居酒屋・バー・ナイトライフはどうやってインバウンドにおいて地方誘致・地方創生に取り組むべきなのか?
訪日外国人にとって日本での飲食が大きな楽しみであることは観光庁が発表している「訪日外国人の消費動向 平成28年10-12月期報告書」の回答で訪日外国人が日本を訪れる前に最も期待していることはとして「日本食を食べること」が69.9%と高い支持を得ていることからも明らかです。つまりこれだけ多くの訪日外国人が日本で日本食を食べることを楽しみに日本を訪れているわけです。 実際にどのような理由で訪日外国人が日本で日本食を食べたいのかと思っているのか、どのような場所で日本食を食べたいと思っているのかは千差万別ではありますが、多くの訪日外国人に人気が高いのが日本ならではの飲食店形態と言える居酒屋です。居酒屋は様々なメニューの中から各人が好きなものを選べること、多くのメニューが訪日外国人にとっては日本をイメージする日本ならではのメニューであること、価格が安いこと、飲み放題などのお得なお酒のメニューがあること、日本酒、ビール、ワイン、焼酎、ウイスキーなどアルコールに関しても様々な選択肢があることなどが好まれているわけです。また居酒屋ならではの店主の人柄が前面に押し出された接客や、暖かい交流なども訪日外国人に人気となっています。それでは実際に訪日外国人を呼び込むにはどのような形で地方の居酒屋、またバーなどがインバウンド対策を行っているのかを見ていきましょう。奈良県奈良市にある「ニーノ」、岐阜県高山市にある「平安楽」、そしてバーやナイトライフの取り組みとして大阪府の例をご紹介します。
Googleマップによる集客、うまく活用できていますか?
Googleマップでの集客ツール「口コミコム」を詳しく見る >漢字で書いた色紙をプレゼントなどの取り組みが評価される「ニーノ(Nino)」の事例
「ニーノ(Nino)」は奈良県 奈良市西御門町にあるイタリアンレストランです。店は大型店というわけではなく、地元の人にも日本人観光客にも人気のお店で、訪日外国人だけが訪れているお店というわけではありません。それではどのような点が訪日外国人の心を掴んでいるのかというと、お店のモットーでもある「あらゆるお客様に楽しんでいただけるお店でありたい」という思いでしょう。小さくてアットホームなお店であるがゆえに、お客さん同士の交流、また訪日外国人同士の交流、お店のスタッフとの交流も自然な形で発生する、そういったきめ細やかな接客が自然と評価されているということが言えます。お店では日曜日を「食育の日」として捉え、子供連れのお客さんも多数来店、食を通じた躾の場になる、食の大切さを感じてもらう場となることを願っています。
英語対応はもちろん、しっかりとした心遣いが高い評価
訪日外国人が多く訪れるお店だけあり、入り口には英語でしっかりとした案内がありますが、トリップアドバイザーの口コミ評価で多いのがお店のスタッフの人柄の良さ。レストランで食事をするわけですから、味が良くなければ評価はされないのは当然として、それに食わて「フレンドリー」「アットホーム」「気遣ってくれる」などの心遣いが高く評価されている形です。また「ニーノ(Nino)」が訪日外国人のお客さんに喜んでもらうことを目的に始めたサービスとして、店主が当て字で訪日外国人の名前を書道で色紙に書いてプレゼントするというものがあります。こういった特別な体験、他ではない体験にこそ訪日外国人は感動し喜び、口コミが生まれ、SNS上で大きく拡散するといった流れが生まれています。
ベジタリアン、ムスリム対応などが高い評価「平安楽」の事例
トリップアドバイザーは外国語のクチコミ評価をもとにした「外国人に人気の日本のレストラン」を発表していますが、今回ご紹介する岐阜県高山市の中華料理「平安楽」は2016年に1位を獲得している訪日外国人に大人気の中華料理店です。こちらもまた大型店舗ではなく、夫婦経営のこじんまりとした中華料理店ですが、なぜ地方でここまで訪日外国人に評価されているのでしょうか?その影には「平安楽」が続けてきた数々の努力があります。「平安楽」は創業50年以上となる中華料理店ですが、和風の独特な雰囲気で外国人にも評判を得ています。
様々な訪日外国人向けの心のこもった対応が評価
「平安楽」がまず訪日外国人から評価されている背景には、店主が得意な英語を活用して、積極的に訪日外国人とコミュニケーションを取り、その中でどのような食べ物を食べたいのかをしっかりとニーズを汲み取っているからということが大きいようです。訪日外国人にしても実際のどのような食べ物なのかがメニューを見てもわからない場合は店側に聞くしかありませんが、そういった際のコミュニケーションの不安がないというのは大きな差となるでしょう。また店主は基本的な挨拶は店主が覚えているそうで、こうしたちょっとした心遣いも旅先では嬉しく感じるものです。また特に口コミで人気なのが、豊富なベジタリアンメニューで、ベジタリアンメニュー以外にも宗教の戒律上食べられないものが存在するムスリムの訪日外国人にも対応したメニューを創作。しっかりと対応してきました。こういった真摯な対応が口コミを呼び、さらに話題にを呼び拡散されていくという好循環が生まれています。
補助金を活用して、新たなエンターテインメントを夜に創出する大阪府
訪日外国人にとって日本の夜はどこもお店、エンターテインメント施設の閉店が早いこともあって退屈だという声が良く聞かれます。これは近年訪日外国人の消費、訪日旅行のスタイルが「爆買い」に代表された「モノ消費」から、様々な日本ならではの体験、エンターテインメントなどに時間を割く「コト」消費にシフトしつつあると言われていることも無関係ではないでしょう。 こうした日本の夜のエンターテインメントをさらに楽しんでもらうため、日本各地でナイトタイムエコノミーを推進するための取り組みが進んでいます。特にそうしたなかでナイトタイムエコノミーの推進に積極的なのが大阪府です。大阪府では「大阪都市魅力創造戦略2020」を掲げ、「安全で安心して楽しめる24時間おもてなし都市」の実現に向け、観光客が昼夜を問わずまちに魅力を感じ、安全で安心して旅行を楽しめる都市の実現を目指し、ナイトカルチャーの発掘・創出を行っています。
大阪府では補助金によってナイトカルチャーの発掘を行う
こうした流れを受けて大阪府では、大阪府において主にインバウンドの観光客を対象とした夜間公演などのナイトカルチャー事業に取組む事業者に対し、事業の立ち上げなどに必要な経費を補助しており、大阪府内で事業を実施し、法人格を有するものに対して最大で上限500万以内の補助金を出しており、平成30年度の補助金に対して3月27日までに18件の事業計画が提出され、最終的に10事業に対して交付決定がされています。その中には「エイベックス・エンタテインメント株式会社」のJ-POPアーティストによるライヴ・パフォーマンス体験、「株式会社近鉄百貨店」の殺陣、和楽器などの芸術文化のパフォーマンス、ワークショップ、写真撮影会など訪日外国人目線で魅力的なものが多数計画されています。こうした新しいエンターテインメントを夜という、今までの観光の空白時間に設けて訪日外国人の誘客を図るという試みが進んでいます。