医薬品・日用品メーカーはどうやってインバウンドにおいて地方誘致・地方創生に取り組むべきなのか?
インバウンド市場が盛り上がる中で、医薬品・日用品メーカーが地方誘致・地方創生によってインバウンド集客で成功する事例が増加しています。都心部での訪日外国人受け入れのノウハウをそのまま持っていって成功する場合もあれば、地方ならではの特色を活かしたり、個別の取り組みが評価されている事例もあります。
このページでは、医薬品・日用品メーカーの地方誘致・地方創生のインバウンド対策やインバウンド集客における活用について、次の3つの事例を取り上げます。
- 医薬品・日用品メーカー×地方誘致・地方創生事例その①:伸びる中国での紙おむつ需要を取り込んだ「ユニ・チャーム株式会社」
- 医薬品・日用品メーカー×地方誘致・地方創生事例その②:低価格高機能商品の魅力によって新たな需要を呼び込む「ライオン株式会社」
- 医薬品・日用品メーカー×地方誘致・地方創生事例その③:中国でも好まれる日本の「漢方」で勝負する「株式会社ツムラ」
地方誘致・地方創生のためのインバウンド集客やインバウンド対策においては、業界・業種やターゲットとする国籍によってかなりその内容が様変わりします。例えば、中国出身の訪日外国人には人気の観光地が、台湾出身の訪日外国人には人気ではなかったり、その消費動向が異なっていたりすることがあります。またこういた訪日外国人の国籍とは関係ない共通の手法が、色々な国からの訪日外国人にしっかりと効果がある場合もあります。
ここでは、医薬品・日用品メーカーという業界・業種における地方誘致・地方創生の各社の事例を元にして、効果的な地方誘致・地方創生を活用したインバウンド対策やインバウンド集客のケーススタディーをしてみます。それでは見ていきましょう。
医薬品・日用品メーカーの地方誘致・地方創生に関連するインバウンド対策資料を無料で詳しく見てみる
「インバウンドコンサル」の資料を無料でダウンロードする「広告運用」の資料を無料でダウンロードする「展示会出展サポート」の資料を無料でダウンロードする伸びる中国での紙おむつ需要を取り込んだ「ユニ・チャーム株式会社」
「ユニ・チャーム株式会社」は、生理用品、紙おむつなど衛生用品を製造、販売している大手メーカーです。ベビーケア、フェミニンケア、ヘルスケア関連製品ではアジア1位のシェアを誇る企業で、日本企業でありながら、その海外売り上げ比率は6割を超えています。「ユニ・チャーム株式会社」はアジアでは古くから積極的にマーケティング戦略を展開。タイ、インドネシア、中国などで人気が高いことを受けて積極的なマーケティングを展開してきました。特に中国では肌につけるものに対する中国製の製品に対する信頼が低く、身につけるものは中国製ではなく日本製が良い、特に赤ちゃんに使用するものは良いものを使いたいという思いが、「一人っ子政策」の影響もあって非常に強い国です。
伸びる中国での紙おむつ需要を取り込んだ
こうしたアジアでの需要を受けて、「ユニ・チャーム株式会社」は2018年12月に福岡県苅田町に新工場を建設中です。「ユニ・チャーム株式会社」が九州に工場を建設するのは初めてです。国外におけるベビー用紙おむつのインバウンド需要は安定しており、引き続き日本製の紙おむつを求める需要は非常に高い状態が続いています。なお、こうしたベビー用品は中国への越境ECが約2.6倍拡大しており、日本でこうした紙おむつを購入した中国人は、帰国後もECを通じてリピーターとなる割合が高くなっています。
また「ユニ・チャーム株式会社」紙おむつのトップブランドとして紙おむつのリサイクルにも積極的に取り組んでおり鹿児島県東部に位置する志布志市と2016年5月に「志布志市使用済み紙おむつ再資源化推進協議会」を発足。これによってリサイクルへの取り組みを加速するだけでなく、新たな雇用を生み出し、雇用を生み出すという形で地方創生を間接的に手伝っています。
低価格高機能商品の魅力によって新たな需要を呼び込む「ライオン株式会社」
「ライオン株式会社」は東京都墨田区に本社を構える洗剤、石鹸、歯磨き、化粧品, 医薬品を手がける日本の大手メーカーで、東京証券取引所第一部に上場しています。設立は1918年と古く、様々な商品をラインナップしています。訪日外国人が大量に訪れるドラッグストアで集客を牽引しているのは医薬品、化粧品、口腔ケア用品ですが、ライオンもそのインバウンド需要を上手く取り込み成長しています。
低価格高機能商品の魅力によって新たな需要を呼び込む
「ライオン株式会社」は実は国内では歯ブラシのトップシェアを誇るブランドで、日本国内においては長寿高齢化社会が進んでいること、そして訪日外国人に歯ブラシが人気であることから、2016年には国内の生産拠点である明石工場で10年ぶりとなる増産体勢を取りました。明石工場ではナイロン製のブラシを植え付ける植毛機を導入したほか、毛先を曲面にするなど高機能製品を効率良く生産する能力があるため、利益率の高い中価格帯、高価格帯の歯ブラシを量産できる能力があります。
特にこうした高機能歯ブラシは海外で購入すると倍近い値段がする地域や国もあり、こうした日本の高機能歯ブラシを日本で大量購入して友人や家族に配る、または転売するといった目的で購入していく訪日中国人の姿も多く見られてきました。「ライオン株式会社」はこうした需要に応えるために工場での増産体勢を図り、さらには中国の青島工場でも同様に増産体勢を図るなど地方部、国内での増産を図ることで新たなインバウンド消費に結びつけてきました。優れた商品を低価格で提供すること口コミ、SNSでの拡散もされるようになりますし、それが新たな需要を都心部、地方部に呼び込むという好例と言えるでしょう。
中国でも好まれる日本の「漢方」で勝負する「株式会社ツムラ」
「株式会社ツムラ」は1893年創業の東京都港区赤坂に本社を置く漢方薬品メーカーです。漢方薬というと中国伝来のものだと考えがちですが、そもそも「漢方」という言葉は、江戸時代に日本に伝来したオランダからの医学である「蘭方」に対し、それまで日本に存在した医学を総称して「漢の国から伝来した医学」という考えから「漢方」と名付けたことがきっかけと言われています。一方で、中国伝統の医学は「中医学」と呼ばれ、陰陽五行説などの自然哲学に基づいた中国の伝統医学であり、日本の「漢方」とはに似て非なるものです。また、あまり知られていまっせんが、世界における日本の漢方薬の市場シェアは90%となっており、世界で「漢方薬」と言うと日本製という図式です。
中国でも好まれる日本の「漢方」
「株式会社ツムラ」は国内の漢方市場において8割強の圧倒的シェアを占めていますが、訪日外国人にとっても日本の漢方薬は信頼できるとして人気となり、「ツムラ」もこうしたインバウンド需要を上手に取り込んでいます。これらの漢方薬は原材料こそ中国からの輸入に頼っている部分があるものの、日本メーカーはその原材料の栽培過程において、化学肥料や農薬を極力使用せず、農薬残留物や重金属含量を抑えています。こうした基準値は中国の中医薬よりも圧倒的に厳しく、欧米諸国の基準値もクリアしており、こうした点が「何が入っているのか、残留農薬などは基準値なのか信用できない」中国産の中医薬よりも、中国人に選ばれるという結果になっています。
また、パッケージや商品名が漢字表記であるために、日本語や英語が理解できない中国人にとっても、どのような内容物なんか、どのような効能が期待できるのかがイメージしやすく、それで日本の「漢方」が選ばれているという背景もあります。こうした日本の漢方薬は当然ながら都心、地方部のドラッグストアなどでも人気の商品となっており、訪日外国人が地方を訪れた際の消費増に貢献していると言えるでしょう。