化粧品メーカーはどうやってインバウンドにおいて地方誘致・地方創生に取り組むべきなのか?
インバウンド市場が盛り上がる中で、化粧品メーカーが地方誘致・地方創生によってインバウンド集客で成功する事例が増加しています。都心部での訪日外国人受け入れのノウハウをそのまま持っていって成功する場合もあれば、地方ならではの特色を活かしたり、個別の取り組みが評価されている事例もあります。
このページでは、化粧品メーカーの地方誘致・地方創生のインバウンド対策やインバウンド集客における活用について、次の3つの事例を取り上げます。
- 化粧品メーカー×地方誘致・地方創生事例その①:海外旅行博などで積極的な営業を展開してきた「株式会社資生堂」
- 化粧品メーカー×地方誘致・地方創生事例その②:国ごとに何が受けるのかの研究を続ける「株式会社コーセー」
- 化粧品メーカー×地方誘致・地方創生事例その③:酒造で培った技術を化粧品製造に転用「福光屋(ふくみつや)」
地方誘致・地方創生のためのインバウンド集客やインバウンド対策においては、業界・業種やターゲットとする国籍によってかなりその内容が様変わりします。例えば、中国出身の訪日外国人には人気の観光地が、台湾出身の訪日外国人には人気ではなかったり、その消費動向が異なっていたりすることがあります。またこういた訪日外国人の国籍とは関係ない共通の手法が、色々な国からの訪日外国人にしっかりと効果がある場合もあります。
ここでは、化粧品メーカーという業界・業種における地方誘致・地方創生の各社の事例を元にして、効果的な地方誘致・地方創生を活用したインバウンド対策やインバウンド集客のケーススタディーをしてみます。それでは見ていきましょう。
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「インバウンドコンサル」の資料を無料でダウンロードする「広告運用」の資料を無料でダウンロードする「展示会出展サポート」の資料を無料でダウンロードする海外旅行博などで積極的な営業を展開してきた「株式会社資生堂」
「株式会社資生堂」は化粧品の国内シェア第1位、世界シェア5位の企業で、世界の約120カ国・地域で事業展開しており、海外売上比率は5割を超えています。創業は1872年と古く、東京の銀座に資生堂薬局として生まれました。経済産業省の「生産動態統計」のデータによると2017年の日本国内の化粧品出荷額は1兆6292億円で、前年より6.8%増加。2016年には1兆5251億円で、それまでの最高値であった1997年の1兆5189億円を抜いています。2016年から数えると2017年で2年連続の過去最高を記録した形となりました。これには好調なインバウンド消費があり、訪日外国人の半数近くは日本で化粧品や香水を購入しており、その平均購入額は3万円近くになっています。なお、この中でも訪日中国人の約8割は化粧品、香水を購入しており、その平均購入額も5万円となっています。
海外旅行博などで積極的な営業を展開
国内シェア1位の「株式会社資生堂」も当然こうした恩恵を受けており、「SHISEIDO」ブランドなどの高価格商品を購入してもらい、これを帰国後消費してもらい、この約半数が資生堂商品のリピーターとなるこという流れができています。商品のあまりの人気ぶりに資生堂は、銀座の百貨店などで「SHISEIDO」ブランドの美容液の購入を1日当たり、1人1個に制限するなどのほか、店頭で転売などの営利目的での購入を禁じる内容の掲示を日中英3カ国語で提示しています。資生堂ではインバウンド対策を早くから進め、デパートカウンターに誘因するための「動員策」と来店した外国人に満足して買いものをしてもらえるよう「販促策」を立案、上海旅行博などで日本百貨店協会のブースでサンプルの配布、日本でノベルティを受け取れるクーポンなどを積極的に配布して、都心のみならず地方部への誘客などにもこうしたクーポンが役立っています。
国ごとに何が受けるのかの研究を続ける「株式会社コーセー」
「資生堂」と似た形で海外で大きく話題となり、それが訪日外国人の国内での需要喚起へと繋がり、結果的に都心部、地方部の百貨店、ドラッグストアへの送客、地方創生へとつながっている例としてもう1つ「株式会社コーセー」の例をご紹介しましょう。「株式会社コーセー」は日本の化粧品業界では3位の企業。創業当初から美容部員により店舗での対面販売形式を推し進めており、1960年代後半より中国、香港、韓国などのアジア市場への参入を積極的に進めています。特に好調なのはアジア事業では主に中国、韓国が好調で、さらに米国では買収した米国タルト社の販売が伸びるなどして米国事業も好調です。
国ごとに何が受けるのかの研究を続ける
「株式会社コーセー」の売れ筋商品は、国内では30年以上前から販売しているロングセラーシリーズの化粧品の雪肌精(せっきせい)です。これは日本で購入するよりも中国の現地で購入する、ドラッグストアで購入するほうが圧倒的に安いことから、アジア圏からのお客さんに受けており、特に中国では漢字3文字の名前が親しみを感じやすいのか好調とのこと。特に都心の店舗、空港の売店、コンビニなどでは、並べる側から商品が無くなっていくほどの人気の商品です。
「株式会社コーセー」が初めて海外に進出したのは1968年の香港でした。「株式会社コーセー」はそれ以降も海外での出店を続け、現在は25の国と地域に展開するまでになっています。こうした海外展開によって多くの訪日外国人を日本に、そして都心や地方部に呼び込むという形もインバウンドを盛り上げる上では有効な手法と言えます。
酒造で培った技術を化粧品製造に転用「福光屋(ふくみつや)」
最後にご紹介する事例は化粧品事業に乗り出した老舗の酒蔵ブランド「福光屋(ふくみつや)」のケースです。「福光屋(ふくみつや)」は石川県金沢市にある日本の酒造メーカーで、清酒などの製造・販売を行っています。1625年(寛永2年)創業という金沢で最も長い歴史をもつ酒蔵で、1960年から取り組む契約栽培米、霊山白山の麓より百年の歳月をかけてたどり着く清冽な仕込み水、先端の裏付けを得ながら進化し続ける蔵人たちの伝統技術により、2001年に純米蔵を実現しています。
酒造で培った技術を化粧品製造に転用
実は近年日本酒を使ったコスメが増えている理由の背景には、その成分があります。日本酒を使ったコスメは「アミノ酸」が豊富なため、角質層を潤いで満たし、バリア機能を高めてくれる美肌効果があります。また、アミノ酸はコラーゲンなどの肌を構成するタンパク質の材料でもあり、肌のアンチエイジングにも効果があります。「福光屋(ふくみつや)」では長年培ってきた米発酵技術を生かし、化粧品開発に取り組み、東京や金沢に6つの直営店6店を展開しています。
また「福光屋(ふくみつや)」では本業の日本酒に関しても近年注目を集める酒蔵ツアーなどで訪日外国人の注目を集めており、こうしたリアルでの集客から化粧品を知ってもらう、使ってもらうなどの流れも考えられます。こういった形で1つの分野の商品から訪日外国人に知ってもらい、それを地方に呼びこむ形もあり得るという好例だと言えるでしょう。