訪日外国人観光客に人気の「ONSEN」をはじめとした、日本の代表的な観光資源に対して、海外ファンドが投資を拡大しています。
後継者難となっている老舗旅館の中には、海外ファンドの投資が売り上げ向上に繋がったという例も出てきています。今回は、インバウンドで注目が高まる海外ファンドの温泉旅館への投資による起死回生例をふまえ、今後の「ONSEN」をキーワードにしたインバウンド誘致や地域活性化のあり方について見ていきましょう。
訪日ラボのメールマガジン登録はこちら>(無料)
インバウンドをターゲットに米資本の温泉型テーマパークがオープン
2019年2月、ソフトバンクグループ傘下の米フォートレス・インベストメント・グループは、大阪市に巨大温泉型テーマパーク「空庭温泉」をオープンしました。
不動産部門の最高投資責任者のトーマス・プリー氏は、自身も温泉と和食のファンということもあり、温泉は日本ならではの資源とし、都会の温泉にも大きな需要があると考えました。
訪日外国人観光客をターゲットに、利き酒ができる日本酒ショップや、海外でも人気の「ドラゴンボール」などの漫画が1万5,000冊揃う休憩室も設けています。個室露天風呂には信楽焼の湯船や、栃木から運んだ庭園のしだれ桜など、本物の日本を感じてもらう仕掛けづくりも特徴です。
フォートレスは、すでに日本で温泉施設やホテルを約90軒展開しており、今後も4年間でホテルなどの宿泊施設を含む不動産に最大4,000億円を投資する姿勢を見せています。
競合のベインキャピタルは、インバウンド客の利用も増えている大江戸温泉物語を含む、30以上の施設を展開しており、今年3月に新たに熊本の「亀屋ホテル華椿」を取得、4月には三重で温泉リゾートを開業しました。大江戸温泉リゾート投資法人の資産規模は、1年間で約4割増加し、367億円となっています。
香港投資ファンドは20軒の取得を予定、後継者難で温泉旅館の売却物件が豊富
金融市場においても、海外ファンドの温泉投資熱には注目が集まっています。
香港の投資ファンドであるオデッセイ・キャピタル・グループは2018年に、新潟県越後湯沢の老舗旅館「松泉閣花月」を承継しました。同旅館は設備投資負担により資金繰りに難航し、借入先の地方銀行主導で進めた事業計画もうまくいかなかったことから、新しいスポンサー探しに至ったとのことです。
オデッセイが招いた新しい支配人の下、外部セールスの活発化やホームページの刷新に取り組んだ結果、売り上げは15%増加しました。従業員の雇用を継続し、不足している点を補うといった手法を取ったため、旅館側もこれまで通り接客に専念できました。
環境省によると、全国に温泉地は約3,000カ所、宿泊施設は1万3,000カ所ある一方で、不景気と誤った経営で、多くの旅館が過小評価され放置されているのも現状です。2017年に中小基盤整備機構が、全国1600施設を対象に実施した調査によると、温泉・観光地のホテル、旅館の50%が後継者難ということが判明しました。
オデッセイは今後3年で5億ドル(約552億円)を投資し、日本の老舗旅館を約20軒取得する計画です。地方の海や山などのロケーションは抜群と指摘すると同時に、日本のホスピタリティ業界には驚異的な投資の機会があるとしています。
ONSEN・ガストロノミーツーリズムが欧米圏からのインバウンドを誘客

その土地を歩きながら、地域ならではの食を楽しむとともに、歴史や文化に触れる「ガストロノミーツーリズム」に、日本ならではの「ONSEN」をプラスした新しい形の体験が「ONSEN・ガストロノミーツーリズム」です。
もともと「ガストロノミーツーリズム」は欧米圏を中心に浸透している旅のスタイルということで、さらに訪日客の関心が高い「ONSEN」も楽しめる「ONSEN・ガストロノミーツーリズム」は、インバウンドの地方誘客への効果も発揮するでしょう。
今後海外ファンドの投資により、数々の老舗温泉旅館の復活が期待される中、「ONSEN・ガストロノミーツーリズム」で多くの訪日外国人観光客が地方を訪れることで、地域活性化への効果にも期待です。
ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構は、温泉地をただ温泉を楽しむ場としてだけでなく、滞在型・体験型観光の宿泊拠点として提案していくことを目指します。すでに「ガストロノミーツーリズム」が普及している欧米圏はもちろん、アジア圏のリピーター層へのPRも有効でしょう。
参加者の満足度なんと96%「ONSEN・ガストロノミーウォーキング」が欧米圏からインバウンドを呼び込む!千葉県いすみ市はガイド講座で体制強化
インバウンドのONSEN・ガストロノミーツーリズムの普及に向け、一般社団法人ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構および事務局を担う株式会社ANA総合研究所・otomo株式会社・千葉県いすみ市の四者が連携協定を締結しました。ONSEN・ガストロノミーツーリズムの理解を深め、これまでの実績もふまえながら、地域の魅力を訪日外国人観光客に発信する新たなインバウンドツーリズムの形について見ていきましょう。目次ONSEN・ガストロノミーツーリズムとは?千葉県いすみ市で全国初のONSEN・ガスト...
今後は訪日客に人気の「ONSEN」をさらに活用し、地域の活性化を
海外ファンドが日本の「ONSEN」に着目し投資を拡大していることから、後継者難の温泉旅館の復活が期待できるでしょう。さらに「ONSEN・ガストロノミーツーリズム」の登場から、温泉地を滞在型・体験型観光の宿泊拠点としてインバウンド向けにPRし、「ガストロノミーツーリズム」に親しみ深い欧米圏やアジア圏のリピーターを地方へ誘客し、地域活性化に繋げることが目指されます。
<参考>
・SankeiBiz:「ONSEN」はユニーク 海外ファンドが観光資源へ投資熱
・ONSENガストロノミーツーリズム:公式ウェブサイト
【11/26開催】インバウンドの受け入れを「仕組み化」で乗り切る!宿泊・観光業の人手不足を解消する革新的ソリューションを紹介

外国人観光客の爆発的増加に伴い、スタッフの人手不足に直面する宿泊・観光業界。
さらには多言語対応やあらゆるサポートも求められ、キャパシティが限界状態にある事業者も少なくはないでしょう。
そこで訪日ラボでは、「人手不足を補いながらインバウンド対応を強化する」実践策を紹介するセミナーを開催します。
DXによる業務効率化や自動化、多言語対応の仕組みづくり、24時間・22言語対応の医療通訳付きオンライン診療、そして多言語での口コミ・MEO対策の無理のない運用方法まで、“少ない人員でも安心して外国人観光客を受け入れられる仕組み” を解説します。
<セミナーのポイント>
- 人手不足の現場でも実践できる、インバウンド対応・業務効率化のヒントがわかる!
- 多言語対応や医療連携など、“安心・安全な受け入れ体制”を整える具体策が学べる!
-
集客から滞在サポートまで、インバウンド受け入れを総合的に学べる!
→【11/26開催】インバウンドの受け入れを「仕組み化」で乗り切る!宿泊・観光業の人手不足を解消する革新的ソリューションを紹介
【インバウンド情報まとめ 2025年11月前編】中国、日本への渡航自粛を要請 / 2025年冬の国際定期便、過去最高の便数に ほか

訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
この記事では、主に10月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
※訪日ラボ会員にご登録いただくと、レポートの全容を無料にてご覧いただけます。
詳しくはこちらをご覧ください。
→中国、日本への渡航自粛を要請 / 2025年冬の国際定期便、過去最高の便数に ほか:インバウンド情報まとめ【2025年11月前編】
今こそインバウンドを基礎から学び直す!ここでしか読めない「インバウンドの教科書」
訪日ラボの会員限定コンテンツ「インバウンドの教科書」では、国別・都道府県別のデータや、インバウンドの基礎を学びなおせる充実のカリキュラムを用意しています!
その他、訪日ラボの会員になるとインバウンド対策で欠かせない中国最大の口コミサイト「大衆点評」の徹底解説や、近年注目をあつめる「Google Map」を活用した集客方法など専門家の監修つきの信頼性の高い教科書コンテンツやインバウンドを分析したレポート、訪日ラボのコンサルチーム登壇のセミナーなど役立つコンテンツが盛りだくさん!










