JNTOは、インバウンド向けプロモーションを展開する際の方針として「訪日マーケティング戦略」を策定しています。
これは「観光立国推進基本計画」に基づいて作成され、観光庁、JNTO、地方運輸局、DMO、地方自治体などが政府目標達成のための施策を展開する際の指針となっています。
ここでは、訪日マーケティング戦略に含まれる「市場別マーケティング戦略」のうち、カナダ市場のマーケティング戦略についてまとめました。JNTOの方針を理解し、カナダ人観光客向けのマーケティングやプロモーションに生かしていきましょう。
まずは全体方針をチェック
まずはJNTOの「訪日マーケティング戦略」の全体観について確認しておきましょう。
本戦略では、市場別のマーケティング戦略のほか、市場を横断した戦略として「高付加価値旅行」「アドベンチャートラベル」「大阪・関西万博」を掲げています。また、全体として「持続可能な観光(サスティナブルツーリズム)の推進を念頭に」置き、各戦略に紐づく事業を展開するとしています。
「持続可能な観光(サスティナブルツーリズム)」では、地域の環境・文化・経済の持続可能性と両立しながらの観光を実現することを目指します。
また、「アドベンチャートラベル」については2023年9月に開催された「アドベンチャートラベル・ワールドサミット」を契機に推進していくほか、2025年の「大阪・関西万博」で関西地域のインバウンドを中心に全国を盛り上げます。
「高付加価値旅行」は、「オーバーツーリズム」が問題視される中で重要な概念です。訪日旅行者数の増加だけでなく、訪日旅行消費額の拡大を目指すべく、高付加価値旅行者に合わせたコンテンツ醸成や効果的な情報発信、国内外旅行者とのネットワーク拡充などを進めます。
カナダ市場のマーケティング戦略
市場別マーケティング戦略では、まず国もしくは地域別のマーケティング方針の大枠が定められています。
この方針に従って「ターゲット」が複数設定されており、それぞれについて年齢性別や観光コンテンツの好み、訪日経験の有無など具体的な属性が想定されています。
それぞれのターゲットに適したプロモーション方法も優先度とともに示されているので、見ていきましょう。
マーケティング方針
- 海外旅行の市場規模(推定850万人)に対して、2019年の訪日旅行者数は38万人であり、まだ伸びしろがあるカナダ市場においては、訪日未経験者の取り込みによる訪日旅行者数の増加を優先する。
- 海外旅行の最大規模を占める20~40代のうち、人口規模の比較的大きな30~40代の家族層及び20~40代の友人・一人旅行層に関しては、特に訪日旅行者数の増加に寄与するため、BtoCの取組を中心に展開する。
- 50代以上中高所得者層は旅行会社を利用する割合が比較的高いことからBtoBの取組を中心に展開し、地方誘客の促進と旅行消費額単価の向上を図る。
カナダ市場 ターゲット別の戦略・戦術A
ターゲット像A |
---|
訪⽇未経験者 |
30〜40代 |
夫婦/パートナー |
家族/親族 |
ターゲットが好む観光コンテンツ |
食・お酒(ローカルフード) |
豊かな自然(風景) |
歴史・遺跡(遺跡・街並/伝統⾏事・祭体験) |
訴求時のポイント |
東京、⼤阪、京都が人気。 |
世帯可処分所得が1,000万円前後の⾼所得者が比較的多い。 |
優先順位 | マーケティング・プロモーション施策 | 施策の対象 |
---|---|---|
1位 | インターネット (WEB・SNS) | BtoC(訪日外国人) |
2位 | PR(広報) | BtoC(訪日外国人) |
3位 | 広告 | BtoC(訪日外国人) |
4位 | 共同広告 | BtoC(訪日外国人) |
5位 | 旅⾏博・イベント | BtoC(訪日外国人) |
6位 | インフルエンサー招請 | BtoC(訪日外国人) |
7位 | セミナー・ネットワーキングイベント(旅⾏関係者) | BtoB(旅行会社など) |
8位 | 旅⾏博・商談会 | BtoB(旅行会社など) |
9位 | 旅⾏会社招請 | BtoB(旅行会社など) |
10位 | メディア招請 | BtoC(訪日外国人) |
11位 | その他 (ニュースレター) | BtoC(訪日外国人) |
12位 | 人材育成 | BtoB(旅行会社など) |
13位 | その他(ニュースレター) | BtoB(旅行会社など) |
ターゲット属性詳細 | |
---|---|
海外旅行実施者に占める割合 ※ | |
19.4%(160万人) | |
年代 | |
40代:50.4% | |
30代:49.6% | |
世帯可処分所得/月 | |
9万5,000〜13万カナダドル:20.4% | |
13万〜16万カナダドル:11.6% | |
7万〜8万カナダドル:11.2% | |
訪日旅行経験率 | |
1回:0.0% | |
2回以上:0.0% | |
訪日ファネル | |
無認知:37.3% | |
認知:4.4% | |
興味関心:41.8% | |
比較検討:16.5% | |
地⽅エリア訪問希望率 | |
36.8% | |
同行者 | |
配偶者・パートナー:79.6% | |
20歳未満の子ども:32.4% | |
自身の親、配偶者・パートナーの親:15.6% | |
旅行形態 | |
個人手配:65.6% | |
オーダーメイド旅⾏:17.6% | |
FITパッケージ:13.6% | |
滞在日数 | |
12.0日 | |
旅行単価(円換算) | |
33万5,000円 |
※「海外旅行実施者に占める割合」は、その国・地域の海外旅行実施者に占めるターゲットの割合
カナダ市場 ターゲット別の戦略・戦術B
ターゲット像B |
---|
訪⽇未経験者 |
20〜40代 |
⼀人旅⾏ |
友人 |
ターゲットが好む観光コンテンツ |
食・お酒(ローカルフード/カフェ) |
歴史・遺跡(遺跡・街並) |
大都市(夜景/現代建築) |
訴求時のポイント |
FITの⼿配率が他のターゲットに比べ⾼水準。 |
東京が他のターゲットに比べ著しく人気。 |
ポップカルチャーやナイトライフなど、個性的なコンテンツが人気。 |
コロナ後の回復が最も早いターゲット。 |
優先順位 | マーケティング・プロモーション施策 | 施策の対象 |
---|---|---|
1位 | インターネット (WEB・SNS) | BtoC(訪日外国人) |
2位 | PR(広報) | BtoC(訪日外国人) |
3位 | 広告 | BtoC(訪日外国人) |
4位 | 共同広告 | BtoC(訪日外国人) |
5位 | 旅⾏博・イベント | BtoC(訪日外国人) |
6位 | インフルエンサー招請 | BtoC(訪日外国人) |
7位 | セミナー・ネットワーキングイベント(旅⾏関係者) | BtoB(旅行会社など) |
8位 | メディア招請 | BtoC(訪日外国人) |
9位 | 人材育成 | BtoB(旅行会社など) |
10位 | その他(ニュースレター) | BtoB(旅行会社など) |
11位 | その他 (ニュースレター) | BtoC(訪日外国人) |
ターゲット属性詳細 | |
---|---|
海外旅行実施者に占める割合 ※ | |
9.9%(80万人) | |
年代 | |
30代:44.5% | |
40代:32.5% | |
20代:23.0% | |
世帯可処分所得/月 | |
5万5,000〜7万カナダドル:19.5% | |
3万〜4万5,000カナダドル:17.0% | |
7万〜8万カナダドル:14.5% | |
訪日旅行経験率 | |
1回:0.0% | |
2回以上:0.0% | |
訪日ファネル | |
無認知:33.3% | |
認知:6.2% | |
興味関心:39.5% | |
比較検討:21.0% | |
地⽅エリア訪問希望率 | |
39.5% | |
同行者 | |
自分ひとり:69.0% | |
友人:30.0% | |
職場の同僚:1.0% | |
旅行形態 | |
個人手配:81.5% | |
オーダーメイド旅⾏:8.5% | |
FITパッケージ:6.0% | |
滞在日数 | |
11.9日 | |
旅行単価(円換算) | |
26万8,000円 |
※「海外旅行実施者に占める割合」は、その国・地域の海外旅行実施者に占めるターゲットの割合
カナダ市場 ターゲット別の戦略・戦術C
ターゲット像C |
---|
50代以上 |
世帯可処分所得上位40%(750万円/年以上) |
夫婦/パートナー |
家族/親族 |
ターゲットが好む観光コンテンツ |
食・お酒(ローカルフード) |
伝統文化・芸能(伝統⾏事・祭体験) |
暮らし体験・交流(修⾏・宿坊体験) |
街並・有名な建築(遺跡・街並/風景/⾼速列⾞・ローカル線) |
訴求時のポイント |
訪⽇旅⾏未経験者が76%、訪⽇旅⾏経験者が24%。 |
旅⾏単価が他のターゲットに比べ⾼水準。 |
旅⾏会社の利⽤率が他のターゲットに比べ⾼水準。 |
優先順位 | マーケティング・プロモーション施策 | 施策の対象 |
---|---|---|
1位 | セミナー・ネットワーキングイベント(旅⾏関係者) | BtoB(旅行会社など) |
2位 | 旅⾏博・商談会 | BtoB(旅行会社など) |
3位 | 旅⾏会社招請 | BtoB(旅行会社など) |
4位 | メディア招請 | BtoC(訪日外国人) |
5位 | PR(広報) | BtoC(訪日外国人) |
6位 | 広告 | BtoC(訪日外国人) |
7位 | 共同広告 | BtoC(訪日外国人) |
8位 | 旅⾏博・イベント | BtoC(訪日外国人) |
9位 | その他(ニュースレター) | BtoC(訪日外国人) |
10位 | 人材育成 | BtoB(旅行会社など) |
11位 | その他(ニュースレター) | BtoB(旅行会社など) |
ターゲット属性詳細 | |
---|---|
海外旅行実施者に占める割合 ※ | |
12.5%(110万人) | |
年代 | |
50代:57.0% | |
60代:28.0% | |
70代以上:15.0% | |
世帯可処分所得/月 | |
9万5,000〜13万カナダドル:39.5% | |
13万〜16万カナダドル:31.0% | |
19万〜25万カナダドル:15.0% | |
訪日旅行経験率 | |
1回:15.5% | |
2回以上:8.0% | |
訪日ファネル | |
無認知:37.9% | |
認知:4.2% | |
興味関心:44.2% | |
比較検討:13.7% | |
地⽅エリア訪問希望率 | |
39.0% | |
同行者 | |
配偶者・パートナー:85.1% | |
20歳以上の子ども:25.5% | |
20歳未満の子ども:14.9% | |
旅行形態 | |
個人手配:63.8% | |
オーダーメイド旅⾏:14.9% | |
団体ツアー:12.8% | |
滞在日数 | |
12.0日 | |
旅行単価(円換算) | |
42万8,000円 |
※「海外旅行実施者に占める割合」は、その国・地域の海外旅行実施者に占めるターゲットの割合
カナダ市場のマーケティング・プロモーションに使えるツール
コロナ前の2019年に日本を訪れたカナダ人の数は約38万人でした。2014年からの5年間で2倍以上に増えたことを考えると、今後の成長が期待できる市場といえます。
訪日カナダ人を呼び込むために検討するべきSNSや検索エンジンなどを紹介します。
SNS:YouTube、Facebook、Instagram(インスタグラム)、X(旧Twitter)
SNSに費やす1日の平均時間が日本の1人あたり51分に対し、カナダでは2時間5分にものぼります。カナダ人は多くの時間をSNSに費やしていることから、カナダのインバウンド対策をするうえでSNSは欠かせないチャネルといえます。
なかでもカナダ人が外国旅行の際に情報収集として使うSNSはYouTubeとFacebook、Instagram(インスタグラム)です。
Digital 2023の資料によれば、カナダにおけるYouTubeのアクティブユーザー数は3,300万人、Facebookは2,000万人、Instagramは1,600万人を誇るなど、いずれもインバウンド対策をするうえでは必須のSNSといえます。
X(旧Twitter)も少なからず外国旅行の情報収集ツールにすることから、英語での発信を強化することでカナダ人へのインバウンド対策としても使えそうです。
関連記事:カナダで人気のSNSランキング
検索エンジン:Google、bing、Yahoo!
世界中で多くのユーザーを抱えるGoogle。カナダでも90%以上がGoogleを使用するなど圧倒的なシェアを誇ります。そのほかにはbing(約5%)やYahoo!(約2%)などの検索エンジンが使用されています。
カナダはインバウンド対策をするうえで狙いたい市場のひとつです。Googleを使ったマーケティング施策は検討するべきでしょう。
関連記事:【マーケター必見!】訪日客を呼び込むなら必ず抑えておくべき検索エンジンシェア率
旅行予約・口コミサイト:トリップアドバイザー、カナディアン・トラベラー
さまざまなSNSを駆使して外国旅行の情報収集をするカナダ人ですが、どのSNSよりも多くの人が使うのがトリップアドバイザーです。トリップアドバイザーは世界最大級の旅行サイトで、月間のユーザー数は4.55億人を誇ります。約50か国で使用されているので、インバウンド対策をするうえでは欠かせないツールといえます。
そのほか、カナディアン・トラベラーなどといった独自の旅行情報サイトも情報収集ツールとして活用されているようです。
国・地域別のマーケティング・プロモーションについて見てみる
訪日カナダ人観光客のインバウンドデータを見てみる
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訪日カナダ人観光客のインバウンドデータ |
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