日本政府は、「佐渡島の金山」の世界遺産推薦を見送りとする方針で調整に入った模様です。
2007年に新潟県と佐渡市が提案書を提出し、昨年ついに国内推薦候補に決定した「佐渡島の金山」ですが、日韓対立を背景として世界遺産登録への道が遠のくこととなりました。
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「佐渡島の金山」世界遺産登録に向けたこれまでの流れ
佐渡金山とは、新潟県佐渡島にある金鉱山・銀鉱山の総称です。佐渡島には合計55の鉱山があり、島内のおもな鉱山を総称して「佐渡金銀山」とよんでいます。
2007年に県と市が世界遺産暫定一覧表記載資産候補提案書を国へ提出し、ここから佐渡金山の世界遺産登録に向けての動きが始まりました。
2010年に「佐渡島の金山」が世界遺産暫定一覧表に記載されて以降、国文化審議会世界文化遺産特別委員会による推薦見送りが続いていましたが、県と市は推薦書の提出を続け、取り組みを継続していました。
2020年は文化庁がコロナ禍を理由に国内推薦候補の選定自体を取りやめたものの、市は2021年3月に改めて推薦書原案を提出し、同年12月についに国内推薦候補となりました。
佐渡市長はこれを受けて「佐渡金銀山が日本文化の誇りとして認められた」とコメントを発表し、「更に世界にその価値や魅力を知っていただけるよう全力で取り組んでいく」とより前向きに進めていく姿勢を示しています。
なお日本政策投資銀行が2021年7月に発表した「『佐渡島の金山』世界文化遺産登録を契機とした地域価値の向上に関する調査報告書~持続可能な佐渡市の実現~」によれば、「佐渡島の金山」が世界遺産に登録されたのちには佐渡市内に約520億円の経済効果が生じると見込まれています。
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ユネスコへの推薦見送りへ、背景に日韓対立
2021年の国内推薦候補の決定により、佐渡金山の世界遺産登録に期待が集まっていました。しかしながら、2022年1月に入り、政府が今年度の国際連合教育科学文化機関(UNESCO)への推薦を見送る方針であることがわかりました。
韓国による佐渡金山世界遺産登録への反発を受けた対応とみられています。
佐渡金山を巡る韓国との対立
佐渡金山の世界遺産登録に関して、日韓対立が懸念されています。
韓国はかねてより、朝鮮半島が日本の植民地だった時代に朝鮮半島出身者の強制労働が行われていたと主張しています。
2021年12月には、日本政府が佐渡金山をUNESCOの推薦候補へと決定したことを受け、韓国外務省は佐渡金山を「韓国人が強制労働をさせられた被害の現場」としたうえで「即時撤回するよう促す」と反発の声を上げていました。
なお実際には、日本は「佐渡島の金山」の世界遺産申請対象を「江戸時代まで」とし、あくまでも植民地時代は対象外とされています。
世界遺産と日韓の歴史的問題を巡る動きは2015年にも発生しており、長崎の「軍艦島」が「明治日本の産業革命遺産」として世界遺産に登録される際、韓国は同様に「強制労働」を理由に猛反対していました。
2020年には当時韓国文化体育観光部の長官を務めていた朴良雨 が、日本が強制労働について正式な説明を行っていないと批判をあらわにしたほか、韓国外務省も世界遺産登録を取り消すようUNESCOに書簡を送っています。
安倍晋三元首相ら、韓国の主張に反発
こうした中、日本政府は「佐渡島の金山」のUNESCOへの推薦について、今年度の推薦は見送りとする意向を固めた模様です。
2023年に世界遺産に登録されるには、2021年2月1日までにUNESCOに推薦書を提出する必要がありますが、日韓対立を加味して慎重姿勢をとったとみられます。
時事通信によれば、自民党の安倍晋三元首相は1月20日、「論戦を避ける形で登録を申請しないのは間違っている」と述べ、事実に基づいて韓国側に反論することが重要と訴えたということです。
木原誠二内閣官房副長官は21日の会見で、「韓国の独自の主張は日本側としてまったく受け入れられない」「韓国国内で事実に反することが多数みられており極めて遺憾」などと韓国の主張に強く反論しています。
また同日、世界遺産への推薦見送りについて反発の声が出ているのではという旨の質問に対して「政府としては、登録を実現するということが何よりも重要であると考えている」と答えました。
引き続き世界遺産登録を目指す意向で、「何が最も効果的かという観点から積極的に検討を行っている」と、最適な方法を模索していることも明らかにしています。
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<参照>
韓国外務省:報道発表資料
佐渡を世界遺産に:報道発表資料(佐渡市長コメント)
首相官邸:内閣官房長官記者会見 令和4年1月21日(金)午前
首相官邸:内閣官房長官記者会見 令和4年1月21日(金)午後
日本政策投資銀行:「佐渡島の金山」世界文化遺産登録を契機とした地域価値の向上に関する調査報告書~持続可能な佐渡市の実現~
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