近年、新しい宿泊スタイルとして大きな注目を集めている民泊。2008年にアメリカでサービスの提供を開始したAirbnb(エアビーアンドビー)を筆頭に、世界的な人気を獲得しています。同サービスだけで世界約190カ国で、約120万室が利用できると言われています。
その一方で、問題視されているのが、部屋の借り手、貸し手間でのトラブル。特に訪日外国人観光客が利用する場合、日本語でコミュニケーションが取れる可能性は低く、鍵の受け渡し、トイレやキッチンなどの設備の使い方を説明するのは難しくなるでしょう。
また、ゴミの出し方や騒いでもよい時間帯の説明ができなければ、近隣住民から苦情が来るおそれがあります。民泊では、はじめから宿泊施設として運営されているホテルや旅館などではなく、住宅を利用します。民泊ビジネスを持続的に行っていくうえでは利用者がトラブルを起こさないように注意を払い、未然に防ぐ必要があります。
こういった課題があるため、民泊の評判はあまりよくありません。宿泊業の素人でもサイドビジネスで行えること、違法業者も少なからず存在することなどから、あまり丁寧な運営は期待できないだろうと予測されているのでしょう。
現在、このような民泊の難点を解決するべく、IT技術を活用する企業が現れており、実証実験も進められています。現在、考えられている民泊の姿は、テクノロジーによってどのように変わるのでしょうか。
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インバウンドビジネスにも役立つIoT技術とは
技術の発展によって、大きく世の中が変化する産業革命。近代以後、蒸気機関やガソリンを使ったエンジン、コンピューターの登場により、世界は大きく変わってきました。現在は、第4次産業革命の真っ只中だと言われています。
これから時代の流れを一変させる可能性があると言われている技術としては「人間から仕事を奪うのではないか」と心配視されている人工知能(AI)などが挙げられますが、民泊ビジネスに影響すると考えられているのは、主に「IoT技術」。「Internet of Things」の略称で、日本語では「モノのインターネット」と表現されます。
従来、インターネットといえば、コンピューターやスマーフォトン、タブレットなどを介して接続するものでした。ですが、IoT技術の場合、家具、家電といった「モノ」がインターネットに接続します。相互に情報をやり取りさせ、制御できる仕組みを作ることができることから、人間の行動の仕方に大きく影響すると考えられています。
「IoT」という表現が現れたのは、1999年。最初に使ったのは、ID情報を埋め込んだタグを使って、無線通信を行い、人やモノを管理、識別する技術「RFID」を研究したケビン・アシュトン氏だと言われています。専門的でピンと来ない話ではありますが、大雑把に言えば、RFID技術とは「すごく便利なバーコードのシステム」のようなもので、「IoT」という表現が用いられたのも、商品管理システムをインターネットになぞらえて説明することが目的で、実際に導入している小売店も少なくありません。
また、モノにセンサーなどを取り付けて、IoT技術を利用すれば、離れた場所から状態を把握したり、操作したりできるため。たとえば、自宅にIoT技術を取り入れれば、開きっぱなしになっていた冷蔵庫のドアを外出先で知り、その場で慌てて締める……といったことが可能になります。
IoT技術は民泊でどのように活用されるのか
さて、民泊の場合、IoT技術はどのように使うことができるのでしょうか。ケースごとに紹介してみましょう。
家具、家電の管理
前述の通り、IoT技術を活用すれば、家具や家電の管理が離れた場所でも行えるようになります。冷蔵庫が開けっぱなし、エアコンが付けっぱなしくらいならともかく、家電によっては火災などにつながるケースも考えられます。そのような事故を未然に防げる可能性があります。
鍵
スマートフォンなどを使って、ドアの鍵を開け閉めする「スマートキー」が利用できるようになります。鍵の受け渡しや返却はスマートフォン上で設定を操作するだけで完結します。また、オートロック機能などと組み合わせれば、鍵のかけ忘れによる空き巣被害を防ぐことも可能です。
入退出管理
宿泊者の入退室管理も、IoT技術により可能になると言われています。介護分野にも高齢者が家のどこにいるかを把握する製品が登場しており、実現性は極めて高いと思われます。宿泊者の入退室時にわざわざ顔を合わせる必要性がなくなるため、民泊用の住宅の管理がグッと楽になるのではないでしょうか。
まとめ:IoT技術で民泊の課題を解消
現在、世の中を大きく変える新たなテクノロジーとしてIoT技術が注目を集めています。パスポートの管理や、小売店の商品管理など幅広い分野で使われていますが、インバウンドビジネスも例外ではありません。特に民泊では、鍵の紛失、入退室管理など貸し手の負担となる作業の解消に一役買うと考えられており、サービスの開発が実施されています。
ケースバイケースではありますが、比較的安価に導入することも可能なので、民泊を検討している方は、自分に合ったサービスがないか探してみてはいかがでしょうか。
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