国内旅行会社取扱額 減少率ランキング:インバウンド向け商品100%減の企業も…地方・小規模企業に厳しい現状【観光庁 旅行業者取扱額から分析】

公開日:2020年06月01日

2020年1~3月は新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛ムードを受け、日本でもさまざまな業界で経営不振などの影響が見られました。

中でも観光業界は、非常に大きな打撃を受けたといえます。日本だけでなく世界的な渡航自粛ムードにより、日本人の国内旅行や海外旅行、外国人の訪日旅行のすべてで旅行会社の取扱額が大幅に減少しました。

4月に日本への入国拒否対象国がさらに増え、世界各地で新型コロナウイルスのパンデミックを受けたロックダウンや渡航制限が敷かれたことを踏まえると、インバウンドの取扱額は今後さらなる減少傾向を辿ると考えられます。

2020年1~3月の観光庁による「主要旅行業者の旅行取扱状況速報」から、「日本人の海外旅行」「外国人の国内旅行」「日本人の国内旅行」の3つのカテゴリーで見られた新型コロナウイルスによる影響や、今後の展望について解説します。

《注目ポイント》

  1. 新型コロナウイルス影響、特に「日本人向け海外旅行商品」大幅減少
  2. インバウンド向け国内旅行商品は100&今後しばらく減少傾向と予測

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2020年1~3月の国内旅行会社取扱額減少率ランキング

2020年1~3月における国内旅行会社全体の取扱額は、前年同期比35.6%減となりました。

新型コロナウイルスの影響を受けて全体的に前年同期に比べて減少傾向がみられ、特に「日本人向け海外旅行商品」の取扱額が前年同期比から42.0%減と大幅に落ち込みました。

「日本人の海外旅行」「外国人の国内旅行」「日本人の国内旅行」の3つのカテゴリーを総合した場合の取扱額減少率1位は九州旅客鉄道で、前年同期比63.5%減となりました。総取扱額のほとんどを占める日本人向け国内旅行商品が、1~3月を通して前年同期より大きく落ち込んだことが要因として挙げられます。

減少率2位は沖縄ツーリストで、取扱額が前年同期比より60%近く減少しました。沖縄ツーリストは日本人向け海外旅行商品での取扱額減少率が1位となっており、感染拡大を受けて渡航自粛をする動きが日本で広がっていたことが原因と考えられます。

減少率3位は、55.5%減の郵船トラベルとなりました。郵船トラベルは日本人向け国内旅行商品での取扱額減少率が1位で、日本国内での外出自粛ムードを受け旅行を控える人が増えたことが、今回の順位につながりました。

順位 旅行会社 減少率

1位

九州旅客鉄道 -63.5%

2位

沖縄ツーリスト -59.5%

3位

郵船トラベル -55.5%

4位

日通旅行 -54.6%

5位

三越伊勢丹ニッコウトラベル -54.2%

6位

ヤマハトラベルサービス -52.0%

7位

トヨタツーリストインターナショナル -51.9%

8位

阪急交通社グループ3社 -49.2%

9位

北海道旅客鉄道 -48.6%

10位

IACEトラベル

-48.4%

日本人向け海外旅行商品の取扱額減少率ランキング:前年同期比42%減

日本人向け海外旅行商品は、全体取扱額が前年同期比42.0%減となりました。 減少率1位は沖縄ツーリストで、前年同期より64.9%減少しました。中でも、2019年3月に1.3億円あった取扱額が、2020年3月には0円と大きく落ち込みました。2位は60.4%減の富士急トラベル、3位は58.9%減の名鉄観光バスでした。

1位から3位の旅行会社は地域に根差した経営を基本としており、各地域から海外へ旅行を考える顧客を多く得ていたと考えられます。しかし新型コロナウイルスの感染拡大によって渡航自粛のムードが広がり、安定していたはずの顧客による旅行取り止めが相次いだことが取扱額の減少につながったといえるでしょう。

順位 旅行会社 減少率

1位

沖縄ツーリスト -64.9%

2位

富士急トラベル -60.4%

3位

名鉄観光バス -58.9%

4位

メルコトラベル -58.7%

5位

日通旅行 -58.7%

6位

京成トラベルサービス -57.5%

7位

九州旅客鉄道 -55.4%

8位

郵船トラベル -54.8%

9位

ヤマハトラベルサービス -54.6%

10位

三越伊勢丹ニッコウトラベル -53.2%

インバウンド向け国内旅行商品の取扱額減少率ランキング:前年同期比38.9%減

インバウンド向け国内旅行商品は、全体取扱額が前年同期比38.9%減となりました。 減少率1位はエアトリグループ4社で、前年同期比100.0%減と大きく落ち込みました。

2位は99.0%減のヤマハトラベルサービス、3位は97.8%減のメルコトラベルで、 減少率上位1~5位のうち4社は2019年1~3月の取扱額が1億円未満の企業でした。

新型コロナウイルスの世界的なパンデミックによって、4月以降に世界各地でロックダウンや渡航制限が敷かれ、日本でも入国拒否対象国・地域が増えました。これらの点を踏まえると、インバウンド向け国内旅行商品の取扱額は、今後しばらくはさらに減少傾向をたどると考えられます。

今回の調査では1~3月期の取扱額減少率が1~2割程度にとどまった業者、さらには取扱額がプラス成長した業者も一部見られましたが、今後はより広範囲に影響が及ぶことになるでしょう。

なお、1~3月期の取扱額減少率において上位に位置する旅行会社は、役員・社員のインバウンドに対する理解を深める取り組みを積極的に実施するなど、インバウンド集客に対する積極的な姿勢が共通点として挙げられます。また、各社はこれまで培ってきたノウハウや強味を活かし、自社のサービスを日々進化させています。

現在の取扱額は多額とはいえませんが、こうした着実な取り組みにより、アフターコロナにおいてはインバウンド集客力の高まりによる取扱額の増加が期待できるかもしれません。

順位 旅行会社 減少率

1位

エアトリグループ4社 -100.0%

2位

ヤマハトラベルサービス -99.0%

3位

メルコトラベル -97.8%

4位

沖縄ツーリスト -89.6%

5位

エムオーツーリスト -83.4%

6位

小田急トラベル -68.1%

7位

阪急交通社グループ3社 -61.9%

8位

南海国際旅行 -61.0%

9位

旅工房 -55.9%

10位

ジャルパック -53.8%

日本人向け国内旅行商品の取扱額減少率ランキング:前年同期比31.5%減

日本人向け国内旅行商品は、全体取扱額が前年同期比31.5%減となりました。 減少率1位は郵船トラベルで、前年同期より65.4%減少しました。 2位は64.9%減のトヨタツーリストインターナショナル、3位は63.7%減の九州旅客鉄道でした。

1位から5位の旅行会社は、クルーズ旅行を希望する層や旅行会社の展開地域の顧客、シニア層など、顧客のターゲット層をある程度絞ったマーケティングが共通した特徴として挙げられます。

まずダイヤモンド・プリンセス号での新型コロナウイルス集団感染を受けてクルーズ旅行商品の販売が落ち込み、その後層を問わず国内旅行を控える人が増えたことが今回の取扱額の減少につながったと考えられます。

順位 旅行会社 減少率

1位

郵船トラベル -65.4%

2位

トヨタツーリストインターナショナル -64.9%

3位

九州旅客鉄道 -63.7%

4位

沖縄ツーリスト -58.3%

5位

三越伊勢丹ニッコウトラベル -55.0%

6位

北海道旅客鉄道 -49.0%

7位

旅工房 -46.7%

8位

T-LIFEホールディングスグループ4社 -46.7%

9位

読売旅行 -44.3%

10位

阪急交通社グループ3社 -44.2%

緊急事態宣言解除で取扱額回復なるか?アフターコロナに向けた情報発信を

5月25日をもってようやく全国で緊急事態宣言が解除されました。 徐々に外出自粛ムードが解かれ、「日本人向け国内旅行」の取扱額は回復傾向を見せると考えられます。 一方で日本や各国での入国制限は続いており、「日本人向け海外商品」と「インバウンド向け国内旅行商品」の回復には、まだまだ時間がかかるでしょう。

しかし「インバウンド向け国内旅行商品」に関しては、中国をはじめとしたアジア圏では新型コロナウイルスの感染が収束に向かいつつあり、感染拡大の影響で訪日を断念した人のニーズがあると考えられます。

実際に日本を訪れるのは入国制限が解かれ、日本での感染が収束に向かった後になりますが、訪日旅行のための情報収集はもう始まっていることから、今から情報発信を始めることが重要といえます。

アジア圏に限らず、新型コロナウイルス収束後に訪日したいと考えている人に向け、旅行情報や旅行前に自宅で楽しめるコンテンツ、安心・安全への取り組みを発信していくことがアフターコロナのインバウンド集客につながるでしょう。

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<参照>

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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