「観光クロスオーバーサミット2024」が7月、東京証券会館にて開催されました。このイベントでは、観光をテーマに新たに挑戦する人を対象とした「観光クロスオーバーコンテスト」の最終審査・授賞式、さらに星野リゾート代表による基調講演や、豪華登壇者による講演・パネルディスカッションなどが行われました。
今回は、本イベントのレポートをお届けします。
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- 「観光業界にイノベーションを」観光クロスオーバー協会代表理事 西岡氏
- 「観光クロスオーバーコンテスト」開催!新たな取り組みに挑戦するファイナリストが集結
- 1. Fourwin株式会社 代表取締役社長 永瀬 駿平氏:FreeTraffic
- 2. 株式会社Simplee代表 諏訪 実奈未氏:”訪日観光客向け”体験型託児のDXソリューション 〜世界中から訪れる人々を歓迎する育児サービスの実現〜
- 3. 株式会社タビキャスト代表 水谷 悦久氏:TABICAST(タビキャスト)〜観光地を輝かせる旅行者〜人手不足で悩む観光事業者を一人旅旅行者がスポットワークで支援
- 4. Lost Item Delivery株式会社 代表取締役 吉永 陽介氏:訪日外国人の忘れ物 コスト0リスク0で海外配送 落し物捜索から売上最大化と誘致まで!
- 5. 株式会社Atire代表 伊藤 渚氏:〜音楽で地域に彩を〜音楽イベント同行者マッチングアプリ「Atire」
- 6. 株式会社Grit 代表取締役 内田 雄介氏・中山 隼輔氏:性別や年齢、国籍、疾患や障がいの有無に関わらず誰しもが旅行を楽しめる日本へ
- コンテスト各部門の受賞者が決定!
- 星野リゾート代表 星野佳路氏による基調講演「観光の未来」
- 観光庁観光戦略課長 河田氏、山田桂一郎氏のセッション「観光政策・観光人材の未来」
目次
「観光業界にイノベーションを」観光クロスオーバー協会代表理事 西岡氏
冒頭では、株式会社たびふぁん代表取締役 兼 一般社団法人観光クロスオーバー協会代表理事の西岡 貴史氏が挨拶。観光業界は歴史が長いがゆえに、新たなイノベーションが起きにくいとの課題感を持っているといい、2025年には大阪・関西万博という大きなイベントも控える中で、協会として観光業の挑戦を応援する実証実験などの取り組みを推進していると述べました。
観光業界のオープンイノベーションを推進する取り組みの一つである「観光クロスオーバーサミット」。今回のイベントを通じて業界が抱える課題について考えるとともに、今後もさまざまな地域で課題解決を目指して実証実験を行い、最終的にその成果を地域に還元する循環を作っていきたいと語りました。
「観光クロスオーバーコンテスト」開催!新たな取り組みに挑戦するファイナリストが集結
観光クロスオーバーコンテストは、未来にイノベーションの種が育つ土壌づくりを目指して、観光に特化した「実証実験」を生み出し実社会にインストールするアイデアを広く集めるために、一般社団法人観光クロスオーバーの主催により開催されるコンテストです。
今回、観光クロスオーバーサミット内にて、ファイナリストに選ばれた6名によるプレゼンテーションが行われました。
1. Fourwin株式会社 代表取締役社長 永瀬 駿平氏:FreeTraffic
FreeTrafficは、地方自治体や宿泊施設、飲食店などが旅行者の交通費を分割して負担することで、旅行者の交通費を「実質無料」にするアプリです。
永瀬氏は、旅行をしようという気持ちの妨げ、障壁となるものの一つが「交通費」であると考え、旅行者が交通費を負担するという常識の変革に挑戦したといいます。
このサービスでは、旅行者の交通費を自治体や宿泊施設、飲食店などが負担。旅行者が増えることによる投資対効果を狙うという仕組みです。
同社はアプリの開発後、北海道・島牧村で実証実験を実施。札幌から車で約3時間かかるアクセスの悪さでなかなか旅行者を呼びづらい地域でしたが、「交通費の負担ゼロ」が口コミを呼び、旅行者が訪れるように。負担した交通費よりも大きな消費効果の創出に成功したとしています。
審査員との質疑応答では、行政・民間が最初に負担する予算をどう確保するかの問題や、国・自治体が行う旅行支援と比較した際の独自性などについて議論が交わされました。
2. 株式会社Simplee代表 諏訪 実奈未氏:”訪日観光客向け”体験型託児のDXソリューション 〜世界中から訪れる人々を歓迎する育児サービスの実現〜
Simpleeは、「学会や行政のイベントでの臨時託児」と「インバウンド」の2つを軸に事業を展開する企業です。インバウンド事業では観光事業者・エージェント・ホテルと連携して、滞在先まで保育士を派遣。親たちが旅行を楽しむ間、子どもたちに日本の文化を体験してもらうプログラムを提供しています。
諏訪氏は、訪日客の約40%がファミリー層である中で、子連れゆえに「コト消費」つまりアクティビティ体験や、自由に観光地を巡ることが難しいことなどを問題点として指摘しました。
そこで同社では、海外で普及しつつある旅行中の託児サービスを提供。元々国内向けに出張託児サービスを提供してきたことからすでに運営ノウハウ・人材アセットを持っており、安心・安全を届けられるとしています。
質疑応答では人材の確保や規制に関する議論に。国内客向けのシッター不足につながらないかとの指摘もありましたが、例えばインターナショナルスクールで訪日している家族のシッターは、スクールが終わって帰国する際に契約終了になってしまうといいます。そうした次の就職先に困っている外国人シッターを救う手立てにもなるとしました。
3. 株式会社タビキャスト代表 水谷 悦久氏:TABICAST(タビキャスト)〜観光地を輝かせる旅行者〜人手不足で悩む観光事業者を一人旅旅行者がスポットワークで支援
TABICASTは、旅行市場の成長とともに観光業界の人手不足が問題となっている中、地域との交流を望む旅行者をスポットワーカーとして観光事業者へ紹介・マッチングするサービスです。
水谷氏は元々JTBに所属しており、観光業に長く携わる中で人手不足に苦しむ事業者が多いと感じ、それを解決すべく「一人旅中に働く」サービスを立ち上げたそうです。そうした課題解決だけでなく、現地の人々と触れ合うことで「また来たい」と思ってもらう効果もあるとしています。
今後については、審査員の養父市市長 広瀬氏に向けて、養父市での実証実験を呼びかけ。広瀬氏は、タビキャストとの取り組みを行うことで地域の魅力を新しい視点で発見してもらう効果や、移住のきっかけにもなるのは間違いない、と応じました。その他、競合サービスとなる「おてつたび」との違いについても質問があり、これに対し水谷氏は「観光業」に特化したサービスの強みをアピールしました。
4. Lost Item Delivery株式会社 代表取締役 吉永 陽介氏:訪日外国人の忘れ物 コスト0リスク0で海外配送 落し物捜索から売上最大化と誘致まで!
Lost Item Delivery は、インバウンド客が日本に置いてきた忘れ物を母国まで海外配送するサービスです。忘れ物をしたゲストとの連絡や、国によって異なるルールの配送手続き、アフターフォローまで、煩雑な作業をすべて一貫してサポートします。
吉永氏はホテルマンとして勤務していたことがあり、訪日外国人の忘れ物が宿泊施設側の業務を圧迫していることを知ったといいます。旅行中の落とし物・忘れ物といった、一見ネガティブに思える出来事を、「次に日本を選びたくなる」体験に変えるようなサービスを作りたかったと語りました。
同サービスでは、忘れ物をした外国人側とのコミュニケーションや、国際配送の問題などを引き受け、施設側の業務効率化、訪日外国人の満足度向上の双方に貢献できるとしています。さらに、宿泊施設側のコスト負担がゼロであることも強調しました。
質疑応答では、サービス側の収益の上げ方などに質問が集まりました。吉永氏は、現在は外国人が忘れ物を受け取る際に手数料を取るビジネスモデルとなっているものの、今後は忘れ物に同封する広告で収益を上げていきたいと説明しました。
5. 株式会社Atire代表 伊藤 渚氏:〜音楽で地域に彩を〜音楽イベント同行者マッチングアプリ「Atire」
Atireは、「ライブイベントに行きたいけど同行者が見つからない」という参加者の悩みをマッチングによって解決するサービスです。音楽イベントへの参加者増加を促進することを目指しています。
立教大学、日本大学の学生をメインに活動しているという同社。コロナ禍で一度下火となってしまった音楽イベントの振興に貢献する他、近年問題となっているチケット転売などのトラブルも防ぎたいとしています。
質疑応答では、音楽以外のイベントへの広がりなどについて議論が交わされました。
6. 株式会社Grit 代表取締役 内田 雄介氏・中山 隼輔氏:性別や年齢、国籍、疾患や障がいの有無に関わらず誰しもが旅行を楽しめる日本へ
株式会社Gritは、医療従事者による外出・旅行同行サービスを提供しています。重度の病気や障害を持っている方々の外出や旅行に看護師が同行して移動をサポートし、万が一の急変時にも迅速に対応するというものです。
臨床現場に携わる中で、「思い出の地に一緒に行きたかった」「親孝行をしておけばよかった」といった遺族の声を耳にし、看護師2名で本サービスを立ち上げたといいます。国や自治体、各企業が行なっているバリアフリーでは補いきれない部分を医療者目線で対応し、障害や病気があっても自分らしく、”行ける場所”ではなく”行きたい場所”に、安心して行けることを目指しているそうです。
質疑応答では、まさに今起きている社会課題に挑むサービスとして賞賛が集まりつつ、サービスの持続可能性などが議論されました。
コンテスト各部門の受賞者が決定!
観光庁長官賞(最優秀賞)には、株式会社Grit 内田氏・中山氏の「性別や年齢、国籍、疾患や障がいの有無に関わらず誰しもが旅行を楽しめる日本へ」が選ばれました。今日本で起きている高齢化などの社会課題に挑み、旅行を楽しめる人を増やそうとするビジョンが、観光業の変革につながるとして評価されました。
続いてオーディエンス賞・優秀賞の2つを、Lost Item Delivery株式会社 吉永氏の「訪日外国人の忘れ物 コスト0リスク0で海外配送 落し物捜索から売上最大化と誘致まで!」が受賞しました。オーディエンス賞はサミットの参加者が1人1票を投じて決定されたもので、宿泊施設、外国人旅行者、そして広告主の「三方よし」を実現するサービスとして評価されたようです。
その他、地方自治体賞(養父市賞・道志村賞)には、株式会社タビキャスト 水谷氏の「TABICAST(タビキャスト)〜観光地を輝かせる旅行者〜人手不足で悩む観光事業者を一人旅旅行者がスポットワークで支援」が、協賛企業賞/BEYOND賞には、株式会社Simplee 諏訪氏の「”訪日観光客向け”体験型託児のDXソリューション〜世界中から訪れる人々を歓迎する育児サービスの実現〜」が選ばれました。
星野リゾート代表 星野佳路氏による基調講演「観光の未来」
続いて、サミット内で行われたさまざまな豪華講演、ディスカッションの中から、星野リゾート代表による基調講演と、観光庁観光戦略課長 河田氏・JTIC.SWISS代表 山田 桂一郎氏の2名によるセッションの2つをピックアップしてお届け。
まずは、星野リゾート代表の星野 佳路氏が登壇した基調講演「観光の未来」の内容をまとめてお伝えします。
星野氏はまず、2004年に小泉内閣が提唱した「観光立国」の考え方を振り返りました。この時から観光産業は地方の新しい基幹産業となり、人口減少に直面する地方で新たな雇用を生み、地域に貢献していく産業であると位置づけられたのです。
国土交通省の資料によると、地域の定住人口が減っていく中で、同じ経済効果を生むためには国内の日帰り旅行者だと73人、宿泊ありの旅行者だと23人の一方、海外からのインバウンドであれば、8人分でまかなえる計算です(※2018年当時の数値に基づいたもの)。国内旅行はもちろんのこと、観光産業が世界で戦える競争力を身につけ、海外からのインバウンド客を呼び込むことが期待されてきました。
これらの元々の定義や考え方と照らし合わせて、「今の観光が本当に上手くいってるんだろうか」と星野氏は語りかけます。
例えば、インバウンドが激増した昨今の状況。先述したように2004年ごろからインバウンドを上昇に転じさせるための施策がとられ始め、その後、2011年ごろからコロナ禍の期間を除いて増加を続けています。
この激増度合いについて星野氏は、「ちょっと危ない感じのスピード」と話します。日本の観光産業の競争力が上がったのだと思いがちですが、ビザの緩和や円安、そもそも全世界のトレンドとして海外旅行者が増える傾向にあったことなど、外部的な要因が大きかったのではないかと指摘します。
星野氏「一気に上がってしまったときっていうのは、やっぱり一気にしぼんでいく可能性もある。本当の実力ではないというところにすごく不安を感じますし、そこは観光を見るうえでの一つのキーポイントだと私は思ってます」
また、東京・京都・大阪などの都市圏にインバウンドが偏っている点も問題視しています。今これらの地域では「オーバーツーリズム」が問題となっており、そうした観点からも分散が非常に重要です。
星野氏「コロナ後、日本の観光を戻すときには、ただ数を戻すんではなくて、これまで集中していたものを分散させる観光も同時に展開しながら戻すべきだっていうのは、ずっと主張していたことなんです。実際はどうかというと、戻りはしたんだけれど、さらに集中が高まってしまったっていうのが現状なんです」
星野氏「東京、大阪、京都、北海道は、観光がなくたって十分競争力がある地域です。こうした地域に偏っている状態をどういうふうに分散させるかっていうのは最大のテーマで、今年の観光白書にも強調して書いていただいてますし、これがテーマというのは観光庁も政府も認識し始めています」
他にも国内旅行消費の落ち込みや、観光産業の生産性の低さ、交通面の規制などを課題として挙げ、それぞれに解決策を示しました。
観光庁観光戦略課長 河田氏、山田桂一郎氏のセッション「観光政策・観光人材の未来」
最後に、「観光政策、観光分野の人材のあり方」について、観光庁 観光戦略課長 河田 敦弥氏と、観光業の専門家・JTIC.SWISS 代表 山田 桂一郎氏のセッションの内容をお届けします。
はじめに、観光庁が目指す「観光による地方創生」の理想と現実について語られました。
河田氏「まず観光政策について、補助金や財政支援も使って盛り上げているわけですけど、なぜやってるかというと『地方創生の鍵』っていうところが強いです。住んでいる方々にいきいきと生活をしていただけるかというところに、国作りとして一番の目的があります。観光というと、何か遊びみたいですけど、いろんな人たちに来ていただいて、賑わい、活力を引き出すということがポイントだと思います」
山田氏「観光庁が一貫して目指してきたのは、まさに『国作り』とか『地域作り』という言葉に集約されてると思ってます。これはある意味思想的にも哲学的にも大事で、今日来ていただいてる若い方々、起業される学生の皆さんには、このキーワードだけは忘れずにやっていただけると一番いいんじゃないかなとは思ってるんですけども。
ただ、どうですかね。観光庁ができてから16年経ちましたが、例えばインバウンドが来ている、集客が上がっている地域と、そうなっていない地域があると思うんですけど」
河田氏「その通りだと思います。逆に言うと、オーバーツーリズムという言葉そのものがそうですけど、ネガティブな側面がクローズアップされてしまうことがあると。例えばアメリカでも、特定の地域は混んでいるけど他の地域は全然来てません みたいなことが起こっていて、それは周りの地域が(混んでいる地域の観光客を)受け入れるっていう、ある意味チャンスでもある。それをもっとポジティブに捉えていけばいいし、行政もそういうやり方ができるチャンスだと思うんですけど、活かしきれていないところがあるなと」
次に、議論は観光地経営の話題に移ります。
山田氏「本来は消費額だけじゃなくて、例えば域内調達率*を上げないと効果が現れない。そういう指標を持ってるところが自治体には少ないですけど、そういった部分はどうなんですかね。私はKPI、KGIとかコンセプトをしっかり決めるべきだと思うんです」
* 地域で提供している観光コンテンツの原材料や商品・人材などのうち、どの程度が地域内で生産・調達されているのかを示す割合
河田氏「それはおっしゃる通りだと思います。以前観光施設の方々と話をしていて、一番わかりやすい指標は何かなって考えたときに、それは『泊まってくれる』ことだと。立ち寄って買い物だけして帰るみたいなことじゃなくて、とにかく泊まっていただくことが大事で、その機会を作るにはどうするかといったことを考えてます」
山田氏「そうですね。そういう意味では別に旅行客数(のKPI)が悪いって話ではなくて。例えば地域活性化の話をすると、いくら稼げるのかがわからないんですよね。自分の町の生産の売上がわからないとか、産業連関表をちゃんと見て読める人がいないっていう話で。一つのまちを会社と見立てれば、会社では売上を上げるとか利益の目標があるけど、自治体にはなくて、どこまでやればいいの、っていうのがわからないんですよ。目標がない中でやれって結構つらいと思うんですけど、どうですか?」
河田氏「そうですね。逆に言うと、国は予算決算とか行政経営みたいな考え方で数字を意識してやるということをやってきていますと。ただ、パブリックな仕事っていうものに、どれぐらいコストがかかってるかは当然可視化されるべきだとしても、それに対してのベネフィットがどうかというところはすごく難しい。だからといってそれを全くブラックボックスにして、とにかく何かやれみたいなことはよくないですね」
山田氏「国や政府が示すよりも、私は自治体の方が大事だなと思ってまして。さっきの『まちを会社に見立てる』って話だと、例えば私が住んでいるツェルマットは、人口が5,700人しかいないわけですよ。そう考えれば(自治体単位なら)会社と同じような経営ができるわけですよね。それぞれの自治体の最適人口、いろんなリソースも含めて、産業構造も考えて、何人が最適でいけばいいのかっていうのを考えられるわけですよ」
河田氏「我々もまさに、地域経営をやろうとしてる自治体を財政支援も含めてサポートするんですけど、『住んでよし、訪れてよし』のうちの『住んでよし』ってところが、徐々にぼやけてしまう危険性があって。すなわちインバウンドがきて、一瞬名目上お金が増えるけど、さっき山田さんがおっしゃったように域内達成率がどれぐらいか(地域にどれくらいお金が落ちているか)とかをみてみると、全然だったりするわけですよね」
山田氏「そうですよね。結局商売だけが儲かって市外に持っていかれて、ゴミだけを置いていかれて、処理コストを考えたら全然赤字じゃないかって話もいっぱいあるじゃないですか。
だからあくまで地産地消的な話が大事で、1人に1円でも多く使っていただいて、そのお金が外に逃げないようにして、観光以外の産業にもキャッシュを落とさないと活性化しないですよね」
続いて、議論は若い観光人材が活躍する上での障壁の話に広がっていきます。
山田氏「そういう仕組みの中で、いろんな企業とか若い方々とかがどんどん入っていかなきゃいけないっていうときにですね、意外と人間関係でつまずくことが多いじゃないですか。どんなに若い人たちが頑張っていこうと思っても、そういう問題があると思うんですけど、その解決とかっていうのはどうですか?」
河田氏「これはちょっと難しい問題ですね。人間社会にそうしたしがらみっていうのはどこでもありますよね。ただ、それに対してデジタルとかそういうもので合理的に代替できる使い方が進んでると思うんですよね。最近だと自治体で頑張ってるところもあるし、これは観光の世界でも意味があると思います」
山田氏「少し違う話になりますけど、CS(顧客満足度)・ES(従業員満足度)っていう話があって。観光業界はサービス業ですからお客様の満足度を高めがちですけど、さっきのようにまちを一つの会社として見立てると、ES(が大事)ですよね。住民の満足度をどうやって高めるかっていうこととのバランスが取れてない。顧客満足度だけで本当に観光客が来るのかっていう話なんですよ。観光の満足度を上げるのは人(=住民)であって、それがいなくなったらどうすんのって話ですよね」
最後に、両名からのメッセージでトークセッションが締め括られました。
山田氏「観光ができることってまだまだあると思うんですが、最後にメッセージとして、どうすればもっともっと日本の観光が盛り上がって、地域が愛されて、日本がより愛されるのかという視点で、大事なことを何か一ついただけないかなと」
河田氏「本当にこういう場でこういうお話をさせていただいて心底思うのは、今日(サミットに)お越しいただいている、特に若い方、学生さんも含めて、観光ということに対してすごくポジティブに捉えていただいている。それをきっかけに、もしかしたらインバウンドなどでビジネスになるかもしれないわけですけど。
私自身、やっぱりコロナがあったからこそ感じますけど、リアルなコミュニケーションとか触れ合いとか賑わいっていうものに対して、ポジティブに捉えるっていうのはすごく正しいことだろうと思います」
河田氏「そして今話してきたような、『住んでよし』の話もそうですし、来ていただく方にも楽しんでもらうみたいなことを、若い世代の人たちに継続的に作ってもらえるように、我々は観光庁として、しっかり応援していきたいなと思ってます」
山田氏「私自身も、今回こういった話をした中で思うのは、観光って『感じる幸せ(感幸)』と書くんだといつも言ってるんですよね。やっぱり、お客様だけじゃなく住民の皆様にまで幸せになっていただきたいっていうメッセージが一つ。
特に若い方たちが地方に入るときには、さっき言ったようないろんなことがあると思います。ただ、チャンスはいっぱいありますからね。ぜひ全力で関わってほしいということで、この議論を終了しようと思います。どうもありがとうございました」
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以上、「観光クロスオーバーサミット」の様子をお届けしました。会場には学生や若い世代も多く集まり、業界のキーパーソンによる提言や、コンテスト出場者たちによる新たな観光ビジネスのプレゼンに耳を傾けました。
好調なインバウンド消費の一方で、観光業界は都市圏への旅行者の集中や人手不足などの課題にも直面しています。今後は、若い世代を中心とした新たな視点を持つ人々の挑戦と、産業基盤の強化が「クロスオーバー」することで、これらの課題が解決されることが期待されます。
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