D2C(Direct to Consumer)とは、広告代理店や小売店を介さず、メーカー(製造者)が直接消費者に商品を販売する方法です。これまでにもあった直販とは違い、SNS展開やテクノロジーを活用した新しいビジネスモデルを指します。
コロナ禍以降、実店舗での販売機会が減少してWebを介した取引への需要が高まったことを背景に、多くの企業がD2C市場に参入しています。
また、インバウンド需要が増加する中で、訪日外国人がSNSを使った情報収集を行う機会が増えています。これにより、情報収集の段階から価値のある情報を提供し、SNS投稿やキャンペーンを通じて顧客の関心を引き、施設や商品のページへ誘導することが可能です。
この記事では、D2Cの基本的な仕組みやメリットに加え、成功のために押さえておきたい3つのポイントについて詳しく解説します。
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D2Cとは
D2Cとは広告代理店や小売店を介さず、メーカー(製造者)が消費者と直接取引する販売方法です。SNSやWebサイトなどを活用することで、顧客と積極的に交流できるなど新しいビジネスモデルといえます。小売店や代理店など中間業者を介す必要がないため、コストをカットできる点が特徴です。
さらに商品やアフターサービスへの感想を顧客から直接得られるようになり、新たな開発やサービス改善に生かしやすいのも魅力のひとつといえます。
D2Cと従来の販売モデルとの違い
D2Cと従来の販売モデルとの違いは、顧客の元に商品が届くまでの工程を、自社で進めるか否かです。一般的に従来のモデルでは、企画、開発、マーケティング施策、製造といった段階までをメーカーが担当していました。仕入れや販売の工程は、小売店や通販サイト(通販プラットフォーム)に任せていたのです。
対してD2Cは、商品完成後も引き続きメーカーが担当します。自社サイトを運営し、インターネット上で受注からアフターサポートに至るすべての工程を取り扱うのです。
D2Cと混同しやすいB2CやECとの違い
D2Cと混同しやすい用語として、「B2C」と「EC」があります。B2C(Business to Consumer)は、企業と消費者の取引全般を指します。メーカーと消費者の直接取引であるD2Cは、B2Cモデルのひとつといえます。
たとえば小売店や通販サイトは、消費者と直接取引があるためB2Cに該当します。しかし商品を自ら企画・製造しているわけではないため、D2Cには該当しません。
EC(Electronic Commerce)は、インターネット上における商品やサービスの取引を指します。D2Cはビジネスモデル、ECは取引方法を表す用語です。
D2Cの「4つ」のメリット
D2Cのおもなメリットは次の4つです。それぞれ説明していきます。- 収益性を高められる
- 顧客とコミュニケーションしやすい
- 顧客データを活用できる
- 自由にマーケティング展開できる
1. 収益性を高められる
D2Cの大きなメリットは、収益性の高さです。通販サイトや小売店、代理店を挟むと手数料や流通コストがかかります。D2Cは商品企画から販売まで手掛けるため、中間コストをカットできます。その分、利益率が上がりやすく、中小規模のスタートアップ企業も参入しやすくなっています。
2. 顧客とコミュニケーションしやすい
顧客との距離が近く、本音を直接聞ける点もD2Cのメリットといえます。顧客の声を比較的早く反映でき、ニーズに合わせた商品企画やサービス改善に取り組めます。顧客とともにブランドを育成していくと、愛着を抱いた顧客がファン化しやすくなります。高評価の口コミ増加や、リピーターによる売上アップも期待できます。
3. 顧客データを活用できる
D2Cでは販売業者を介さないため、従来の販売法に比べ、より詳細な顧客データの収集と蓄積が可能です。自社ECサイトへの訪問回数や閲覧履歴、滞在時間などから、顧客の関心や売れ筋商品を探れます。顧客の潜在的ニーズをつかみ、新商品の開発へと役立てるには、商品購入に至る思考の分析が欠かせません。顧客との積極的なコミュニケーションと同時並行で進めることで、ブランド成長への相乗効果が期待できます。
4. 自由にマーケティング展開できる
自社ECサイトやSNSを利用するメリットとして、メーカー独自のマーケティングやキャンペーンの展開が挙げられます。ECサイトの履歴を活用し、自社ターゲットに焦点を当てた販売法を展開できるためです。販売業者の都合に合わせる必要はなく、フィードバックもすみやかに反映できます。
D2Cのデメリット
D2Cのデメリットはおもに2つあります。まずは運営にかかわるすべてを自社が担うため、顧客を獲得するための商品力やマーケティングノウハウが必要な点です。また、運営が安定化するまでのコストも課題です。
商品力やマーケティング施策が必要
D2Cでは販売の自由度が高い反面、広告やマーケティング施策すべてを自社で担います。顧客の注目を集められる商品の開発がもっとも重要な課題で、商品自体に魅力がなければ、どんなに話題になっても一過性で終わってしまうでしょう。
また、マーケティングのノウハウも必要です。顧客の手元に届くまで、継続したきめ細やかな対応が求められます。
運営が安定するまでコストがかかる
D2Cは、顧客との関係を深めながらブランドを育成していくビジネスモデルです。売上の増加やリピーターを獲得するまでは、中長期的な戦略が欠かせません。顧客が熱心なファンとなり、運営が安定するまでには費用や時間を要します。マーケティング施策の展開や集客、自社でECサイトを運営するコストを見積もっておく必要があります。
D2Cの成功に必要な「4つ」のポイント
D2Cを成功させるには、顧客といかにコミュニケーションを取り、関係を深めるかがカギを握ります。- D2Cと相性の良い商品やサービスを選択する
- SNSを利用して顧客と交流する
- ブランド力を高めてファンを増やす
- よりよい顧客体験を提供する
これら4つのポイントを解説します。
1. D2Cと相性の良い商品やサービスを選択する
D2Cを成功させるには、販売する商品がD2Cに適しているかを考慮することが重要です。一般的に、EC化率が高い商品はD2Cにも向いている可能性が高いといわれています。
参考までに、経済産業省が発表している「令和5年度電子商取引に関する市場調査」において、BtoC-EC市場規模の高い分野やその市場規模を紹介します。
分類 | 市場規模 | EC化率 |
食品、飲料、酒類 | 2兆9,299億円 | 4.29% |
生活家電・AV機器・PC・周辺機器等 | 2兆6,838億円 | 42.88% |
衣類・服装雑貨等 | 2兆6,712億円 | 22.88% |
生活雑貨、家具、インテリア | 2兆4,721億円 | 31.54% |
旅行サービス | 3兆1,953億円 | - |
飲食サービス | 8,165億円 |
- |
チケット販売 | 6,658億円 | - |
オンラインゲーム | 1兆2,626億円 | - |
電子出版 | 6,683億円 | - |
<参考>
経済産業省:令和5年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました
2. SNSを利用して顧客と交流する
積極的にSNSを活用することで、潜在的なニーズの引き出しや新商品の開発、そしてブランドの成長が期待できます。Instagramで新商品情報を発信したり、定期的にライブ配信をしたりと、顧客と企業が交流する機会の創出が重要です。交流で得られた顧客の声をすぐに反映できれば、「ユーザーの意見に耳を傾けている」という姿勢のアピールにもつながります。
関連記事:SNSマーケティングのポイントとは?UGCを促してユーザーと接点をもつコツなど
3. ブランド力を高めてファンを増やす
D2Cで売上アップを図るには、企業や商品のファンを増やさなければなりません。顧客のファン化を進めるには、ブランド力を高める必要があります。D2Cの強みである顧客との距離の近さを活かし、さまざまな意見を取り入れることで、競合他社との差別化が図れます。
商品の質の向上やニーズに合った価格調整はもちろんですが、「なぜ商品を作るに至ったか」という売り手側のビジョンを顧客に伝えることもポイントです。
4. より良い顧客体験を提供する
より良い顧客体験を提供し、顧客満足度を高めることがD2Cの成功には不可欠です。顧客体験とは、商品の購入前から購入後にかけて得られるすべての体験を指します。商品説明がわかりやすい、アフターフォローが丁寧といったポジティブな体験は、商品自体の価値にプラスの印象を与えます。
D2Cで得た顧客データを分析し、ニーズに応じた顧客体験を提供していくことが求められます。
D2Cは自社ブランドと顧客を直接つなぐビジネスモデル
D2Cではメーカーと顧客が直接つながり、積極的なコミュニケーションがはかられます。顧客との関係が深まれば、高評価の口コミやリピーターの獲得につながり、新規顧客に対してもブランドの認知度を向上できます。結果として、顧客が商品やサービス、ブランドそのものに愛着を持ち、ファンとなる可能性が高まるのです。
注意点として、すべてを自社で行うコストも考慮に入れておかなくてはなりません。しかし、とりわけ資金面に課題のある中小企業にとって、中間マージンの削減は大きなメリットです。
インターネット上で顧客とつながるD2Cは、新しいビジネスチャンスとして検討しておきたいキーワードといえます。
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