近年の日本社会では、在日外国人、特にベトナム人の増加が目立ちます。
法務省の発表によれば、2019年末の時点で在留外国人の数は293万3,137人で,前年末に比べ20万2,044人(7.4%)増加となり、過去最高となりました。
その中でもベトナム人数は41万1,968人で、2018年末時点と比べて8万1133人、24.5%増加し過去最高を更新しています。
この記事では、在日ベトナム人が増えている理由と直面している問題について解説します。
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在日ベトナム人が増えた理由
在日ベトナム人増加の背景にはどのような要因があるのでしょうか。在日ベトナム人は現在どれほどの多さなのかについてて解説します。
在日ベトナム人は中国人、韓国人の次に多い
法務省の発表によると、2019年6月末の時点で、在日ベトナム人の数は37万1,755人であり、在留外国人全体のうち約13%をベトナム人が占めています。
中国、韓国に次いで3番目に多い人数です。日本で暮らすベトナム人がいかに多いかがわかります。
また、増加率においても前年比12.4%増と大きな伸びを記録しており、他の国と比較しても特に顕著な増加傾向がみられます。
ベトナム人留学生が増加
在日ベトナム人が増加している理由の一つに留学生の増加が挙げられます。
日本政府は2008年に「留学生30万人計画」を掲げて以来、積極的な留学生の受け入れに注力してきました。
日本学生支援機構(JASSO)が発表した2018年度の外国人留学生在籍状況調査結果によると、ベトナム人留学生数は72,354人で前年度と比較して17.3%増加しています。
法務省が発表した「令和元年末現在における在留外国人数について」によれば在留ベトナム人全体の20%は留学生です。
卒業後はベトナムに進出している日本企業へと就職し、ベトナム国内の支店に配属という人生設計を描く留学生も少なくありません。
ベトナム人技能実習生が増加
政府は、2015年に外国人技能実習制度を改正し、従来の制度では最長3年間であった実習期間を5年間へと延長しました。
対象職種に介護職を追加するなど、留学生に対する門戸をより広げています。
その結果、2017年に来日したベトナム人技能実習生の数は前年比36.47%増加の5万4,504人となりました。
日本で働くベトナム人技能実習生はその後も増え、2019年末には19万3,912人という数字が厚生労働省により発表されています。
日本へと技能実習生を派遣している15か国の中でもベトナム人技能実習生が最も多く、今後はさらに多くのベトナム人が技能実習生として来日することが見込まれます。
同じく法務省が発表した「令和元年末現在における在留外国人数について」によれば、在留ベトナム人全体の53%が技能実習生です。
ベトナム人実習生(外国人技能実習制度)を雇用する際の注意点
日本では以前から「技能実習制度」を通じて、中国や東南アジアから産業へ従事する人々の中長期的な滞在を許可してきました。技能実習制度については低賃金や長時間労働など、たびたび劣悪な労働環境が指摘されてきています。また、技能実習生の日本語能力が決して高くないことや、渡航前の雇用条件の説明が不十分であることもトラブルにつながっています。昨今ではこうしたトラブルを解消するために動く在日中国人もいるようです。この記事では、外国人技能実習制度とともに、ベトナム人実習生の現状と問題について解説するとともに...
なお、厚生労働省が発表した「令和元年10月末現在の外国人雇用についての届出状況」取りまとめによれば、同時点で日本で就労する外国人は165万8,804 人で、前年同期比で19万8,341 人(13.6%)増加し、過去最高を更新しています。
国籍別では、中国が最も多く41万8,327人(外国人労働者数全体の25.2%)、次いでベトナムが40万1,326人(同24.2%)です。
なぜベトナム人は日本を選ぶのか?
ベトナム人が留学先や技能実習の先に日本を選ぶ理由には、日本に対する良いイメージが挙げられます。アニメコンテンツや、ベトナムでの主要な移動手段である自動二輪を展開しているホンダがよく知られています。
乗り物だけでなく、家電や電子製品、精密機器など様々な分野で、世界から評価されるブランドを有する日本を、技術大国として認識しています。日本の技術に学びたいと考える人も少なくないようです。
またコンビニなどの便利さや、街の衛生水準を快適に感じるベトナム人もいるようです。
技能実習生や留学生のアルバイトを含め、日本での給与がベトナムと比べると高いという点も魅力となっています。
最終的にはベトナムに帰るにしても、日本での就労経験を通じて、経済的成功を目指したり、日本の技術を学んだりしたいという気持ちがあるといえるでしょう。日本で働きたいという考えが、日本を選ぶ一つの要因となっているようです。
在日ベトナム人が日本で直面する問題
留学先や就労先としてベトナム人から選ばれている日本ですが、在日ベトナム人を取り巻く環境は必ずしも好ましいものではないようです。
在日ベトナム人の中にはずさんな管理体制下の労働環境や学習環境に身を置いている人も少なくありません。在日ベトナム人が直面する問題について解説します。
劣悪な労働環境
技能実習制度の問題としてよく議論に上がるのは、劣悪な労働環境についてでしょう。
日本の法律に疎く、立場の弱い外国人労働者に対する長時間労働や最低賃金違反、残業代不払いなどの問題は後を断ちません。
日本では、労働者を守るために労働基準法に基づくさまざまな法令が設けられています。
こうした法令があるにもかかわらず、2017年に厚生労働省が行った調査によると、技能実習生が働く事業所のうち7割以上で労働基準関係法令違反が認められており、法令が完璧に遵守されている事業所は少数派という現実があります。
東京福祉大学の留学生大量失踪問題
東京福祉大学では、2018年度までの過去3年間で1,610人にのぼる留学生が所在不明となっていることが判明しました。
留学生の失踪の理由は、大学側が学費を確保するためにとにかく多くの留学生を受け入れ、ずさんな管理体制のもとに学習をさせていたからとされています。
留学生の中には実際は就労目的で留学の在留資格を得ようとする人もおり、そうした弱みにつけ込み、大量に入学させていた疑いも持たれています。
授業料をだまし取る悪徳「日本語学校」
2019年には、日本への留学を希望していた66人のベトナム人が、東京都杉並区の日本語学校に授業料7,000万円を騙し取られる事件が発生しました。
その学院の住所には看板があるのみで、運営している実態はありませんでした。
その他にも法外な金額を請求する日本語学校もあり、ベトナム人留学生が学ぶ環境の整備も十分とは言えない状況です。
ベトナム人の国民性を表す「4K」とは
留学や労働を目的として日本にくるしているベトナム人は多く、彼らとコミュニケーションを取る機会はいつ発生してもおかしくありません。
そうした際にコミュニケーションを円滑にするためには、相手の国民性を理解しておく必要があるでしょう。
ベトナム人の国民性は、4つの特性の頭文字をとって「4K」と呼ばれることがあります。
以下では、ベトナム人の国民性を表す「4K」について解説します。
1. 器用
個人差はあるものの、ベトナム人の女性は手先が器用な人が多いとされています。
ベトナムの伝統工芸品に施される刺繍は、女性の専門職として長い歴史を持っています。
2. 向学心旺盛
より高いレベルの教育を求めて来日する人が多いことからもわかる通り、ベトナム人は向学心旺盛な国民性です。
仕事や学校が終わった後に語学やビジネスを自ら勉強する人が多いそうです。
近年発展を遂げているベトナムですが、まだまだ貧しい家庭も多く、親や家族を助けたいという思いから高い向上心を持つ人々が多い傾向にあるようです。
3. 近視眼
ベトナム人は時間や成果の見積もりや物事の将来性について考えることが苦手な傾向にあります。「1年先の100万円より、今日の100円を取る」というように、中長期的なメリットよりも今のメリットをとる傾向になります。
先を見据えた思考が苦手な原因としては、ベトナムが経済的な成長を遂げたのも比較的近年のことで、紛争や戦争が断続的に続いていた状況の中では将来を見通すことが困難であったことなどが挙げられます。
4. カカア天下
ベトナムでは女性が一家の大黒柱として家庭を先導していく傾向にあります。
ビジネスにおいても女性が管理職や役職につくケースが多く、夫よりも妻の収入が高いことも少なくありません。
在日ベトナム人の問題を解決し、安心して来日できる環境整備を
留学生30万人計画や外国人技能実習制度の改正により在日ベトナム人が増加傾向にある一方で、その受け入れ体制や労働環境、学習環境についてさまざまな問題があります。
また、留学の名目のもとに出稼ぎのために来日する偽装留学生も問題となっています。
今後は法整備や取り締まり強化を通じて、勤勉なベトナム人が安心して学び、働くことができる環境を整備するべきでしょう。
<参照>
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri04_00003.html
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09109.html
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