新型コロナウイルスの世界的拡大の中、食事や健康についてさまざまな観点から注目が集まり、習慣を見直す動きがあります。
自宅で過ごす時間が増えることで、これまで短時間で済ませていた調理や食事の時間が確保できるようになり、新たな生活スタイルを確立した人も少なくないようです。
近年、欧米では肥満が深刻な社会問題となっています。特定の食品を過剰摂取することによる糖尿病や心疾患のリスクも高まるとされています。健康に配慮し肉を食べない食事をするベジタリアンや、卵や牛乳といった動物性食品を食べない、完全菜食者であるヴィーガンの人口が増加しています。
中には、今回の新型コロナウイルスと肉食習慣の関係を指摘する声もあります。動物性の食材を食べることを危険視する意見もあがっています。この動きが大きくなれば、動物性の食材を利用しないヴィーガンはさらに増加するかもしれません。
健康的な食事に対する意識に高まりは「一汁三菜」や油を多用しない和食への注目を高める可能性もあります。
この記事では、アフターコロナの期間にいかにして「日本食」を観光コンテンツにするのか、オンラインでの「和食料理教室」についての実例を交えながら紹介します。
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ユネスコの人類の無形文化遺産にも登録された和食:その特徴は?
和食は、日本を代表とする文化として2011年頃から無形文化遺産登録に向けての活動が取り組まれていました。そして「自然を尊ぶ」という日本人の気質に基づいた「食」に関する「習わし」が評価され、2013年には「和食;日本人の伝統的な食文化」としてユネスコ無形文化遺産に登録されました。
和食はごはんを中心に、味噌汁、魚など大きなおかずに和え物やお浸しが並んだ一汁三菜を基調にしています。そのため食事は栄養バランスがよく、動物性油脂が少ないことが特徴です。このように和食には長寿や肥満防止にも効果があるとされています。
日本は南北に国土が広がるため山や海から豊富な食材を得ることができ、その土地の魅力を最大限に引き出す郷土料理も高く評価されています。
また、和食は食べるだけではなく、季節を楽しめるのも特徴の1つとされています。
季節に合わせた花や葉を使って飾りつけをしたり、色どりに合わせた器などによっても日本の季節を感じることができます。南天や紅葉といった食べられない飾りつけは外国では珍しく、日本独自の文化といえます。春は華やかな色や形のもの、夏はガラスや青磁など涼しげな素材、秋は実りを感じさせる彩りのあるもの、冬は厚手の陶器など、器によって季節感を演出します。
「和食」×「コト消費」和食の料理体験が人気の理由
インバウンド需要として、体験を消費するコト消費が人気となっています。中でも、訪日観光客向けの新たな体験コンテンツとして和食を作る体験に注目が集まっています。
和食を食べるだけではなく、実際に自分で作ることによって和食に対する理解がさらに深まります。こういった料理教室は日本に来てただ体験するだけではなく、日本の文化をより深く知りたいという需要に応えています。
トリップアドバイザーが発表した「外国人に人気の日本の体験・ツアー2018」では和食料理教室である「ユカズ ジャパニーズ クッキング」が3位にランクインしています。口コミは800件を超え(2020年5月現在)「日本の料理や習慣について学ぶことができた」「日本食は自分の国では珍しい。自国でも作りたい。」といったように、高く評価されています。
「ABC Cooking Studio」のグループ会社が運営する「ABC Cooking Travel」では、和食料理教室以外にも、午前中に和食について学び、午後からは一緒に料理をする体験ツアーなども行っています。体験ツアーには日本橋や築地などを巡る、さまざまな種類の和食のコースが用意されています。
訪日外国人が旅行中に参加できる料理体験を提供している「airKitchen」も、和食の作り方を学ぶ機会を提供するサービスです。
日本で和食を料理する体験がしてみたいという観光客と、教える側の日本人をオンラインでマッチングします。訪日外国人は、滞在中日本人の家庭で一緒に料理をすることができます。
こうした料理教室は、より現地の日本人に関われる体験として注目を集めています。
「弁当」「キャラ弁」というコンテンツ
また、海外では「Bento(弁当)」も日本ならではの文化として認知されています。
特に「キャラ弁」は安い値段で栄養も考えられたうえで、美しい見た目を持つという点で高く評価されています。
欧米でもキャラ弁の認知は高く、キャラ弁についての書籍が発売されたり、日本でも外国人向けのキャラ弁教室も開かれるなど、外国人に好評を集めています。
体験×日本食でインバウンドにも活用できるかも?海外で「キャラ弁」がウケる理由:「お弁当は伝統的な日本料理」だと外国人に認識されている
平成25年(2013)年に、世界無形文化遺産に登録された日本の伝統料理。農林水産省によれば、南北に長く表情豊かな自然が広がる国土のおかげで、多様な食材が用いられていること、ヘルシーで栄養バランスがよいこと、季節に合った器などを使い、見た目にも美しいことなどが、その魅力なのだそうです。このような話を聞くと、つい料亭で出てくるような高級料理をイメージしてしまいますが、海外では「Bento(弁当)」も日本ならではの食事として理解されており、訪日外国人観光客向けにキャラ弁を作る料理教室のような取り...
コロナ禍で高まる「食」の様式への関心
新型コロナウイルスによって、世界中で在宅時間が増加するという現象が起きています。自宅が生活の主要な場となり、食生活の見直しに意識がいったり、また通勤の運動負荷がなくなったことで意識的に運動を生活に取り込む姿が見られています。
食習慣は個人の健康状態だけでなく、地球全体の環境にも関連しています。2015年に国連により策定され、2030年をゴールに見据え掲げられているSDGs(持続可能な開発目標)ですが、個人の消費行動もこの取り組みの結果を左右するとみられています。
SDGsでは、陸上、海上の生態系の保護に関しても提唱されています。持続可能な社会に向けての関心の高まりから、畜産のための環境負荷への懸念や、肉食は増加する今後の世界人口に対して供給できなくる可能性があるという意見もあがっています。動物性の食事を脱し、野菜を中心とした食事にも関心が高まる可能性も大いにあるでしょう。
新型コロナウイルスの流行は、これまでの各国やビジネスの「日常」に変革を迫っています。食生活もその対象となりつつあります。
肉食否定へ変化する可能性
米国の国立感染症研究所のファウチ社長は「世界中の生鮮食品市場は今すぐ閉鎖すべきだ」と語っていたといいます。
過去に流行した感染症である豚インフルエンザは豚から人へ感染しています。今回の新型コロナウイルスも、野生動物を宿主として伝染したとの説があります。こうした事実や仮説は、畜産業による環境汚染を非難してき人たちの、肉食やと殺否定の動きに拍車をかけているそうです。
ヴィーガンの増加も?
ヴィーガンはベジタリアンと違い、卵や乳製品を含む、動物性食品をいっさい口にしない「完全菜食主義者」のことです。 イギリスのヴィーガン協会によると、2018年の英国のヴィーガン人口は急増しており、総人口の1.16%の60万人に上りました。
このヴィーガン人口の増加は、2018年に多くのヴィーガン向け新商品が発売されたことが理由の一つだといわれています。ヴィーガン向けの商品には、プラントベースド食品があります。これは、動物由来の食べ物や、革製品などの摂取・使用を一切控えた食品です。今ではハンバーガーのパティ、ソーセージなどもプラントベースド食品として開発されています。
SDGs(持続可能な開発目標)の関心の高まりや、上記の肉食否定の動きにより、肉、魚、卵、蜂蜜など動物性を含まないプラントベースド食品や完全菜食者であるヴィーガンに改めて注目する人も出てくるでしょう。
ヴィーガンになる人はさまざまな動機があります。動物性油脂をとらないことで病気のリスクが抑えられるため、健康を目的とする人のほか、畜産による環境汚染を阻止することや、動物愛護を提唱し、動物が絡む生産からの保護を目的とした人もいます。多様な考え方をよしとする社会の機運と相まって、今後もヴィーガンの人口は増加するかもしれません。
【ポストコロナのインバウンド戦略】日本が食で選ばれる最後の条件:フードダイバーシティ 横山真也
緊急企画『ポストコロナのインバウンド戦略』では、コロナ禍において、業界の「中の人」に聞くサバイバル術として最前線に立つ方々に特別寄稿いただきます。今回はインバウンドにおける食の多様化を推進するフードダイバーシティ株式会社 共同創業者の横山真也氏に寄稿いただきました。私たちの生活が変容しています。人を避け、会話を避け、あらゆる接触機会を避けています。列に並ぶ時、お釣りを受け取る時、エレベーターに乗る時。そばにいる人は感染していないだろうか。この距離であれば安全だろうかと警戒しています。大して...
和食の特徴:食材や精進料理
和食には野菜や山菜を利用したものも多く、仏教の歴史とともに発展してきた精進料理があります。精進料理は肉、鳥、魚を含まない野菜中心の料理です。
健康的で動物性油脂が少ないだけでなく、こうした特徴も、海外から日本の「食」に対する関心の高まりにつながっていきそうです。
アフターコロナの食コンテンツ:オンラインで海外に向け和食をPR
新型コロナウイルスの流行で外出自粛や在宅勤務が生活の基本となりました。自宅での生活を楽しむための商品の購入や、SNSや動画配信サービスの利用増加の傾向が見られました。
飲食店やレジャー施設、文化施設では、こうした消費者の動きを見て、テイクアウトやデリバリー、そしてオンラインでのコンテンツ配信を開始しています。
コンテンツの形式では動画を使用したものも多く、食の分野では、自宅でレストランの味を再現できるレシピをYouTubeに公開しています。
オンラインで配信されるコンテンツでは、海外からのアクセスも期待できます。日本発のコンテンツを鑑賞し、あるいはインターネットを通じて実際にイベントに参加してもらうことで、新型コロナの収束後の訪日意欲を高めることにもつながります。
海外の人々に、オンラインサービスを用いて「和食」を訴求している3つの事例を紹介します。
【ポストコロナのインバウンド戦略】コロナで集客ゼロになった秋葉原オタクツアーに、オンラインで月100名の予約が入るようになるまで:“サブカル
緊急企画『ポストコロナのインバウンド戦略』では、コロナ禍において、業界の「中の人」に聞くサバイバル術として最前線に立つ方々に特別寄稿いただきます。今回はサブカルの街・秋葉原を、Airbnb「オンライン体験」を通じてガイドする 市原佑樹 氏に寄稿いただきました。目次コロナ禍による影響「家から旅する」という発想への疑念実際にオンライン体験を提供しての気づき1. 双方向のコミュニケーション2. 対話環境・コミュニケーションスキルへの配慮3. 「オンライン体験提供」オフラインツアーにも勝る面もオン...
【新型コロナ】美術館再開「まだ早い」?VR/オンライン鑑賞の事例まとめ・歌舞伎やオペラにインバウンド市場開拓の可能性
新型コロナウイルス対策で各地の文化施設の休館が続くなか、特定警戒都道府県でも密集防止策を条件に、美術館などの営業再開が可能となりました。一方で運営側や一般客からは、感染リスクへの懸念や不安の声も聞かれます。美術館・博物館、歌舞伎やオペラを上演する劇場は、オンラインで鑑賞できるさまざまななサービスを提供しています。これまで鑑賞する機会のなかった層にも旅マエの期間に興味を持ってもらい、今後の訪問につなげることも期待できるでしょう。アフターコロナに向けたインバウンド業界にも応用できる取り組みとい...
1. タイで人気の和食作り動画
タイでは和食ブームが起き、現地では和食の店も多く見られます。タイの和食人気を受け「チャンネルジェイ」ではタイ人向け和食料理動画の配信サービスが始まりました。
この動画は、タイのスーパーで購入できる食材で和食の作り方をFacebookなどのSNSを利用して配信されています。2017年に開始されたこのチャンネルは2020年5月現在、52万人の登録者数を誇ります。
動画は5つ星ホテルでシェフ経験のある料理人が誰もが手軽に購入できる食材を使い、タイ語で作り方が紹介されています。レシピは日本の家庭料理を中心として、タイ人向けにアレンジされたメニューも紹介されています。 また、料理に限らず日本の文化の紹介なども行っています。
食をテーマとした動画コンテンツを通じて、タイでの和食や日本の文化に対する認知や関心が向上しているといえるでしょう。
2. オンライン上の外国人向け和食体験レッスン
新型コロナウイルスの影響により対面でのレッスンは自粛されています。その中でも、オンラインで外国人に向けた和食料理の体験レッスンに取り組む例もあります。
「外国人向け料理教室協会」は外国人向けのキャラ弁教室をZoomによるオンラインで開催しました。レッスンはアメリカ、オーストラリア向けとヨーロッパー向けに1日2回行われ、さまざまな国から参加者が集まっています。
オンラインレッスンは直接食材を用意できないため、材料は現地で買えるものを用意してもらいます。また、海外で入手できるよう、Amazonの商品を紹介してそこから購入してもらうという形も用意されています。
3. ヴィーガン向けも
「一般社団法人日本ヴィーガン・ベジタリアン和食料理教室協会」も、オンラインで受講できるヴィーガン和食料理教室を開講しています。
レッスンは英語・中国語・日本語に対応しており、お好み焼きや手打ちうどんといったさまざまな和食のメニューがあります。これらはすべて動物性の含まれていない食材が使われているヴィーガン料理です。
海外にいる人に向けて、日本の食の多様さをPRする機会にもなっていると考えられるでしょう。
オンラインでの和食PRでアフターコロナのインバウンドにつなげる
和食は、自然環境が生み出す海の幸や山の幸だけではなく、季節に合わせた飾りや食器を用いることによって「自然を尊ぶ」文化があります。季節感を伝えるために器と料理が一体化した姿は珍しく、その美しさも外国人には高く評価されています。
今、新型コロナウイルスの影響で、世界の各地で食や生活様式に対する意識変化が起こっています。今後食の分野では、安全と健康に対する意識がより研ぎ澄まされていくと考えられるでしょう。こうした傾向は、海外における和食の存在感の増大につながる可能性もあります。
コト消費ブームという文脈、そしてアフターコロナにおける生活を充実させるレジャー、アクティビティという角度からは、オンラインでのコンテンツ配信や、視聴者が参加するオンラインレッスンの需要が伸びていくと考えられます。
インバウンド観光市場に関する調査では、新型コロナの収束後に日本旅行に行きたいと思う外国人が多く存在することが示されています。中国市場を対象としたデータには、コロナ収束後に「行きたい国」で日本が第1位という結果も中には存在します。
観光客の渡航についてはまだ新たな動きは見えていませんが、こうした中でも日本から海外に向けて情報を発信することは、観光客の戻りの際の熱量を大きく左右するのではないでしょうか。
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<参照>
トラベルWatch:トリップアドバイザー、外国人に人気の日本のアクティビティ。1位は「マリカー」
PRTIMES:インバウンド向け料理体験プラットフォーム「airKitchen」が、訪日外国人旅行者向け観光プラットフォームサービスを提供する「WAmazing」と業務提携!
PRTIMES:タイ向け和食料理動画メディア『チャンネルジェイ』 動画再生回数2000万回突破
PRTIMES:オンライン外国人向け和食料理教室開講。世界中からスマホ1つで受講可能
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