小売業界における世界最大級の祭典「NRF 2026 Retail's Big Show」が、2026年1月11日〜13日にニューヨークで開催されました。
2026年は、世界100か国以上から約4万人の参加者が集まり、800社を超える企業が出展し、多彩なプログラムが開催されました。
本記事では、「匠の技とインテリジェンスの融合:LVMHがどのように現代の消費者のためにラグジュアリーを再定義しているか」の様子をレポートします。
同セッションでは、LVMH チーフ・オムニチャネル&データ・オフィサーのゴンザグ・ド・ピレイ氏と、ルイ・ヴィトン グローバル・シニア・バイス・プレジデントのスミア・ハジャリ氏が登壇し、PwCのアリ・ファーマン氏がモデレーターを務めました。
取材/訪日ラボ・菊池惟親
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AIは、価値を引き立てる“目立たない”存在
多くの企業がAIに対して効率化や生産性向上、コスト削減を期待するなか、LVMHが重視するのは「人間性」です。LVMHのゴンザグ・ド・ピレイ氏は、ラグジュアリーの本質は人間であり、AIをはじめとするテクノロジーは、その価値を引き立てるために“そこにあるけれど目立たない”形で機能すべきだと述べました。ピレイ氏は、これを「クワイエット・テック」と表現しています。
LVMHは、「AI for All(すべての人のためのAI)」と呼ばれる全社的な取り組みを行い、グループが抱えるブランドの個性を守るため、それぞれ独自のAI変革プランを策定しています。「コマース」「マーケティング」「オペレーション」の3つの領域において、一つのブランドの成功事例を他のブランドにも展開していると話しました。
ピレイ氏は、ラグジュアリーにおける重要トピックスとして「創造性」を挙げています。AIは創造性を画一化してしまうリスクがあるため慎重に取り組み、テストと学習を繰り返していると説明しました。
ルイ・ヴィトンの現場におけるAI活用
ルイ・ヴィトンにおいても、AIは人間に取って代わるものではなく、人間の能力を増幅させる役割を担います。
同社のデザインスタジオでは、AIは「デザイナーの思考を深める存在」です。例えば、素材の可視化や色のテストをAIが行うことで、デザイナーはよりクリエイティブな部分に集中できるようになります。
店舗スタッフにおいても、AIは拡張の役割を果たしています。スミア・ハジャリ氏は、AIの活用で顧客の好みをすぐ把握できるようになることで、スタッフは目の前の顧客と向き合い、関係を築く時間を最大化できると強調しました。
究極の成功は「より求められる存在になること」
ハジャリ氏は、同社がAIで実現しようとすることとして、人間的なつながりをスケールアップさせることを挙げました。
AIは顧客の意図を読み取り、スタッフの力を拡張します。たとえば、ルイ・ヴィトン愛好家に対し、結婚記念日にワードローブの提案だけでなく、予約困難なレストランの手配などを行うことで、購入の瞬間だけでなく、顧客の人生の一部になることができます。
ピレイ氏は、こうしたAIがもたらす体験がLVMHやルイ・ヴィトンらしくあり続けるためには、ブランドごとの独自性が重要だとし、テクノロジーは、そうした個性を尊重するために使われるべきだと述べました。
ピレイ氏は、全社員がAIを使いこなし、組織や国境をまたぐ業務プロセスがAIによって変革されること、さらに、AIの活用によって人々がLVMHのブランドを「より欲しい」と感じるようになることこそが、究極の成功だとして締めくくりました。

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