天皇陛下の「即位の礼」ですが、テレビの報道番組やオンラインニュース等で拝見した時、雅で厳粛な歴史的な皇室行事の伝統を守りつつ、通訳者を介することなく各国要人と外交を行う天皇皇后両陛下の姿に、令和の幕開けを感じた方が多いのではないでしょうか。
「即位の礼」の報道を目的に、日本へ訪れた海外の報道機関は、106か国から約600名。国内の報道機関は39社6,468名に上ります。この歴史的な行事を各国へ発信した海外報道陣は、何に興味・関心をもっていたのでしょうか。また、大勢のプレス関係者に対して、日本はどのような準備を進めていたのでしょうか。この記事では、海外メディアが報道の活動拠点として利用した国際メディアセンター(International Media Center :略称IMC)に注目し、「即位の礼」の舞台裏にスポットを当てています。
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「即位の礼」の一連儀式とは?
10月22日に始まった「即位の礼」は、日本の天皇が践祚後、皇位を継承したことを国の内外に示す儀式です。数日に分けて行われた饗宴の儀や、内閣総理大臣主催晩餐会、祝賀参列の儀などの行事、そして「大嘗祭」をもって一連の儀式が終了となります。
即位礼正殿の儀(10月22日)
皇位を継承したことを内外に宣明
饗宴の儀(10月22日、10月25日、29日、31日)
10月22日は、外国賓客(元首、祝賀使節)を招待。主な賓客:英国のチャールズ皇太子、米国のチャオ運輸長官、中国の王岐山国家副主席等
*10月25日は、三権の長や閣僚、各界の代表らと着席して食事
*10月29日、10月31日は、国会議員や全国の知事、市町村長、駐日外国大使らが招かれた立食形式
内閣総理大臣夫妻主催晩餐会(10月23日)
外国元首・祝賀使節に日本の伝統文化を披露し、理解を深めていただくとともに、来日に謝意を表するため、10月23日(水)の夕刻に都内で行われます。
祝賀御列の儀(11月10日)
午後3時頃皇居・宮殿をご出発され、お住まいの赤坂御所までの約4.6キロを約30分かけて進みます。国の内外に即位を宣明した天皇皇后両陛下が、多くの国民から直接、祝福を受けられるパレード。
大嘗祭(11月14・15日)
大嘗祭(だいじょうさい)は、宮中祭祀(きゅうちゅうさいし)「新嘗祭(にいなめさい)」を新天皇が初めて行う大規模なもので、皇位継承に伴う一世に一度の重要な儀式です。新天皇が即位の礼の各儀式が終了した後に新穀を神々に供え、自身もそれを食することにより、国家・国民の安寧と、五穀豊穣を祈ります。
海外メディアが注目した要素について
海外メディアは空港でタラップを降りて出迎えを受けるシーンや、天皇皇后両陛下と各国首脳が挨拶するシーン、華やかな晩餐会に到着して懇談しているシーンなど、自国要人がハイライトされる場面を撮ることに全神経を傾けます。
代表取材に限られる場面では、会場内で中継されるモニターに人垣ができ、自国の要人が映し出されるシーンをモニター越しでシャッターを切る報道関係者も多く見られました。
国際メディアセンターの役割
約1,500㎡のスペースに、ブリーフィングルームと共同ワーキングスペースが10月21日~24日まで開設されました。
1. 場所・距離
国際メディアセンター(以下、IMC)は、品川区内に設置されたため皇居とは約20分ほどの移動距離がありましたが、期間中はシャトルバスを運行し適宜移動が可能な環境が整備されました。
2. 情報提供
今回のような社会的関心が極めて高い行事では、記者団が求めるスピード感の情報伝達、情報共有が特に重要です。その為、IMCにはインフラ面での整備はもちろん、報道陣に正確で迅速な情報提供ができる空間・環境の確保が不可欠となります。
3. セキュリティ対策
G20サミットや即位の礼一連の国家行事のような場合、各国の代表が訪れる会合であるため、身辺警備からサイバーテロ対策を施したネットワークに至るまでハイレベルなセキュリティ(厳戒態勢)が要求されます。
「即位の礼」に際しては、政府は総理大臣官邸の危機管理センターに情報連絡室を設置し、警察庁は最大時およそ2万6,000人の警察官を投入して警備を実施しました。
成田や羽田の両空港では、コインロッカーやごみ箱の利用を19日から利用を制限し、公的交通機関に配された警備員の姿を目にした方も多いかと思います。
想定される脅威として挙げられるのは、「デモ」や「抗議活動」、「施設に対するテロ活動」、「個人に向けた攻撃」等があります。
IMCでは、IDカードを活用したセキュリティ機能を徹底した関係者の識別チェックだけでなく、警備機材と手荷物検査などの出入管理を実施する動線整備にも取り組みました。数多くの警備員を配置し、事件や事故を未然に防ぎ、不測の事態に備えた警備体制が不可欠となります。
昨今では、特にサイバーセキュリティに備えた高水準のインフラ整備が求められます。
4. SDGs
国家行事では、「SDGsのアクションプラン」の達成に向けた取り組みを明確に示すことが重要とされており、基準を満たすことはすでに当たり前の認識となっています。
ミネラルウォーターはピッチャーとグラスで提供し、地産地消、食品ロス、多様な食事制限に応えたメニューの開発、ペーパーレス化を推進するITシステムの導入、低公害車を利用した輸送手段など、それらをいかに会場でオペレーション化(スマートな運営体制の実現)できるか、強く求められます。
まとめ
海外のメディア(マスコミ・ネット)が、日本の行事・文化を報道する機会はまだ少なく、令和を迎えた現時点においても古い情報が散見している傾向が見られます。
今回の「即位の礼」は、多くの国が公的報道のトップニュースとして取り上げ、国内のメディアでも数多く露出されました。よって、これらで報道された日本の姿は、日本古来の伝統と文化継承とともに、歴史を尊重しながらも革新しつづける新しい日本の姿を伝えることができたと言えます。
2020年以降に控える国際行催事においても、世界各国から来る報道陣に、短時間で「日本の優れた技術、文化・食」を理解いただくことが大切です。自社メディア(媒体)で有益な情報を発信するための場所として、IMCは今後も行事ごとに大いに活用されるでしょう。
本記事を執筆している日本コンベンションサービス株式会社(JCS)は、上記のIMCを設営・運営させていただきました。G20の関係閣僚会合や国際女性会議WAW!など、MICE(集客交流が見込まれるビジネスイベントの総称)に関わる総合的な事業を50年以上取り組んでいます。そんなMICEの現場において、当社だから気づけたこと、街・自治体・企業の動き、MICEに関する最新トレンドを、この連載で積極的に紹介して参ります。今後ともよろしくお願いいたします。
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