• 訪日タイ人のハイシーズンは3月、4月、10月、12月
    • インバウンド消費額は増加傾向
    • 親日度ランキング1位、円安が追い風となるか

インバウンドにおけるタイ市場の特徴とは

訪日タイ人数は2019年には約132万人で、2023年には約100万人となりました。2023年、訪日タイ人は一人あたり19万1,026円を訪日旅行時に使っています。訪日タイ人のインバウンド市場で特筆すべき点は「訪日数の月別の偏り」「消費額の増加傾向」「親日度の高さ」の3つです。それぞれ詳しく解説していきます。

訪日タイ人インバウンド市場、3つの特徴を解説

1. 訪日タイ人のハイシーズンは3月、4月、10月、12月

コロナ前の訪日タイ人観光者数の遷移を月別に見てみると、3月、4月、10月、12月が極端に多くなっており、その他の月は極端に減っていることが分かります。

2019年の場合、最も訪日タイ人の多かった4月と12月にはそれぞれ約16万人のタイ人が訪日しており、合わせて年間の訪日タイ人全体の約25%になります。その次に訪日タイ人の多かった3月と10月はそれぞれ年間全体の約11%を占めており、この4か月に訪日タイ人全体の約47%、約半数が集中しています。

タイ人向けのインバウンド対策を実施する際は、この4か月をターゲットとして考えると良いでしょう。

2. インバウンド消費額は増加傾向

コロナ前、訪日タイ人のインバウンド消費額は、総消費額で見てみると2014年から2019年にかけて約772億円、約1.8倍に増加しています。

個人消費額で見てみると2014年から2018年にかけて平均2万1,608円、約15%減少していますが、2019年は回復し、7,036円増となりました。2023年は総消費額ではコロナ前を大きく上回り、一人あたり消費額も2019年比で約1.5倍に増加しました。

今後一人あたり消費額を増加させるにあたり魅力的なコンテンツを打ち出して行く必要があると言えます。ハイシーズンを狙い、コト消費を促す商品やアクティビティなどを用意するほか、タイ語の多言語対応環境を整えるといった施策が鍵となります。

3. 親日度ランキング1位、円安が追い風となるか

電通チームクールジャパンの親日度ランキングによると、タイは台湾と並び親日度1位となっており、多くの人が日本に対して好意的な感情を抱いています。それに加え、パンデミックの終息とおよそ同時期から円安バーツ高が急速に進行し、多くのタイ人旅行客にとって訪日旅行は予算的に手の出しやすいものになっているとも考えられます。

今後は新規客を含む訪日客の獲得に努め、どれだけ日本を旅行先として「定番化」できるかが訪日タイ人の集客のカギとなりそうです。

タイ人の特徴

タイ人の性格・国民性

タイは、東南アジアの暖かい気候を享受している国です。そのためタイ人もおおらかで温和な人が多いと言われています。

また、タイは日本と同じく立憲君主制の国で、現在はラーマ10世が国王を務めており国民の敬愛を集めています。

1993年米騒動で日本に送られたタイ米が大量破棄された際には対日感情が悪化しましたが、その後両国の地道な歩み寄りがあり、現在では親日度ランキング同率1位になるほどに対日感情が回復しました。

タイの民間には階級社会が根強く残っており、タイ人同士で接する際には相手の階級をとても気にする人がいます。また、仏教国家であるため僧侶が尊敬されており、敬愛な仏教徒が多く存在します。

タイ人は余り感情を表に出さず、特に怒りは良くないこととされているため、心の中で堪える人が多いようです。女性に対しては非常に親切で、おおらかではあるものの礼儀は守る人が多くいます。

タイ人と接するうえで気を付けておきたいマナー

タイは仏教文化が根付いていますが、同じく仏教人口の多い日本とは異なり上座部仏教という教えを守っています。日本よりも忠実に仏教の戒律が守られているため、僧侶は飲酒、肉食、結婚等が厳しく禁じられています。

タイの習慣として、左手は不浄の手とされており、握手の際には右手を用いること、頭は神聖な部位とされているため触ってはいけないこと等があります。またタイの王室や国王を侮辱する行為は、例え冗談でも決して許されません。タイ国内では不敬罪にも問われる行為となるので気をつけましょう。

他にも人前でタイ人を叱りつける等の行為は、日本人以上に面子を大事にするタイ人にとって大きな屈辱であるため気をつける必要があります。

また、タイの挨拶として胸の前で合掌する「ワイ」というものがあります。タイ人同士では普段から用いられているため、覚えておくと良いでしょう。

タイ人の親日度・日本語学習者数

電通「ジャパンブランド調査」によると、タイは2019年時点で「親日度ランキング」全20か国のうち同率1位となっており、特に高い親日度を持っていることが分かります。(*1)

国際交流基金「海外日本語教育機関調査」によると、タイには2018年時点で659校の日本語教育機関と2,047人の日本語講師が存在し、184,962人が日本語を学習しています。(*2)

<参照>

(*1)電通 チーム・クールジャパン「ジャパンブランド調査2019」 (*2)国際交流基金 2018年度海外日本語教育機関調査結果(速報値)

タイ人のスマホ事情:人気の機種やSNSは?

タイはAndroidがiOSより人気で、約74%のシェアを持っています。タイは中進国とも言われる東南アジアでは成長率の高い国のひとつですが、平均月収は605.10米ドルとなっており、100米ドル程度から購入できる手頃なAndroidスマートフォンが人気のようです。

また、人気のSNSアプリはiOS・Android共にLINEとFacebook Messengerがランクインしています。LINEは日本の他に台湾、タイ、インドネシアの3か国で多く利用されており、タイは海外では珍しくLINEが普及している国となっています。

タイのイベント・祝日カレンダー(2022年・2023年)

2022年2023年
元日1月1日(土)1月1日(日)
マカ・ブーチャ(万仏節)2月16日(水)3月6日(月)
チャクリー朝記念日4月6日(水)4月6日(木)
ソンクラーン(旧正月)4月13日(水)4月13日(木)
ソンクラーン(旧正月)4月14日(木)4月14日(金)
ソンクラーン(旧正月)4月15日(金)4月15日(土)
レイバーデイ(労働者の日)5月1日(日)5月1日(月)
戴冠記念日5月4日(水)5月4日(木)
農耕祭5月13日(金)5月11日(木)
ヴィサカ・ブーチャ(釈迦誕生日)5月15日(日)6月3日(土)
スティダー王妃誕生日6月3日(金)6月3日(土)
アサラハブーチャ(三宝節)7月13日(水)8月1日(火)
カオパンサー(入安居)7月14日(木)8月2日(水)
特別休暇7月15日(金)
ワチラロンコーン国王誕生日7月28日(木)7月28日(金)
特別休暇7月29日(金)
シリキット王太后記念日(母の日)8月12日(金)8月12日(土)
ブミポン大王命日10月13日(木)10月13日(金)
チュラロコーン大王記念日10月23日(日)10月23日(月)

(参照)日本政府観光局(JNTO) 訪日旅行データハンドブック 2022年より

タイの歴史

タイでは紀元前3,600年頃より農耕文化が始まっており、その後いくつかの王朝による支配を経て13世紀頃まではクメール王朝の支配下にありました。

13世紀初頭にタイ人が蜂起し、初のタイ族による王朝となるスコータイ王朝が始まりました。スコータイ王朝は貿易を行うなど経済力を高め現在のタイ文化の礎となりましたが、15世紀中盤になるとアユタヤ王朝の属国となり、同時期のタイ北部に存在したランナー王朝もビルマの属国となりました。

アユタヤ王朝はクメール王国へ侵攻し首都アンコールを陥落させるなどの振興を経て、17世紀には日本、フランス、オランダから多くの貿易商が渡来する中継点としての役割を果たすようになります。しかし1767年にはビルマの攻撃に屈し、長きに渡り続いたアユタヤ王朝はビルマに取って代わられました。

その後トンプリー王朝を経てチャクリー王朝が興り、1782年には首都がバンコクに定まります。1932年には立憲君主制となり、第二次世界大戦を経て現在のタイ王国へと至ります。

タイは日本と同じく、アジア諸国の中で第二次世界大戦を通して独立を維持した数少ない国のひとつで、現在では東南アジアの経済の中心地として、めざましい発展を遂げています。

タイ宗教観

タイは一大仏教国で、国民の約95%が仏教徒であるとも言われています。国内にはそこかしこにきらびやかな寺院が建てられており、多くの国民は毎週寺院で礼拝を行います。

タイは信仰の自由が保障されており、僅かではあるもののイスラム教、キリスト教、ヒンドゥー教や民間信仰が存在しますが、国王になるには仏教徒でないといけないなど、仏教を中心とした国家体制が整えられています。

このように仏教が社会の中心に存在するタイでは僧侶が尊敬の対象となっており、鉄道には僧侶優先席が存在するほか、多くのタイ人は「タンブン」という金銭や物品の施しを僧侶に行います。

また、多くのタイ人は出家をします。期間は人によりまちまちですが、短くて一週間、長くて数か月が多いようです。しかし最近ではビジネスマンを中心に時間がもったいないので出家をしないという考え方も広まっています。

いずれにせよタイ人は仏教に対して多かれ少なかれ敬愛の念を抱いているため、タイ人と接する際にはこの点を念頭に置いておくと良いでしょう。