スペインでは、コロナウイルス感染拡大防止のための外出制限が、すでに約1か月近く続いています。このような状況を反映して、自宅で長い時間を過ごすためのメンタルヘルスについて、様々な機関から情報が公開されています。
今回の記事では、スペインで報道されている「外出制限期間を乗り切るためのメンタルヘルス・アドバイス」と、現在スペインでも増加している家庭内暴力への対策をお伝えします。
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運動・適切な食生活・情報のコントロールがこの期間を乗り切る3本柱
外出制限令が発令される前から多くのスペイン人が心配していたのことの一つが、「長い時間を家の中で過ごすことによるストレスにどのように対処すればよいのか」という問題でした。
基本的に外で人に会うことが大好きなスペイン人にとって、このような非常事態は想像できない世界であったのです。そのため、多くの報道機関がこの外出制限の期間を家の中でいかに快適に過ごすかという情報を報道しています。
そうした記事で強調されていることは、主に規則正しい生活を送ることの重要性であり、具体的には適切な運動と3度の食事の重要性です。
まず、運動については、ヨガやピラティス、ズンバやボクササイズといったクラスをインターネットを通じて受講し、体を動かす機会を作ることが重要視されています。
また食事については、いつもよりも少し時間をかけた料理をゆっくり作り、そうした料理を時間をかけて味わうことをみることを推奨しています。
情報のデトックス
そして特に強調されているのが、情報のデトックスをすることです。24時間常にコロナウイルス関連の情報を追う必要はなく、1日の決まった時間に、自分が「必要」と感じるだけの情報を得ることを勧めています。
また、1日のうちで何か「創造的」な時間をとる必要性も強調されています。具体的には料理をしたり、絵をかいたり、工作をしたり、手芸をしたりといった活動は、特に子供たちがこの時期を乗り切るのに必要なことであるとしています。
スペイン人のストレス解消作戦
では、実際にスペイン人はどのようにして、この外出制限下でストレス解消をしているのか、様々なインターネット上の情報から検証します。
パン、お菓子作り
いまスペインで多くの人が挑戦しているのが、パンを焼くことです。スペインの多くの家庭の台所にはオーブンが備え付けられているので、パンを焼くことは決して難しいことではありません。
とはいえ、オーブンやパン酵母を使わないパンのレシピをYoutube等にUPしている人もいるので、この期間にスペイン人がパン作りのレシピに悩むことはありません。
YouTube:Pan Sin Horno y Sin Levadura en 20 Minutos | El de las trufas
同様に、お菓子作りも人気のストレス解消法の一つです。特に子供と一緒に楽しみながら作れるようなお菓子のレシピがネット上で人気です。チョコレートを使ったお菓子のレシピは、不動の人気を誇ります。
スポーツ:実際に体を動かすだけでなく、スポーツ選手との交流も!
ネット利用のスポーツはヨガやピラティスはもちろん、固定された自転車をこぐバーチャルレースなども盛んです。
Twitter:Ciclismo a Fondo(@Ciclismoafondo_)氏の投稿
また、スポーツ関連で言えば、Facebookやインスタグラムのライブ中継機能を活用し、スポーツ選手自身が自分の友人のスポーツ選手等に直接インタビューする番組も多数放送されています。
Instagram:josebabeloki.cycling氏の投稿
いま、スペインのスポーツ選手は思うようなトレーニングができず暇を持て余している状態なので、このようなライブ放送は頻繁に開催されています。
またこうした生中継ではリアルタイムで視聴者からの質問を募集しており、有名なスポーツ選手とファンとが直接コミュニケーションできる貴重な機会となっています。
家庭内暴力への対策
しかし、このような前述ストレス解消作戦がうまくいかない場合もあります。また、いままで外で働いていた人が家の中で24時間過ごすことにより、これまでとは違うタイプのストレスに対応する必要が出てきます。
こうしたストレスがたまった結果、家庭内で一番弱い立場の人が肉体的・精神的に最も深刻な被害を受けることもしばしばあります。
近年、スペイン社会では、家庭内の、特に男性から女性への暴力に対して厳しい対応をするようになっています。しかし、今回の外出制限令により、家庭内暴力の被害者がますます外に出にくくなる可能性があることが危惧されました。
国際連合の機関のひとつである「女性への暴力問題に関する特別報告者」が、例えばフランスでは3月17日のロックダウン後から家庭内暴力が30%増加していること、そしてスペインでも外出制限後から保護施設に駆け込む女性の数が増えていることを報告しています。
24時間体制の稼働を継続、52か国の言語で対応
こうした状況を受け、外出制限発令直後から、スペイン政府は家庭内暴力の被害者の保護対策を今までと同様に維持することを表明しました。
例えば、家庭内暴力に苦しむ人の電話相談窓口は今まで通り24時間体制で52か国の言語で対応しています。
また、暴力の被害者のための保護シェルターも通常どおり開設しており、被害者の保護を継続しています。また被害者から通報があれば、警察が現場に行ったり、被害者を保護したりすることも通常通り行われています。
そして、このような活動がこの外出制限令の下でも通常通り行われていることを伝える情報が、TVや新聞・ネット情報等を通じて発信されています。
メンタルヘルスを支えるインフラの重要性
今回の外出制限により、様々な形で人々はストレスにさらされています。いつ終わるかわからない自宅待機の中で、自由に外を歩くことができないストレスは、スペイン人にとって相当に耐えがたいものであるようです。
こうしたメンタルヘルスを維持するためのインフラは、コロナウイルス感染との戦いが長丁場になればなるほど、各国で必要とされるものではないでしょうか。
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