【グラフでわかる】都道府県別インバウンド訪問者数・宿泊者数・消費額ランキング 消費単価が高い意外な県とは?

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2024年に入り、さらなる盛り上がりを見せるインバウンド市場。日本政府観光局JNTO)によれば、2024年1月〜10月の累計訪日外国人客数は3,019万2,600人で、1964年の統計開始以来過去最速で3,000万人を突破しました。

一方で、インバウンド需要は三大都市圏*に集中している状況にあり、地方部にも訪日外国人を呼び込めるかどうかが今後の課題となっています。

本記事では、訪日外国人が滞在中に訪れる都道府県や、旅行先における消費動向について、観光庁のデータをもとに解説します。

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*本記事における三大都市圏は、東京都神奈川県千葉県埼玉県愛知県大阪府京都府兵庫県の8都府県を指します。

都道府県別 外国人訪問者数ランキング:三大都市圏に集中

まず、各都道府県における外国人訪問者数を見ると、1位が東京都(377.8万人)、2位が大阪府(332.5万人)、3位が千葉県(272.1万人)の順となっています。訪問者が三大都市圏に集中していることがわかります。

  1. 東京都(377.8万人)
  2. 大阪府(332.5万人)
  3. 千葉県(272.1万人)
  4. 京都府(254.1万人)
  5. 福岡県(90.9万人)
  6. 奈良県(72.6万人)
  7. 神奈川県(71.6万人)
  8. 山梨県(67.0万人)
  9. 愛知県(50.5万人)
  10. 兵庫県(42.7万人)

▲都道府県別訪問者数:インバウンド消費動向調査(2024年4‐6月期)より

都道府県別 外国人訪問率ランキング:同じく三大都市圏が上位に

次に訪問率を見ると、こちらも1位が東京都(50.2%)、2位が大阪府(44.2%)、3位が千葉県(36.2%)となっています。

※訪問率は、ある都道府県の訪問者数÷全体の訪問者数より算出:インバウンド消費動向調査個票データ利用の手引きより。合計すると100%を超えるのは、複数の都道府県に訪問する旅行者が多いため

  1. 東京都(50.2%)
  2. 大阪府(44.2%)
  3. 千葉県(36.2%)
  4. 京都府(33.8%)
  5. 福岡県(12.1%)
  6. 奈良県(9.7%)
  7. 神奈川県(9.5%)
  8. 山梨県(8.9%)
  9. 愛知県(6.7%)
  10. 兵庫県(5.7%)

▲都道府県別訪問率:インバウンド消費動向調査(2024年4‐6月期)より

訪問者数のランキングとほぼ変わらず、三大都市圏への訪問率が高くなっていることがわかります。

なかでも東京都大阪府には、約半数の訪日外国人が訪れています。主要空港があり日本の玄関口となっていることや、人気の観光スポットが点在していることから、特に日本に初めて来た人は東京、大阪を訪れることが多いというのはご存知の方も多いかと思います。

都道府県別 外国人延べ宿泊者数ランキング:千葉県の順位が低下

訪日外国人延べ宿泊者数は、1位が東京都(1477.8万人泊)、2位が大阪府(657.7万人泊)、3位が京都府(465.1万人泊)となっています。

  1. 東京都(1477.8万人泊)
  2. 大阪府(657.7万人泊)
  3. 京都府(465.1万人泊)
  4. 沖縄県(178.4万人泊)
  5. 福岡県(176.7万人泊)
  6. 北海道(162.7万人泊)
  7. 神奈川県(128.2万人泊)
  8. 千葉県(118.9万人泊)
  9. 愛知県(99.2万人泊)
  10. 石川県(66.6万人泊)

▲都道府県別延べ宿泊者数:宿泊旅行統計調査(2024年4‐6月期)より

宿泊者数も三大都市圏を中心に多くなっているものの、千葉県石川県については、ほかのデータとは異なる傾向を示しました。

千葉県は、訪問者数では全国3位だった一方、宿泊者数では8位と順位を落としています。成田空港を利用して入国する人が多いことから、訪問者自体は多い傾向にありますが、通過地点としての利用が高いため、宿泊者は少なくなっていると考えられます。そのため、滞在時間をいかにして増やすのかが鍵となりそうです。

そして石川県は、訪問者数では17位だったものの、宿泊者数は10位まで順位を上げています。その要因として、3月に北陸新幹線の金沢〜敦賀間が開業したことが挙げられます。関西圏へのアクセスが向上したことで、関東から関西へ移動する際の中継地点として利用される頻度が高まっていると考えられます。

また、金沢駅には徒歩圏内に日本三名園の一つである兼六園や近江町市場が位置していることに加え、白川郷へのアクセスが良いことも、金沢駅周辺を滞在拠点とする決め手になっているといえそうです。

そのほか、沖縄県北海道など、リゾート地としての人気が高い地域において、宿泊者数が伸びている傾向にあります。

都道府県別 訪日外国人総消費額ランキング:人気観光地の北海道・沖縄が上位に浮上

続いて、各都道府県における訪日外国人の総消費額を見てみると、1位が東京都(6,159億円)、2位が大阪府(3,225億円)、3位が京都府(1,369億円)となっています。

  1. 東京都(6,159億円)
  2. 大阪府(3,225億円)
  3. 京都府(1,369億円)
  4. 福岡県(915億円)
  5. 千葉県(562億円)
  6. 北海道(511億円)
  7. 愛知県(499億円)
  8. 沖縄県(479億円)
  9. 神奈川県(332億円)
  10. 山梨県(163億円)

▲都道府県別総消費額:インバウンド消費動向調査(2024年4‐6月期)より

訪問者数と比例して消費額が多くなっていますが、北海道(6位)や沖縄県(8位)は、訪問者数に対して高い値を示しています。

この2地域は、リゾート地として長期滞在に適しており、さまざまなレジャー施設をもつことから、宿泊費や買い物代が増加し、総消費額が多くなっていると考えられます。

都道府県別 訪日外国人消費単価ランキング:地方部では鹿児島県・香川県・宮城県・三重県が上位に

都道府県での訪日外国人の消費単価では、1位が東京都(16.3万円)、2位が北海道(14.2万円)、3位が沖縄県(13.2万円)が高くなっています。また、観光地として人気の高い北海道沖縄県が総消費額と同様、上位にきています。

  1. 東京都(16.3万円)
  2. 北海道(14.2万円)
  3. 沖縄県(13.2万円)
  4. 福岡県(10.1万円)
  5. 愛知県(9.9万円)
  6. 大阪府(9.7万円)
  7. 鹿児島県(8.1万円)
  8. 香川県(6.5万円)
  9. 宮城県(6.4万円)
  10. 三重県(6.2万円)

▲都道府県別消費単価:インバウンド消費動向調査(2024年4‐6月期)より

ここで注目したいのは、鹿児島県(7位)、香川県(8位)、宮城県(9位)、三重県(10位)です。この4県の訪問者数はそれぞれ4.3万人(31位)、7.6万人(22位)、7.6万人(24位)、5万人(29位)とそれほど多くないものの、一人当たりの消費単価が高くなっているのが特徴です。

なぜ、この4県は消費単価が高くなっているのでしょうか。

鹿児島県:香港からの旅行者が増加?

鹿児島県では、3月末よりコロナ禍で中止されていた香港空港の定期便が再開し、消費単価が比較的高い香港からの旅行者が増加したとみられます。また、YouTubeチャンネル「People of Kagoshima」を運営しており、鹿児島に住む人々の「人生のストーリー」を軸に伝統文化や歴史、特産物などを英語字幕付きで紹介するなど、海外に向けたプロモーションを積極的に行うことで訪日外国人からの認知向上を図っています。

香川県:リゾート地・アートのまちとしてのブランディング

香川県の消費単価について、NHKの報道によると宿泊単価の増大が影響しているのではないかということで、瀬戸内のリゾート地としてのブランディングに成功しているといえます。加えて、香川県は文化芸術を観光コンテンツとして押し出しており、数多くの離島にアート作品が存在しています。アート作品を見るために島々を周遊する人が多いことから、消費単価が高くなっていることも考えられます。

宮城県:ユニークな観光コンテンツ、直行便拡大にも積極姿勢

宮城県は、東北最大の都市仙台を有するほか、日本三景の一つである松島など観光名所を多く持っています。「世界で唯一キツネを抱っこできる場所」蔵王キツネ村など、ユニークな価値を提供して国内外から支持されるようになった観光コンテンツもあります。今後は仙台-香港間の新規就航が予定されているほか、タイとの定期便再開を市長自らタイを訪問して呼びかけるなど、直行便の拡大にも積極的な姿勢です。

三重県:先進的なデジタルマーケティング

三重県伊勢志摩をはじめとする文化資源や、国立・国定公園などの雄大な自然を有しており、4月末に伊勢神宮で開催された「春の神楽祭」や桜を見るために訪れる人が多くなったことが影響した可能性もありそうです。プロモーション施策としては、三重県観光連盟が運営する「観光三重」が、都道府県公式観光情報サイト閲覧者数ランキングで全国1位になったことも。実は先進的なデジタルマーケティングを進めている地域の一つとなっています。

ブランディングや観光コンテンツの醸成などが地方観光のカギに

今回の分析では、すべての項目で三大都市圏周辺の都道府県が上位に挙がりました。アクセスの良さや、知名度の高い観光地が集まっていることが要因だと考えられます。

一方、宿泊者数や消費単価の項目では、地方部の県が上位に来ているケースが複数あり、その理由として、観光コンテンツの充実や訪日プロモーション施策、直行便の再開・拡大などが要因として挙げられます。

大都市圏からの地方誘客を実現する上で、旅マエインバウンドに向けたプロモーション施策や、大都市圏にはない独自の観光コンテンツの磨き上げ・ブランディング、そして直行便をはじめとした交通面の整備が有効といえそうです。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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