旅館・民宿はどうやってインバウンドにおいて地方誘致・地方創生に取り組むべきなのか?
インバウンド市場が盛り上がる中で、旅館・民宿が地方誘致・地方創生によってインバウンド集客で成功する事例が増加しています。都心部での訪日外国人受け入れのノウハウをそのまま持っていって成功する場合もあれば、地方ならではの特色を活かしたり、個別の取り組みが評価されている事例もあります。
このページでは、旅館・民宿の地方誘致・地方創生のインバウンド対策やインバウンド集客における活用について、次の3つの事例を取り上げます。
- 旅館・民宿×地方誘致・地方創生事例その①:日本らしさを変えないことが評価「澤の屋旅館」
- 旅館・民宿×地方誘致・地方創生事例その②:とにかく人と人のコミュニケーションを重視「京町家 楽遊 堀川五条」
- 旅館・民宿×地方誘致・地方創生事例その③:日本らしさを海外にも輸出「加賀屋」
地方誘致・地方創生のためのインバウンド集客やインバウンド対策においては、業界・業種やターゲットとする国籍によってかなりその内容が様変わりします。例えば、中国出身の訪日外国人には人気の観光地が、台湾出身の訪日外国人には人気ではなかったり、その消費動向が異なっていたりすることがあります。またこういた訪日外国人の国籍とは関係ない共通の手法が、色々な国からの訪日外国人にしっかりと効果がある場合もあります。
ここでは、旅館・民宿という業界・業種における地方誘致・地方創生の各社の事例を元にして、効果的な地方誘致・地方創生を活用したインバウンド対策やインバウンド集客のケーススタディーをしてみます。それでは見ていきましょう。
旅館・民宿の地方誘致・地方創生に関連するインバウンド対策資料を無料で詳しく見てみる
「インバウンドコンサル」の資料を無料でダウンロードする「広告運用」の資料を無料でダウンロードする「展示会出展サポート」の資料を無料でダウンロードする日本らしさを変えないことが評価「澤の屋旅館」
観光庁の発表によると、訪日外国人が宿泊先として選ぶ宿泊施設は圧倒的にホテルが多く、2017年7月-9月の調査では全体の75%以上がホテルに宿泊すると回答し、旅館はわずかに18%前後となっています。そんな中で、東京の下町谷中にある「澤の屋旅館」は訪日外国人に人気の旅館として知られています。特に地方部での集客に苦労する旅館が参考にできる点はどのような取り組みなのでしょうか?
「澤の屋旅館」は全12室のこじんまりとした旅館で、宿泊料金は5,616円〜と格安。特筆すべきは宿泊客の9割が欧米豪を中心とする訪日外国人であること。訪日外国人の受け入れを開始いた1982年からげ現在までに、17万人以上の訪日外国人を受け入れてきました。リピーター率はなんと3割となっており、口コミサイト「トリップアドバイザー」の「エクセレンス認証」を2011年から連続して受賞しており、2015年には殿堂入りしています。また「トリップアドバイザー」の「トラベラーズチョイス」も2012年から連続して受賞するなど、優れた評価を得ています。
「日本らしさを変えないことが評価」
「澤の屋旅館」では英語ができず、宿の設備も大きなホテルにかなわないという中でなぜここまで訪日外国人に愛されているのでしょうか?それは外国人だからと気負わずにとにかく相手の立場にたったサービスを提供すること、日々、文化習慣の違いがあれど、その時ごとに最適なな対策を考えて行動すること、また夕食の提供をやめ地域の飲食店を楽しんでもらうようにするなど、ホスピタリティーを高める上での努力はするが、地元の街に頼れるところは積極的に頼んでいく、町ぐるみで訪日外国人をもてなしていくという姿勢を打ち出したことです。そして何よりもリピーターの声にもあるのが、「ありのままの日本の姿」をそのまま訪日外国人に伝えていることです。
とにかく人と人のコミュニケーションを重視「京町家 楽遊 堀川五条」
京都駅から少し離れた位置にある「京町家 楽遊 堀川五条」は訪日外国人に人気の旅館で、訪日外国人の利用率が75%を超えています。開業は2016年6月で、伝統的な京都の町家建築を新築で再現。部屋数は7部屋と非常にコンパクトな作りで、部屋自体も湯呑やポットなどはすべて共用スペースに設置し、部屋の中を非常にコンパクトにしています。
とにかく人と人のコミュニケーションを重視
訪日外国人に特に喜ばれているのが、その細やかな気配りの聞いたサービスで、チェックインにかける時間は最低でも30分。この中でゲストにニーズを引き出し、向かいの銭湯の利用方法がわからなければ説明するために一緒についていく、近隣にある飲食店や居酒屋などの多言語マップを渡すだけでなく、道案内をするケースもあるなど、とにかく日本で右も左もわからぬ訪日外国人にとって、日本を訪れた際に出会う最初の新設な人になるという同旅館のホスピタリティーあふれる接客が特徴です。こうした甲斐があって、オープンからわずか1年半後にトリップアドバイザーの「外国人に人気の旅館ランキング」で1位を獲得するなど、その取組とホスピタリティーが高く評価されています。ここでもうかがえるのは、とにかく人と人のコミュニケーションを大事にしていること、そして町ぐるみ、地域ぐるみで訪日外国人をもてなす姿勢だということです。こうした取り組みは都心だから、地方だからと限定されるものではなく、訪日外国人を迎えるあらゆる旅館で活用できるものです。
日本らしさを海外にも輸出「加賀屋」
「加賀屋」は石川県七尾市和倉温泉に本社を置く旅館で、地上20階、約1,450人の収容人員を持つ全国最大級の旅館。1977年(昭和52年)1月より、旅行新聞新社が主催する「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」の総合部門1位として、2016年まで36年連続で総合1位を受賞しています。また台湾のディベロッパー「日勝生活科技」との合弁で、2010年12月に台北市北投区の北投温泉に「日勝生加賀屋」をオープンしています。
日本らしさを海外にも輸出
「加賀屋」の台湾進出のきっかけは、1995年にトヨタ自動車が台湾のディーラーの社員250名を視察旅行に招待したことにさかのぼります。こうした台湾人観光客をもてなす中でも、台湾ではアワビがとれないと聞けば活アワビ料理を用意、台湾にない白桃を調達するなどのほか、顧客名を黒墨で書くところを、台湾では葬儀を連想させるとして朱墨を使用、忌み嫌われる菊の花は使用しないなど、徹底した顧客分析にもとづいて訪日台湾人をもてなしてきました。こうした取り組みが功を奏し、台湾からの宿泊客は毎年万人近くが訪れるようになっています。
「加賀屋」は台湾でもそのやり方を変えることなく、建物の内装、大浴場、部屋のしつらえなども完全に日本スタイルで統一。食材も石川県から運んだものも使用するなど、完全に和風を貫いています。訪日外国人が求めるのは「日本らしさ」であると言われていますが、「加賀屋」はこの「日本らしさ」を台湾にも輸出し高い評価を得ています。これはまさに石川県の「加賀屋」のシステムをそのまま輸出するとも言えるわけで、地方の魅力を輸出するという意味においての地方創生だと言えるでしょう。