【連載:マーケティング用語・施策の基礎解説】 |
「ダイレクトマーケティングとは、具体的にどのようなマーケティング手法なのだろうか?」
「自社のビジネスにどう活かせるのか、そのメリットや効果を知りたい」
このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
ダイレクトマーケティングとは、企業が個々の顧客や見込み客に対して、ダイレクトメール、Eメール、電話、SNSといった多様なチャネルを通じて直接的かつ双方向のコミュニケーションを図り、購買や問い合わせといった具体的な行動(レスポンス)を促す戦略的なマーケティング手法です。
従来の不特定多数を対象とするマスマーケティングとは異なり、顧客データを活用してターゲットを絞り込み、一人ひとりに最適化されたアプローチを行う点に最大の特徴があります。
このアプローチにより、企業は広告費の無駄を抑えつつ、見込み顧客の効果的な育成、売上向上、さらには顧客との長期的な関係構築(LTV向上やブランディング強化)を目指すことが可能です。デジタル技術が急速に進化する現代において、ダイレクトマーケティングの重要性はますます高まっています。
本記事では、「ダイレクトマーケティングとは何か?」という基本から、その具体的な特徴、メリット・デメリット、主要な手法、そして実際の企業の成功事例に至るまで、網羅的かつ分かりやすく解説します。
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ダイレクトマーケティングとは
ダイレクトマーケティングとは、企業が個々の顧客や見込み客のデータ(属性、興味関心、購買履歴など)に基づいて、それぞれに最適化されたメッセージやオファーを直接届け、具体的なレスポンス(購買、資料請求、問い合わせなど)を獲得し、測定・分析を通じて継続的な関係構築を目指すマーケティング活動全般を指します。
マスマーケティングとの決定的な違い
ダイレクトマーケティングの概念を理解する上で重要なのが、従来の「マスマーケティング」との違いです。マスマーケティングは、テレビCMや新聞広告のように、製品やサービスの情報を不特定多数の消費者に向けて一方向に発信します。幅広い認知獲得には有効ですが、個々のニーズへの対応は難しく、効果測定も曖昧になりがちです。
一方、ダイレクトマーケティングは、収集・分析した顧客情報を基に、特定の個人やセグメントに対して、双方向のコミュニケーションを目指しながら直接アプローチします。そのため、メッセージのパーソナライズが可能で、反応を数値で測定しやすいのが特徴です。
大量生産・大量消費が主流だった時代にはマスマーケティングが効果的でしたが、現代のように情報が溢れ、顧客の価値観やニーズが多様化・細分化した環境では、画一的なアプローチでは顧客の心を掴むことが難しくなっています。
ダイレクトマーケティングは、このような現代の市場環境において、「個」を重視したきめ細やかなコミュニケーションを実現し、顧客エンゲージメントを高め、効果的に成果に繋げるための不可欠な手法と言えるでしょう。
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進化し続けるダイレクトマーケティングの手法
かつてはダイレクトメール(DM)や電話営業(テレマーケティング)が代表的な手法でした。
しかしインターネットとデジタル技術の発展により、Eメールマーケティング、SNS(ソーシャルメディアマーケティング)、パーソナライズされたWeb広告、コンテンツマーケティング、マーケティングオートメーション(MA)の活用など、その手法は飛躍的に多様化・高度化しています。
ダイレクトマーケティングの4つの特徴
ダイレクトマーケティングには、大きく4つの特徴があるといわれています。
コミュニケーションが双方向
見込み客と区分けせずに消費者広域に向けて実施するマスマーケティングに対し、ダイレクトマーケティングは顧客からの資料請求や申込、リピートなどのレスポンスがあり、企業側は発送、資料送付、お礼など双方からのコミュニケーションが発生します。
効果測定が可能
ダイレクトマーケティングは双方のコミュニケーションが前提にあるため、顧客からの反応を「レスポンス効率」としてデータベースを蓄積でき、カスタマーサービスなどさまざまな企業活動に役立てられます。
複数のメディアを活用する
仲介する店舗などがないため、新規やリピーター顧客を開拓するためにあらゆるメディアを限定することなく活用できます。ターゲットに合わせメディアを選択し、効果測定の結果をもとに他メディアも活用するなど柔軟に対応できます。
どんな場所でも販売できる
ダイレクトマーケティングは商品やサービスが届けられるエリアであれば販売可能なため、地域などを制限されることがありません。
ダイレクトマーケティングに向いている業種
ダイレクトマーケティングが向いている業種は、BtoC事業の場合、個人の趣向やニーズが多種多様に広がっている分野です。たとえば、化粧品やアパレル、教育、食品などは個人によって関心度や意識の高さが異なります。一人ひとりに違った対応をする必要があるため、ダイレクトマーケティングが活かしやすいです。
また、自社のECサイトを持っている場合は特にダイレクトマーケティングが向いています。顧客の居住地域や年齢、さらに購買情報まで把握できるため、顧客分析がしやすく効率的に施策が進められます。
ダイレクトマーケティングのメリット
ダイレクトマーケティングを戦略的に活用することで、企業は多くのメリットを享受できます。
「なぜ多くの企業がダイレクトマーケティングに注力するのか?」その理由となる主な利点を具体的に見ていきましょう。これらのメリットを理解することで、自社における導入効果をより明確にイメージできるはずです。
費用対効果が高い
ダイレクトマーケティングでは、すでに関心を持っているユーザーに対してアプローチできるため、成果につながりやすいのが特長です。
すべての顧客をターゲットにしたマスマーケティングと違い、顧客にあったマーケティング方法を選択できるため、効果的なレスポンス広告を打てる点も大きなメリットと言えるでしょう。
そのためレスポンスが良い傾向にあり、費用対効果が高くなります。
反応や効果を測定しやすい
顧客とのコミュニケーションが前提にあるダイレクトマーケティングでは、反応や効果を測定しやすくその後の検証や改善検討がしやすいため、PDCAを回しやすくなります。
その結果、蓄積されたデータを活用しながら営業ができるため、安定した収益にもつながります。
他にもダイレクトメールや広告など顧客とのコミュニケーションが営業の方法となるため、事業が拡大しても少人数で運営しやすいメリットがあります。
ダイレクトマーケティングのデメリット・注意点
顧客に応じて細やかなアプローチができるダイレクトマーケティングですが、次の2点に注意が必要です。- 長期的に取り組む必要がある
- 顧客理解を深めておく必要がある
この2点を理解せずに取り組んでしまうと、思うような結果が得られず無駄なコストが発生してしまう可能性もあります。
長期的に取り組む必要がある
1つ目は、長期的に取り組む必要がある点です。ダイレクトマーケティングは顧客情報が必要不可欠なため、まずは情報を蓄積しなければなりません。できるだけ多くの情報を集めるために、時間をかけた集客が必要です。
また、実際にダイレクトマーケティングに取り組む際には印刷費や郵送費、人件費等のコストがかかります。すぐに効果が出るとは限らないうえに、顧客の反応を見てさらに改良を加えなければならない可能性も生じます。
ダイレクトマーケティングに取り組む際は、顧客情報の蓄積、初期投資の回収それぞれに時間がかかることを理解し、長期的に取り組みましょう。
ターゲットごとに手法を変える必要がある
2つ目は、ターゲットごとに手法を変える必要がある点です。ダイレクトマーケティングに取り組む際には、ターゲットを明確にし、顧客情報を分析しなければなりません。たとえば、若者世代には電話よりもインターネットを利用した手法のほうが効果が見込めるでしょう。しかしインターネットといっても、Web広告なのか、SNSなのか、さらにどのSNS媒体を利用するかによって見込まれる結果は変わります。
また、ターゲットが10代なのか30代なのかによって、媒体だけでなく、内容やデザイン、さらに発信する時間帯にいたるまで分析する必要があります。
効果を最大化するためには、ターゲットに合わせた手法やコミュニケーション方法を選択する必要があります。さらに、プロセスを構築した後でも流行や年代などに合わせて変更や検証、改善などを繰り返すことが重要です。
6つのダイレクトマーケティング手法
ダイレクトマーケティングには、オンライン・オフラインを問わず、顧客に直接アプローチするための多様な手法が存在します。ここでは、特に代表的で効果的な6つの手法をピックアップし、それぞれの特徴や活用ポイントを解説します。
自社の目的、ターゲット顧客の特性、扱う商品やサービス、そして予算などを考慮し、これらの手法を単独で、あるいは組み合わせて活用することで、ダイレクトマーケティングの効果を最大限に高めることができます。
ダイレクトメール(DM)
ダイレクトメールは、ターゲットに対して、ハガキや手紙を直接顧客の家へ送付する手法です。ダイレクトメールのメリットは、顧客が何度も見返せるので、自社商品について深く知ってもらうきっかけが生まれる点です。また、クーポンや商品サンプルを同梱することで、顧客からのレスポンス率の向上も期待できます。ただし印刷費や郵送費など、コストがかかりやすい点には注意が必要です。
関連記事:DM(ダイレクトメール)とは?種類や特徴・作成のコツを紹介
電話
電話は、消費者からの連絡を受けるインバウンド方式と、企業から販売促進のための営業を行うアウトバウンド方式の2種類あります。電話のメリットは、何より顧客と直接対話できる点です。文章ではわかりにくい顧客の感情が読み取れ、よりリアルな反応が感じられます。また、対話だからこその安心感が生まれ、顧客の不安が取り除かれやすいでしょう。
注意点は、スムーズに会話を進めなければならないため、営業担当やオペレーターの育成が必要な点です。
メール
メールには、主に次の3つの方法があります。- 定期的に配信するメールマガジン
- 商品購入などのアクションに応じて段階的に送信するステップメール
- 特定の顧客層だけに送信するセグメントメール
メールのメリットは、手軽に低コストで始められる点です。また、自社サイトの閲覧に繋げやすい点も挙げられます。ただし、あまりにも配信頻度が高いとわずらわしく思われてしまうので注意しましょう。
関連記事:今さら聞けない!メルマガ(メールマガジン)ってなに?配信する目的・メリット・注意点
SNS
SNSを利用したダイレクトマーケティングには、主に次の3つの方法があります。- 自社のSNSアカウントを作成し情報発信
- SNS上での広告配信
- SNS上でのキャンペーン
SNSのメリットは、自社のファンを増やすきっかけを作れる点です。顧客と直接繋がれるので、素直な意見が聞ける、ダイレクトに意見交換ができるのが特徴です。
また、顧客がSNSで発信した自社商品へのコメントやレビューなどは、商品開発はもちろん、SNSでのダイレクトマーケティングを進めるにあたって非常に貴重な情報です。一方的な発信だけでなく、双方向のコミュニケーションとなるよう意識しましょう。
Web広告
Web広告は、ターゲットが閲覧しているWebサイトやスマートフォンアプリなどに自社の広告を表示させる手法です。
Web広告のメリットは、施策の効果が計りやすい点です。広告がクリックされた回数や、そこから購入に繋がった回数などが記録されるため、より効果が出るよう改善できます。Web広告媒体にもトレンドがあるので、常に最新の情報に注目しなければならない点には注意しましょう。
関連記事:Web広告(ネット広告)とは?種類やメリット・デメリット、課金方法、運用方法を解説
レコメンデーション
レコメンデーションは、顧客の購入履歴や閲覧履歴から、興味がありそうな関連商品などを表示させる方法です。特にECサイト上でよく利用されています。レコメンデーションのメリットは、顧客のニーズが満たされやすい点です。また、顧客により豊かな選択肢を与えることで、満足度の向上も期待できます。
ただし、システム上のルールによってはニッチな商品などが表示されにくくなってしまうので、注意が必要です。
関連記事:レコメンデーションとは?商品やサービスを効果的にユーザーへすすめる方法
【業界・業種別】ダイレクトマーケティング活用事例
ダイレクトマーケティングは、様々な業界・業種でその特性を活かした施策が展開され、成果を上げています。
ここでは、業界ごとの代表的な活用法や成功のポイントを簡潔に紹介します。自社のビジネスに近い事例を参考に、施策のヒントを見つけてみましょう。
1. 通販・EC業界(化粧品・健康食品・アパレルなど)
この業界では、顧客一人ひとりの嗜好や購買行動に合わせたアプローチでLTV(顧客生涯価値)向上を目指します。
主な活用法は、顧客データに基づいたセグメント別のメール・DM配信、ステップメールによる関係構築、ECサイトでのレコメンデーションです。これにより、パーソナライズされた情報を提供し、リピート購入を促進します。
成功の鍵は、詳細な顧客分析と、最適なタイミングでのコンテンツ提供、そしてA/Bテストによる継続的な施策改善にあります。
2. 教育業界(学習塾・通信教育・資格スクール・オンライン講座など)
生徒や保護者のライフステージや学習ニーズに合わせた情報提供と信頼関係の構築が重要です。
特徴的な活用法として、年齢や学年に応じたDMや体験案内の送付、Web広告から専用LPへの誘導、そして資料請求者へのステップメール等によるナーチャリングが挙げられます。また、イベント告知や在籍者への継続サポートも行われます。
成功のためには、ターゲット(生徒、保護者など)に合わせたメッセージの最適化、教育内容の信頼性・専門性のアピール、そして双方向のコミュニケーション促進がポイントとなります。
3. BtoB業界(SaaS・ITソリューション・コンサルティング・製造業など)
検討期間が長く、複数人が関与するBtoBでは、見込み顧客の育成(リードナーチャリング)と営業部門との連携が鍵です。
主な活用法は、専門的なホワイトペーパー等によるリード獲得、ウェビナー開催、そして獲得したリードへのステップメール等を用いたナーチャリングです。重要なターゲット企業に絞ったABM(アカウントベースドマーケティング)やインサイドセールスとの連携も効果的です。
成功のポイントは、ターゲット顧客の課題を深く理解すること、売り込みではなく価値ある情報提供で信頼を築くこと、そしてマーケティングと営業が密に連携する体制を整えることです。
ダイレクトマーケティングで顧客との絆を深め、成果を最大化しよう
本記事では、「ダイレクトマーケティングとは何か」という基本から、その特徴、メリット・デメリット、具体的な手法、そして成功事例までを詳しく解説してきました。
ダイレクトマーケティングは、顧客一人ひとりと向き合い、パーソナライズされたコミュニケーションを通じて深い関係性を構築し、具体的な成果へと結びつける強力なマーケティング戦略です。
変化の激しい現代市場において、顧客の心を的確に掴み、長期的なファンになってもらうためには、この「個」に寄り添うアプローチが不可欠と言えるでしょう。
この記事で得た知識を元に、まずは自社の顧客データを整理・分析し、ターゲット顧客を明確にすることから始めてみてはいかがでしょうか。
そして、そのターゲットに最も響く手法を選択し、小さなテストからでも実践を重ねていくことが成功への第一歩です。ダイレクトマーケティングを効果的に活用し、顧客との絆を深め、ビジネスの成長を実現しましょう。
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