外国人が驚く日本での「ケンタッキー」のポジション|クリスマスの定番・世界各国でローカライズ・サイドメニューにもバリエーション

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近年、海外で日本文化についての認知が高まっています。伝統産業や文化芸能だけでなく、庶民の生活と関係の深い日本文化にも関心がもたれています。

特に、海外の外食産業が日本展開する際のPR戦略には、その食文化の発祥の地とのギャップも生じやすく、注目を集めるきっかけにもなっています。

外資系ファーストフードチェーン店の代表格であるケンタッキーも例外ではありません。クリスマスにケンタッキーのフライドチキンが食卓に並ぶ風習や、日本オリジナルメニューであるサンドイッチというアイデアには驚きの声も上がっています。

ケンタッキーの日本市場開拓は一筋縄ではいかず、現在のポジションを築き上げるまでに様々な課題に直面してきましたが、独創的なアイデアによりこうした苦境を乗り越えてきたいきさつがあります。

本記事ではアメリカから日本に進出し、大成功を収めたケンタッキーの足取りについて、海外からの反応を交えながら解説します。

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KFCの日本進出

ケンタッキーの日本国内出店数は、2017年9月末時点で1,000店舗を数えていますが、最初から全てが好調だった訳ではありません。

営業不振時からどのように日本での人気を獲得し、そしてシェアを拡大していったのか、海外ブランドの日本への誘致、および日本ブランドの海外シェア拡大の際に応用できるケンタッキーの成功事例について解説します。

当初の大不振

1970年に大阪で開かれた日本万国博覧会にて、ケンタッキーは初めて日本で実験店を出店、1日に最高280万円の売上を記録するなど、大成功を収めました。

そしてその実績から、同年の11月に名古屋に日本の第1号店オープンが決まり、そこから2号店、3号店と店舗数を伸ばしていったにもかかわらず、ケンタッキーの日本での業績は、次第に苦戦を強いられるようになっていきました。

その理由の1つが、自動車が普及していない日本において、郊外立地型店舗運営のスタイルを選択してしまったことで、来客数が伸び悩んだことが挙げられます。2つ目は、馴染みのないフライドチキンという食べ物に対する市民の敬遠があったと言われており、当初の実験店での成功は、万博の集客力に助けられていた側面が大きかったといえます。

オリジナルの調理法

立地の問題や商品の認知不足により、スタートから苦戦を強いられていたケンタッキーでしたが、味については高い評価を受けていました。

その背景には、オリジナルの味を厳格に管理し本場の味を再現していた調理方法にあります。創業者であるカーネル・サンダース自身も「日本のフライドチキンがいちばん気に入っている」という言葉を残しているほどに、その再現度は高いようです。

このオリジナルを忠実に再現した味が日本人の好みとマッチし、次第に評判が広がっていきました。

日本発祥の商品

また、味の再現だけでなく、日本のオリジナル商品の誕生が日本国内のケンタッキー人気を加速させていったとも考えられています。

今日では、日本人だけでなく外国人からも親しまれている『和風チキンカツサンド』、『カーネルクリスピー』は、日本発祥のオリジナル商品であり、このパンでチキンをサンドするアイデアは、日本から海外へ広まっていきました。

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日本ではクリスマスの定番

日本のクリスマスといえばケンタッキーというイメージは、幅広い世代で共有されています。

ケンタッキーの決算書によると、1年間の売り上げの中で、クリスマスの時期が一番の稼ぎ時となっており、2018年のクリスマス5日間(21日から25日)では、69億円(前年比102.3%)と過去最高売上を達成しています。

しかしながら、クリスマスにケンタッキーを食べる習慣は海外で珍しい光景であり、不思議がられるケースも少なくありません。

日本のケンタッキーがクリスマスで売上をあげている背景には、同社のマーケティング戦略があります。

クリスマスという文化の定着

日本のクリスマスでは、フライドチキンを食べることが毎年の風物詩となっていますが、その背景には1970年代から大々的に展開してきた宣伝キャンペーンに由来しています。

1970年代当時の日本では、家族でクリスマスを祝う習慣はあまり普及していませんでした。しかし、そのようななかケンタッキーは1974年12月、テレビコマーシャルを活用し、「家族でクリスマスを祝う」ことに焦点を当てたクリスマスキャンペーンを実施しました。

日本法人創業期の経営者である大河原氏が、「サンタの格好をしてクリスマスパーティーに出かけたところ、子どもたちが喜ぶのを見て商機を見出した」と言われ、これを機に「クリスマスを家族で祝う文化」に加え、「クリスマスに食べる料理は、ケンタッキーのフライドチキン」という食文化が次第に定着していきました。

店舗数も比例して拡大を遂げ、1973年には100店舗だったお店が、1979年は200店舗、翌年1980年は300店舗を突破するなど、右肩上がりで成長していきました。

日本の経済成長

ケンタッキーが日本で急成長した背景には、日本の高度経済成長期と重なっていたことも要因として挙げられます。

この時期の日本では、経済力が急激に成長しており、戦後以来、国民は初めて生活に金銭的な余裕が生まれるようになっていきました。

米ハーバード大学のテッド・ベスター教授曰く、「"消費する文化"が広まり、当時の文化大国であるアメリカや西洋の食べ物・ファッションに関心が集まっていった」と解説しており、そのためアメリカ発祥のケンタッキーにも注目が集まったと結論付けています。

外国人から見た、日本の「ケンタッキー」のポジション

世界中で人気のケンタッキーですが、キリスト教徒が多い海外からは日本のクリスマスにケンタッキーを楽しむ習慣が特異に映っています。

実際に、海外からは面白い反応が集まっており、「クリスマスにケンタッキーに行列ができていて驚いた。」「お祝い事は、七面鳥なのに、フライドチキンに代替されている。」など驚きの声が上がっている一方、「日本のケンタッキーは美味しいから、お祝い事で食卓に並んでも不思議ではない」という声も上がっています。

キリスト教の概念からは逸脱していても、お祝いごとにふさわしいという評価をされている点に着目すると、日本のケンタッキーの味に対する評価の高さが伺えます。

世界のKFC

世界中に店舗を展開するケンタッキーは、国によって様々なオリジナルメニューを開発しています。国民の嗜好やニーズに合わせて柔軟に対応する姿勢は、新規市場開拓においては必要不可欠であり、ケンタッキーはこの優れたマーケティングにより顧客からの支持を獲得してきた、といっても過言ではありません。

世界的ファーストフードチェーンの代表格であるケンタッキーが、各国で展開するユニークなメニューの一部を紹介します。

カナダのKFC

カナダのケベック州は、フランス語が公用語であり、ケンタッキーの店舗の名称もフランス語の「Poulet Frit Kentuckey」の頭文字をとって「PFK」と表記されます。

カナダの店舗ではポテトのソースが豊富に用意されており、その中でもグレービーソースとチーズがかかったカナダ発祥の「プーティン」は特に人気です。

日本のビスケットには使われているメープルシロップですが、意外にもメープルが有名なカナダでは使われていません。

ライスメニューも存在

世界のケンタッキーには、パンを使用したサンドだけでなく、米を使用したライスメニューも存在し、各地で人気を博しています。

東南アジアでは、伝統料理の文化を強く受けたメニューが存在しています。シンガポールではチキンとライスがセットのライスメニュー、台湾ではお粥とフライドチキンを合わせたメニューが提供されています。おかゆと一緒に口に運べるよう、チキンが一口大にカットされているなど、食べ方を配慮してメニュー開発していることがわかります。

ヨーロッパのポーランドでは、箱にライスとフライドチキンを乗せ、その上にアジアンテイストのソースをかけたライスボックスが存在します。

アラブ諸国では、フライドチキンにホットペッパーをかけたライスプレートが販売されています。こちらも、チキンが一口サイズになっており、ピリ辛のソースとライス、そしてチキンの相性が人気を集めています。

南米のブラジルでは、チキン・ポテト・ライスと、ブラジル人にとっては欠かせない豆をトッピングしたセットプレートが存在します。

このように、アメリカのオリジナルメニューから派生させ、各国の食文化や嗜好にあうようにメニューをカスタマイズすることにより、各国の食文化に馴染みのあるメニューに仕上げ、人気を獲得しています。

各国の色が出るサイドメニュー

メインメニューだけでなく、サイドメニューも各国の食文化を汲み取っています。

イタリアでは、ジェラートをはじめとしたスイーツメニューが豊富に提供されています。容器にもこだわりを感じ、高級を感じる見た目となっている他、南米のチリでは、サイドメニューとして、マッシュポテトかコールスローが選べるようになっています。

このように、各国の国民にとっては慣れ親しんだものであり、メニューとして当然取り入れられている商品を提供することが、外資系フードチェーン新規顧客を獲得するために、重要な施策の一つです。

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各国の文化や風習をバランスよく取り込む、ケンタッキーの魅力

日本への進出当初は苦戦を強いられたケンタッキーですが、オリジナルの味を忠実に再現し、食文化や風習に合わせ柔軟に対応したことにより店舗数の拡大に成功、アジアやヨーロッパ、南米といった世界各国でもシェアを広げています。

ケンタッキーの取り組みは、顧客満足度を向上させ関係深化に有効であるのみならず、国内ブランドをアウトバウンドし、新規市場を開拓していく際にも活用が期待できます。

東京オリンピックを控え、世界から日本への注目が高まっている今は、日本ブランドを海外へ認知させていく大きなチャンスです。ケンタッキーの海外展開における成功要因の中には、学ぶべき点も少なくはないでしょう。

<参照>

日本KFCホールディングス:平成30年3月期 第2四半期決算説明会資料

日本KFCホールディングス:ニュースリリース 2018年12月26日

文化庁:宗教年鑑 令和元年版日本KFCホールディングス:沿革

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

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