JNTOは、インバウンド向けプロモーションを展開する際の方針として「訪日マーケティング戦略」を策定しています。
これは「観光立国推進基本計画」に基づいて作成され、観光庁、JNTO、地方運輸局、DMO、地方自治体などが政府目標達成のための施策を展開する際の指針となっています。
ここでは、訪日マーケティング戦略に含まれる「市場別マーケティング戦略」のうち、オーストラリア市場のマーケティング戦略についてまとめました。JNTOの方針を理解し、オーストラリア人観光客向けのマーケティングやプロモーションに生かしていきましょう。
まずは全体方針をチェック
まずはJNTOの「訪日マーケティング戦略」の全体観について確認しておきましょう。
本戦略では、市場別のマーケティング戦略のほか、市場を横断した戦略として「高付加価値旅行」「アドベンチャートラベル」「大阪・関西万博」を掲げています。また、全体として「持続可能な観光(サスティナブルツーリズム)の推進を念頭に」置き、各戦略に紐づく事業を展開するとしています。
「持続可能な観光(サスティナブルツーリズム)」では、地域の環境・文化・経済の持続可能性と両立しながらの観光を実現することを目指します。
また、「アドベンチャートラベル」については2023年9月に開催された「アドベンチャートラベル・ワールドサミット」を契機に推進していくほか、2025年の「大阪・関西万博」で関西地域のインバウンドを中心に全国を盛り上げます。
「高付加価値旅行」は、「オーバーツーリズム」が問題視される中で重要な概念です。訪日旅行者数の増加だけでなく、訪日旅行消費額の拡大を目指すべく、高付加価値旅行者に合わせたコンテンツ醸成や効果的な情報発信、国内外旅行者とのネットワーク拡充などを進めます。
オーストラリア市場のマーケティング戦略
市場別マーケティング戦略では、まず国もしくは地域別のマーケティング方針の大枠が定められています。
この方針に従って「ターゲット」が複数設定されており、それぞれについて年齢性別や観光コンテンツの好み、訪日経験の有無など具体的な属性が想定されています。
それぞれのターゲットに適したプロモーション方法も優先度とともに示されているので、見ていきましょう。
マーケティング方針
- 旅行時の消費単価と平均泊数の値が他市場に比較して高く、ロングホール旅行に慣れている特性から訪日時における消費額拡大を図る。
- 新規訪日層、リピーター層ともに人気のコンテンツであるスキーや豊かな自然、ローカルフードなどの観光情報を地方の魅力とともに発信することで訪日旅行者数の拡大を図る。
- SDGs、サステナブル・ツーリズムへの意識の高まりを踏まえたプロモーションを展開する。
オーストラリア市場 ターゲット別の戦略・戦術A
ターゲット像A |
---|
20〜40代 |
夫婦/パートナー |
FIT |
ターゲットが好む観光コンテンツ |
食・お酒(ローカルフード) |
豊かな自然(風景/ハイキング) |
アウトドア・アクティビティ(ハイキング/スキー・スノボ) |
訴求時のポイント |
文化・歴史的な体験の消費単価が高いため、自然や食と組み合わせた新たな魅⼒を発信。 |
地方の人気が高いため、地方の魅⼒を発信。 |
旅⾏会社を通じた情報収集の割合が多いため、BtoBの取組として商談会を重視。 |
優先順位 | マーケティング・プロモーション施策 | 施策の対象 |
---|---|---|
1位 | インターネット(WEB・SNS) | BtoC(訪日外国人) |
2位 | 旅⾏博・商談会 | BtoB(旅行会社など) |
3位 | 広告 | BtoC(訪日外国人) |
4位 | 旅⾏博・イベント | BtoC(訪日外国人) |
5位 | PR(広報) | BtoC(訪日外国人) |
6位 | メディア招請 | BtoC(訪日外国人) |
7位 | 共同広告 | BtoC(訪日外国人) |
8位 | インフルエンサー招請 | BtoC(訪日外国人) |
9位 | セミナー・ネットワーキングイベント(メディア・旅⾏関係者) | BtoB(旅行会社など) |
10位 | 人材育成 | BtoB(旅行会社など) |
11位 | 旅⾏会社招請 | BtoB(旅行会社など) |
12位 | その他(ニュースレター) | BtoC(訪日外国人) |
13位 | その他(ニュースレター) | BtoB(旅行会社など) |
ターゲット属性詳細 | |
---|---|
海外旅行実施者に占める割合 ※ | |
20.0%(200万人) | |
年代 | |
30代:47.3% | |
40代:28.0% | |
20代:24.7% | |
世帯可処分所得/月 | |
9万5,000〜13万豪ドル未満:21.7% | |
13万〜16万豪ドル未満:19.7% | |
7万〜8万5,000豪ドル未満:13.3% | |
訪日旅行経験率 | |
1回:41.3% | |
2回以上:21.3% | |
訪日ファネル | |
無認知:13.1% | |
認知:3.2% | |
興味関心:51.2% | |
比較検討:32.5% | |
地⽅エリア訪問希望率 | |
61.3% | |
同行者 | |
配偶者・パートナー:100.0% | |
旅行形態 | |
個人手配:59.0% | |
FITパッケージ:23.9% | |
オーダーメイド旅⾏:17.0% | |
滞在日数 | |
8.9日 | |
旅行単価(円換算) | |
37万1,000円 |
※「海外旅行実施者に占める割合」は、その国・地域の海外旅行実施者に占めるターゲットの割合
オーストラリア市場 ターゲット別の戦略・戦術B
ターゲット像B |
---|
30〜40代 |
家族(子連れ) |
ターゲットが好む観光コンテンツ |
テーマパーク(テーマパーク) |
伝統文化・芸能(伝統⾏事・祭体験) |
豊かな自然(風景/庭園・花) |
訴求時のポイント |
「暮らし体験交流」の消費単価が高いため、強みである自然と組み合わせて発信。 |
地方の人気が高いため、地方の魅⼒を発信。 |
旅⾏会社を通じた情報収集の割合が多いため、BtoBの取組として商談会を重視。 |
初等中等教育での⽇本語学習者が多いため、訪⽇教育旅⾏にも留意。 |
優先順位 | マーケティング・プロモーション施策 | 施策の対象 |
---|---|---|
1位 | インターネット(WEB・SNS) | BtoC(訪日外国人) |
2位 | 旅⾏博・商談会 | BtoB(旅行会社など) |
3位 | 広告 | BtoC(訪日外国人) |
4位 | 旅⾏博・イベント | BtoC(訪日外国人) |
5位 | PR(広報) | BtoC(訪日外国人) |
6位 | メディア招請 | BtoC(訪日外国人) |
7位 | 共同広告 | BtoC(訪日外国人) |
8位 | インフルエンサー招請 | BtoC(訪日外国人) |
9位 | セミナー・ネットワーキングイベント(メディア・旅⾏関係者) | BtoB(旅行会社など) |
10位 | 人材育成 | BtoB(旅行会社など) |
11位 | 旅⾏会社招請 | BtoB(旅行会社など) |
12位 | その他(ニュースレター) | BtoC(訪日外国人) |
13位 | その他(ニュースレター) | BtoB(旅行会社など) |
ターゲット属性詳細 | |
---|---|
海外旅行実施者に占める割合 ※ | |
12.1%(120万人) | |
年代 | |
40代:52.0% | |
30代:48.0% | |
世帯可処分所得/月 | |
9万5,000〜13万豪ドル未満:24.8% | |
16万〜20万豪ドル未満:18.0% | |
13万〜16万豪ドル未満:15.6% | |
訪日旅行経験率 | |
1回:22.8% | |
2回以上:40.4% | |
訪日ファネル | |
無認知:10.2% | |
認知:4.1% | |
興味関心:42.6% | |
比較検討:43.1% | |
地⽅エリア訪問希望率 | |
74.4% | |
同行者 | |
20歳未満の子ども:100.0% | |
配偶者・パートナー:92.4% | |
自身の親、配偶者・パートナーの親:18.4% | |
旅行形態 | |
個人手配:38.6% | |
オーダーメイド旅⾏:30.4% | |
FITパッケージ:25.3% | |
滞在日数 | |
8.3日 | |
旅行単価(円換算) | |
37万5,000円 |
※「海外旅行実施者に占める割合」は、その国・地域の海外旅行実施者に占めるターゲットの割合
オーストラリア市場 ターゲット別の戦略・戦術C
ターゲット像C |
---|
20〜30代 |
⼀人旅⾏ |
FIT |
ターゲットが好む観光コンテンツ |
食・お酒(ローカルフード) |
豊かな自然(風景/ハイキング) |
暮らし体験・交流(修⾏・宿坊体験/伝統⾏事・祭体験) |
訴求時のポイント |
地方の人気が高いため、地方の魅⼒を発信。 |
⼀方で「大都市」、「サブカルチャー」も人気のパッション。 |
優先順位 | マーケティング・プロモーション施策 | 施策の対象 |
---|---|---|
1位 | インターネット(WEB・SNS) | BtoC(訪日外国人) |
2位 | 旅⾏博・商談会 | BtoB(旅行会社など) |
3位 | 広告 | BtoC(訪日外国人) |
4位 | 旅⾏博・イベント | BtoC(訪日外国人) |
5位 | PR(広報) | BtoC(訪日外国人) |
6位 | メディア招請 | BtoC(訪日外国人) |
7位 | 共同広告 | BtoC(訪日外国人) |
8位 | インフルエンサー招請 | BtoC(訪日外国人) |
9位 | セミナー・ネットワーキングイベント(メディア・旅⾏関係者) | BtoB(旅行会社など) |
10位 | 人材育成 | BtoB(旅行会社など) |
11位 | 旅⾏会社招請 | BtoB(旅行会社など) |
12位 | その他(ニュースレター) | BtoC(訪日外国人) |
13位 | その他(ニュースレター) | BtoB(旅行会社など) |
ターゲット属性詳細 | |
---|---|
海外旅行実施者に占める割合 ※ | |
5.3%(50万人) | |
年代 | |
30代:58.5% | |
20代:41.5% | |
世帯可処分所得/月 | |
9万5,000〜13万豪ドル:24.0% | |
13万〜16万豪ドル:14.0% | |
8万5,000〜9万5,000豪ドル:14.0% | |
訪日旅行経験率 | |
1回:33.3% | |
2回以上:32.2: | |
訪日ファネル | |
無認知:9.9% | |
認知:0.0% | |
興味関心:50.4% | |
比較検討:39.7% | |
地⽅エリア訪問希望率 | |
64.3% | |
同行者 | |
自分ひとり:100.0% | |
旅行形態 | |
個人手配:80.4% | |
FITパッケージ:12.5% | |
オーダーメイド旅⾏:7.1% | |
滞在日数 | |
7.8日 | |
旅行単価(円換算) | |
33万6,000円 |
※「海外旅行実施者に占める割合」は、その国・地域の海外旅行実施者に占めるターゲットの割合
オーストラリア市場 ターゲット別の戦略・戦術D
ターゲット像D |
---|
50代以上 |
世帯可処分所得上位40%(1,000万円/年以上) |
ターゲットが好む観光コンテンツ |
食・お酒(ローカルフード/ミシュラン店) |
歴史・遺跡(遺跡・街並) |
豊かな自然(エコツアー/ラグジュアリーホテル) |
訴求時のポイント |
旅⾏会社を通じた情報収集と旅⾏予約の割合が多く、BtoBの取組として商談会及び旅⾏会社招請を重視。 |
優先順位 | マーケティング・プロモーション施策 | 施策の対象 |
---|---|---|
1位 | 旅⾏博・商談会 | BtoB(旅行会社など) |
2位 | インターネット(WEB・SNS) | BtoC(訪日外国人) |
3位 | 旅⾏会社招請 | BtoB(旅行会社など) |
4位 | PR(広報) | BtoC(訪日外国人) |
5位 | メディア招請 | BtoC(訪日外国人) |
6位 | 共同広告 | BtoC(訪日外国人) |
7位 | 広告 | BtoC(訪日外国人) |
8位 | セミナー・ネットワーキングイベント(メディア・旅⾏関係者) | BtoB(旅行会社など) |
9位 | インフルエンサー招請 | BtoC(訪日外国人) |
10位 | 人材育成 | BtoB(旅行会社など) |
11位 | その他(ニュースレター) | BtoC(訪日外国人) |
12位 | その他(ニュースレター) | BtoB(旅行会社など) |
ターゲット属性詳細 | |
---|---|
海外旅行実施者に占める割合 ※ | |
9.0%(90万人) | |
年代 | |
50代:58.5% | |
60代:27.0% | |
70代以上:14.5% | |
世帯可処分所得/月 | |
13万〜16万豪ドル:43.0% | |
16万〜20万豪ドル:31.0% | |
20万〜26万豪ドル:18.0% | |
訪日旅行経験率 | |
1回:23.0% | |
2回以上:25.0% | |
訪日ファネル | |
無認知:17.5% | |
認知:6.8% | |
興味関心:65.5% | |
比較検討:10.2% | |
地⽅エリア訪問希望率 | |
57.5% | |
同行者 | |
配偶者・パートナー:71.9% | |
20歳未満の子ども:28.1% | |
自分ひとり:15.6% | |
旅行形態 | |
個人手配:60.4% | |
オーダーメイド旅⾏:25.0% | |
FITパッケージ:9.4% | |
滞在日数 | |
11.1日 | |
旅行単価(円換算) | |
45万1,000円 |
※「海外旅行実施者に占める割合」は、その国・地域の海外旅行実施者に占めるターゲットの割合
オーストラリア市場のマーケティング・プロモーションに使えるツール
コロナ前の2019年に日本を訪れたオーストラリア人の数は約62万人で、欧米豪圏ではアメリカに次ぐ大きな市場です。消費総額もアメリカに次いで2番目であることから、インバウンド対策をするうえでは欠かせません。
訪日オーストラリア人を呼び込むために検討するべきSNSや検索エンジンなどを紹介します。
SNS:YouTube、Facebook、Instagram(インスタグラム)、X(旧Twitter)、TikTok
SNSに費やす1日の平均時間が日本の1人あたり51分に対し、オーストラリアでは2時間4分にものぼります。オーストラリアのインバウンド対策をするうえでSNSは欠かせないチャネルといえます。
なかでもオーストラリア人が外国旅行の際に情報収集として使うSNSはYouTubeとFacebook、Instagram(インスタグラム)です。
Digital 2023の資料によれば、オーストラリアにおけるYouTubeのアクティブユーザー数は2,100万人、Facebookは1,500万人、Instagramは1,100万人を誇るなど、インバウンド対策をするうえでは必須のSNSといえます。
X(旧Twitter)やTikTokも少なからず外国旅行の情報収集ツールにすることから、英語での発信を強化することでオーストラリア人へのインバウンド対策としても使えそうです。
関連記事:オーストラリアで人気のSNS
検索エンジン:Google、bing、Yahoo!
世界中で多くのユーザーを抱えるGoogle。オーストラリアでも約94%がGoogleを使用するなど圧倒的なシェアを誇ります。そのほかにもbing(約4%)やYahoo!(約1%)などの検索エンジンが使用されています。
オーストラリアはインバウンド対策をするうえで必須の市場のひとつです。Googleを使ったマーケティング施策が必須といえます。
関連記事:【マーケター必見!】訪日客を呼び込むなら必ず抑えておくべき検索エンジンシェア率
旅行予約・口コミサイト:トリップアドバイザー、ロンリープラネット、トラベル・ウィークリー
オーストラリア人はSNSや旅行予約・口コミサイトなどさまざまな媒体を参考にして外国旅行の情報収集をします。
なかでも、もっとも参考にされているのがトリップアドバイザーです。トリップアドバイザーは世界最大級の旅行サイトで、月間のユーザー数は4.55億人を誇ります。約50か国で使用されているので、インバウンド対策をするうえでは欠かせないツールといえます。
そのほかロンリープラネットやトラベル・ウィークリーなども活用されているようです。
訪日オーストラリア人観光客のインバウンドデータを見てみる
訪日オーストラリア人観光客のインバウンドデータを見てみる |
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訪日オーストラリア人観光客のインバウンドデータ |
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オーストラリア人観光客向けのマーケティング・プロモーション |
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