がそのビジョンを示し、組織全体の文化を再構築する必要があるとしました。
インバウンド対策にお困りですか?
「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの集客や受け入れ整備のご相談に対応します!
【12/2開催】店舗とデジタルの分断を超える!データ統合で実現する“シームレスな顧客体験”とは?

多くの小売企業が、店舗、EC、アプリ、LINEなど多岐にわたる顧客接点を持っています。しかし、そのデータは分断され、「同じお客様に一貫した体験を提供できない」という課題に直面し、その結果、最適なタイミングで適切な情報提供ができず、機会損失を招いています。
今回、このような悩みをもつ小売業者さまに向け「店舗とデジタルのあらゆるデータをシームレスにつなぐ顧客体験設計」を解説するセミナーを開催します。
国内外の事例を交え、小売企業の皆様に最新トレンドと実践法をお届けします。
<セミナーのポイント>
- 店舗とECの在庫情報を連携させたOMO戦略の最新事例がわかる!
- 顧客データ統合によるOne to Oneマーケティングの実践法が学べる!
-
小売業のデータ分断課題を解決し、“シームレスな顧客体験”を実現するヒントが得られる!
→【12/2開催】店舗とデジタルの分断を超える!データ統合で実現する“シームレスな顧客体験”とは?
【インバウンド情報まとめ 2025年11月後編】中国の訪日自粛要請、観光庁長官の受け止めは? ほか

訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
この記事では、主に11月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
※訪日ラボ会員にご登録いただくと、レポートの全容を無料にてご覧いただけます。
詳しくはこちらをご覧ください。
→中国の訪日自粛要請、観光庁長官の受け止めは?/ 10月の訪日外客数389.6万人、国別1位は韓国 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年11月後編】
今こそインバウンドを基礎から学び直す!ここでしか読めない「インバウンドの教科書」
訪日ラボの会員限定コンテンツ「インバウンドの教科書」では、国別・都道府県別のデータや、インバウンドの基礎を学びなおせる充実のカリキュラムを用意しています!
その他、訪日ラボの会員になるとインバウンド対策で欠かせない中国最大の口コミサイト「大衆点評」の徹底解説や、近年注目をあつめる「Google Map」を活用した集客方法など専門家の監修つきの信頼性の高い教科書コンテンツやインバウンドを分析したレポート、訪日ラボのコンサルチーム登壇のセミナーなど役立つコンテンツが盛りだくさん!










