アジア競技大会に現れた交流拠点 「ONE ASIA WORLD」に見る新たな国際スポーツ大会のかたち

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2026年9月19日から10月4日まで、愛知県・名古屋市を中心に開催された「アジア競技大会」(アジアパラ競技大会は10月18日〜24日)。

大会期間中、名古屋中心部にある久屋(ひさや)大通公園に、公式セレブレーション・ファンゾーン「ONE ASIA WORLD(ワン・アジア・ワールド)」が設けられていたことをご存じでしょうか。

主催したのは、愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会組織委員会(以下、大会組織委員会)です。アジア45の国と地域から集まった選手やメダリストの活躍を称えるとともに、地域住民や大会を機に訪れたインバウンド客など、国内外の人々の交流を生み出すことを目的にこの拠点を開設しました。

訪日ラボは、オープン初日に現地を訪れ、同拠点が開設された背景と、現地での具体的な取り組みを取材しました。

※同施設はすでに運営を終了しました。

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▲名古屋中心部にある久屋大通公園に設置されたONE ASIA WORLD:訪日ラボ撮影
▲名古屋中心部にある久屋大通公園に設置されたONE ASIA WORLD:訪日ラボ撮影

パリ五輪の先例から着想 より深いスポーツ観戦体験を

大会組織委員会がONE ASIA WORLDを設置したきっかけは、2024年のパリ五輪にありました。

パリ五輪では、エッフェル塔を望むトロカデロ広場に、五輪で初の試みとなる「チャンピオンズパーク」が登場しました。競技を終えたメダリストが一般観客やファンの前に姿を見せる「メダリストセレブレーション」が連日開かれ話題を呼びました。

大会組織委員会 広報課課長の熊崎益義氏は「パリの人々と選手たちが喜びを分かち合う光景を見て、ぜひアジア大会でも同じような拠点を設けたいと考え、2年ほど前から計画を始めました」と振り返ります。

世界のスポーツ市場において競技観戦に求められる価値が変化している点も、設置の背景にあります。

「スポーツ観戦は、ただ競技を観るだけのものではなくなっています。アスリートとの直接的な交流の機会や、上質な空間での試合観戦など、ファンがより深い体験を求めるようになっており、それに応える工夫が必要でした」と熊崎氏は話します。

近年は、スポーツ観戦や参加を目的に旅する「スポーツツーリズム」への関心が高まっており、インバウンド誘客の重要なテーマとしても注目されています。

遠方や海外から訪れるファンほど、そこでしかできない特別な体験を求める傾向にあり、ONE ASIA WORLDはそのニーズに応える試みともいえます。

▲大会組織委員会 広報課課長の熊崎益義氏:訪日ラボ撮影
▲大会組織委員会 広報課課長の熊崎益義氏:訪日ラボ撮影

目指したのは、訪日客や海外選手団も訪れる「交差点」

ONE ASIA WORLDの会場は、公園のシンボル「中部電力 MIRAI TOWER」を挟んで南北に延びる久屋大通公園と、東側のオアシス21にまたがり、大きく7つのエリアに分かれています。

コンセプトに掲げたのは「The Crossroads of Asia:アジアのクロスロード(交差点)」です。

「国籍を問わず、スポーツをはじめ、アジアの文化や食を通じて交流できる場にしたい」という思いのもと、会場にはステージ、ラウンジ、フェスティバル会場、パブリックビューイングエリア、協賛企業による遊び場やショーケース、フォトスポットなどを配置しました。ラウンジを除けば、どのエリアも入場は無料です。

日本人だけでなく、インバウンド客や海外の選手団、在留外国人まで幅広く来場することを見据えてコンテンツを企画したといいます。

運営においては、大会パートナー企業である、ぴあ株式会社を中心に、イベント会社、警備会社など複数の事業会社と連携し、総勢数百人が参画しました。

アジア各国の人々を迎える拠点という性質から、現地スタッフには日本在住のさまざまな国籍の人材が集まり、運営を支えました。

▲ONE ASIA WORLDの会場マップ:大会組織委員会提供
▲ONE ASIA WORLDの会場マップ:大会組織委員会提供

専用ロードを備えたステージで、国を越えた一体感を創る

会場の中央に据えたのが、専用ロードとステージでメダリストを称える「チャンピオンズロード&ステージ」です。

ここでは、各競技でメダルが決まった翌日に、金・銀・銅のメダリストが登場する「メダリストセレブレーション」を実施。セレブレーションのない時間帯にも、五輪やアジア大会に出場経験のある著名アスリートのトークショーや、参加国の文化や魅力を伝えるプログラムなどが行われました。

ステージ設計で意識されたのは、国籍を問わず、選手と来場者が互いの存在を身近に感じ、一緒に盛り上がれるようにすることです。

登壇者が歩く専用ロードを囲むように客席を配置し、最前列席の前に、立ち見スペースを用意しました。一般的なコンサートや優勝パレードよりも、観客が登壇者を間近で見られる距離感が、会場の盛り上がりと一体感を生んでいます。

イベントの司会者には原則バイリンガルのMCを起用し、海外からの来場者でも楽しめるようにする配慮も見られました。

▲9月19日に開かれたオープニングセレモニーには、ゲストとしてグローバルボーイズグループのINIや、元バレーボール日本代表の木村沙織氏らが登場した:訪日ラボ撮影
▲9月19日に開かれたオープニングセレモニーには、ゲストとしてグローバルボーイズグループのINIや、元バレーボール日本代表の木村沙織氏らが登場した:訪日ラボ撮影

1人5万円の有料ラウンジ プレミアムな体験をより身近に

ONE ASIA WORLDを特徴づけるもう1つの施設が、唯一の有料エリアであるホスピタリティラウンジです。

1人5万円(税込)でチケットを購入すると、メダリストセレブレーションやステージイベントを専用エリアから観覧できるほか、落ち着いた快適なラウンジで各会場の競技をモニターで観ながら、ビュッフェやドリンクを楽しめます。セレブレーション前にメダリストがラウンジを訪れる演出もありました。

▲ONE ASIA WORLDの有料ホスピタリティラウンジ:訪日ラボ撮影
▲ONE ASIA WORLDの有料ホスピタリティラウンジ:訪日ラボ撮影

こうした有料のホスピタリティラウンジは、国内外のスポーツ市場で広がりを見せています。

そうしたなか、ONE ASIA WORLDでは、一般的な国際スポーツ大会と比較して手の届きやすい価格帯に設定しました。そのねらいについて熊崎氏は「プレミアム感のあるスポーツ観戦体験を、多くの人に身近に感じていただくため」と話します。

ホスピタリティラウンジは、アジア各国が自国をPRする場としても活用されました。大会に参加した国・地域の国内オリンピック委員会や、政府観光局、大使館などがラウンジを貸し切り、招待客を迎えて交流イベントを開催する日もありました。

国際スポーツ大会の次世代の標準へ 文化交流を生む拠点づくり

スポーツや文化、食、音楽、企業展示などを通じたアジアの交流拠点を目指したONE ASIA WORLD。国籍を越えて交流を促す工夫について熊崎氏に聞くと、「交流イベントのような演出はあえて設けず、自然と異文化に触れられる“きっかけ”を会場の随所に用意した」と話します。

象徴的なエリアが、アジア各国の料理やステージコンテンツを提供する「クロスロードフェスティバル」です。

言葉や文化の壁を越え、誰もが観客ではなく“参加者”として輪に入れるようにと、会場中央にはやぐらを設置しました。日替わりで東アジア、東南アジア、南アジア、中央アジア、西アジアの5地域の演舞や演奏が披露され、その数は全体で20以上に上りました(日本人による海外伝統芸能の披露も含む)。

訪日ラボが訪れた19日には、やぐらでフィリピンの伝統武術の指導・普及団体によるパフォーマンスが行われており、休憩時間帯には異国のパフォーマンス団体同士が交流する姿も見られました。

▲「クロスロードフェスティバル」中央に設置されたやぐら。毎晩最後はやぐらを囲んで盆踊りが行われた:大会組織委員会提供
▲「クロスロードフェスティバル」中央に設置されたやぐら。毎晩最後はやぐらを囲んで盆踊りが行われた:大会組織委員会提供

16日間にわたって開催されたONE ASIA WORLDの合計来場者数は36万3,000人に上りました。

熊崎氏によると、初日のインバウンド客は「肌感覚として、アジアを中心に全体の2割程度」でしたが、各競技会場やアスリートプラザ(選手宿泊施設)でONE ASIA WORLDの紹介をするなどのプロモーション効果もあり、期間後半になるほどその姿が増えていったそうです。

熊崎氏は「ONE ASIA WORLDのような拠点は、文化交流や経済効果をより創出することにつながります。今後、国際スポーツ大会では1つの標準になっていくのではないか」と語りました。

インバウンド市場を活性化させるには、日本の魅力を発信するだけでなく、日本人も海外の文化に触れ、双方向で人の流れを生み出すことが欠かせません。

アジア競技大会のような国際スポーツ大会は、お互いの国の理解を深め合う格好の機会です。人々を引き寄せ、自然な交流と体験を生み出したONE ASIA WORLDの挑戦は、今後の国際イベントにおける「交流拠点」のあり方を示す新たな事例といえます。

関連記事:【2026年最新】名古屋で外国人に人気の飲食店TOP10

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<参照>

愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会組織委員会:ONE ASIA WORLD

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

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