[株式会社マクロミル]
近年、日没から翌朝までに行われる経済活動、所謂「ナイトタイムエコノミー」に注目が集まり、国や行政などが様々な取り組みを始めています。このナイトタイムエコノミーが注目されるようになった背景に、インバウンド消費の拡大があげられます。海外では夜遅くまで各種施設が解放されており、夜間観光の選択肢が多いと言われています。他方、2016年に日本政策投資銀行が訪日客を対象に行った調査では、日本旅行の不満点に、言語対応や食事の値段などと並んで「ナイトライフ体験」が挙げられ、「終電が早く、遅くまで楽しめない」「夜に行ける文化・芸術の場所がない」などの声が根強くあります。このような風潮に対し、一般市民はどのような考えを持っているのでしょうか。そして実際の夜間の経済活動の実態とは?日本の繁華街が多く集まる東京23区に住む、20~59歳の男女1,000名を対象に調査を行いました。
<HoNote通信 vol.111>
■Topics
夜間消費の実態とは?プライベートでの外出は4割が「週1回以上」、夜間消費金額は月平均14,519円
3カ月以内に、店舗や施設が夜間営業しておらず困った経験はある人は3割
夜間営業を希望する店舗や施設は?1位「病院」、2位「鉄道」、3位「調剤薬局」
東京23区に夜通し営業が増えることに、「賛成」が26%、「反対」が27%で拮抗。「どちらとも言えない」が最多の47%
■調査結果
【1】夜間消費の実態とは?プライベートでの外出は4割が「週1回以上」、夜間消費金額は月平均14,519円
最初に、夜間消費の実態について把握します。なお、本調査での“夜間”は、日没から翌朝までの間として聴取しました。
この3カ月間に、プライベートで夜間に外出し、お金を使うことがどのくらいの頻度であったか尋ねました。※1 その結果、「1週間に1回以上」と回答した人が41%、「月に数回」が25%、「2~3カ月に1回以下」が34%でした。また、夜間にいくらくらい使うことが多いか聞くと、月の平均金額は14,519円でした。
※1:お金を使うサービスすべてについて聴取。具体的には以下の通り。「飲食店」「ショッピング施設」「スポーツ・レジャー施設」「医療・美容施設」「学校や習い事」「交通系サービス(電車、バス、飛行機、レンタカー、ガソリンスタンドなど)」。
【2】3カ月以内に、店舗や施設が夜間営業しておらず困った経験はある人は3割
夜間消費において、生活者が不便さを感じることはあるのでしょうか。この3カ月間に店舗やサービス・施設などが閉まっていて困った経験について尋ねました。東京都23区在住者のうち、困った経験が「ある」と回答した人は28%で、約3人に1人が不便さを感じているようです。
なお、この3カ月間に困った経験がある276名に対して、どのような店舗やサービス・施設で困った経験をしたのか尋ねたところ、「飲食店」が最多で54%、続いて「ショッピング施設」35%、「交通系サービス」28%、僅差で「医療・美容施設」28%でした。
ここで、具体的にどのようなことで困ったのか、エピソードを一部抜粋してご紹介します。
●各種施設が夜間閉まっていて困ったエピソード 自由記述回答から一部抜粋
・足の指を骨折した時に、仕事を終えてから病院で診察してもらったが、近くに開いている調剤薬局がなく翌日まで痛み止めの薬が飲めなかった。(女性20代)
・深夜食器を洗っていたところ、洗剤が切れてしまった。近くの店は閉まって、バスも終わっていたため、仕方なく歩いてコンビニまで行ったが売り切れていた。(男性20代)
・夕食に使う材料がなく、夜間にスーパーに行ったら既に閉まっており、仕方なく割高なコンビニを利用する羽目になった。(男性30代)
・仕事の後、図書館でゆっくり本を読んで学習室で勉強して帰りたいのに、20時になると閉まってしまう。平日は50分くらいしか滞在できないのでとても不便。(女性30代)
・急なプレゼントの購入ができなかった。(女性30代)
・郵便局、銀行、行政等が閉まっていて困った。(男性30代)
・仕事の定時が17時半までなのに病院が17時半までで困った。(女性40代)
・空いていると思っていたガソリンスタンドが閉まっていた。(男性40代)
・食事をしようと立ち寄ったパーキングエリアの店鋪がすべて閉店後だった。それほど遅い時間ではなかったはず。(男性40代)
・帰りに最寄り駅近くで、食事をしようと思ったら、食べたい店が閉まっていて時間的に開いている店が居酒屋か牛丼などのチェーン店しか開いていなくて結局立ち喰いそばで済ませた。(男性50代)
【3】夜間営業を希望する店舗や施設は?1位「病院」、2位「鉄道」、3位「調剤薬局」
ナイトタイムエコノミーが話題になる中、生活者のニーズを探るべく、夜間営業をして欲しい、夜間営業が増えて欲しい店舗や施設は実際にどのようなものなのかを尋ねました。結果、最も多くの人が夜間対応を希望しているものは「病院」で67%。続いて、2位が「鉄道」で61%、3位は「調剤薬局」47%、4位「スーパー」47%、5位「バス」41%でした。
先ほどの【2】の“3カ月以内に夜間閉まっていて困った経験”では、「飲食店」や「ショッピング施設」を挙げる人が多かったのですが、夜間の営業希望では「医療系」や「交通系サービス」を挙げる人が多い結果となりました。「医療系」や「交通系サービス」を夜間使えなくて困る経験は、頻度としては少ないものの、いざという時のために夜間営業を希望する人が多いのかもしれません。
【4】東京23区に夜通し営業が増えることに、「賛成」が26%、「反対」が27%で拮抗。「どちらとも言えない」が最多の47%
今後、夜間営業をする店舗や施設などが増えることに、生活者はどのような考えを持っているのでしょうか。ナイトタイムエコノミーに関する説明文※2を読んでもらった上で、「あなたがお住まいの東京23区内に、夜通しの店舗やサービス・インフラなどが増加することについて、あなたは賛成ですか。反対ですか。」と質問を投げかけました。すると、「賛成」と「反対」は、それぞれ26%、27%と拮抗。また、「どちらとも言えない」という考えを示した人が47%で最多となっています。
※2:ナイトタイムエコノミーの説明は以下・・・「訪日外国人客の「日本は夜に遊べる場所が少ない、つまらない」という多くの声をきかっけに、ナイトタイムエコノミーと呼ばれる夜間経済の活性化が注目されています。大きな経済効果が見込める、雇用が生まれるなどの理由から、官民一体の「24hour Japan推進協議会」(仮称)が設立し、2018年中をめどに実証実験が行われる予定です。」
賛成・反対の理由を、自由回答で尋ねました。その結果、賛成の理由は「夜に遊べる場所が増えるのが嬉しい」「新しい雇用創出になる」「経済活性化」等。一方、反対の理由としては「治安の悪化」「健康問題」「働く側の過労」・・・等があげられました。具体的にどのような回答があがったか、一部抜粋してご紹介します。
●東京23区に、夜通し営業の施設やサービスなどが増加することに対する賛否の理由 自由記述回答から一部抜粋
賛成の理由
・生活リズムは人それぞれだし、遊ぶ場所が昼と同じように夜にあっても当然だと思う。(男性30代)
・お金は夜の方が使いやすい気がする。治安が悪くならなければ大いに夜に盛り上がってほしい。(男性30代)
・実際に、他の国(特に東南アジアやアメリカ)に旅行すると、夜間のエンターテイメント性は日本と大きく違って驚くとともに、日本は全くダメだと感じるから。(女性30代)
・防犯体制が整い、かえって犯罪や迷惑行為が減りそうだから。(男性30代)
・本来夜行生活なので、無理して日中に早く起きて行かなくて済むならそれに越した事は無い。(女性30代)
・自分が自由な立場だったら、夜遊べるのはうれしい。帰りたくなったときに、終電を気にせずに電車がうごいていると心置きなく遊べる。(女性30代)
・新しい雇用が生まれて、経済が活性化されるかもしれないから。(男性40代)
・今の働き方改革もあるが、働き方の自由度も広がっており、夜間にサービスを利用するから人も増えると思うから。多様性がほしい。(男性40代)
・最近の日本は経済の活性化と、グローバル化に遅れていると思います。商業圏が広い東京都市部には、世界基準に対応していく必要があると思います。(女性40代)
どちらとも言えない理由
・楽しめる場所が増えるのは良いが、周辺住民等に、迷惑なことが増えるのではないかと感じる為。(男性20代)
・今でも夜の街は賑やかだし、それによる経済効果はあまり変わらないと感じるから。しかし、夜の営業があることによって、社会人のプライベートの時間が楽しめる面もある為、賛成か反対かは、なんとも言えない。(女性20代)
・働き手不足が顕在化している中で全体的に24時間営業にすることは現実的ではないため。電車など自動運転による自動化が可能なものについては24時間を検討すべきだと思う。(男性30代)
・消費活動が増えるので取り組み自体は賛成。ただ、エリア・業種を限定しないと、昨今の情勢として働き手がたりなくなり、残業が増える企業があると思う。また、治安や騒音を気にする人もあると思われる。そのあたりの細かい制度設計が必要ではないか。(男性30代)
・繁華街ではやればいいと思う。住んでいる地域ではやらないでほしい。ただ、それを実施したとして、働き手があるのか?条件はどうか?という面が心配。(女性40代)
・特に外国人が思っているだけで日本人の意見も大事だから。スポットで2020年オリンピックの時だけ行えば良いのではないでしょうか。(女性50代)
・どのような施設、レジャーが誘致されるかによって賛否が別れるから。夜中に騒音に悩まされ、治安が悪くなるようなら受け入れられないが、住民も楽しめ街が活性化するなら受け入れたい。(男性50代)
・新宿、渋谷などの繁華街では夜間営業の店舗などが増えても良いと思うが、住宅地の近くや、繁華街ではない駅の近辺では騒音が心配だから。(女性50代)
反対の理由
・働く人の体内時計が狂い、健康に良くないから。(女性20代)
・若者の生活の乱れや犯罪が増えそう。警察官や警備員も増やす必要が出てくると思われるが、対応しきれなさそうだから。(女性20代)
・現行の働き方改革の方針と合致しない。夜間営業はある程度限定的な分野にするなどしないと、飲食業で横行していた過労問題をぶり返すと思います。(男性30代)
・夜は家で過ごしたい。外人がこれ以上増えないでほしい。飲食店で働く人の苦労も考えてほしい。(女性30代)
・繁華街とかならいいかも知れないけど、住宅地でやってほしくない。(女性30代)
・治安が悪くなるのは嫌だし、悪い面での日本人の傾向として、残業を助長したりするのも嫌。訪日外国人需要も大切だが、オリンピックがピークでその後も永遠に続くものではなく一過性のもの。(女性30代)
・夜は静かに休息したいので、自分の住居の近くにそのような施設ができて静けさを壊されるのがいやだから。(女性40代)
・子供が出かける、出かけたときに居場所が遅くまであることは、風紀上良くないと思うので。(女性50代)
・環境に悪いから。騒音、照明による樹木への影響など。(女性50代)
■その他の調査結果
・直近3カ月に、夜間、お金を使った場所
・夜間営業をしないで欲しい・減って欲しい店舗、サービス、施設
・夜間の個人消費金額の、金額の分布
・夜通し営業が増えたら、夜間の外出頻度が増えると思うか・・・ など
※聴取したサービス等のカテゴリは以下:「飲食店」「ショッピング施設」「スポーツ・レジャー施設」「医療・美容施設」「学校や習い事」「交通系サービス(電車、バス、飛行機、レンタカー、ガソリンスタンドなど)」
▼調査の詳細や、その他の調査結果は、以下のURLからダウンロードいただけます。
市場調査メディアHoNote(ホノテ)
https://honote.macromill.com/report/20180410/?cid=SL-PR
▼「ナイトタイムエコノミーに関する調査」調査概要
調査主体:マクロミル
調査方法:インターネットリサーチ
調査対象:東京23区在住の20~59歳の男女(マクロミルモニタ会員)
割付方法:平成27年国勢調査による、東京都の性別×年代の人口動態割付で事前調査を実施。本調査は、事前調査による東京都23区の出現率に基づいて割付/合計1,000サンプル
調査日 :2018年4月3日(火)
※本文の数値は四捨五入した整数で表記しています。
※百分率表示は四捨五入の丸め計算をおこなっており、合計が100%とならない場合があります。
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