海外からの観光客で賑わう都市というと、パリやニューヨーク、ロンドンなどを思い浮かべるかもしれません。
2023年に海外から観光客が最も訪れた都市は、実はトルコのイスタンブールでした。年間の訪トルコ外客数は5,670万人に達したといいます。
国土面積などが違うため単純比較は難しい部分もありますが、すでに多くの観光客が訪れているトルコから、日本が学べることもあるかもしれません。
そこで本記事では、イスタンブールが観光地として人気を集める理由や、トルコの観光戦略から日本が学べることを解説します。
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2023年、海外から最も観光客を集めたのはイスタンブール
国際市場調査会社のユーロモニターインターナショナルの発表によると、2023年の国際線到着数トップ(海外からの観光客が最も多かった都市)は、イスタンブールでした。
2023年国際線到着数は上位10都市は以下の通りです。
1.イスタンブール(トルコ)
2.ロンドン(イギリス)
3.ドバイ(アラブ首長国連邦)
4.アンタルヤ(トルコ)
5.パリ(フランス)
6.香港(香港)
7.バンコク(タイ)
8.ニューヨーク(アメリカ)
9.カンクン(メキシコ)
10.メッカ(サウジアラビア)
トルコはイスタンブール以外にも、リゾート地のアンタルヤもランクインしています。アンタルヤでは毎年トルコ最大級のマラソンが開催され、各国のランナーが参加しています。
近年、トルコは旅行先として世界的に注目が集まっており、さまざまなメディアでも取り上げられています。
米国大手旅行専門誌「トラベル・アンド・レジャー(Travel + Leisure)」では、「2024年 訪れるべき旅行先Top50」に選出されています。(2023年には地中海湖水地方がランクインしました。)
ほかにも、CNN Travelによる「2024年に訪れるべき最高の場所」にトルコの黒海沿岸地域がランクインしています。
さらに国連世界観光機関(UNWTO)が選ぶ「2023年 ベスト・ツーリズム・ビレッジ」では、エーゲ海地方イズミル県セルチュク地区にあるシリンジェが選出されました。
2023年のトルコは外国人観光客数で過去最高を記録
海外の観光客から人気を集めるトルコは、2023年の外国人観光客数で過去最高を記録しました。
トルコ文化観光省によると、2023年の訪トルコ外国人観光客数は5,670万人(前年比10%増)でした。なお、観光収入は前年比17%増の543億ドル、宿泊客の1泊あたりの平均消費額は99ドルに達し、観光収入でもトルコの過去最高値となりました。
トルコが観光客を多く集めた理由は?
なぜトルコが世界各地から観光客を集めているのでしょうか。理由として、外国人が訪れやすい環境であることと、観光産業に力を入れていることが挙げられます。
それぞれの理由について詳しく解説します。
1. トルコならではの、外国人が訪れやすい環境
地中海沿岸にあるトルコは、ヨーロッパとアジアをつなぐ場所に位置しています。ヨーロッパやアラブ諸国からのアクセスが良好です。
またトルコは概ね治安が良く、外国人が安心して旅行しやすい環境です。過去にテロ事件が発生しましたが、治安当局の取り締まり強化によって治安は改善しています。
そのほか文化的な側面もあります。トルコではイスラム教が広く信じられていますが、宗教が公の場に関わることを禁じる「世俗主義」を原則としています。そのため、外国人が観光地などでイスラム教の習慣を強制されることは基本的にありません。
このように、地理、治安、文化的な側面から、トルコは外国人が訪れやすい環境となっています。
2. 観光産業を重要産業に位置づけ
トルコ政府は、観光産業を国の重要産業に位置付けています。2007年には「トルコ観光戦略 2023」を策定し、インフラ整備からマーケティング、観光分野の分散まで多岐にわたる取り組みを開始しました。
トルコ全体のインフラ整備が進んだことにより、外国人観光客からの印象が改善されました。また、官民との連携が促進されたことで、観光産業が民間経済の活性化と直結するようになりました。
これらの取り組みにより、観光産業は今やトルコの地域開発の起爆剤となりました。観光開発地区は国内に15ヶ所設定され、地中海沿岸リゾートや温泉の活用、冬季リゾートの開発が推進されています。
観光教育にも力を入れ、大学に「観光・ホテル経営学部」を設置するなど、教育段階から観光従事者のレベル向上を図っています。
3. ビザの簡素化による外国人誘致
トルコは、44の国を対象に入国査証(ビザ)を免除し、必要な場合はオンラインでの発行も対応をしています。さらに、海外46ヶ所に専門の拠点を設置してPRを行うなど、外国人を誘致する取り組みを推進しています。
最新の戦略は、サステナブルで魅力的な環境づくり
2022年、グローバル・サステナブル・ツーリズム協議会(GSTC)と「国家持続可能観光業プログラム」協定を結びました。これにより、トルコは同協議会と政府レベルで協定を結んだ世界初の国となりました。
法律では宿泊施設のサステナブル・ツーリズム認証が義務付けられ、7,500以上のホテルがこのプログラムに参加しています。
実際にプログラムを取り入れたホテルや観光施設にお墨付きを与えることで、観光客からの信用も得やすくなっています。
一方の日本は? 東京が「魅力的な都市」4位にランクイン
2023年は日本にも多くの外国人が訪れ、年間の訪日外客数は2,506万人に達しました。
トルコと比較すると、訪トルコ外客数は5,670万人で、日本と2倍以上の差があります。
一方で、日本(東京)も世界的に観光地として注目されており、ユーロモニター作成の都市魅力スコアレポートでは「魅力的な都市」第4位にランクインしました。
都市魅力スコアレポートは、以下の6つを指標軸として各都市の魅力度をスコア化したものです。
- 経済とビジネスのパフォーマンス
- 観光のパフォーマンス
- 観光インフラ
- 観光政策と魅力
- 健康と安全
- 持続可能性
上位3都市はパリ・ドバイ・マドリードで、その後に東京が続く結果となりました。日本の都市が上位10位にランクインするのは今回が初めてです。
東京は、特に「観光インフラ」で高評価を得ています。コロナ後の規制緩和と円安の影響を受け、低価格で消費者体験を楽しむ観光客が増えている傾向にあります。
日本がトルコから学べること「サステナブルな観光」が鍵?
日本の観光産業を今後さらに盛り上げるため、トルコからどんなことが学べるでしょうか。
立地面では、トルコと比較すると欧州やアラブ諸国からアクセスしにくく不利な点もあります。しかし日本独自の文化や安定した治安など、日本ならではの魅力もあります。
観光戦略では、日本はトルコから以下の取り組みについて学べそうです。
- 官民の連携
- 観光教育のさらなる活性化
- サステナブル・ツーリズム
近年、世界的に持続可能な観光に対する配慮や意識が高まり、トルコの観光産業のサステナブルな取り組みは世界から注目されています。
日本でもサステナブルな観光コンテンツの充実に力を入れていますが、今後はより一層の取り組みの推進と情報発信が必要になりそうです。
今後の目標として、トルコは2028年末までに9,000万人の観光客を誘致し、観光収入1,000億ドル達成を掲げています。持続可能な観光エコシステムが構築されることで、世界での存在感はさらに増していきそうです。
日本はトルコと比較して2分の1程度の国土面積で、かつ一部の人気観光地に人が集中する傾向があります。今後日本ではオーバーツーリズムの課題解決と同時に、日本ならではの魅力を生かした独自の観光戦略を練る必要がありそうです。
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<参照>
ユーロモニター・インターナショナル:Euromonitor International’s report reveals world’s Top 100 City Destinations for 2023
トルコ共和国大使館 文化観光局:トルコ最大級のライフスタイルマラソン 「Runtalya Marathon(ランタルヤ マラソン)」 3月3日(日)アンタルヤにて開催!
トラベル・アンド・レジャー(Travel + Leisure):The 50 Best Places to Travel in 2024
CNN Travel:Where to go in 2024: The best places to visit
トルコ共和国大使館 文化観光局:エーゲ海沿岸の緑のオアシス、シリンジェ 国連世界観光機関(UNWTO)の「2023年 ベスト・ツーリズム・ビレッジ」に選出
2023年 訪トルコ外国人観光客数 過去最高の5,670万人 対前年比10%増を記録
トルコのホテルベッド100万台以上がサステナブル・ツーリズムの認証を取得
トルコの観光客数、パンデミック前の99%まで回復 世界第3位の観光市場に
公益財団法人 国際通貨研究所:トルコ経済を支える観光産業の動向
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