アメリカで連日3万人以上の新型コロナウイルス感染者が出ている中、プロバスケットボールリーグ(NBA)では、独自の大型隔離施設(バブル)システムが奏功し注目を集めました。
7月から3か月以上行われたバブルシステムにより、10月12日、NBAのリーグは「344選手中、感染者ゼロ」を維持したまま無事に終了しました。
スポーツイベントにおける感染対策として、NBAの事例から東京五輪が学べることはあるのでしょうか。
本記事では、NBAの「バブルシステム」はどのようなものだったのか、東京五輪へのヒントはあるのか、考察していきます。
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NBA開催期間中、コロナ陽性者はゼロ
プロバスケットボールリーグ(NBA)では、新型コロナウイルスの影響により、3月中旬にリーグが中断しました。
しかしフロリダ州オーランドのディズニー・ワールドに隣接する3つのホテルに大型隔離システム「バブル」を設け、選手をはじめとするリーグの関係者をすべて隔離したうえで、リーグを再開しました。
バブルでは毎日PCR検査が行われ、10月12日にシーズンが終了するまで、新型コロナウイルスの陽性者がゼロの状態を維持することに成功しました。
同時期に新シーズンが開幕したアメリカのメジャーリーグベースボール(MLB)では感染者が続出したのに対し、NBAは新型コロナウイルス対策に最も成功したスポーツリーグとして位置づけられています。
NBAのコミッショナーであるアダム・シルバー氏は、バブルシステムの運営に関わった事務局のすべての職員に、1,000ドル(約10万円)のボーナスと、10月末から1か月の間、金曜日に休暇を与えるとしています。
NBAのバブルシステムの徹底したリスク管理
NBAのバブルシステムでは厳格なガイドラインが定められ、徹底したリスク管理が行われていました。
新型コロナウイルスの感染予防と健康に関する条項が記載され、関係者に送付されたハンドブックは113ページにものぼります。
バブルシステムでの隔離は、22チームの選手、審判、事務局職員、チームスタッフのほか、テレビ中継放送局のスタッフやメディア従事者も対象とされました。
オーランド入りは3グループに分けて行われ、バブルに入った後はホテルで48時間の隔離が実施されました。
個人的な事情でバブルを離れた場合には、規定を適用しリスクを最小限に抑えました。
バブルの外に出たり、デリバリーを取ったりすると自主隔離のペナルティが科され、 マスクを着用せずに歩き回ると警告を受けるなどの厳しい制限もありました。
また施設内の通路のほとんどは一方通行で不要な接触を避けることができるほか、消毒や清掃の徹底、コート外でのマスク着用、選手へのインタビュー時のソーシャルディスタンスの確保など、基本的な感染対策も遵守されました。
「レアケース」には柔軟な対応も
厳格なリスク管理が行われたバブルシステムですが、現場の実情に合わせて臨機応変な対応も取られています。
新型コロナウイルス検査のプロトコルでは、1,000回の検査で約5回、決定的な結果が得られないとされています。
そうなった場合、従来は2日連続で陰性の結果が必要でしたが、NBAでは48時間待機することなく、24時間以内の試合でプレイが可能となるようにしました。
これは、重要なプレイヤーが、検査で陽性反応が出ていないにも関わらず試合に出られないことを懸念する各チームの懸念に配慮したものです。
ツール・ド・フランスでも「バブル」が奏功
新型コロナウイルスが感染拡大する状況下でスポーツイベントを成功させたのは、アメリカだけではありません。
日本よりも感染状況が深刻であったフランスでも、世界的三大スポーツイベントの一つである「ツール・ド・フランス」が9月に開催され、厳格な感染対策により無事に3週間のレースが終了しました。
ツール・ド・フランスでもバブルシステムが採用され、イベントの関係者はバブルの位置付けとして3種類に分けられました。
バブルの中心に位置する選手やチーム・大会関係者は、レース前とレース中に2回ずつ、合計4回のPCR検査が義務付けられ、バブルの2番目にいるマスコミ関係者やレース・チームスポンサーの関係者は、レース前のPCR検査とその検査の陰性証明書の提出が義務付けられました。
バブルのもっとも外側にいる「観客」には、マスクの着用と選手との間のソーシャルディスタンスの確保が要請されました。
ツール・ド・フランスはなぜコロナ禍で開催できたのか?東京五輪に先立つ事例に学ぶ
新型コロナウイルスによる感染拡大がつづく中、世界三大スポーツイベントの一つ、ツール・ド・フランス(以下ツールと省略)が9月に開催されました。今年で107回目の開催となります。開催当初は3週間後のパリのゴールに到着するかと心配する人も多かったものの、結果としてはレースオーガナイザーのASO(アモリー・スポール・オルガニザシヨン)が設定した厳格な新型コロナウイルスの感染対策により、無事に3週間のレースを終えることができました。その一方で、レース中にレース関係者に新型コロナの陽性が確認されたり、...
東京五輪がスポーツのバブルシステムから学ぶべきこと
NBAやツール・ド・フランスでのバブルシステムの成功から、日本が東京五輪の開催にあたって学べることはあるのでしょうか。
新型コロナウイルスの感染拡大はいまだ収束のめどが立っていませんが、東京五輪は大会を簡素化したうえで2021年夏に開催する方向で調整が進んでいます。
東京五輪・パラリンピック組織委員会と国際オリンピック委員会(IOC)が9月下旬に行った調整委員会では、大会関係者の人数、サービスの合理化、関連イベントなど52項目を簡素化の対象とすることが合意されました。
10月19日には、東京江東区の東京ビックサイトを利用して、観客や大会関係者の手荷物検査所における新型コロナウイルス対策の実証実験が始まりました。
検査に並んでいる間の人と人の距離、1人1本持ち込めるペットボトルの試飲検査の頻度、検温方法などを複数パターンで組み合わせ、1時間あたりに入場できる人数を検証しています。
検温では非接触型検温器やサーモグラフィーに加え、手首など体に貼って体温を計り、数秒で発熱を判定できる「検温シール」の導入検討も行われています。
空前の規模となる五輪、課題は
選手の人数だけでも1万人を超える東京五輪の規模は、NBAやツール・ド・フランスよりもはるかに大きく、新型コロナウイルスの感染対策は容易ではないでしょう。
多数の競技が同時に行われる五輪では、競技別にバブル区域を指定するなどの対応が必要になる可能性があります。
選手団や関係者が毎日PCR検査を受けられるようにするためには、大量の検査キットが必要になります。
PCR検査は比較的高額な検査であるため、誰が費用を負担するのか、どうやって費用を捻出するのかなど、検査費用の問題にも取り組む必要があるかもしれません。
感染対策マニュアルや、陽性者が出た場合のマニュアル、バブルのルール設定など、詳細なガイドラインも必要になるでしょう。
開催まで1年を切る中、大規模で綿密な計画を立てるためには、早急な対応が求められます。
リーグ終盤で新型コロナウイルス対策が実りを見せたMLBでは、通常のロッカーに加えて会議室やVIPルームなどもロッカーとして使用するなどの工夫を行いました。
ポストコロナ時代におけるスポーツのビッグイベントである東京五輪を成功させるためには、従来の常識や慣習にとらわれず、柔軟な発想と工夫で設備や人的資源を最大限に活用していくことが求められるでしょう。
コロナ「第2波」でも自粛すべきでない理由:感染状況を正しく把握し「正しく怖がる」意識を
7月5日、東京都は新たに111人の新型コロナウイルス感染者が確認されたと発表しました。都内で1日あたりの感染者数が100人を超えるのは、4日連続となりました。「第二波の到来か」、「緊急事態宣言の再発令か」と取り沙汰される中で、先行きに不安を感じている人も少なくないようです。しかし全体の状況を把握するためには、感染者数以外の情報も冷静に判断する必要があります。関連するデータも紐づけて見てみると、また新しい構図が見えてきます。目次東京でついに新規感染者100人超え最悪の場合緊急事態宣言の可能性...
<参照>
時事ドットコム:手荷物検査への影響を検証 コロナ対策踏まえて―東京五輪組織委
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